山麓の家で私を育ててくれたアメリカ人の老詩人が昨年ついに逝ってしまった。彼から引き継いだ仕事をこれからも続けていきます。お絵描き、音楽♪ 読書。ニワトリの放し飼い。料理じょうず。自転車(ロード)、くずし字・古文書読解。英語ペラペラ。スペイン語。中国語。русский язык。🇵🇸加油!

Dec 9, 2022, 58 tweets

NATO(アメリカ)がロシアと戦争して絶対に勝てない理由

マーク・スレボダ/ ザ・リアル・ポリティック

Demilitarizing NATO
/The Real Politick with Mark Sleboda (全訳)

①はい、マーク・スレボダです。ザ・リアル・ポリティックの時間がやってきました。多くの人々が認めるように、ウクライナ紛争も9カ月目に入って、まるで第一次世界大戦を彷彿させる全面的消耗戦争の様相を呈してきました。

②第一次世界大戦は、夥しい数の要塞構築と何万キロに及ぶ塹壕堀、そして大規模な砲術戦で特徴づけられる古典的消耗戦争でした。ところが、現在戦われているロシア・ウクライナ戦争がまさにあの時代に舞い戻ったかのような消耗戦争になっているのです。

③さて、消耗戦争の勝敗を決める決定的要素は何でしょうか?素人なら、伝説的天才軍師が編み出す奇抜な戦術というロマンチックな事を考えるかもしれませんが、現実の戦争を研究する専門家の考えはまるで違います。

④人々の目にこの戦争がどのように映るにせよ、勝敗の鍵は一にも二にもリアルなロジスティック、その国の軍事産業の総生産力にあるのです。わかりやすく言うと、つまりどれだけたくさんの弾薬を生産できるかという事です。

⑤しかも、ここで言っているのは、いわゆるカッコいいハイテク兵器のことではありません。意外なほどに古典的な、そして地味なコンベンショナルな砲弾、つまり、あの大砲の弾(タマ)のことを言っているのです。

⑥ロシアは、明示してきた特別軍事作戦の目的の一つ「非軍事化」を達成するために、来る月もまた来る月もキエフ政権の軍事産業拠点を叩き、その生産力を破壊してきました。

⑦すでにこの6月の時点で、キエフ政権の高官たちは152ミリ砲用砲弾が、他の全ての兵器と同様に、在庫切れになってしまったと嘆いていたのです。もちろん在庫切れの理由はロシア軍がそれを徹底的に破壊したからですが、ロシア軍は同時にウクライナの再生産能力も破壊していました。

⑧つまり、その時からウクライナは西側の供給に完全に依存しなければならなくなっていたのです。NATOスタンダード155ミリ砲砲弾と105ミリ砲砲弾がウクライナ軍の正規の砲弾になってしまったというわけです。

⑨ウクライナ軍事情報局副長官ヴァディム・スカビツスキーがザ・ガーディアン紙に語ったところによると、

「戦争はますます消耗砲弾戦の様相を帯びてきた。畢竟、前線において勝敗を分つものは砲弾の物理的量である。そして、まさにその点において我々は負けているのである。」

⑩我々は現在、西側からの供給に完全に依存しなければならなくなった。我々が1発撃つ間に、ロシア軍は10~15発撃っている。それにもかかわらず、西側の友人たちが供給してくれるのは我々が必要とする砲弾のわずか1/10に過ぎないのだ」

と、西側の供給不足に不満を訴えました。

⑪ウクライナが撃つ砲弾の数は1日あたり約5,000-6,000発ですが、それに対し、ロシア軍は約60,000発で、つまり10倍強です。動画の初めに私が言ったように、この戦争の本質が消耗砲術戦争であることを誰もが理解しています。つまり、この戦争はロシアが1:10で勝っていると実は皆が認識しているのです。

⑫さらにここに至って、キエフ政権の命綱である西側供給元に砲弾の深刻な在庫切れが起きていることがわかってきました。
ペンタゴンの高官がCNNに次のように語りました。

⑬「9ヶ月間にわたって激しい砲撃戦を続けてきた結果、かなりの武器システムにおいて在庫切れが起きている。アメリカ合衆国がウクライナに供給できる余剰兵器が既に底をついたということだ。」

⑭アメリカ軍もアメリカの軍事産業も、この種のオールドファッションな地上戦に必要な砲弾の量産体制を全く準備していなかったのです。

⑮何十年にもわたってアメリカは見かけだけ派手なハイテク兵器開発ショーや対テロ用兵器開発に莫大な投資をしてきましたが、基本中の基本である砲弾の生産をおざなりにしてきたのでした。

⑯激しい砲弾戦をリアルに生き抜き、最終的勝利に至るために絶対必要なものが大量の砲弾なのですが、その絶対に必要なものをアメリカはおざなりにしてきたのです。

⑰ネオコンの古ダヌキでジ・アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのフレデリック・ケイガンがフォーレイン・ポリシー・マガジンのインタビューに

※Frederick Kagan

⑱「NATOには、このような戦争を戦う計画が元々なかったのだ。つまり、長期に及ぶ極度に緊張した激しい砲撃戦や戦車戦、銃弾戦を全く予定していなかったのだ。こんな戦争は全く念頭になかった。」

と答えています。

⑲現在のアメリカ合衆国の155m砲用砲弾の年間生産数は約30,000発です。これは現在ウクライナ軍が5日で消費している量です。ロシア軍はこれを半日で使ってしまいます。アメリカが丸一年かかって生産する砲弾をロシアは半日で使ってしまうのだと、私は言っているのです。

⑳ところが、アメリカの軍事産業が言うことには、「量生システムの構築には数年を要するでしょう。ただし、そこに十分な利益の補償が長期にわたって確保されなければ、会社はそれを始めないでしょう。契約の前に、まずおカネを見せてください」だそうです。

㉑わかりやすく言うと、つまり、アメリカはやらない。やれないということなのです。軍事産業の生産ラインは簡単には変更できないのです。そもそもアメリカには、今、経済は戦争モードにあるという自覚がありません。

㉒「私たちは、民主主義を守る偉大な銃弾にならなければならない。(WE MUST BE THE GREAT ARSENAL OF DEMOCRACY.)」というF.D.R.の有名な言葉は今はすっかり廃れてしまったというわけです。

㉓深刻な砲弾不足に死に物狂いになったバイデン政権は、なりふり構わず韓国に泣きついてそこから155m砲弾・100,000発をかろうじてかき集めてきました。しかし、それはウクライナ軍にとってはわずか20日分の砲弾に過ぎません。

㉔地球の裏側まで行って鍋底に穴が開くほど掻き取ってしまった後、アメリカはいったいどうするつもりなのでしょうか。

㉕それどころではありません。ウクライナを支援して自分の武器庫をすっかり空っぽにしてしまったNATOは最低限の自衛さえできない状況に現在、自分自身が陥っています。

㉖同様に、アメリカは、ロシアがすでに破壊したHIMERSの補填分としてさらに18基のHIMERSシステムを送ると秘密でウクライナに約束しましたが、これはあくまでも契約だけの話です。その18基を生産してウクライナに届くまで数年はかかることがわかったからです。

㉗そういうわけですから、ウクライナ支援は、量においても質においても衰退の一途を辿っているのです。西側が全体の供給量を全部合わせても、現在、ウクライナ軍が使っている砲弾の量、ロシアが破壊している砲弾の量にとうてい追いつきません。

㉘今、NATOの幹部たちが毎日のように集まり心配顔を突き合わせて相談していることは、自分のところの倉庫が空っぽなのにどうやってウクライナに送ればいいのだろうということばかりです。

㉙しかし、そうした現実の圧倒的絶望とは裏腹にやたら威勢が良いのは、西側のメディアです。

●ロシアは砲弾をすっかり使い果たした。
●あれもこれも使い果たした。
●ロシア軍の士気は低い。
●プーチンは風前の灯だ。
などなどなど…

㉚特別軍事作戦開始からずっと今日に至るまで、現実と全く正反対のことを毎日声も高らかに歌い上げています。メディアの言うことが本当なら、ロシアはとっくに負けているはずですが、事実は、ロシアのミサイルは大量に飛び、砲弾は大量に命中しているのです。

㉛真実は、ロシアには冷戦時代からのソビエト製ミサイルや砲弾の大量の在庫があるだけでなく、ロシアの軍事産業はこの種の激しい地上砲弾戦を想定してトップギアで生産しているということです。それがロシアの戦争であり、ロシアが想定する戦争だからです。

㉜ロシアは、戦争が長期化することを十分に予想して、そのロジスティック構築に抜かりがありませんでした。しかし、その事実はNATOやキエフ政権にとっては悪夢以外の何物でもないでしょうね。

㉝こうしてクレムリンは、轢き臼がゆっくりと回転するように確実にキエフ政権を非軍事化しつつあります。しかし、ロシアは単にキエフ政権だけでなく、NATO(アメリカ)をも非軍事化しつつあるのです。

(了)

㉞オリジナル動画:

㉟解説:アメリカ軍に砲弾が不足しているという話はかなり意外に聞こえます。アメリカといえば、第二次世界大戦で天文学的な爆弾を落とした上に、それに続く朝鮮戦争・ベトナム戦争では自らの大記録を易々と更新していった爆弾王国としてあまりにも有名だからです。

㊱これはあまり知られていない話ですが、1964年から1973年にかけて、ナパーム弾を満載したB52が7分に一機の割合で24時間、365日、9年間休むことなくフィリピンや沖縄の基地から飛び立ち、ラオスという東南アジアのランドロックの小さな農民の国に爆弾を落とし続けました。

㊲アメリカはなぜそのような小さな農民の国を空爆したのでしょうか?なぜ民間人に向かってまで空爆したのでしょうか?なぜ人のいないところにまで丁寧に空爆したのでしょうか?なぜその国の地形がすっかり変わってしまうまで徹底的に空爆したのでしょうか?

㊳そのオモテの理由は、言うまでもなく「防衛」です。それはアメリカ本土の防衛だけでなく、世界全体の平和を防衛する世界の警察官の役割という二つの意味を持っていました。そのために、「アメリカ軍の圧倒的な破壊力を世界中に誇示」したというわけです。

㊴さて、ウラ(本当)の理由はと言うと、それは言うまでもなく
「爆弾はたくさん落としてくれた方がカネになる」
からでした。フル稼働して作ったものが次々と100%完売なら、生産者にとってこれほど嬉しいことはありません。

㊵では、いつ潮目が変わったのでしょうか?私はそれをソビエト崩壊に見ています。それまでアメリカの唯一の実質的軍事ライバルだったソビエトがいなくなりました。

㊶ところがアメリカはそれを「これで戦争をしなくても良くなった」と解釈せず、「これでどこと戦争をしても負ける可能性がなくなった」と解釈したのです。そこで軍事産業は軍縮に向かわず、代わりに「戦争して実際に勝つ」商品生産から純粋に「儲かる」商品生産へと戦略をシフトさせていったのです。

㊷そうなると、もう利幅の少ない、地味な砲弾なんかをコツコツ真面目に作っているのが馬鹿らしくなってきます。最も簡単に儲かる商品は何かということを追求して行った結果、発明したのがカッコイイ「ハイテク兵器」の「研究開発」でした。

㊸多くのアメリカ人(アメリカ人だけではありませんが)は、世界をハリウッド映画のように眺め解釈しています。特にハリウッドを特徴づけるのが1977年公開以来、世界的大成功となった「スターウォーズシリーズ」に代表されるSFファンタジーものですね。

㊹ハリウッドは、あくまでもエンターテイメントですから、観客が登場人物に自分を投影して「気持ち良くなれること」を主眼としています。ですから、登場人物も乗り物も武器も出てくるものは全て、ファンタスティックな、夢のあるものが求められます。つまり、夢のハイテク兵器です。

㊺当然、ドラマを盛り上げるために途中いろいろな障害が起こりますが、結局、シナリオでそうなっているのだから、シナリオが描くように最終的に全てうまくいき、観終わった観客の心には「ハイテクこそ、未来の姿」という印象が強く焼き付けられるのです。

㊻もう「第一次世界大戦の頃からある、時代遅れの、ダサい砲弾なんかいくら作っても意味がない。やっぱり、兵器はハイテクだ」とパブリックを納得させることができるのです。その上、第二次世界大戦を最後に、アメリカは実際の戦争を経験していません。

㊼現在、ウクライナで繰り広げられているような現実の激しい地上戦を実際に経験したことのある将軍がアメリカにはいないのです。戦後のアメリカの「戦争」は、自分よりもずっと小さくて弱い、軍隊も航空防衛システムもない国を相手にしたものばかりでした。

㊽それは弱い者イジメであり、「戦争」というよりむしろ丸腰の相手に対する「大虐殺」に近いものでした。ですから、将軍も政治家も実際の戦争を知りません。

㊾元々、将軍の地位につくことができるのは、その人の軍事的才能でも指揮官としての人格でもなく、ただリボルビングドアを往復しながら軍事産業が最も儲かるような政策を実施してくれる人たちだけです。その兵器の効果的かについて、真面目に査定すらしません。

㊿さて、価格を釣り上げるためには「一つのものでなんでもできる万能の兵器」を作ることでした。こうして莫大な予算を注ぎ込み、生まれたのが世界一高価な「できそこない」・F35ステルス戦闘機でした。

51. 巨大なシングルエンジンで垂直離陸が可能であることが「ウリ」の一つの、この乗り物は空母の甲板を傷めて仕方がないという苦情の他に、なんでもかんでも詰め込んだ結果、翼の短い、ズングリムックリの姿になり、戦闘機のなのに高速急方向転換ができません。空中戦ができない戦闘機なのです。

52. その証拠に、F35のプロモーションビデオを見ると、真っ直ぐに飛んでいる姿だけが出てきます。異様な形状と表面の特殊な艶消し塗料が「レーダーに映りにくい」ことが最大の「ウリ」ですが、ロシアや中国のレーダー網はとっくにそれを捉えるように開発されています。

53. 結局、F35は
❶極端に高価であること❷パブリックが好むハイテク・イメージに沿わせること
の軍事産業が求める目的だけはしっかり達成してるわけです。

54. 悪名高いオスプレイ開発のプライマリー・コンセプトは「今までの飛行機やヘリコプターにはない、画期的な形状を持つ有人飛行装置を作れ」でした。その結果、両翼に巨大なプロペラのついた、あえて非常に安定性の悪い飛行装置ができてしまったわけです。

55. 映画なら、CGのバーチャル・リアリティなのでワクワクさせながらどんなことでもできますが、そこからバーチャルの文字を取ってしまうとなかなか思ったように都合よくは行かなくなるようですね。

56. アメリカの軍事費は世界最大で、2位から11位までの10カ国分の軍事費を全部合わせたよりも多いのですが、軍事費と軍事(実)力は必ずしも一致しないようです。そもそも砲弾を作るコストははっきり算定できますが、「研究開発費」となるとこれは水物ですね。

57. 好きなようにできる上に、その中で、FTXなどのマネーロンダリングを通じて個人の隠し財産となる割合はどれくらいなのでしょうか?

(了)🙂

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