#有報の見方
1:はじめに
全投資家に伝えたい、有報の見方。
こんな経験、ありませんか。
「投資するぜ!財務分析だ!バフェットコードで概要は把握した!真剣に有報読むぞ!」
からの
「長すぎワロタ」「注記多すぎorz」「どこ見りゃいいの」みたいな。
そんな貴方に送るシリーズです。
有報の項目ごとに重要度と、見るべきポイントをまとめて発信していきます。
(引用元の超ロング版、1週間以上かけて発信していく予定)
続
#有報の見方
2:有報で何を見るのか
①現在の状況
②前年からの変化
この二つです。
まずはサクッと終わる②からやってみましょう。
これは深く考えなくてもできちゃいます。
続
#有報の見方
3:変化を見よう!1/3
①今年と去年の有報をダウンロードします(バフェットコードでOK)
②有報をilovepdfで保護解除
③保護解除済みpdfをilovePDFでword化
④Wordで比較(校閲タブの隅に比較機能があります)
続 ilovepdf.com/ja/unlock_pdf
ilovepdf.com/ja/pdf_to_word
#有報の見方
4:変化を見よう!2/3
⑤Wordの比較機能は、「挿入と削除」「移動」「表」にだけチェック、他チェック無しにしときましょう。
⑥そうするとあら不思議、変更箇所が一目瞭然になります
続
#有報の見方
5:変化を見よう!3/3
見るべきは
●「何が変わったのか/変わらなかったのか?」・・・数字だけでなく、研究開発や設備投資の定性的な記載も良く変わる
●「何故変わったのか/変わらなかったのか?」・・・意外と変わっていない、という事実も大事
7226極東開発だと、
「株価も業績も全然違うのに、業績連動報酬ほぼ一緒じゃないか・・・?」
「政策保有株式、ちょっと積極的に売り始めた・・・?」
「持ち合い株も、ちょっと減り始めた・・・?」
とか、色々気付きます。
次からは表紙から順番に項目別に有報を総ざらいしていきます。
続
#有報の見方
6: 企業の概況1/3
●表紙(✖飛ばす)
●経営指標等の推移(✖飛ばす、バフェットコードの方が見やすい)
●沿革(〇割と大事)
8125ワキタだと「買収はやる、売却ゼロ・・・?」
6501日立だと「昔は買収だけ、最近は売り買い両方やってる」みたいな
上場子会社だと経緯が分かったり。沿革は案外大事
#有報の見方
7: 企業の概況2/3
●事業の内容(△流し見)
プレゼンとか統合報告書とかがあれば、そちらの方が分かりやすい
●関係会社の状況(〇以外と大事)
大事なのは主要な子会社のPL。後は連結子会社だけど100%なのか、51%なのかも大事。
<主要な子会社の情報>
5930文化シヤッターだと、
「アフターサービスの子会社稼いでる、ええやん」
「買収して5年経った豪州子会社、まだ非開示でOKな規模なの?orz」
など、有報のここでしか得られない情報が得られたりします。
悲喜こもごもですが。
<連結子会社の情報>
8267イオンだと、マックスバリュが傘下なわけですが、東海地区だけ64%しか持っていなかったりしてフーンとなります。
他によくあるのは、中国でめっちゃ稼いでるけど現地法人の51%しか持ってなくて49%は少数株主分、みたいなこともよくあります。PLに響きます。
続
#有報の見方
8: 企業の概況3/3
●従業員の状況(△一応見ておく)
従業員確保できてるか?賃上げ対応してる?平均年齢上がってきてない?
23/3期からは管理職の男女比率、育休取得比率とかも追加されました(これは開示ルールの変更なので全社共通)。
<持株会社の場合>
3205ダイドーみたいな持株会社が上場している場合、平均年間給与が実態と乖離するので注意です。
事業を主に従事しているのは上の772人の方で、35人592万円の給料はその持株会社の従業員の給料です。
だからアパレル企業なのに平均年齢53歳になっちゃってます。
<男女比率>
7226極東開発、「はたらくくるま」の会社なので男の子に人気(採用時点で男女比9:1)なのは分かる。
採用から強化しているもの分かる。
でも管理職に占める女性比率ゼロは、、、
続
#有報の見方
9: 事業の状況1/6
●経営方針~課題(△~◎短信やプレゼンで大体カバーされてる)
<IRが良い会社の場合>
中期経営計画を開示する会社、決算プレゼンを出す会社、統合報告書を出す会社などは読み飛ばしてもあまり問題なし。
<IRが悪い会社の事例>
IRが悪い会社だと、ここにしか経営目標を記載しない会社があるので見落とし注意。
3205ダイドーは多分ここにしかROE目標が出てきません。ROE10%が目標。一応実績も載せておきます。バフェットコードはバグってません。
続
#有報の見方
10: 事業の状況2/6
●事業等のリスク(△メリハリつけた流し読み推奨)
5930文化シヤッターだと、
②地震や~のリスク
→そりゃそうだよなという内容(読んでも新情報なし)
→他にも、コロナのリスク、戦争のリスク、為替リスク、景気の悪化リスクなどはどの会社でも大体新情報が無い
③資材等の調達リスク
→電動シャッターみたいなところにも半導体不足の影響はあるのか、なるほど。
④製品の性能保持や安全対策
→法定の定期検査で安定収入があるのか、なるほど。
などちょっとした発見もあるかも。
だからこそのメリハリが必要です。
続
#有報の見方
11: 事業の状況3/6
●経営者~分析(✖~△短信やプレゼンで大体カバーされてる)
一応読みはするけども。。。という感じ。
会社のIRが悪ければ読むべきだけど、それでも短信と同じ内容のことが多い。
会社のIRが良ければ読まなくてもいいよねというイメージ。
ここは会社によって違う。
続
#有報の見方
12: 事業の状況4/6
●経営状の重要な契約(◎ちゃんと読む、個人的には好きな項目)
面白い事例を2つ紹介します
<4661オリエンタルランドの事例>
多分日本で一番有名なオリエンタルランドとディズニーの契約
若者が一生持つつもりで投資するなら、
「2051年の9月でディズニーとの契約条件が改悪される恐れは無いのか」気にする必要がありますし、
2~3年だけ持つなら
「2051年までの契約なんか知るか」、というスタンスで何も問題ありません
<2312山崎製パンの事例>
昔懐かしい、山崎製パンとナビスコの契約終了です。
山崎製パンはナビスコの契約終了により「リッツ」を失い、その後「ルヴァン」のマーケティングに相当な費用を投下しました。
当然、有報だけが情報源にはならないのですが、改めて有報に記載されているのを見ると面白いです。
この項目は会社によっても重要度が変わるし、投資スタンスでも重要度が変わります。そして重要な契約は、会社の経営、将来を左右することもあります。
なのでめっちゃ大事(なこともたまにはあります。)
有報、面白くなってきましたかね?
続
#有報の見方
14: 事業の状況5/5
●研究開発活動(✖~〇会社による)
これも会社によってまちまちなので一応めを通すが、、、ぐらいです。大事な会社とそうでない会社、両方あります。
<5208有沢製作所、読んだ方が良い例>
11億円の研究開発費の正当性を株主宛てに理詰めで証明し切った感じがします。
なぜその研究が必要か、自社に何ができて、何のために研究開発をしているのか、とてもクリアです。
(有報じゃなくて決算プレゼンなりでアピってくれ、とは思いますが。。。)
<7203トヨタ、読まなくて良い例>
普段からIR頑張ってるから有報ではビジョンを示すスタイル、とも言えます。世界のトヨタ、ぶっちゃけ何に1兆円使ったのか、有報だけだとマジで分からん。
本日は力尽きたので、今週中には「設備の状況」以降の項目も発信していきます。
(※伸びなかったら止めますので、その場合はご容赦ください)
#有報の見方
15: 設備の状況1/2
●設備投資等の概要(×~△流し見だけ)
●主張な設備の状況(◎バリュー投資なら超大事)
通常は本社、支社、工場など、大体は不動産がずらっと並んでいます。
情報量が多いのですが、ポイントだけ。
ケーススタディ3つ付き。
<本社や支社は自社ビル?賃貸?>
→同業他社は賃貸、こっちが自社ビルなら本業の能力とは関係ないところでマージンに差が出る
→簡易的な判別方法として土地(面積)の項目で、「-」だったら借りてる、数字があったら資産になってる=自前で持っているという感じです
<工場は国内?海外?もはや工場ない?>
→工場(というより生産拠点)がどこかにあるかで為替の影響が変わってきます。色々その他の影響もありますがざっくりイメージです。
国内工場で製造→海外に輸出する場合、7203トヨタ式
円安でPLが「改善する」し競争力も上がる=円建て製造コストダウン/円建て販売価格アップ
これがいわゆる円安恩恵銘柄になります。円高は当然逆
海外工場で製造→現地で販売する場合、7226極東開発式
円安でPLが「大きくなる」けど競争力は変わらない=円建て製造コストアップ/円建て販売価格アップ
これも多くの場合は円安恩恵銘柄になります。海外が赤字だとアレですが。(現地通貨のPLには変化なし、円換算した時の損益の絶対額が大きくなる)
海外工場で製造→日本に輸入する場合、9983ユニクロ式
円安でPLが「悪化する」し競争もマジきつい=円建て製造コストアップ/円建て販売価格横ばい
(ユニクロみたいにゴリゴリ値上げできると強い。エアリズムコットンオーバーサイズT、上がり過ぎてて震えました。)
-----ケーススタディ3つ-----
<7226極東開発の場合>
・工場は国内に点在、なるほど(材料の輸入で為替リスクはありますが)
・本社は自前、なるほど。(去年購入。取得価格は非開示だけど、大体80億円ぐらい払ったのね、と想像がつく。これが有報の凄いとこ。)
・海外子会社、工場持ってる。日本から輸出じゃなくて現地生産ぽい。円安は現地で利益出てるならポジティブ、赤字だとネガティブぽい
・メガソーラー発電・・・ん?メガソーラー?工場跡地をメガソーラー発電所に?売却したらいいのでは・・・???
<4676フジメディアHDの場合>
・TV関連の施設を持っているのは当然
・札幌のホテルや水族館・・・ん?テレビのロケ用・・・?にしても札幌にホテル?水族館?
<8511日証金の場合、おっと・・・?>
詳細はこちら参照、という感じですが歴史のある会社だと保有している土地の簿価がめっちゃ低い場合があります。
日証金だと土地の簿価19億円だけど実際80億円以上の価値あるでしょ、となったり。
かなり上級者向けかつマニアックな話ではありますが。ご参考までに。
続
#有報の見方
16: 設備の状況2/2
●設備の新設、除却等の計画(△流し見でいいかな)
主だった投資計画が載っています。粒度も会社によってまちまち。
ケーススタディ3つ
<7226極東開発の場合、一応見ておこう>
生産ライン設備11億円、トレーラ生産工場に45億円の投資。
どちらも生産能力の増強でポジティブに見えつつ、完成は24年以降なので業績貢献は25/3期からかな、という感じ。
ん?太陽光発電に4.6億円・・・?
<7203トヨタの場合、見なくてOK>
普段からIRやってる、というか勝手にニュースにもなるし有報では開示しないスタイル。
<4661オリエンタルランドの場合、見なくてOK>
こちらもいつ開業予定(=設備投資の計画)かは、報道もされるしPRもされるのであまり重要ではない。
ファンタジースプリングスの開業予定が2024年春オープンなんか知っとるわ、となります。
(2500億円凄い。そりゃチケット値上がりしますよね。。。)
#有報の見方
17:株式等の状況1/5(思い入れ強めです。)
●株式の総数等(×、飛ばして良し)
●新株予約権等の状況(〇記載があれば見る)
経営陣に企業価値向上のインセンティブがあるか?というのをチェックできます。
見方を実例とセットで記載してみました。
ケーススタディ2つ。ダメな例と良い例です。
<3205ダイドーの場合(ダメな例)>
これはうちのファンドが問題提起しているストックオプション(=新株予約権のこと)の事例です。
弊社調べでは日本企業の中でも恐らく最悪のストックオプション。の事例です。
要は経営者は株価を下げるほど多くストックオプションが貰えるので、会社をボロボロにして辞めて、後任が頑張ったらめちゃくちゃ儲かるシステム
詳しくはこちらを見て下さい。
<2127日本M&Aセンターの場合(良い例)>
良い、というより明確な意図が見えて、なるほどとなる制度。
今の株価はさておき、どうやって「企業価値向上」を果たすか、そのためにどうインセンティブをつけるのか、という点が良く考えられています。
条件は自由に設定できるので、会社の考えが良く伝わる部分です。
続stracap.jp/3205-DAIDOH/#m…
#有報の見方
18:株式等の状況2/5
●行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況等(記載があるなら◎、というより普通記載無し。貴台あるなら絶対読むべきだけども。。。)
4563アンジェスとか事例もありますが。。。正直このTwitterを「いい加減だ」「表面的だ」「端折り過ぎだ」と鼻で笑える方向けの項目です。
この記載がある会社への投資を検討するなら、有報だけじゃなくて発行時の開示も読みましょう。というか徹底的に調べ上げましょう。
無責任にTwitterでざっくり解説して良い項目ではないので割愛します。
次は株主構成の見方ですが、ちょっと気合い入れるので明日のお昼目指して頑張ります。
続
#有報の見方
19:株式等の状況3/5
●発行済~推移(×、無視)
●所有者別状況/大株主の状況(◎めっちゃ大事、但しトラップ多め)
超長い、2000字オーバーです。
【目次】
・各項目の見方
・ケーススタディ
・自己株式の保有割合
・課金レベル別情報源
・株価への影響
・アクティビストの思考
(課金noteにしないので、RTと総会での発言よろしゅう!)
-----各項目の見方-----
ざっくりそれぞれの項目はこんな感じです
【政府及び地方公共団体】
JTとか日本郵政の財務省分はここにカウント
【金融機関】
ややこしい。政策保有分(銀行、信託銀行、保険など)と、投資ファンド分(日本カストディ銀行などの名義)が混ざっています
【金融商品取引業者】
ややこしい。基本証券会社名義ですが、中身は証券会社による政策保有分、個人の信用買い分、証券会社が投資ファンドの代わりに持っている分が混じっています
【その他の法人】
いわゆる政策保有株式として持たれている分が大半。基本的に安定株主。たまにシティインデックスイレブンスとか、サイブリッジとか、法人としてカウントされる投資ファンドもありますが、かなりレア。
【外国法人等】
所謂投資ファンドの保有と考えてOKです。
(よく「外国人が多いと株主価値向上の圧力がかかりやすい」など言われたりしますが、ここのことです。)
【個人その他】
ややこしい。個人株主に加えて、持株会と自己株式も入ってます。当然、個人株主も投資家から創業家まで中身はマチマチです。
弊社だと、現物で持っている時は日本本社の日本人ファンドですが外国法人カウントになり、信用にすると証券会社か日証金名義になってカウントされる場所が変わります。
-----ケーススタディ3つ-----
【7485岡谷鋼機の場合】
Twitterでしばしば見かける会社。
それぞれ大株主を色分けするとこんな感じです。
【6502東芝の場合】
何かと話題の東芝。岡谷鋼機とは色味が全然違う。
【6406フジテックの場合】
同じく話題のフジテック。東芝と岡谷鋼機の間ぐらい。
(色分け間違ってたらスミマセン)
-----自己株式の保有割合-----
自己株式の保有は企業価値を考える上で、本質的にはほぼ意味がないです。
でも「なんとなくいっぱい自己株式持ってます」は良く無くて、自己株式÷発行済み株式総数が大体
5%超えてくると「ん?」、
10%超えてくると「むむむっ?」、
15%超えると「別室行き」、
みたいなイメージです。雑ですが。
「明日やろうはバカヤロウ」という言葉がありますが、「何でそんな無意味なもの持ってるの?」という投資家の心理を理解していない会社は、投資家を大事にしていないな、という感じです。
合理的な目的をもって保有するなら全然OKですよ。
-----課金レベル別の情報量-----
株主情報は課金レベルによって大きく情報量に差が出てきます。
【四季報オンラインとQUICK】
はそれぞれ有料ですが独自調査の大株主が30位まで見れたり(見れない会社もありますが)、
【Bloomberg】
海外の機関投資家の報告書や持ち合い株、大量保有報告書の情報を元に実質株主を100位ぐらいまで見れたり(公開情報ベースなので独自調査の30位までとは質が違う)
【バフェット・コード】
有料版なら実質株主が見れたりします(Bloombergと同じく公開情報ベースで、Bloombergのかなり簡易版。これだけのために契約はしなくていいかな)
個人の方なら現実的には四季報オンラインのプレミアムプラン(5,500円/月)ぐらいが選択肢だと思います。価値があるかは知りませんが。
-----株価への影響-----
「外国人株主が多いとイイヨ」とたまに見ますし、間違ってもないと思います。
でも課金レベルで情報量には差が出てくるし、ガチでこれだけを頼りに勝負すると個人投資家は明らかに不利です。
ついでに、株主構成は株価に織り込まれるので、株主構成が悪い企業ほど安く、外国人が多いほど高くなりがちです。
特にバリュー株だとその傾向は顕著です(多分)
例えば4385メルカリの経営者は外国人株主だからどう、日本の投資家だからどう、というよりも経営にとりあえず全力投球だと思います。
でももう成熟企業、誰が経営トップかなんてあまり関係ない、現金は有り余っててそのせいで株価が低い企業の場合、なんとなく経営者が外国人株主にヤイヤイ言われないか顔色を窺ってそうな感じ、直感的にわかりますでしょうか。
(厳密には時価総額なり、流動性なり、要因は山盛りですので、イメージだけ掴めたらOKです。)
どなたかPBR、自己資本比率、外国人株主比率、現金/時価総額、純有利子負債/時価総額あたりでスクリーニングして分析してくださればはっきりするかなと。
-----アクティビストの思考-----
こういう株価への影響もあるので、アクティビストの中でも
・外国人が多くて株主提案して勝てそうだから投資するファンド(株価をちょい安→普通にするタイプ)、
・弊社みたいな安定株主ガチガチのところに投資するタイプ(株価をめちゃ安→ちょい安にするタイプ)、
など色々なタイプがいます。
以上、ためになった方はRTして総会で発言しましょう!
(感情論はダメですよ。淡々と理詰めするのです)
ちなみに質問は引用RTでしか受け付けません!
続buffett-code.com/global_screeni…
Share this Scrolly Tale with your friends.
A Scrolly Tale is a new way to read Twitter threads with a more visually immersive experience.
Discover more beautiful Scrolly Tales like this.