マウスは天然の遺伝子治療薬のように働くノンコーディングRNA遺伝子を進化の過程で獲得して、多数の致死性の変異を自ら一括して治療することで生きながらえているという渾身の論文ようやく世に出ました!
cell.com/molecular-cell…
我々の研究室ではこれまで核内に大量に蓄積するRNAのノックアウトマウスを作りその表現型を解析してきたのですが、作れども作れども、外見上の異常はなし。しかしついに耐性致死になるものが!それは4.5SH RNA。1970年代にLenwand博士と本邦の原田文夫博士によって独立同定された古典的なRNAです。
4.5SHのノックアウトマウスでは百を超える必須遺伝子にアンチセンス挿入されたレトロトランスポゾン由来のエクソンが突如として出現し、着床直後に耐性致死となります。そのエクソン化を抑えているのが4.5SHで、マウスの生存を支えている極めて重要な遺伝子です。
言うなれば、マウスというのは野生型でも致死性の遺伝病を多数抱えていているのですが、進化の過程で獲得した天然の遺伝子治療薬で自らを治療しながら生きながらえているということになります。
また、4.5SHは標的の配列を塩基対形成を介して見つけるモジュールと、エクソン化を抑えるエフェクターを連れてくるモジュールに分かれているということも分かりました。これを利用して、プログラム可能なスプライシング制御人工RNAキメラ分子を作ることが出来ます。
この人工キメラRNA分子は、shRNA(siRNA)、ゲノム編集に使われるCRISPR-RNAに続く、第三のプログラム可能な制御RNAとなる可能性があります。つまり、任意のエクソンをスキッピングさせることができるツールというのを我々は手にしたのかもしれません。
奇妙な偶然というのはあるもので、4.5SHを発見された原田文夫博士は、なんと、僕が巡り巡って着任した北大薬学部の大先輩。また、この発表を初めて国際学会で発表したのが2022年のRNA Societyで、その開催地は、Leinwand博士が在籍されているコロラド大学デンバー校でした。
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