日本では、このワールドカップにおける『おもてなし』とは何か、と言う議論が活発になされてきた。私も正確に翻訳することはできないが、この国で4週間を過ごして、漠然とだが理解したかもしれない。それは、客人を喜ばせるために全力を、いや、何かそれ以上を尽くすということだ。
しかし、彼らの『おもてなし』は、私たちの予想をはるかに上回っていた。試合前、多くの人が全くの勘違いをしていたのは、そのせいかもしれない。
「日本人はみんな、この試合が中止になり、過去に勝利したことのないスコットランドとポイントを分け合うことを望んでいる」という勘違いを。中には、「日本は故意にスコットランドの妨害をしている」と言う、壮大な陰謀論を唱える者までいた。
スコットランドラグビー協会の最高責任者、マーク・ドッドソンも、完全な勘違いをしていた。怒りに任せて、『巻き添え被害』(ポイントを分け合うこと)に合えば法的措置を検討しているなどと口を滑らせた。これは、日本人たちがどう覚悟を決めたかのプロセスに対する、恥ずべきミスリーディングだ。
黙祷に続いて、日本の国歌、君が代が流れた。日本人はこの国歌に複雑な思いを抱いており、歌わない人もいる。そのため大会中、ファンたちに国歌斉唱を促すキャンペーンが開かれている。この日、会場の多くの人が参加した国歌斉唱は、感動的で、荘厳だった。
選手を鼓舞する歌声が、大きく大きく、街中に響き渡るほど広がっていった。あの瞬間、あなたは思い知っただろう、スコットランドが対面しているのは、ラグビー文化を持たない極東の島国ではなく、強大なサポーターを持つ、己の真価を世界に証明しようと言う覚悟の決まったチームだということを。
前半の30分間、日本は魔法のような、激しく、獰猛で、集中したラグビーを見せた。次に対戦する南アフリカも含め、トーナメントに残った、全てのチームを凌駕するほどの。スコットランドも善戦したが、より頑強で、より鋭く、より俊敏であった日本に、完全に圧倒された。
日本のラグビーファンたちは、今なら何だってできる、どこが相手だって倒せると信じているだろう。そして、日曜日の夜に彼らが偉業を成し遂げた今、日本人だけではなく世界中の誰しもが、同じように思っている。
終