Thread by @BanziroG

#サル痘 のニュースについて。
このサル痘、感染症としてはかなり知名度が低いはずなので、病名だけ聞いて混乱された方も多いのではないでしょうか。
とはいえ新しい感染症というわけではなく、サル痘が発見されたのは60年以上前のお話です。
（下に続く）

https://twitter.com/banzirog/status/1322714418329776128

「そもそもサル痘とは？」という話になりますが、サル痘は「サル痘ウイルス」というウイルスによるウイルス感染症です。
病名からかの悪名高き天然痘を連想する方もいるかと思いますが、サル痘ウイルスは天然痘ウイルスの近縁種です。

彼らは「ポックスウイルス」というグループのウイルスで、ポックスウイルスには他にも色々なウイルスがいます。
ウイルスの種によって宿主となる動物は異なり、ウシに感染する「牛痘ウイルス」や、ニワトリに感染する「鶏痘ウイルス」などが存在します。

そんなわけで、サルから見つかったから「サル痘ウイルス」というわけです。
わかりやすくて覚えやすい名前ですね。
サル痘は「研究用のサルが発症した天然痘のような病気」として、1958年に初めて報告されました。

ところがどっこい、実はこのサル痘ウイルスの宿主はリスだったことが、後になってわかりました。
サル痘ウイルスは、サルやげっ歯類に幅広く感染できるウイルスだったのです。
そして困ったことに、サル痘ウイルスはたまにヒトにも感染できてしまうことがあります。

では、ヒトはどのようにして、サル痘ウイルスに感染するのでしょうか？
サル痘の主な感染経路は「接触感染」で、サル痘ウイルスに感染したサルなどの動物に咬まれるなどして感染することがあります。

さらに、サル痘はヒト-ヒト感染することもあります。
ただ、ヒト-ヒト感染は体液の濃厚な接触などによって発生することが多く、その頻度は数%と低いです。

そのため、コロナウイルスのように、ヒト-ヒト間で爆発的に流行することはありません。

さて、そんなサル痘ですが、普段はアフリカ大陸の赤道周辺の地域で流行していて、いわゆる「風土病」として知られています。
アフリカでは、狩猟や野生動物の肉を食べる際などに感染することが多いようです。
（画像：CDC より）

流行地以外でのサル痘の発生は、今回が初めてではありません。
2003年に、サル痘ウイルスに感染したげっ歯類がアメリカに輸入され、テキサス州などで合計71人の患者が発生する事件もありました。
幸い、死者はいませんでした。

げっ歯類はもともと色々な感染症を運んでしまうので、もちろん日本などでは検疫によって厳しくチェックされています。
現在のところ、日本でサル痘の患者が確認されたことはありません。

さて、サル痘を発症するとどうなるでしょう？
サル痘ウイルスに感染すると、感染から1~3週間後にサル痘を発症します。
3週間程にわたって、発熱・発汗・倦怠感などの全身の症状がみられます。

また、天然痘と同じように、特徴的な発疹が全身に現れます。
発疹は、最初は赤く小さなぶつぶつで→だんだんと盛り上がっていき→水ぶくれ（水疱）になり→水疱はつぶれてかさぶたになる・・・と変化していきます。

重症化したときの症状は、天然痘と区別がつきません。
致死率は数~10%とされていますが、ウイルスの株によって違いがあるようです。

身体の弱い人、特に小さな子どもや妊婦さんなどでは、重症化しやすいため注意が必要です。
また、回復後に「瘢痕（または“あばた”）」という発疹の傷跡が残ることもあります。

さて、ここからが大事なとこですよ。

「日本にいる私たちは何に気をつければいいの？」というお話です。

結論から言うと、特に気をつけるべきことはありません。

もしサル痘が流行している地域に渡航する際は、現地にいる野生動物との接触を避けるようにしましょう。
野生動物との接触を避けることは、サル痘のみならず人獣共通感染症予防の基本なので、ぜひ覚えておいてくださいね。

また、野生動物でなくとも、動物と触れ合った後はよく手を洗いましょう。
これも、人獣共通感染症予防の基本ですから、覚えておきましょうね。

「ニホンザルは大丈夫ですか？」と思うかもしれませんが、日本にいるニホンザルがサル痘ウイルスに感染している可能性は低いと考えられています。

ただし、野生のニホンザルは「Bウイルス病」などの危険な感染症を持っている可能性があるので、いずれにせよ見かけても近づかないようにしましょうね。

https://twitter.com/BanziroG/status/1418108172133273600

日本にいる野生のウサギやネズミなども、基本的にサル痘ウイルスに感染している可能性は低いとされています。

しかし、これらの野生動物もサル痘とはまた別に危険な感染症を持っている可能性があるので、直接触れ合わないようにしましょうね。

日本国内で飼育されている動物についても、基本的にサル痘を特に心配する必要はありません。
ただし、基本的な感染症対策として、口移しでの餌やりなどといった濃厚な接触は避けましょう。

「昔に種痘を受けた人は大丈夫なの？」という疑問について。

CDCでは、サル痘ウイルス曝露後4日以内に天然痘ワクチンを接種すると感染予防効果が、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果が、それぞれあるとしています。

過去に種痘を受けた方でも、サル痘にかかる可能性はあります。

天然痘ワクチンの接種を行うとしても、基本的にはサル痘ウイルスに曝露した可能性の高い人に対して行います。
なので、サル痘ウイルスに曝露した可能性の低い多くの人が、天然痘ワクチンの接種を受ける必要はありません。

「もしサル痘にかかってしまった場合はどうするの？」という疑問について。

基本的には、症状に対する治療（対症療法）を行います。
サル痘に有効な治療薬（抗ウイルス剤）についてはいくつか候補が挙げられていますが、治療法の確立には至っていません。

サル痘のように、世界には認知度の低い感染症がたくさんあります。
それらの感染症は、コロナウイルスのように爆発的な流行を起こす可能性こそ低いものの、ときに発生がテレビなどで報じられることがあります。

こうしたニュースの頻度自体は、コロナウイルス流行の前後で特に変化したわけではありません。
しかし、一般の方々の感染症に対する警戒心は、コロナウイルス流行以降強まりましたよね。
だから、感染症のニュースに対して不安になることは何もおかしいことではありません。

とはいえ、全ての感染症がCOVID-19のような「病原性も感染力も高い感染症」というわけではないのです。
ですから、感染症のニュースが報じられるたびに、パンデミックを恐れる必要はありません。

とりあえず落ち着きましょう。

既に根拠のない不安を煽るような情報が出回ってしまっているので、ご注意ください。

「こんな感染症もあるんだな」
「海外に行く時は感染症に気をつけないとな」
くらいの認識で大丈夫です。

というわけで、少なくとも現状お話できることははこんなところです。
実際に流行地に行った人や、感染者と濃厚接触した人でない限りは、特に心配しなくてOKです。

今後調査も進められるので、最新情報は必要に応じてまたツイートできればと思います。
ツリーが長くなってしまいましたね、失礼いたしました。

リプ欄や引用RTにある質問にはこちらでお答えしますね〜（あと補足とかも）

「ウサギやネズミを飼っているのですが、注意すべきことはありますか？」

日本国内ではサル痘の発生は確認されおらず、飼育している動物についてもサル痘に特に警戒する必要はありません。
口移しなどの濃厚な接触を避けるなど、基本的な感染症予防を心がけましょう。

「コロナのようにパンデミックが起きる可能性はありますか？」

サル痘ウイルスはコロナウイルスと違って、ヒト-ヒト感染や突然変異の頻度はそこまで高くありません。
そのため、サル痘ウイルスがCOVID-19のような世界的なパンデミックを起こす可能性は低いと思われます。

「種痘を受けたことがあるのですが、もしサル痘ウイルスに曝露してしまったら、サル痘にかかりますか？」

CDCによりますと、曝露後4日以内に天然痘ワクチンを接種することで、感染予防が可能であるとされています。
そのため、過去に種痘を受けた人であっても、サル痘にかかる可能性はあります。

「何類感染症ですか？」

サル痘は「四類感染症」に分類される全数把握対象疾患です。
医師は、確定患者・無症状病原体保有者・死亡者をただちに最寄りの保健所に届出る必要があります。
mhlw.go.jp/bunya/kenkou/k…

「瘢痕（あばた）は残りますか？」

サル痘でも天然痘と同様に、回復後に瘢痕が残ることが知られています。

「致死率はどのくらいですか？」

サル痘の致死率は数~10%とされていて、小さな子どもや免疫不全者などがかかった場合では致死率が高くなる可能性があります。
また、ウイルス株によって致死率は異なるようです。

「エアロゾル感染は起きますか？」

ウイルスを含んだ体液などが微粒子となって空気中を漂い、それを吸入することで感染する感染経路は「エアロゾル感染」と呼ばれます。
サル痘でエアロゾル感染が起きたという報告はありませんが、起きたとしてもかなり限定的であると思われます。

「他のウイルスと重複して感染することはありますか？」

サル痘では、水痘との重複感染が起きることが知られています。
ただ、水痘との重複感染が重症度や致死率にどのくらい影響しているかについては、はっきりとはわかっていません。
まだまだ調査が必要な状況です。