NATO(アメリカ)がロシアと戦争して絶対に勝てない理由⑵

マーク・スレボダ/ ザ・リアル・ポリティック

Western Wonder Weapons Too Fragile for Ukrainian Battlefield
/The Real Politick with Mark Sleboda (全訳)
①はい、マーク・スレボダです。ザ・リアル・ポリティックの時間です。西側から支援された「すばらしいハイテク兵器」のおかげで、この数ヶ月間、ウクライナ軍が休みなくトラブっていたことがわかりました。
②東ウクライナで展開されているのは、一両のハウイッザーから一日に何百発も撃つ事が要求される極度に激しい砲撃戦です。ところが西側支援の「すばらしいハイテク兵器」がその厳しい条件に耐えられないことがわかってきました。
❶強度が十分でない。
❷金属疲労や摩耗が原因ですぐに壊れてしまう。
③ウクライナ地上軍後方支援部司令官ヴロドミアー・カーペンコは、
「西側支援の兵器は休むことなく壊れ続けている。その度に修理が必要になる」と不満をこぼしました。

※Vladmir Karpenko
④アメリカ合衆国製(イギリス製)M triple 7ハウイッザーはキエフ政権の軍隊の主要兵器になっていますが、連続射撃をするとすぐに「花開いて」しまうというのです。カーペンコはそれを「砲身前方があたかも高価な蘭の花が開くように『花開いて』しまう(破裂してしまう)」と描写しました。
⑤M triple 7はかなりの部分に鉄の代わりにチタン合金を使っています。理論的には、軽量化することで射撃後の迅速な移動が可能となることを狙ったものでしたが、しかし、耐久性の面で問題の多い製品であることがわかりました。
⑥ウクライナの副防衛大臣デニス・シャラポフによると、
「最初の砲撃戦を戦った後、新品の三両に一両の割合で修理しなければならない。そのために現場から運び出されなければならない」という惨状だそうです。

※ Denys Sharapov
⑦アメリカ合衆国国防省ミサイル防衛局は、
「西側からキエフに寄付された約350両のハウイッザーのうち、三両に一両がいつ故障してもおかしくない状況にある」ことを認めています。
⑧同様に、評価の高いことで知られているドイツ製Panzer Haubitze2000は キエフ政権に寄付されてからわずか1ヶ月後、22両で修理が必要になっていることがわかりました。この情報はドイツ国防省高官の発表なので間違いありません。一日に100発撃つのが限界でそれ以上は撃てないそうです。
⑨同じような苦情はアメリカ合衆国制M109やイタリア製FH70、フランス製Ceasar 自走砲についても寄せられています。小規模な部隊に各国ブランドがそれぞれごった煮状態で配備されている状況は、もちろん、故障や不具合が起きた時は大きな問題になります。ウクライナの現場で修理できないからです。
⑪ローディング・メカニズム、異なる砲弾を持つので扱いはそれぞれ別個に習得する必要があり、相当の時間とトレーニングが要求される事になります。結局、それらの「すばらしいハイテク兵器」が壊れる度に西側の修理センターに搬送する必要があり、そこで修理・メンテナンスを受けなければなりません。
⑫それらの修理センターは主にポーランド、スロヴァキア、ドイツにありますが、そこで修理を受けた後、ロシア軍の猛攻をかいくぐって再びウクライナの戦場に戻って来るまでに数ヶ月を要します。問題はそれだけではありません。
⑬155mm砲弾などのスタンダードな砲弾の、いわゆるNATOスタンダード(規格)が思ったよりも規格化されていないことがわかったのです。
⑭Royal United Services Institute (英国王立防衛安全保障研究所)は、「NATOスタンダードは思ったよりもスタンダード化されていない。それぞれの国によりメインテナンスの仕方が全く異なるだけでなく充電やヒューズも異なり、シェルが異なる場合もある」と報告しています。
⑮十分な訓練を受けていない現場のウクライナ兵が切羽詰まって、合わない砲弾を無理やり詰め込んだ結果、暴発して大惨事になったと報告されています。
⑯対照的に、ロシア軍が使用している兵器は(かつてはウクライナ軍も使用していた兵器ですが)、作りがはるかにシンプルで、しかも頑丈にできています。そして不具合が生じたときはいつでも現場で簡単に修理できます。
⑰ロイヤル・インスティチュート・オブ・アーマメントのジャック・ワトリンは「各国間の互換性の無さが、急速にロジスティックの上でウクライナ軍の悪夢になりつつある」と警鐘を鳴らしています。
⑱バッテリー1個でさえ異なるトレーニングと異なるロジスティック・システムが要求される。それが命取りになっているのです。つまり西側の「すばらしいハイテク兵器」はあまりにも脆くて、そしてあまりにも素晴らしすぎて、ウクライナの極度に厳しい戦場の現実には耐えきれないのです。

(了)
⑲オリジナル動画:
⑳解説:昭和を舞台にした映画やドラマを見ていると、かつて日本の家庭には通称・黒電話と呼ばれるイエ電話があったことがわかります。今でもレトロ博物館に行くと実物を見ることができますが、手に取るとずっしりと重くてしかも非常に頑丈な作りになっています。ほとんど絶対に壊れません。
㉑湿気の多い、非常に悪い環境条件において故障した場合でも、ドライバーとハンダさえあれば部品を交換して直すことができたそうです。今、イエ電話自体が消えつつありますが、今あるそのイエ電話は重さが黒電話の1/4ほどもなく、作りがいかにもチャチです。
㉒さらに故障すると、まず「直す」という発想それ自体がなくて、新品に買い替えることを勧められます。その方が安いからです。電話機に限らず、電気製品はほとんどすべからず「直す」発想から「買い換える」へと移行しました。
㉓そのきっかけは、薄い極めて平滑なシリコンの小板の表面に微細な電子回路をプリントする技術が発明されたことでした。極小の空間に極大の情報を搭載できるこの画期的技術のおかげで、今まで不可能だったたくさんのことが可能になりました。
㉔インターネットで世界中の人々と友だちになることができるのもこの技術のおかげです。反対に、この小さな半導体が全てを決定する問題そのものになり、他の部分はどうでもいいヤスづくりになっていったのです。そして「直す」より「買い換える」方がずっと「合理的に」なったのです。
㉕その結果、膨大な「省エネ」製品を無限に作り無限に捨て続けなければならなくなり、資源を食い荒らし、地球をゴミだらけにするという新しい問題が生まれました。戦争もそのために起こります。また、技術の極端な中央集権化が生まれて、町の電気屋さんたちを駆逐していったのです。
㉖「実用性」より何よりも、その新技術が利潤の追求に最も合致していたことがそのトレンドを駆るメイン・エンジンでした。そして、今、その「利潤追求」を最大の目的とした西側のハイテク技術が、「実用性追求」を最大の目的としたロシアのロー・テク技術に負けているというのです。
㉗なんとも考えさせられる話ではありませんか?

マーク・スレボダを紹介するのは、この3月にThe Grayzone (Red line)のAnya Parampilのインタビュー以来です。今、あの記事を読み返しても、彼は完全に本質を理解していたと思います。
㉘暗殺されたダーリャ・ブギーナさんの父で哲学者のアレクサンドル・ブーギン先生とはモスクワ州立大学の同僚であり、ダーリャさんとは親しい友人でした。29歳の若さで散ったその命と才能を深く悼んでいました。

※Александр Дугин и Дарья Дугина
⑬The Realpolitickは辛口で情報量が多くて、客観的でユーモアに富んでいて、大変役に立ちます。皆さんにも試聴することをお勧めします。

(了)🙂

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