全面核戦争へ秒読み開始 1/2

「私が間違っていると、どうぞ証明してください」スコット・リッター

Scott Ritter "Prove me wrong”/ Diane Sare

※残念ですが、私の限られた翻訳の時間の関係からスコット・リッターの発言部分(0:00~15:04)のみの全訳になります。
①スコット・リッター:このフォーラムに招いてくれてありがとうございます。私はダイアンの合唱団が演奏するワグナー(モーツアルト)の『レクイエム』を聴いて、胸を打たれました。私は、ダイアンのようなクラシック音楽愛好家ではありません。
②スコット:私は労働者階級の家に育ち、労働者階級的な音楽環境の下で育ちました。しかし、現在、私たちが直面している核戦争の危機を端的に表現していると思う音楽を私はここで紹介できます。 Johnny Cashの ”The man comes around”という曲です。実際に死の床から歌ったような凄みがあります。
③スコット:そのオントロの歌詞から。

“And I heard a voice in the midst of the four beasts
And I looked, and behold, a pale(white) horse
And his name, that sat on him, was Death
And Hell followed with him”
④スコット:四匹の獣に囲まれ、私は一つの声を聞いた。
私は目を凝らして、それを見つめた。私がそこに見たものは一頭の蒼ざめた馬であった。
それに跨る者の名を「死」という。
地獄が彼の後に付き従う。(TSSP訳)

Johnny Cash-The_Man_Comes Around
:
⑤スコット:まさにこれこそが、私たちが今いる世界です。私たちはここで遠い未を話しているのではありません。ここから見える直近の未来図は地獄のような地上の有様です。こうして私たちが話をしている間にも「死」が青ざめた馬にまたがっているのです。

※アルブレヒト・デューラー/黙示録の四騎士
⑥スコット:もし、あなたがまだその事に気づかないのなら、あなたはそのまま喜び勇んでその深淵へと向かうのです。ヘルガが話したアルマゲドン、水爆核戦争の深淵へと向かうのです。私たちは今、文字通り水爆核戦争の瀬戸際にいます。
⑦スコット:人々が現在の危機をキューバ危機になぞらえるのを私は何度も聞きました。ここでキューバ危機について少し語らせてください。
a: その当時、私はまだ赤ん坊だったので直接的にそれを経験したわけではありません。 
b: William Polkは私の良き友人でした。
⑧スコット:彼は、キューバ危機の最中、文字通りケネディの隣にいてアドバイスしていた人物です。彼はミサイル危機を避ける方法を知っていました。それは外交でした。外交という名の非常に伝統的なやり方でした。
⑨スコット:アメリカ人はロシア人と話し合い、ロシア人はアメリカ人と話し合うというごく当たり前のやり方でした。表立って交渉することが政治的に困難な時でさえ、陰でちゃんとバック・チャンネルが用意されていました。

William R. Polk
⑩スコット:それが成功したことを、アメリカ合衆国大統領J.F.Kとソビエト共産党書記長フルシチョフの二人が現実の歴史の中で証明しました。ところが現在の私たちは話し合いをしません。
⑪スコット:確かに、情報局がアンカラなどでTED’s meetingを開催したり、世界中でいろいろな会議を催したりしますが、どれも交渉とは程遠いものです。私たちはただでさえ極度に緊張した状況にあるのに、その緊張を緩和する基本的メカニズムを失っているのです。
⑫スコット:今日の世界には、米露間の緊張を緩和するための外交的交流がどこにもありません。つまり現在の核戦争危機は、キューバ危機の時よりもずっと深刻なのです。そして、人々がその事実を自覚していない事が危機をいっそう深刻なものにしています。
⑬スコット:今日、私は中米ロシア大使アナトリー・アントノフと昼食を取る機会を得ました。彼は現在の状況を大変嘆いていました。あなた方は私がロシア人と一緒に昼食をとったことを非難しますか?私は全く気にしません。

Anatoly Antonov
⑭スコット:彼こそはバラク・オバマ政権当時に交渉の席にいて、新STAR(New Strategic Arms Reduction Treaty)条約を成立させた人物です。米露間で今日唯一存在する武器削減条約を成立させた人物です。彼こそがロシア側の代表でした。
⑮スコット:つまり、彼に匹敵する偉大な業績を成し遂げた人物は今のワシントンのどこを探してもいません。誰一人としてアナトリー・アントノフが成し遂げた業績の足元にも及びません。その彼を現在のアメリカは「※金の鳥籠」に閉じ込めているという有様です。

※外見は豪華だが自由のない生活の比喩
⑯スコット:アメリカでは誰も彼と会話することが許されません。誰も彼を交流しようとしません。ですから彼はアメリカで完全に孤絶状態にあります。今日、彼はアメリカ国務省高官について話をしました。というのも、今日は偶然、INF(中距離核戦力全廃条約)調印35周年記念日だったからです。
⑰スコット:そして、私自身もINF履行に際し、重要な役割を果たすことができました。あれは1987年12月に調印され、1988年7月から実施されました。その調印と実施に関係尽力したOB・OGの集まりが実はアメリカにもあります。
⑱スコット:その中にアメリカ合衆国国務省の高官もいますが、オフレコを条件にされているので私はその人の名前をここで明かすことができません。しかし、彼が語ったことをここで引用することはできるでしょう。
⑲スコット:今日、彼は私に「現在のアメリカ合衆国国務省内で、アメリカの核兵器政策について何も話すことができない。まったく金輪際、何も話すことができない」と嘆いたのです。核兵器関連の事、核関連企業の事は何をおいてもアメリカ合衆国国務省が、最優勢です。
⑳スコット:ところが、全廃条約交渉を含む核関連事業の全てにおいて責任を持つそのアメリカ合衆国国務省内でそれを話題にできないのです。私がなぜここでこの話を持ち出したかと言うと、アントノフ氏によると、「非常に悲しいことに、今日、二国間の真空を埋めるものが何一つ存在しない」からです。
㉑スコット:今日では、交渉経験・能力をロシア側から期待することさえできません。なぜなら、交渉の経験・能力は日頃から常に磨いていないと、退化してなくなってしまう性質のものだからです。長い間、放置されていたためにロシア側の交渉係の能力もアメリカ同様に退化して消えてしまいました。
㉒スコット:つまり世界最大の核保有国がここに二つあります。核兵器を管理しやがて全廃を達成するよう期待されている同じ人々の現実が、核兵器を国家安全保障の道具としてもっと使いやすくするように最新アップデートするのに日々忙しいという有様です。紳士淑女の皆さん、これは文字通りの狂気です。
㉓スコット:これは狂気の定義にぴったりと当てはまるものです。これほどまでに「地球的規模の自殺」にピッタリ来る例を、私は他に思い浮かべることができません。誰一人として核兵器全廃を語らない。全廃を語る代わりに全ての人が核兵器開発競争について熱ぽく語っています。
㉔スコット:核兵器について率直に言えば、実はロシアはもうアメリカのずっと先に行っています。アメリカの22倍は先に行っています。ロシアには新しいミサイルがあります。新しいミサイル・システムがあります。私たちのシステムは彼らの足元にも及びません。
㉕スコット:それについて誰かが私たちの素晴らしいアメリカ上院議員たちにプロとしてのヒントを見せてほしいです。ダイアナ、私は今すぐあなたに上院議員の一人になってもらい、彼らの耳に「正常さ」を囁いてほしいのです。今いる上院議員たちはどうでしょうか?
㉖スコット:ただ一人の例外もなく、全員がこの狂気に満ちたアメリカの核兵器政策を正しいと信じています。事実は、もし核戦争になれば、ロシアは間違いなくアメリカを全滅させるでしょう。それについては全く疑う余地がありません。
㉗スコット:ロシアが核兵器の最新アップデートを完成した時、アメリカも今持っているすべてのテクノロジーを結集すれば、こちらが被害を被ることなく、先制攻撃でロシアの中枢、コマンド・コントロール、全ての核兵器を殲滅できると真面目に信じていた時代がかつてアメリカにもありました。
㉘スコット:全地球規模で張り巡らされた私たちの弾道ミサイル防衛システムを使用すれば、ロシアの反撃を抑える事ができると信じたのです。スコット、全地球規模の防衛システムってどういう意味だ、ですって?それは単にポーランドやルーマニアだけでなく、文字通り全地球規模のネットワークの事です。
㉙スコット:全てのイージス級・デストロイヤー級弾道ミサイルを組み合わせた防衛システムを世界中に構築することで、私たちはロシアとの核戦争に勝利することができると信じたのです。
㉚スコット:ところが現実はどうかと言うと、ロシアは私たちのその戦略を単に無効にするだけでなく、私たちの息の根を止めることができるのです。ロシアはすでにそのシステムを持っています。持っているだけでなく、すでに配備を終えています。理論上の兵器ではなく、実用の兵器としてです。
㉛スコット:ですから、もし私たちが愚かにも、核の先制攻撃を開始したとしたら、「ああ、失敗した。私たちが間違っていた」と私たちが気づくよりも早く、ロシアは私たちを消滅させていることになるでしょう。それはあっという間の、瞬間の出来事でしょう。
㉜スコット:それにも関わらず、私たちは愚かにもいまだに「勝っている。勝っている」と思っているのです。残念でした。すでに私たちは終わっています。私たちはおしまいです。私たちは今でも核の近代化に数兆ドルのマネーを注ぎ込んでいます。
㉝スコット:そうすれば、ロシアに追いつくことができると思っているかのようです。不可能です。その理由を言いましょう。タネも仕掛けもありません。私たちが持っているすべての兵器、計画している全ての兵器は、この戦略を実行するためには全く不十分なのです。役に立ちません。
㉞スコット:ロシアはちっとも怖がりません。つまり、私たちの核戦略は実際には崩壊している。その上、交渉さえできない。私は『ペレストロイカが実現した核全廃の時代』という本を書きました。その本の中で、私はINF条約とINF条約成立の過程を書きました。
㉟スコット:あの時、冷戦時下の世界がどういう状況であったかを描きました。1980年代の世界は極端に危険な状況にあったのです。ある意味で、今より危険な状況であったことは間違いありません。しかし、あの時、私たちはお互いに「話し合う」ということを知っていたのです。
㊱スコット:交渉する事を知っており、問題解決のために実際に毎日のようにお互いの顔を合わせて交渉を繰り返していました。そして、本当にINFという奇跡を実現しました。なぜなら交渉に当たった人々は本当のベテランたちだったからです。彼らはこのビジネスに長い間関わってきたベテランたちでした。
㊲スコット:彼らは過去に1960年代と1970年代にSTAR(第一次武器削減条約)を成立させた経験を持つ人々でした。交渉を通じて誰にも不可能に思えた事を現実に可能にした人々でした。それによってアメリカとソビエト(ロシア)の共存が約束されたのです。ところがいったい何が起こったのでしょう。
㊳スコット:2019年、アメリカがそのINFから脱退したのです。それに先駆け、すでに2002年にはアメリカはABM条約を脱退していました。そしてオープン・スカイ条約からも離脱しました。重要な条約という条約から脱退しました。
㊴スコット:最後に残っている新STAR条約では、アメリカは日常レベルでインチキを繰り返しているという有様です。今、私たちにどんな希望が残されていると言うのでしょうか?
㊵スコット:ヘルガ、あなたは交渉の必要性について語りました。いったい、どうすればロシアがアメリカ合衆国との交渉の席についてくれるというのでしょうか?私たちは病的な嘘つきです。人を騙すことに少しも躊躇いを感じない詐欺師です。信用に値しません。
㊶スコット:しかも、ヨーロッパをその詐欺の道具に使いました。ですからフランスもドイツも信用できません。もう誰も信用できません。
㊷スコット:国連の安全保障理事会も信用できません。なぜなら、ミンスク合意が安全保障理事会に提出された時、安全保障理事会認証の公印が与えられましたが、そこには「口封じ」以外に何の意味もありませんでした。今、ロシアにいったい誰と話し合えというのでしょうか?
㊸スコット:ロシアが話し合いたいと思える相手とは誰ですか?ロシアが一緒に交渉の席につきたいと思える相手とは誰ですか?ロシアにその生存権の放棄を含め、全てをテーブルに乗せて嘘つきと交渉しろというのですか?
㊹スコット:交渉の中で西側アメリカ合衆国や安全保障理事会が担保として提出できるものが何かありますか?何もありません。今となっては問題解決の道は一つしかありません。言葉にするのも悲しいことですが、もうどこにも交渉の道はありません。
㊺スコット:ヘルガ、もしできるものならばバチカンに交渉の仲介者になってほしいと思います。できるものならやってほしいと本当に願います。ヘルガ、私の言っていることが間違っていると証明してください。私はあなたにそれを証明してほしいと思います。
㊻スコット:あなたに実際に実現可能な具体的な交渉のプラットフォームを示してほしいと思います。ロシアはもう誰とも交渉しないでしょう。戦場で全ても決するでしょう。今、ロシアが求めているものは圧倒的勝利です。
㊼スコット:もし、交渉の最後の可能性があるとしたら、それは1945年9月、東京湾の戦艦ミズーリ号艦上で交わされた交渉に似たものになるでしょう。敗北した日本政府に対し、この無条件降伏文書に署名するか、さもなくは「死」かを迫った交渉です。
㊽スコット:最後の交渉では、ロシアが同じように敗北したウクライナ政府に対し、この無条件降伏文書に署名するか、さもなくば「死」かを迫ることになるでしょう。
㊾スコット:その会場のカーテンの影に隠れて、やはり敗北したNATOがもはやレパードもブラッドリーも無くなった惨めなNATOがこっそりその様子を見ている事でしょう。なぜなら、ロシアがその圧倒的な軍事力でその生存上の権利を行使したからです。この戦争の基本にはロシアの生存上の危機がありました。
㊿スコット:ですから、ロシアにとって敗北は絶対に許されません。一方で、この戦争でNATOやアメリカに生存上の危機はありません。唯一の答えは、せめてNATOが潔く敗北を認めることです。ディラン・トーマスの詩にこういうのがあります。

※Dylan Thomas
51. スコット:

「NATOは優しく「おやすみなさい」と言って、静かに眠りにつくだろうか?
それとも、どこまでも往生際悪く「消えゆく光」に逆らい続けるだろうか?
それが問題だ」

※Do not go gentle into that good night (オリジナル):poets.org/poem/do-not-go…
52. スコット:私たち全員にとって大変不幸なことに、NATOに優しく「おやすみなさい」を言う気配は微塵もありません。私が言うのを楽しみしてきた結論をここで言いましょうか。紳士淑女の皆さん、2023年は私たちが地球上で生きていられる最後の年になるでしょう。
53. スコット:あなたの愛する人にサヨナラと言ってください。2023年、新年早々から憂鬱な話をしてすみませんでした。ヘルガ、ダイアン、スティーブ、デニス、私が間違っていると、どうぞ証明してください。
54. (了)

全面核戦争へ秒読み開始2/2

「私は、西側政府だけでなく、西側の人々一般に希望を失いました」
に続く。

※Noel Gallagher - The Dying of the Light:
55. オリジナル動画:

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