シーモア・ハーシュ:このようにして、アメリカはノード・ストリーム・パイプラインを破壊した。

Seymour Hersh: How America
Took Out The Nord Stream
Pipeline
February 8, 2023 (全訳) 1/2 Image
ニューヨークタイムズは「事件」をただ”ミステリー”とだけ呼んだ。しかし、真相はアメリカが行った秘密海洋オペレーションだった。そして秘密は保持され続けた - たった今、この瞬間が訪れるまで。

シーモア・ハーシュ/Substack Image
①第一章:ノード・ストリーム

アメリカ合衆国海軍潜水浚渫センター(The U.S. Navy’s Diving and Salvage Center)の所在地について、その名前と同様にここで明確に述べることができない。
②ただ、それはかつてパナマ・シティ郊外の鄙びた田舎道をずっと下っていった先端に位置していたが、今は華やかなリゾート地:フライパンの柄のように突き出したフロリダ半島南西、アラバマ州境から70マイルほど下った場所に変わったとだけ言っておこう。
③センターの建物についても、その所在地同様に、ここで詳らかに述べることができない。
④ただ燻んだ面白みのない、第二次世界大戦後築のコンクリート製建築構造物で、例えばシカゴ・ウエスト・サイドの職業訓練高校のような外見をしており、さらにもう一つ付け加えるなら、4車線道路を挟んだ向かい側にはコインランドリーとダンス学校がある。
⑤センターは何十年にもわたって、高度専門技術を持つ深水域ダイバーたちを養成してきた。彼らはその高い技術と能力の故に世界各地のアメリカ軍ユニットに派遣され、もちろん良い事も、たとえばC4爆薬を使った港湾や海水浴場の清掃、瓦礫や不発爆弾などの処理などをやってきた。
⑥しかし、もちろん悪いこともたくさんやってきた。例えば、外国の石油掘削装置を爆破したり、海底発電所の取水口を汚物で詰まらせたり、重要な船積み出荷用運河の水門を破壊したりした。
⑦ちなみにパナマ・シティ・センターは全米第二の巨大な屋内プールを持つことで有名だが、そこは最高の人材をリクルートできる完璧な場所である。
⑧そして、そのダイビングスクールの最も口の硬い卒業生たちが去年の夏、バルト海、水深260フィートのある場所で、アメリカ政府のある秘密の公務を見事に成功させたのだった。
⑨去年の6月、バルト海で”BALTOS22”の名で知られるNATO恒例真夏の軍事大演習が行われていた最中、彼らはそれを隠れ蓑にして密かに大量の遠隔起爆装置付き爆薬を仕掛けたのだった。
⑩つまり、それから3ヶ月後、ノード・ストリーム・パイプライン4本のうち3本を破壊する事になる爆薬であった。その作戦計画に直接関わっていたある匿名ソースは私にそう語ってくれた。
⑪4本のパイプラインのうちの2本:それを合わせてノード・ストリーム 1(Nord Stream 1)と呼んでいる。これはすでに10年以上にわたって、主にドイツと西ヨーロッパの主要な地域に安くて豊富なロシアの天然ガスを供給しづけてきた実績を持つ。
⑫他の2本を合わせてノード・ストリーム 2と呼ぶが、これは既に工事が完成しているものの未操業の状態だった。
⑬ロシアの大軍がウクライナ国境に集結し、1945年以来、最も凄惨な戦争勃発の可能性がヨーロッパで不気味に頭をもたげていた時、ジョセフ・バイデン大統領(President Joseph Biden)は、

Joseph Biden Image
⑭それをウラディミール・プーチン(Vladimir Putin)が天然ガスを武器に自身の政治的・領土的野望を達成しようとしており、パイプラインがそのための格好の道具になっていると解釈したのだった。

Vladimir Putin Image
⑮ホワイトハウス・スポークスマンのエイドリエン・ワトソン(Adrienne Watson)にe-メールでコメントを求めたところ、早速「これはデマです。全くの作り話です」という返事が返ってきた。

Adrienne Watson Image
⑯同じく、CIAスポークスマンのタミー・ソープ(Tammy Thorp )も「この主張は完璧にそして全くのデマです」という似たような返事を返して来た。

Tammy Thorp(R) Image
⑰バイデンの「パイプライン破壊の決断」は、それに先立つ9ヶ月間の、ワシントン国家安全保障委員会(Washington’s national security community) 内で何度も何度も繰り返し極秘裏に行われた「目的を達成するベストな方法」を求めての議論の末に遂にもたらされたものだった。
⑱しかしながら、その9ヶ月の時間は、作戦を実行すべきか否かの議論ではなく、どうやって証拠を残さず、したがって誰の犯行かわからないように成功させるかという議論に費やされたのだった。
⑲なぜ、作戦実行はパナマ・シティ・ダイビング・スクール卒業生たちの手に託されなければならなかったのだろうか。その理由について、実はそこには非常に重要な官僚・行政機構上の理由があった。
⑳つまり、ダイバーは海軍のみで編成されていなければならず、そこにはただ一人のアメリカ陸軍特殊部隊(America’s Speial Forces Command)のメンバーも混じってはならない。
㉑行政法上、彼らの極秘任務はつぶさにアメリカ合衆国下院、それに先立ってアメリカ合衆国上院のいわゆる「8人のギャング(Gang of Eight)」として知られるSenate and House leadershipに報告する義務があるからだ。

Gang of Eight Image
㉒バイデン政権は2021年後半から2022年最初の数ヶ月間の計画立案期に、秘密漏洩に結びつく一切の可能性を避けるためにでき得るすべての努力をしていた事になる。
㉓バイデン大統領と彼の外交政策チーム、国家安全保障アドバイザー(National Security Adviser )のジェイク・サリバン(Jake Sullivan)、国務長官(Secretary of State )のアントニー・ブリンケン(Tony Blinken)、

Jake Sullivan         Tony Blinken ImageImage
㉔そして政策担当国務次官(Undersecretary of State for Policy)のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は、口頭でその二つのパイプラインに対する憎しみをいっときも止むことなく赤ら様にしてきた。

Victoria Nuland Image
㉕その二つのパイプラインは仲良く寄り添う兄弟のようにバルト海海底750マイルを走り、ロシア北東部はエストニア国境に近い二つの異なる港から、デンマークのボーンホルム(Bornholm)島を掠め、北ドイツに至るノード・ストリーム・パイプラインであった。

Nord Stream        Bornholm island ImageImageImage
㉖ウクライナを経由しない、その新規直結ルートはドイツ経済に大きな恩恵をもたらした。それによってドイツ工業界はロシアの豊富で安い天然ガスで工場を効率よく利益ハイリターンで操業することができたし、ドイツの各家庭は余裕で家を暖めることができた。
㉗さらにドイツは豊富な余剰ガスを西ヨーロッパ全域に安価に転売することができたし、それは西ヨーロッパ全域の利益でもあった。
㉘ノード・ストリーム破壊工作の秘密が漏れる事は、ロシアとの直接紛争を避けると言い続けてきたバイデン政権の公約への直接の違約を意味する。従って秘密は絶対に漏れてはならないのだった。
㉙ノード・ストリーム 1はその最初期から、ワシントンとそのアンチ・ロシアNATO同盟(Washington and its anti-Russian NATO partners)にとって「西側支配」を脅かす脅威と見做されてきた。
㉚ノード・ストリームAG(Nord Stream AG)は、プーチンの厳しい監視下にあるオルガルヒたちが経営するガスプロム(Gazprom)とのパートナーシップにより2005年にスイスで設立されたホールディング・カンパニーであり、両者ともパイプラインから莫大な利益を上げていた。

Nord Stream AG Image
㉛ Gazpromはヨーロッパの4つのエネルギー会社(一つはフランス、もう一つはオランダ、他の二つはドイツにある)の49%の株を支配すると同時にNordStream AGの51%の株を支配していた。

Gazprom Image
㉜また、余剰の安価な天然ガスをドイツと西ヨーロッパの地方小売業者たちに分配する権利を保持していた。Gazpromの利益はロシア政府と共有されているので、天然ガスと石油からの得られる国家歳入は数年後にはロシア国家予算の45%を占めるようになると見積もられていた。
㉝それゆえ、ノード・ストリーム2が成功すれば、

❶近い将来、プーチンは現在の膨大な国家歳入をさらに倍化するようになるだろう
❷ドイツと西ヨーロッパは安価で豊富なロシアの天然ガス中毒になるだろう
❸アメリカへの依存度は低下してしまうだろう
㉞といったアメリカの政治的懸念はあながち根拠なき杞憂とばかりは言えなかったのである。
㉟そして、それは現実的に進行していた。多くのドイツ人は、すでにノード・ストリーム 1を元ドイツ首相ウィリー・ブランツ(Willy Brandt)の有名な理論:ドイツ東方政策(Ostpolitik theory)の現実的な政策の一つに見立てていた。

Willy Brandt(L) Image
㊱ノード・ストリームによってドイツは第二次世界大戦で荒廃した自国に本当の意味で尊厳ある回復をもたらすだろうし、またロシアの安価な天然ガスを西ヨーロッパの全体で活用することで貿易全体を活性化できるだろうとドイツ人は考えていた。
㊲ノード・ストリームは西ヨーロッパのすべての国が恩恵を受ける大事業だったのである。
㊳反対にNATO・ワシントンから見れば、ノード・ストリーム 1単独でさえたいへん危険なのに、さらにそこにノード・ストリーム 2が加われば(工事は既に2021年9月に完成していた)、そしてそれをドイツ議会が承認すれば、ドイツと西ヨーロッパに供給される安価なロシアの天然ガスは二倍になってしまう。
㊴ノード・ストリーム 2の操業はドイツの天然ガス年間消費量の50%以上を賄うことになるだろう。するとアメリカのヨーロッパ支配は覚束ないものとなるだろう。こうしてバイデン政権の攻撃的外交政策に煽られて、ロシアとNATOの間の緊張はますます高まっていったのだった。
㊵アメリカでノード・ストリーム 2への赤裸々な反対の火の手が上がったのは、バイデン政権就任演説の前夜だった。
㊶アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)の国務省長官就任決定の場で、テキサス州選出上院議員テッド・クルーズ(Ted Cruz of Texas)率いる共和党上院議員団がロシア産天然ガスの脅威を声高に言い立てのだった。

Ted Cruz Image
㊷すでにその時までに、結束した上院議員団は、クルーズとブリンケン提出の「パイプライン 2を操業させない法」を通過させていた。
㊸それは当時、ノード・ストリーム 2計画を進行させていたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)前ドイツ首相とドイツ政府に凄まじい経済的圧力をかけるだろう。そしてドイツは激しく抵抗するだろう。

Angela Merkel Image
㊹バイデンはドイツに強制したのだろうか?その質問にブリンケンは「イエス!」と答えた。しかし、来るべきバイデン新政権の具体的政策について彼はまだ議論されていないと付け加えた。
㊺「しかしながら、バイデン大統領がノード・ストリーム 2は『非常に悪いアイデア』だと強く認識していることだけは確かだ」とブリンケンは言った。
㊻「私たちの大統領は、ノード・ストリーム 2を操業させないようにドイツを含む私たちの友人・パートナーたちを説得するためのあらゆる手段を講じるだろうと私は確信する」と彼は言った。
㊼それから数ヶ月後、パイプライン2の建設がほとんど完成していた時、突然、バイデンが(政策実行について)尻込みし始めた。あの5月、それは思いがけない事態の好転だった。
㊽経済制裁を前面に押し出した外交には勝算の見込みがないと国務省が悟ったことで、政権はNord Stream AGへの制裁を撤回しさえしたのだった。
㊾舞台裏では新政権の高官たちが、ロシアによるウクライナ侵略の危機の高まりに直面して、ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキー(Ukrainian President Volodymyr Zelensky)に「その動きを批判するな」と指示していたと伝えられる。

Volodymyr Zelensky Image
㊿しかし結果は即刻、鋭い反発となって返ってきた。クルーズ率いる共和党上院議員団がバイデン政権推薦の外交政策候補者リストと防衛費予算案を全拒否し、それを秋まで続けると言い渡したのだった。
51. こうして「揺るぎない決定」として打ち出されたバイデンのノード・ストリーム 2政策への彼自身の突然の寝返りは「突然のアフガニスタン撤退以上に混乱を極め、バイデン政策への信頼性を根本から損なった」と、後にPoliticoが書いている。
52. 11月中旬、ドイツのエネルギー規制官たちがノード・ストリーム 2に対して一時停止措置を決め、アメリカとの緊張緩和を試みたにもかかわらず、バイデン政権の機嫌は少しも治らなかった。
53. 数日のうちに、天然ガスの価格は8%も上昇し、この操業停止措置とロシア・ウクライナ戦争勃発の可能性の高まりが、ドイツとヨーロッパに求めざる「寒い冬」をもたらすのではないかという不安を人々の中に募らせていった。
54. 新しくドイツ首相に就任したオルアフ・ショルツ(Olaf Scholz)のワシントン向けの政治的立ち位置はその時、まだ明確ではなかった。

Olaf Scholz Image
55. 実際、数ヶ月前までの、カーブル陥落直後の頃のショルツはフランス大統領エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron )の有名なプラハでのスピーチ「ヨーロッパの自立:ワシントンとその気まぐれな政策転換にもう振り回されない」を公に支持し、称揚さえしていたのだった。

Emmanuel Macron Image
56. その間も、ウクライナ国境のロシア軍兵力は日増しに増大し続け、12月の終わりには100,000人を超えていた。ロシア軍はベラルーシとクリミアの両方向からいつでも侵攻できる戦闘ポジションについていたのである。
57. ワシントンの危機感は否が応にも高まっていった。ブリンケンは「ロシア軍兵力はあっという間に倍増できるだろう」と評価していた。
58. こうしてバイデン政権の関心は再びノード・ストリームに集中していった。ヨーロッパがそのパイプラインが供給する安価で豊富な天然ガスに依存する限り、ドイツと西ヨーロッパ諸国は、戦争勃発後のウクライナへの資金及び武器提供に躊躇するだろうと、ワシントンは恐れていたのである。
59. バイデンがジェイク・サリバンに各省庁間から選りすぐりの精鋭を集めて、ある一つの計画のための特別立案グループ(an interagency group)結成を下名したのは、まさにこの不安な瞬間においてだった。

あらゆる選択肢が机上に挙げられるはずだったが、実際に浮上したのはたった一つの計画だった。
60. 第二章:計画

ロシアの最初の戦車隊がウクライナ侵攻を開始する2ヶ月前の2021年12月、ジェイク・サリバンはアメリカ統合参謀本部(the Joint Chiefs of Staff)、CIA、財務省(the State and Treasury Department)各省庁から選りすぐった精鋭たちで構成された、
61. その特別任務グループ会議、第一回を招集し、プーチンの来るべき侵略にいかに対処すべきか、新メンバーに意見を求めた。
62. それはそれから何度もくり返される事になる、この最重要極秘会議の記念すべき第一回目会議だった。
63. それはホワイトハウスに隣接するアイゼンハワー行政府ビル(the Old Executive Office Building)、それは大統領情報活動諮問会議(President’s Foreign Intelligence Advisory Board (PFIAB))の本部でもある、その建物のセキュリティが保証された最上階の一室で執り行われた。

PFIAB Image
64. そこでは、あらかじめ与えられた重要な質問:この特別チームから大統領宛に転送される勧告-例えば、現在すでに課されている制裁に加えて新たにさらなる制裁のワン・セットを課する-は引き返し可能なものだろうか?あるいはもう引き返すことはできないものなのだろうか?
65. それは動的アクション、つまり取り消し可能なものだろうか?-に対する応答が盛んに取り交わされた。
66. このプロセスに直接関わっていた、ある情報筋によると、すべての参加者にとって明らかな一つの前提が示されていたという。それは、ジェイク・サリバンが参加者たちに求めているただ一つの事は、ノード・ストリーム・パイプライン破壊の計画の立案であるという事だった。
67. そして、それこそが大統領の求めるものであり、我々はそれに応えなければならないと、そこでジェイク・サリバンは何度も強調するのだった。
68. 続く数回の会議を通して、参加者たちは「攻撃」の具体的方法について話を煮詰めていった。海軍からの参加者は、潜水艦を使って直接パイプラインを攻撃する任務を新たに許可してくださいと言った。
69. 空軍からの参加者は、後から遠隔で起爆できる時限装置付きの爆弾を飛行機で投下するという案を持ち出した。CIAは、どんな方法を採用するにせよ、それは極秘で行われなければならないと主張した。
70. いずれにせよ、この計画に関与することで生じる相当なリスクを参加者全員が理解していた。「それは火遊びで済む問題ではありませんでした」と、その情報筋は私に語った。
71. 「万が一にも、攻撃がアメリカ合衆国の犯行であると分かった場合、それは明確な戦争行為(an act of war)になるからです」と彼(彼女)は言った。
72. その時、CIA長官を務めていたのはウィリアム・バーンズ(William Burnsは現在も現役)であった。バーンズは温厚な外交官として知られ、オバマ政権下で副国務長官であり、ロシア駐在アメリカ大使でもあった人物である。

William Burns Image
73. CIAの現役長官であるバーンズは話が持ち上がると速やかに、この任務を遂行するための一つの特別チームをCIA内で組織した。そのチームのメンバーには、偶然、パナマ・シティの海軍深海域ダイバー養成所に精通した一人の人物が含まれていた。
74. さらに続く数週間のうちに、そのCIA特別チームは深海域ダイバーたちを使ってパイプラインに遠隔装置付き爆薬を仕掛けて破壊する秘密作戦の具体化に取り組み始めていた。
75. これとよく似た事件が実は以前にもあった。1971年、アメリカン・インテリジェンス・コミュニティ(American intelligence community)が未公開の情報源から学んだことは、ロシア極東海岸オホーツク海に埋設されたロシアの二つの重要なコミュニケーション用ケーブル・システムのことである。
76. ケーブルはある海軍の地域指揮系統とウラジオストック(Vladivostok)のロシア本土本部を繋ぐ極めて重要なものであった。

Vladivostok ImageImage
77. あの時、ワシントン地区のある秘密の場所にCIAとNSAから選り抜きの工作員たちが極秘裏に集められ、海軍のダイバーと改良潜水艦と救援用深海潜水艦を使った一つの計画を作成し、数多くの試行錯誤を経た末に、そのロシアのケーブルの位置を特定することに成功したのだった。
78. ダイバーたちはケーブルに精巧な盗聴装置を仕掛け、ロシアの情報の流れを傍受し、録音することに成功したのである。
79. NSAは、ロシア海軍の将校たちのおしゃべりが暗号化されることなく無防備なままケーブルの中を行き交っているのを捕らえた。
80. 録音装置と録音テープは数ヶ月ごとに回収・交換され、そのプロジェクトはそれから10年間、44歳のシビリアンでロシア語の流暢なNSA技術士ロナルド・ペルトン(Ronald Pelton)がロシア側に暴露するまでそのまま続けられた。

Ronald Pelton Image
81. ペルトンは1985年、ある亡命ロシア人の密告により、国家重大機密漏洩で有罪となり禁固刑に処されることになった。ペルトンがその作戦の情報提供でそのロシア人たちから得た報酬はわずか5,000ドルに過ぎなかった。
82. ペルトンがその他のロシアの作戦データを提供することによって得た報酬は全部で35,000ドルであったが、データの内容は公開されていない。
83. コード名:Ivy Bellsと呼ばれたその海中作戦は極めて革新的であると同時に危険でもあり、しかし、ロシア海軍の意図と計画について計り知れない価値のある情報をアメリカにもたらすこととなった。
84. しかしながら、その各省庁間選りすぐりメンバーで構成された特別チームはやはり最初はそのCIAの秘密深海攻撃作戦の真面目さについて疑いを持っていた。答えられない疑問があまりにも多くありすぎた。バルト海のその水域はロシア海軍が常時厳重に監視する水域であった。
85. さらにダイビング作戦を偽装するために便利な石油掘削装置も近辺にはなかった。任務を遂行するために、ダイバーたちはロシアの天然ガス積み込み基地のあるエストニア国境まで行く必要があるだろうか?「そうなったら、もう手に負えない!」と、そのCIA計画立案者はなじられた。
86. 「この事業計画立案の全過程を通して」と、その情報筋は私に言った。「CIAと国務省の働き者たちは『やるな!あまりにもバカげている。万一、明るみに出たら、アメリカにとって取り返しのつかない政治的悪夢になるぞ!』と言っていました」と言った。
87. それにも関わらず、すでに2022年の早い時期には、そのCIA特別チームはジェイク・サリバンのチームに「我々にはパイプラインを爆破する方法がある」と言うレポートを返送していた。
88. さて驚きついでに、次に来るビックリはなんだろう?2月7日、ロシア軍のウクライナ侵攻まで運命の3週間を切っていた時、バイデンはホワイトハウスでドイツ首相オルアフ・シュルツに会ったのだった。
89. いくつか迷いの道を行き来した挙句、この時のシュルツはもう完全にアメリカン・チームに取り込まれていた。
90. そしてそれに続く記者会見で、バイデンはいささかも臆する様子もなく「仮にロシアが侵攻した時は、もうノード・ストリーム 2に未来はない。我々はそれに終止符を打つ。我々はその手段を持っている」と述べたのだった。 ImageImage
91. それに遡ること20日前、政策担当国務次官ビクトリア・ヌーランドが実はバイデンと全く同じメッセージを国務省記者会見で述べていたのだった。「私は今日集まっている皆さんの前でそれを明らかにしたいと思います」と彼女は質問に答えて言った。
92. 「もしロシアがウクライナに侵攻したなら、ノード・ストリーム 2が操業に向かって前進することはありません」と言った。 ImageImage
93. パイプライン破壊作戦に関わったメンバーの何人かが、実は、その作戦に批判的だったことが、彼らの作戦への間接的な言及からも見てとれる。
94. ❶「それは東京の地下に核爆弾を埋めて、『これからソレを爆発させる』と日本人に向かって言うようなものだ」
95. ❷「その計画を実行するか否かについては、(ロシアの)侵攻後に改めて熟考すべきだったし、(たとえ暗示的であれ)絶対に口にすべきではなかった。口にしたバイデンはそれを理解していなかったか、あるいは意図的に無視したのだ」
96. 計画の存在を漏らしたバイデンとヌーランドの軽率さが、慎重な計画関与者の何人かを非常に苛立たせた。しかし、同時にある者を勇気づけもしたのである。
97. その情報筋が語るところによると、それを聞いたCIAの上級将校の何人かは「むしろ何があってもパイプラインを爆破しなくてはならない」と決意したそうである。「何と言っても、大統領がそれを公に発表したのだから、我々はもう前進するしかないのだ。」と彼らはうなづきあったと言う。
98. ノード・ストリーム1および2爆破計画は、議会に報告義務のある秘密作戦から、アメリカ軍と情報局の共同極秘作戦に突然、格下げされた。「その法律では」とその情報筋は説明した。
99. 「そうすれば、もう議会に報告する義務はなくなりますから。あとはただ実行するのみです。もちろん、秘密は守られなければなりません。ロシアはバルト海にこの上ない、最上級の監視システムを展開していますから」と言った。
100. 「特殊実行グループのメンバーは、ホワイトハウスとの直接のコンタクトを持っていませんでした。ですから、大統領の発言の本当の意図を知りたがっていました。本当に、それは『やれ!』という意味なのか?」とその情報筋は当時を感慨深く振り返るのだった。
101. 「ホワイトハウスから戻ってきた私たちのボス、ウィリアム・バーンズが私たちに向かって言いました。

『やれ!実行だ!』」
102. シーモア・ハーシュ:このようにして、アメリカはノード・ストリーム・パイプラインを破壊した。

Seymour Hersh: How America
Took Out The Nord Stream
Pipeline
February 8, 2023 (全訳) 2/2へ続く

オリジナル記事:seymourhersh.substack.com/p/how-america-…
103. 解説:日本のメディアで、シーモア・ハーシュのこの記事について報道したメディアはいますか?
日本の政治家の中で、この記事について国会で質問した政治家はいますか?🤔

(了)
🤔🙏

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