旧河川道に街を作っているんだね。日本で言えば、河原に街を作っているようなもの。これで洪水がおこるのは、山地の保水事業を怠っていた証拠。ダムや堤防はどうなっていたのかが大事。
今回のドイツ西部の洪水は、山地からの支流が平野部に出てきたところで起きている。日本だとこの程度の洪水は日常茶飯事だから、堤防を大きく作って、その中は住まない。治水を舐めていたとしか思えません。これで炭酸ガスを減らせなど言い始めたら、頭がおかしい。
河川は平坦地では頻繁に経路を変えます。これはミシシッピ川の1944年現在と過去の河川経路の地図。長期を考えれば潜在的に『川』になる可能性があるところ(要するに洪水の氾濫原)は、河川の5倍10倍くらい広い。何にもしなければ、旧河川道は氾濫して何の不思議もない。
日本で治水が大問題であるのは当然で、戦国時代から大規模な河川改修が始まり、有名なものだと信玄堤があります。大阪の例だと古来からあるのは、上町台地、つまり大阪城のところだけで、大和川は江戸期に付け替え、淀川は明治に巨大な新淀川の放水路を作っています。
これは、1993年のミシシッピ川の氾濫。今回のドイツの氾濫と同じくイリノイ川、ミズーリ川、ミシシッピ川が合流する手前の地点です。よく見ると、洪水は昔の河川道を通っていることが分かります。
この場所は、ミズーリ州セントルイス郊外です。なぜ、こんなところにセントルイスという大都市ができたのかは、まさにイリノイ川、ミズーリ川、ミシシッピ川があるからなんです。これは、米国の地理の面白いところ。
米国の特徴は、巨大な中西部がミシシッピ川とその支流の川の流域で、物流が行えたこと。開拓時代には道路は当然ありませんから、川、この場合はまさしく、ミシシッピ川、イリノイ川、ミズーリ川が『道路』だったわけです。だから、3つの川が合流するセントルイスは物流拠点だった。
これを知っていると、ミネソタ州セントポール、カンザス州カンザスシティ、ミシシッピ州ニューオーリーンズが、なぜ都市になるのか分かります。ちなみに、シカゴは五大湖による物流拠点で、イリノイ川とも連結します。
同様なことは、サンフランシスコが都市になった理由でもあります。サンフランシスコはサンフランシスコ湾の入り口で、物流拠点でもあり、その内海を『道路』として使えたからです。カリフォルニアの『中西部』はサクラメント川流域で、水と平地の要る大規模な農業地帯になっています。
サクラメント川を遡って船で行ける終点が、カリフォルニア州都のサクラメント。これは、ニューヨークなら、ハドソン川の終点が州都のオーバニーなことと同じです。
こういう仕組みだと、雨が降れば必ず水害が起こるので、支流にダムを作って、流量を調整し、洪水が起こらないようにします。農業地帯を守るために、サクラメント流域のほぼすべての支流にダムが作られています。
ドイツの洪水の話に戻りますが、河川は氾濫するのが当たり前。人間が努力してダムと堤防を作り、危険な場所に住まないようにして、安全な環境を作っているのです。洪水が嫌なら、治水するしかない。炭酸ガスを減らして局所の洪水が変わると考えるのは、単なる狂信です。
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