"Hypersonic Transport"で画像検索してみる…なるほど。
「角断面胴体、クサビ型」のHSTたち。
「丸断面、流線型」のHSTたち。
JAXAのPDFには、無人実験機(Hycruise)の4次発展計画とされる有人型は丸胴体で描かれていて、最終目標の旅客機型は平たい胴体のウエーブライダー型で描かれている。
飛行機の胴体を丸断面にするのは、貨物や旅客の搭載効率が良くない。直径が小さくなるほどに窓側席の圧迫感が強くなるし、床下には中途半端な容積ができる。画像はジェット旅客機としては最小クラスのエンブラエルERJ145。それでも丸断面にするのは与圧に有利だから。(もっと有利なのは球形だ)
セスナ208キャラバンの胴体断面。与圧の必要がなければ胴体を四角断面にでき、四角胴体だと空間の利用効率が高いことがよくわかる。
ビジネスジェット普及以前には自家用機として最速クラスを誇ったけれど、インテリアの狭さと機内騒音の大きさは不評だった三菱MU-2。概寸はセスナ・キャラバンと同クラスなのだけど、丸断面のため天井の圧迫感が強くなっている。
理想的な耐圧形状は球だけど、旅客機は容積利用効率との相克があって、円筒の前後を半球型の与圧隔壁で塞いだ「繭型」になっている。いわゆるボンベの形状。
スペースシャトル・オービターの乗員与圧区画。コクピット窓の段差を含む機首の前後を平板の隔壁で塞いだ独特な形状になっている。カドの部分には応力が集中して疲労が進行しやすいので避けるべきとされるのだけど、旅客機みたいに数十年間に十数万回の繰り返し負荷に耐えなくて良いから?
HSTでも機内容積の利用効率(≒客席空間の快適性)と与圧繰り返し負荷耐久性の相克は問題になるはずだけど、いま出ている想像図は「アーティストの人、そこまで考えてないと思うよ」だろう。
上に挙げた「クサビ型」と「流線型」のHST想像図は、あえてクサビ型は窓なし・流線型は窓ありの図を選んだ。「窓をどうするか」というのも課題。正直いって窓は耐圧構造の天敵というか悪夢。窓がミシン目のようになって胴体を切り裂いたアロハ航空243便事故(1988)という前例もある。
ロッキードC-5ギャラクシー輸送機には後部胴体の貨物室天井の上に客室が付いているけれど、窓は無い。しかも座席は「後ろ向き」に付いている。不時着したときの人体への衝撃はシートベルトで受け止める前向きよりも、背もたれで受け止める後ろ向きのほうが少なくなる。
C-5の客室は軍用機だから許される設計で、旅客機でこれをやったら何を言われるかわかったもんじゃない。旅客機の運行時間に占める加減速は自動車や列車に比べれば非常に少ないし、窓外を見てる客なんて数パーセントしかいないけれど、それとこれとは別の問題で、商業商品に顧客心理は重要だ。
余談になるが日本に住んでいた90年代、釣り仲間が持っていたフォード・タウルスのワゴンには後ろ向きの折りたたみシートがあって、一度ここに座って山道を走ったことがある。30分も保たずに猛烈な車酔いでギブアップした。加減速の多い乗り物に後ろ向きシートはよくない。
「キャプテン・スカーレット」の追跡戦闘車SPVも対弾性と対衝撃性からシートは後ろ向きで、TVモニターを見ながら運転する設定になっている。スペクトラムの隊員はよほど乗り物酔いに強いのだろう。
窓と与圧はみんなだいすき全翼旅客機(BWB)でも問題になる。BWBの場合はついでに「どうやって旅客ターミナルから乗り降りするんだ?」「陸上・水上それぞれの不時着脱出経路はどうするんだ?」問題も付いてくる。
旅客機の窓には乗客の心理(閉塞感からの解放)の他にも、事故発生時に機内電源が全損しても機内が暗闇にならなくなる役目もある。外が暗夜の場合でも機外で火災が起きているか(安全に脱出できるか)を確認できる。窓のないC-5の客室にも、非常脱出口にだけは窓が付けられているのはそれが理由。
飛行機とロケットの中間みたいなHSTでも、逆噴射しないかぎり何が起きても目的地まで飛ぶ弾道飛行とは違うので、やっぱり緊急不時着の可能性はあるはず。構造屋にとって人間なんて脆弱で注文の多いペイロードは嫌だろうけど、それをクリアしないと商業旅客運行はできない。
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