ってなわけで、毎回金の話ばっかしている。
今最も世知辛いファンタジー(当社比)
「剣と魔法の税金対策@ COMIC」最新話更新です!
今回登場の転売屋・・・もとい商人のマルカールは、作者の蒼井ひな太さんデザインということで、まさかのトップ絵w
sunday-webry.com/episode/327037…
今回の見所ポイントとして様々ございますが、個人的に推したいのは、「色々含むところのあるクゥの表情」です。
役所関係はなんでこうああもういちいち手続きが面倒なのか・・・w
ぶっちゃけた話、はんこ一つ押すにしても、役所に三回訪れて証明書出して、書類郵送して返送して、実際に現地に訪れてとしなければならない事態もあり、「ハンコ廃止!」を訴える人たちの気持ちも、正直わからんでもないです。廃止でなくても、せめてもうちょっとなんとかならんかと・・・
まぁこの「手続きの簡略化」実は、日本の税制度の基本方針の一つです。
「あれで!?」と思うかもですが、「これでも」です。
実は戦前に比べればだいぶマシになってんですよ。
「簡便かつ公正に」とした、ある人物によって、日本の税制度ってかなり変わったんですね。
その人物というのが、カール・シャウプ。
戦後世界に絶大な影響を与えた人物で、彼が率いる税制使節団は別名「シャウプ使節団」と呼ばれ、戦後日本の復興のために来日し。
現代日本の税制度の基礎を作った人物と言えます。
「疾風の勇人」にも出ていましたね。
税制度が国の財政の基礎。それを改革することこそが日本の復興の第一。同時に、占領国である状態故に、通常の国家では難しいスピーディーな改革を行えることで、戦勝国でも問題化されていた既存税制度の問題点を洗い出すためでもありました。
要は、いい意味で「実験場」だったといえます。
税金というのは、一度決めたら廃止するのはなかなか難しいもので、それを覆すに足るだけの根拠は、やはり「前例」なのです。その前例を作るため、最新の経済学も基づいた税制度を日本に敷こうとしたのですね。
シャウプ博士の「勧告」は、GHQすら従わせる強さがありました(シャウプ勧告)。
この中でシャウプが徹底的に洗い出したのが、「複雑な税制度ならびに税手続き」でした。とにかく戦前の日本、「間接税」というのが多かったんですね。
もろもろの戦争などの戦費の「財源確保」名目で、増やしすぎたんです。
今では存在しませんが、昔は「売薬税」や「醤油税」なんてのもありました。
「ゴールデンカムイ」でもちょっと語られていましたが、「酒税」の税収だけで日清戦争の戦費になるうくらい徴税していたそうです。
まぁそれでも、そもそも大日本帝国前の、徳川幕府の段階で、経済政策が行き詰まっていて、例え黒船が来なくとも、一種の政府の「デフォルト」が発生し、崩壊していたとも考えられます。
実際、江戸時代よりはるかに経済が発展していなかった鎌倉時代でさえ、「借金の帳消し」である徳政令を発動しまくったせいで、鎌倉幕府は命脈を縮めました。
実際、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、後の執権浮上泰時が困窮する領民たちの借金をチャラにし、善性を見せましたが、それを二代将軍頼通に責められます。
一見すると頼通が悪に見えますが。
経済の基本である金融取引の約束を、幕府の強権の下で一方的にご破算にするというのは、それも十分問題で、繰り返せば信用取引がなりたたなくなるのです。
この場合、頼家の方が正しかったりシます。
半ば追い詰められ行った泰時の「徳」が、遠き日の果ての幕府崩壊の第一歩を暗示していたんですね。
徳川幕府は鎌倉幕府に比べればまだ税制度の近代化に努めたほうですが、それでも基本は「年貢」制度です。
要は「支配した土地に応じた負担」という考え方です。
これは逆に言えばそれ以外のものに課税する概念が薄かったといえます。
わかりやすく言えば、法人税や所得税や住民税がなかったんです。
江戸期の、幕府どころか、諸大名が「商人に借金をしまくっていた」と語られますが、あれは実質法人税です。
法人税を「借金」としてたんだから、そら破綻します。
そもそもが「年貢」を「財源」としていたところで、幕府の落日は時間の問題だったと言えましょう。
そも、現在と異なり「金本位制」であったとはいえ、国費としての徴税だけをしていたのですから、行き詰まらない方がおかしいんですね。
江戸期、日本はいわゆる「鎖国制度」下だったので、海外との交易交流を大きく制限していたからこそ成り立ったところもあるんですが、それでも問題に気づき、改革を行おうとした者もいました、有名所では田沼意次などですね。
日本史上、五指に入る「経済チート」な田沼意次ですが、その構想の中には、現在における「中央銀行」もあったというので驚きです。
ですが悲しいかな、あまりに彼のレベルは同時代人と異なりすぎ、「賄賂政治家」としか認識されませんでした。
同レベルの政治家がいなかった結果、自分一代、もしくは自分の家が権勢を持っているうちに改革を進めようとし、時に強引とも取れる手法を行使した結果、息子意知の暗殺をきっかけにその地位を奪われることになります。
ちなみに、意知を殺した佐野政信の動機は、ぶっちゃけ、「もともと格下だった田沼が自分より出世したのを妬んで」です。色々言われますが、結局はそれです。
しかも、親父の意次を殺せなかったので、比較的警備の浅かった息子を狙ったんです。
まぁ、そういう人です。
ただ上述のように、意次の経済政策は、同時代の人々がついていけないレベルだったので、「賄賂政治家の田沼親子をやっつけた義士」と持ち上げられ、「世直し大明神」と讃えられたそうです。
田沼意次の評価については現在も揺れていますが、少なくとも佐野政信に関しては、「ただのバカ」です。
やや話がそれた・・・
とまぁ、こんな感じでボロボロだった旧幕府時代の経済事情。新政府は大慌てで改革と新制度設計に携わることになります。
そこらへんは、昨年の大河ドラマなどでも描かれましたね。
新政府が導入した中で大きかったんは、先程も語りました「酒税」です。江戸時代にも一応課税はしていたのですが、正直大規模なものではなく、いろいろ実用が難しかったこともあり、大々的には行っていませんでした。
これらを一本化し、整理して作りなおします。
古代より酒税に近いものは存在しましたが、どちらかというと、「兵糧に使える米を、嗜好品である酒に変えることを制限する」ためのものでもありました。
これを施行した一人には、三国志の王の一人、劉備玄徳もいたりします。
「税金を上げることで、飲酒量を減らし、生産を制限。限られた米を有効利用する」という作戦ですが、ほとんど上手くいかず、大抵は「始めたがすぐに止める」の繰り返しだったそうです。大概モグリの酒屋が現れる。
飲酒法時代のアメリカを思い出しますな。
近代の酒税はその逆で、「やめろつってもやめないってことは、安定した財源になるってことじゃねぇか」という発想だったわけです。古代と比べて、嗜好品に生産を回せる余裕が出来たことも大きいですが、一時日本の酒税は税収の1位になったほどです。
ところがこれが時代が下がるに連れて、形を変えていきます。
先程言ったように、酒は「食べられる米を嗜好品に変える」とも言えます。
その点を利用し、戦費確保のため、酒税は凄まじい勢いで上がっていきます。
「我慢できるものなのに、好きで呑んでいるのだから税金をかけられて当然」という、酒飲みのを悪にし、罪悪感と懲罰感を背景に、酒税は上げられていき、結果として比較的税金が軽かったビールが人気になるという奇妙な現象まで起こります。
ちなみに近代酒税とそれ以前の酒税の大きな違いは、近大前が酒屋の「営業税」であったのに対し、近代酒税は「酒」そのものに課税した点です。
どういうことかってぇと、要は「許可なく(税金を納めず)酒を作れば密造酒になる」といううことです。
昔は結構自分ちで酒を作ってたんですよ。
どぶろくなんかそうですね。
映画「君の名は」でも「口喰み酒」とか出てきましたね。
「ハネムーン」の語源も、あれは「蜜のように甘い」ではなく、新婚家庭は蜂蜜酒を飲み交わす風習があったからです。
そういったものも、全部「密造酒」であり、違法とナッたわけですな。
なので、密造酒を作って逮捕された際は「酒税法違反」という罪名になるわけです。
まぁそれ以前の税金のかからない時代の人からしたら、「知った事か!」と、けっこう戦後までこっそりつくる人がいたそうですが、同様にこの酒税の増税によって、少しでも税金逃れをしようと「密造酒」や「混ぜものだらけの酒」が大量に生まれることになります。
中には飲用ではない工業用アルコールなどを薄めて作った、メチルアルコール(メタノール)を材料としたことから失明者が続出、「目散る」「バクダン」などと呼ばれたそうです。
こういった背景があるため、未だに「混ぜ物のない酒こそが正しい」という思考が生まれ、酒造メーカーとしては味の調整としてアルコールの添加は重要であるため、近年それらの復権運動が、酒造業界でも起こっていますね。flibra.net/sugoiaruten/
なんかエラい話がそれたな・・・とまぁ、そんな酒税ですが、上記のように、「高い担税能力があるにも関わらず、過剰に高額課税し続けたせいで、飲酒文化自体が破壊されかけている」状態となったのですね。
これらの是正に携わったのも、シャウプ博士です。
戻ってきた!
「酒は一般民衆の生活に不可欠なものであり、消費量が下がることはない」
「しかし、そこにつけこみ高率な税金をかければ、非課税の違法な酒に走らせてしまう」
「税金はかかるが、正規の酒を買うほうが安全だと、納得できる税率に下げるべきである」となり、戦後日本の税率は急速に下げられました。
シャウプ博士の功績の一つに挙げられるこの「酒税減税」ですが、このように、
「意味のない高税率化で、プラスよりマイナスの方が大きい税」や、「形骸化しており税収より徴税のコストが高い税」を次々と廃止、もしくは見直ししていったことで、総じて日本国民からの受けは良かったそうです。
ちなみに医療費控除(病気やケガの治療にかかったお金を無課税とする)などは、今では当たり前ですがこれもシャウプ博士の「シャウプ勧告」をもとに始まったものです。今でも、博士の理念は税制度の中に生きているんですね。
とまぁ、そんなシャウプ博士なのですが、「付加価値税の生みの親」的に語られる時もあります。
付加価値税とはなんぞや?と言うと、要は「消費税」です。
消費税の導入、ならびに増税においての根拠とされることも多かったりします。
そう聞くと「え・・・」って思うかもですが、さにあらずで、シャウプ自身は「間接税が増え過ぎれば問題」の立ち位置でした。というか、それ以前に「取引高税」というのがあったんですね、これが本当に「意味がないだけで徴税コストがかさみ、産業を圧迫する」ダメダメ税だったんです。
戦前の戦費確保のために作られた・・・というか、結果として「戦費を確保しろという軍部のプレッシャーの中で当時の大蔵省が言い訳がましく作った制度」にも等しく、これもまたシャウプ博士によって廃止となります。
だがその際に、
「こんなもの(取引高税)を残すくらいなら、付加価値税(消費税)を施行する方がマシだ」と主張。この後半部分だけが、ある意味呪いとなって生まれたのが現代日本式の「消費税」なんですね。
なので、税理士、もしくは経済学者の中には「日本の消費税は、日本の税制度の忌み子」と表する者もいます。
とまぁかようにこのほどなシャウプ博士。博士の残したものは、他にもけっこうあります。
例えば、今の若年層は知らないでしょうが、「長者番付」と言って、高額納税者の氏名と納税額を公開していました。これもシャウプ勧告の影響の一つです。
「高額納税者の氏名と納税額を公的に開示することで、社会に監視させる」という意味合いでもありました。
「おいおいおいアイツ入ってねぇぞ」や、
「こんな少ないわけないだろ」という監視の意味もありましたが、なくなりましたね。
表向きは「個人情報保護」だそうですが・・・
ちなみにこの長者番付、正確には高額納税者公示制度(現在の長者番付と呼ばれているのはあくまでマスコミや調査会社の独自のもの)で名前が出てきた意外な人が、ライトノベル作家の神坂一先生w
作家部門において94年頃に突如ベスト5に上がり、当時のマスコミはノーマークだったので混乱したそうですな。
あらためて、当時のスレイヤーズブームの凄まじさが伺えます。また同時に、「公的な影響力」を示すものでもあったので、ライトノベルの市場躍進の一つの要因になたという向きもあります。
まぁ他にもシャウプ博士いろいろ提案していて、
「納税の目標額を設定すんな、取ることが目的化するから」
「富裕税導入しろ、取るもんは取れ」
「間接税は増やすな、いいな? 間接税は増やすな」
「納税の公平さとは、税額や税率ではなく、それぞれの負担のことだ! 言わせんな恥ずかしい」
などなどがあったんですが・・・ここらへんはいろいろ理由を付けられ、廃止もしくは「改善」の名のもとに実行されず、そのくせなぜか、
「法人税は一定にとどめとけ」
だけはしっかり守られています・・・
まぁそんなこんなで長々語りました、税金のよもやま話、税金制度とは経済の根幹を担い、経済は社会の根幹にあります。
税金から見る世界の移り変わりというのも、なかなか奥が深いものだねという話でした。
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