久保山 尚 🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿のバズらせ特級出羽守 Profile picture
🇬🇧🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿から政治や社会情勢に関する正確な情報を発信します。エディンバラ大学PhD(歴史学)。本職はビジネス業界で政策研究と企業支援のお仕事。現地でたまにテレビやラジオに出演。家族は🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿妻、5歳👧3歳👦+😺。趣味は山登り。英語アカ@hisashikuboyama

Nov 6, 2024, 11 tweets

トランプ勝利の要因についていろいろ分析があるが、あまり日本語で論じられていない点でかつ個人的に重要と思ったのが、今回の選挙は「男対女」という構図があり、トランプ陣営の特に若年男性層をターゲットにした戦略が功を奏したというもの。日本の暇空茜/Colabo問題にも通底するかもしれない。1/11

別に紹介した金成氏の良記事で、民主党の変質によりラストベルトのブルーカラー労働者が民主党離れを起こしたことはよくわかるが、これは2016年の選挙ですでに起こったことでもあるため、今回は何が違うのか調べていると、トランプ陣営が2020年の敗戦後からアプローチを変えたことがわかってきた。2/11

その頃から2024年を念頭にトランプ陣営はトランプをスポーツや総合格闘技UFC等の会場に出向かせ、若年男性層へのアピールと「マッチョ」なトランプというイメージ作りを始めた。陣営は大統領選を左右する激戦諸州で、若年男性層が有権者の11%を占めることに注目、その取り込みを図ったわけだ。3/11

若年男性層は選挙で投票率が低く(大統領選でも3-4割)、政治に興味があるわけでもなく、支援が期待しにくいグループで、従来はキャンペーンのターゲットになりにくかった。だがトランプ陣営はその分伸び代があると考え、その層にアピールするためのイメージ作りを戦略の柱の一つに添えたという。4/11

MeToo運動などにより若年男性層を巡る状況はここ10年ほどで激変した。加害者、既得権益の享受者としての側面を過度に強調されていると感じ、一方で女性について何か言うと女性差別と非難されることに嫌気をさしたこの層の一部が、各国で保守的な政治観を持つようになったことは割と知られている。5/11

🇺🇸ではそうした層はbro cultureと呼ばれる伝統的マッチョイズムを前面に押し出す文化に居場所を見出し、YouTubeやポッドキャストではそうしたチャンネルが大人気になった。来日して騒動を起こしたLogan Paulもそのひとつだ。他には登録者数1800万を誇るJoe Rogan Experience などがある。6/11

トランプはLogan PaulやJoe Roganのチャンネルに出演し、長時間のインタビューを行った。こういう長時間インタビューでは政治の話題だけではなく、人間としてのトランプとしての側面も語ることになるため、視聴者はよりトランプを身近に感じ、「面白いオヤジ」のように見なすようになったとされる。7/11

陣営はトランプの最大の魅力は予測不可能なところと考えている。2016年はその長所を存分押し出せたが2020年はコロナ禍もありうまくいかず、今回は台本無しの長時間インタビューを最高の舞台と考えトランプを積極的に出演させた。出演チャンネル選択には息子バロンのアドバイスが活かされたという。8/11

一方ハリス陣営は女性、LGBTQ、黒人等をターゲットに選挙戦に入ったが、女性という強みを活かし、女性の中絶権擁護などの論点を押し出して戦った。一方で男性層には支持は広がらず、若い視聴者の多いポッドキャストにも多く出演したが、トランプほどのインパクトを残すことはできなかった。9/11

実際の投票ではFox Newsの分析によると、トランプはヒスパニック系男性黒人男性間で大きく支持を伸ばし、30歳未満の男性では2020年に比べ14%も得票を伸ばした。これだけ票が動いた集団は他にはあまり見当たらない。NBCやITVを始め主要メディアもbro voteが重要な勝因の一つと分析している。10/11

イメージ転換とメディア活用で若年男性層に支持を広げたトランプ陣営の戦略は見事。一方でMeToo以降、男性であるだけで非難されると感じている層が存在し、反動としてマッチョイズムとフェミニズム攻撃に走る現状は決して好ましいものではない。行き着く先は分断しかないのだろうか。悩ましい。11/11

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