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Satoshi Ikeuchi 池内恵 @chutoislam
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メンバーたってあれ、京都在任中に、大阪本社のおじいさんの窓際っぽい論説委員が三顧の礼で依頼に来たから長幼の序で引き受けたんだが。当時売り出し中の稲田弁護士を入れたいところに、党派色を薄め学術的雰囲気高めるために入れられた数名の学者の中の若手枠と思しきところ。
永久欠番ならぬ永久メンバーらしくて、依頼の際に見せられたメンバーリストにはかなりの昔の人の名前も。私の微妙な顔を見て取った老論説委員が、「〜〜先生のお名前もあります。物故者ですが」。でもその先生、当時の私の所属先のボスのお父さんで、まだご存命だったよ!という全てが珍道中の想ひ出
…とまあ時折頓珍漢なこともありながらお引き受けしますとお返事した所、次の販売促進日(各戸に無料で紙面が差し込まれてくる)の一面に新規追加執筆陣の顔写真がドーンと。そしたら速攻で朝に電話かけて来たのが朝日新聞。ちょうどその年、大型連載コラムの依頼を受けていて、続
確か5名の執筆陣で半年だか1年だか毎週一回の外部執筆者によるコラムを回すという企画の、全体の第一回に若手を抜擢という話だった。すでに第一回の内容と構成について何度もメールでやり取りをしていた。朝の電話で担当記者は開口一番、続
…「今朝の産経見ましたか?」。見てはいた。と言っても産経から送って来ていたのでも事前に言われて見せられていたのでもなく、販促でうちのマンション全戸に差し込まれているようだったのでもの珍しくて広げて見ていた。
続きます。朝日新聞担当記者「今朝の産経見ましたか?」に続き、「どういうことなんですか!」ときた。私は、ここで一瞬の間に一息ついた。その一瞬はずいぶん長かったように感じられた。
一息つきながら全体状況を把握した上で、私は答えた。「見ましたよ。それで、何が悪いんですか」。朝日新聞担当記者が、グッと言葉に詰まるのを電話の向こうで感じた。
なおこれは15年近く前の話。2001年の9・11事件をきっかけに、学界の大勢と異なる議論をしていた私にも出版する機会が得られて数年間、闇雲に依頼に答えて書いている時期だった。朝日新聞担当記者としては私を大型コラム連載執筆陣に起用したのは大抜擢だっただろう。続
朝日新聞とは2002年の暮れに発表の第2回大佛次郎論壇賞の縁があった。これについてはSNSで書いたことがあるが、当時まだきつかった日本の序列意識を覆して、全く面識のない米国在住の高名な先生が強く推してくれたことで、下馬評を覆しての受賞だった。朝日新聞の内部では異論も多かっただろうが。
まあその賞の経緯自体朝日新聞の別の記者があけすけに話してくれたことなので。記者も、私が当時あまりにも経験のない若い人だったから多分会いにきて拍子抜けして色々喋ってくれたのだろう。そんな経緯も知っていたので、賞をくれたからといって朝日新聞と特に近いという感覚はなかった。
話を戻すと。ええと「どういうことなんですか?」「何が悪いんですか?」「グッ」からですね。
朝日新聞担当記者としては、「うちが賞を出して、うちがコラム連載陣に抜擢してやっているのに産経に描くとは何事かーー」ということなのだろう。しかし私としては、賞をもらったからといって特定の新聞社に従属する必要はないし、コラム連載を引き受けたからといって専属でもない。
何よりも、うちで使ってやっている書き手はライバルの新聞に出たらダメだというのは言論弾圧まがいである。まあいくら何でも産経の販促の日にドーンと一面でやられると担当記者の自分の社内での立場が、などということはあるのだろうが、それはあちらの話。こちらは筋を曲げられない。
何よりも、ここで引けば名折れである。こういう時は最初が肝心である。「どういうことですか?」に対して「何が悪いんですか」。こちらは何も悪くないのだからその原則を最初に示す。けしからんと連載コラムを取り消したりすれば(朝日新聞はそうできるが)朝日新聞の側が自ら新たな問題を作るだけ。
このことが一瞬で理解されたと見えて、朝日新聞担当記者は「グッ」となった。しばし沈黙とおざなりなやりとりの後、「これについては社内で検討します」と記者は電話を切った。
その後、丸一日ぐらいは時間があっただろうか。連絡があった。社内での検討の結果、若手大抜擢で大型連載コラムのトップバッターにという企画は取り消して、連載執筆陣の最後尾に降格する、と。本当ならクビだが、どうも私は屈するつもりがないらしいし、メールでこれまでのやりとりも残っている。
トップバッター抜擢→ラストバッター降格という解決策が何とも姑息だが、1日で、社内のどこでどのような議論がされたのだろうか。詳らかにはしないが、私の勘では、かなり上まで行っていますね。「身の程知らずな書き手を罰せ」論と「言論弾圧と非難されるのでは」論の折り合いをつける「降格」。
思い出すとこれは新年度の初頭で、4月第1週末の掲載予定が、5月の連休最終日ぐらいに遅らされたんでした。なお、例の「朝に電話で『どういうことなんですか!?』『何が悪いんですか』『グッ』」の担当記者は、1ヶ月の間に、なぜか信越方面の支局に異動になっていた。関係は不明。
信越方面は当時震災があったんですよね。応援要員が必要だったということはありそう。しかしなぜオピニオン面の編集者的な人を支局の災害対応の記者に引っこ抜くかね。
もし「更迭」だったなら、その理由が知りたい。「外部の書き手に、ライバル紙との関係を理由に圧力をかけた」が理由ならいいが、「担当筆者を産経に取られた挙句、圧力をかけるのに失敗して逆襲されてノコノコ戻ってきた」ことが「失態」なのだったら、どうなんでしょう。
仕切り直しということで新たに担当となったオピニオン欄のベテラン記者とはお会いすることもなかったが、毎回最新の動向と長期的な理論的考察を兼ね備えさせようとして遅れる原稿を、着実に受け止めて紙面に収めてくれた。
この連載が終わったら当分の間朝日新聞に書く機会はないだろうなと思っていたので、この新聞の読者に必要なことを伝えておくためにも、力を入れて書いた。しかし予想通りというか、予想を超えてというか、連載が終了したら本当にその後10年以上、朝日新聞から依頼なかったですね。鉄の組織。
大佛次郎論壇賞の性質もその後ずいぶん変わっていった。社論を露骨に反映し、社内官僚的な人たちに近い人たちの意向が色濃く反映されるようになった。最近少し戻りかけた気もするが、一時的な現象かもしれない。
まあおじいちゃん論説委員の泣き落としで引き受けさせておいて、お気に入りの稲田弁護士の起用の盛り立て役として新年度初日の1面に使う産経も産経だが、朝っぱらから騒いで威圧して屈従させようとする朝日も朝日だよね。みんな違ってみんなダメ。しかし若い時は舐められたら闘わないといけません。
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