小沢健二さんのracism＝人種主義≠人種差別という定義が物議を醸している件について、個人的な意見を以下に述べます。私は小沢健二さんの定義の方が、racismを人種差別(主義)とするより適切だと考えます。(人種差別主義と呼ぶのも決して的外れではないと思いますが) #ozkn
その理由は、レイシズムが直接的な差別の引き金となるのみならず、もっと広い文脈で、知らぬ間に人々の心に蔓延っている思想として問題視されるべきと思うからです。個人的な体験と最近読んだ本の話を続けます。
私は今ドイツ在住ですが、人口の少ない地域に住んでいる上、とても幸いな事に思慮深く優秀な人達に囲まれて仕事をさせてもらっているので、アジア人だからという理由で悪意を向けられたり損をした経験はかなり少ない方だと思います。それでも、「おや？」と思う発言にはしばしば遭遇します。
例えば、日本を極東の辺鄙な国のように扱われるとか。学会でアメリカに行った時、ヨーロピアンが日本人に向かって日本なんてよくそんな遠いところから…大変だったでしょう…！と言ってるのを見たり(ちなみに飛行機でドイツ–アメリカは10時間くらい、日本–アメリカは12時間くらい)
私自身は、ドイツは成熟したいい国でしょう〜！住めて超ラッキーね〜！と朗らかに言われたことがあります。文章で読むと相当アレな感じですが、実際に善良そうな人に柔らかく言われるとついスルーしてしまいます。小さい違和感こそ感じることはあれど、不快感を持つまでには至らないし、至れない。
これらの出来事で私は、精神的に著しく傷ついたわけでも、損をしたわけでもありません。差別だ！と言ってもいいかもしれないけど、うーん？という感じ。でも、この時感じた違和感の根本にあるは間違いなくracismです。そしてその延長線上に、差別被害は起こるのだと思います。
次に、特定の人が差別被害を受けていないことが明らかであるレイシズムの例として、最近読んだ人類史の本にあった話を。現在私達ヒトの起源がアフリカにあることを疑う人はまずいないと思いますが、その証拠が集まり始めた当初は著名な研究者すらその事実を認めるのに時間がかかったそうです。
なぜなら、アフリカは遅れた大陸だ、と研究者が信じていたから。英国で出土し人類の祖先だと報じられた頭蓋骨は、他の霊長類の骨をそれらしく組み合わせた捏造標本でした。人々は、かの大英帝国で見つかった標本なのだから、と騙されてしまった。(ヒトの進化七〇〇万年史、ちくま新書より)
この出来事は、日本人が思い描くところの差別とは少々事情が違うように見えます。そしてかつ、明らかにレイシズムという思想が影響しています。こういった事象を含める上で、レイシズムを人種主義と呼ぶことは有効であると思っています。
あと付け加えると、人種差別主義だと差別という単語に注目が集まってしまい、人種というもので人を分けていることへの問題提起性が弱まってしまいそうなのが気がかりです。
ナショナルジオグラフィックは過去の自分達のものの見方がレイシスト的であった歴史を認め、人種に関する記事をまとめて公開しています。その中で、人種という区切りに科学的根拠がないことを説明しています。nationalgeographic.com/magazine/2018/…
差別的かどうか以前に、人種で人をカテゴライズできるという幻想を信じてしまっていることがレイシズム、すなわち人種主義(およびその根本的問題)であると理解しています。もちろん、それによって今起きている差別や社会の歪みが最も大きな課題であることは間違いありません。
ただし、人種主義と書くと人種差別より穏便なものと捉えてしまう人がたくさんいるようで(これ、今回1番衝撃だった！)、状況によっては人種差別(主義)と言うのはアリというか、むしろ有効に働く場面も多そうです。でも私は最終的には、racism=人種主義というニュアンスで理解されて欲しいなと願います。
笑えるくらい長文になってしまった。全部読んでくれる人がいるのか分からないけれど、自分の中で整理できたから良かった。
I wrote my opinion about the definition/translation of racism in Japanese.
あ！人種差別主義＝問題の大きいトピック、人種主義＝問題の小さいトピックって解釈しちゃうのって、まさに人種というものがあると信じてしまっている、レイシズム的な考え方ですよね(書くの忘れてた)。日本にレイシズムがないなんて嘘だよ。 #ozkn #BLM
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