黒木玄 Gen Kuroki Profile picture
Mar 10, 2021 22 tweets 14 min read Read on X
#物理 #数楽 #Julia言語

バネで繋がった2つの質点の片方が自由な質点に弾性衝突する様子を数値計算で動画にしてみました。

衝突時に運動エネルギーがバネの振動エネルギーに移行し、非弾性衝突のようになります。

ソースコード↓
nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…
ううむ、上下にマージンを入れた方が良かったな。
#Julia言語 動画を全部作り直した。

ソースコード↓
nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…

丸の直径は質量の3乗根に比例しています。

添付動画では、左側から質量は 1, 1, 2 です。

真ん中の質点と右側の質点は弾性衝突しているのですが、バネにエネルギーが移動して、非弾性衝突っぽくなっています。
#Julia言語 赤いバネで繋がった質点の右の方の質量に割合を増やしたり減らしたりすると、色々面白いことが起こります。

左から質量が 0.002, 1,998, 2.000 の場合

ほぼ、弾性衝突になります。
#Julia言語

左から質量が 0.02, 1.98, 2.00 の場合

ほぼ弾性衝突なのですが、バネにほんの少しだけ運動エネルギーが移動している様子が見えます。
#Julia言語

左から質量が 1, 1, 2 の場合

衝突時にバネにエネルギーが移動しまくって、質点の動く速さが遅くなっている。

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…
#Julia言語

猫パンチ動画!

左から質量が 1.8, 0.2, 2.0 の場合

何度もネコパンチをあびせかけています。
#Julia言語

左から質量が 1.998, 0.002, 2.000 の場合

実際には超微小かつ超高速な猫パンチが発生しているはずなのですが、単に右側の質点がバネを押して互いに反発し合っているように見える。
#Julia言語

微分方程式は DifferentialEquations.jl で Yoshida6 という symplectic integrator を使って数値的に解いています。衝突も DifferentialEquations.jl で扱えます。

DifferentialEquations.jl は超便利!

数値解法を適切に選択しないとエネルギーが保存しなくなりました。 ImageImage
#Julia言語 たぶん、この例は DifferentialEquations.jl の基本的な使い方を知るために非常に良い例になっていると思います。

グラフのプロットや動画の作成まで全部やっている。

ソースコードへのリンクを再掲しておきます↓

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…
#Julia言語 高校で物理について勉強するときに、このスレッドで私が作って見せたような動画を自分で試行錯誤して作れれば、直観的な部分でもかなり理解が進むような気がします。

ただし、微分方程式の取り扱いが必須になる。
#Julia言語 DifferentialEquations.jlでは、微分方程式ではなく、ハミルトニアン函数を与えて正準方程式を数値的に解かせることもできます。デフォルトで沢山のsymplectic integratorsを使えます。 Image
#Julia言語

以下のリンク先の動画のように質点の弾性衝突が1回だけの場合の exact solution を求めるのは易しいです。しかし、複数回衝突する場合は面倒。

その様子を見たくて、DifferentialEquations.jl で数値的に解いてみました。かけた手間の大部分がプロット用コードの部分です。

色々満足!
#Julia言語 は以上のような話題について、「コンピュータを使って問題を解決する」というようなことに関する教育に非常に向いていると思います。

まずは高校や大学で普及するとよいと思います。

MIT周辺ではたぶんすでにそうなっている。

お気楽極楽で高速計算を楽しめる。
#物理 #数楽 #Julia言語

左から右に質点の質量の比を a : 1-a : 1 と書くとき、上から順に a の値は

0.01, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 0.99

です。バネで繋がった2つの質点の片方と自由な質点が弾性衝突しているが、全体的には被弾性衝突に見える。

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…
#物理 #数楽 #Julia言語

質点の表示の丸の直径は質量の3乗根に比例

質量比は a : 1-a : 1 で、上から順に
a = 0.01, 0.1, 0.2, …, 0.8, 0.9, 0.99

一番上の a = 0.01 はバネがない場合の弾性衝突とほぼ同じ。

a = 0.1, …, 0.5 では有効反発係数が単調に下がっている。

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…
#物理 #数楽 質点の衝突は弾性衝突と仮定しているので、最初の衝突時の「有効反発係数」e を得るためには、質量比 1-a : 1 の2つの質点が左右から同じ速さでやって来て弾性衝突をする場合を計算すればよいので、

e = (2 - 3a)/(2 - a) = 1 - 2a/(2 - a)

となることが分かります。 Image
#物理 #数楽 質点の質量比が a : 1-a : 1 の場合を扱っている。

aが0に近い場合には「左端の質点が無い場合」に近い結果になることは自明だと思う。

非自明で面白いのは 、a が1に近くて、バネの右側に繋がっている質点の質量が 0 に近い場合。添付画像は a=0.999 の場合。
#物理 #数楽 1つ前の動画の a=0.999 の動画では見えないのですが、バネに繋がった小さな質量の質点と右側からやって来た質点は弾性衝突を何度も繰り返しています。

以下の添付画像は a=0.9 の場合。

猫パンチのごとく、何度も衝突を繰り返していることがわかります。
#物理 #数楽 もう一度 a=0.999 の場合の動画を見てみましょう。

小さな赤い質点と青の質点が弾性衝突を繰り返しているようには見えず、青の質点が単にバネを押して反発しているように見える。

単にバネを押して反発する場合も数値解を求めてみました。(数値解にする必要は皆無だがあえてそうする。)
#物理 #数楽 #Julia言語

グラフの左側は「単にバネを押して反発する設定」で、右側は「バネの右端の微小な質点と右側から来る質点が弾性衝突する設定」(a=0.999)です。

真ん中の微小な質点を無視すればよく一致していることが分かります。

めでたしめでたし😊

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki… Image
#Julia言語 DifferentialEquations.jl

この動画が弾性衝突を扱っているとは普通思わないよな。

nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki…

• • •

Missing some Tweet in this thread? You can try to force a refresh
 

Keep Current with 黒木玄 Gen Kuroki

黒木玄 Gen Kuroki Profile picture

Stay in touch and get notified when new unrolls are available from this author!

Read all threads

This Thread may be Removed Anytime!

PDF

Twitter may remove this content at anytime! Save it as PDF for later use!

Try unrolling a thread yourself!

how to unroll video
  1. Follow @ThreadReaderApp to mention us!

  2. From a Twitter thread mention us with a keyword "unroll"
@threadreaderapp unroll

Practice here first or read more on our help page!

More from @genkuroki

Aug 29
#統計 サイコロを1万回ふってどの目の確率も1/6に近付くかを調べることについて、

「大数の法則」
「標本調査がどーして成り立つか」
「1万回も投じる必要がない」

と基本的なことを理解していない疑いがある発言をしているところにみんなもっとつっこみを入れるべきだと思いました。
Image
#統計 以下のリンク先の反応も理解していない側に分類されると私は思いました。

確率の計算をある程度できれば「1万回もしなくていい」と安易に言えないはずです。

例えば、試行回数n=10000、成功確率p=1/6の二項分布において、0.99np以下となる確率と1.01np以上となる確率を計算してみて下さい。 Image
#統計 こういう話題の場合には、仮にどの目が出る確率もぴったり1/6ならば、1万回サイコロをふってとき1の目が出た回数がk回以下になる確率やk回以上になる確率がどうなるかを具体的に計算してみた方がよいです。

確率の数値に関する直観を身につけることは難しいので、地道に計算してみるべき。
Read 11 tweets
Jun 13
#統計 いつも言っていることをそのまま書きます。長めのスレッドになります。

以下スクショによるスライドの引用は より。赤字と青字は私による書き込みコメント。

まず、p.12について。詳しい解説に続く。 speakerdeck.com/shuntaros/jia-…

Image
#統計 「違いがない」の型の帰無仮説のP値をnull P値と呼びます。

null P値は「違いは○○である」の型の仮説に関する無数のP値の特別な場合で、null P値へのこだわりは悪しきnullismである云々とGreenlandさんは言っています。

biostat.ucdavis.edu/sites/g/files/…
Image
#統計 平たく言えば、「違いがない」の型の帰無仮説を「null P値<α」という条件によって棄却して「違いはある」という結論を出すためにP値を単純に使うことはP値の誤用の典型例であり、科学のプロセスを害しています。

biostat.ucdavis.edu/sites/g/files/…
Image
Read 36 tweets
Jun 18, 2023
#統計 念の為のコメント

1️⃣「t検定の使用が適切なためには、母集団が正規分布に従っていることが必要である」という考え方は誤り。

2️⃣「Wilcoxonの順位和検定=Mann-WhitneyのU検定であれば、無条件使用は適切である」という考え方も誤り。

以上の誤りを信じている人達をよく見る。続く
#統計

1️⃣「t検定の使用が適切なためには、母集団が正規分布に従っていることが必要である」という考え方は誤り。

これについてはツイッター上で繰り返し非常に詳しく解説して来ました。

ツイログ検索

twilog.togetter.com/genkuroki/sear…
#統計

2️⃣「Wilcoxonの順位和検定=Mann-WhitneyのU検定であれば、無条件使用は適切である」という考え方も誤り。

これについてもツイッター上で繰り返し非常に詳しく解説して来ました。

ツイログ検索

twilog.togetter.com/genkuroki/sear…
Read 40 tweets
Jun 17, 2023
#数楽 ℤ[√2]やℤ[√3]はEuclid整域なのでPIDでUFDになるので、ℤ[√2]やℤ[√3]係数の多項式の √2や√3が出て来る因数分解の問題も既約元の積に分解する問題として意味を持ちます。続く
#数楽 ただし、整数dに関する√dが出て来る場合には、既約元の積への分解は因子の可逆元倍と順序の違いを無視しても一意的でなくなる場合が出て来ます。

実はそういうところに面白い数学が隠れている!
#数楽 整数の平方根が出て来る因数分解もちょっと話題になっていますが、その話はとてつもなく面白い数学の話に繋がっています!

中学生であっても思いつきそうな話の中にも素晴らしい数学が隠れています!
Read 20 tweets
Jun 16, 2023
東工大出身者のような理系の人達が、上野千鶴子が自閉症の母親原因説を唱えるくらい科学的に無能でかつ優しさに欠けた人物であることぐらいは知っておいた方が、我々の社会はよくなる可能性が高まると思います。

有名かつ有力になってしまった人物はたとえク○であっても無視できなくなる。
上野千鶴子は、自閉症の原因について母子密着説を唱えていたのですが、それが誤りであることが定説になっていることを指摘された後には、定説と上野千鶴子的なトンデモ説を平等に扱うという態度を取りました。

上野千鶴子の自分が苦しめた人達への態度は真にあきれるものでした。
上野千鶴子的な活動家は科学的無知と優しさに欠けた態度の両方の力を行使していました。

そういうことを許す伝統が現代においても人々の苦しみの源泉の1つになっているわけです。
Read 6 tweets
Jun 15, 2023
私は、環論を学ぶまで、重根もしくは重解の概念を十分に理解できた感じがしてなかったです。(代数)方程式の概念も同様。

実数体上の方程式x²=0は環

A = ℝ[x]/(x²)

で表現されます。これと方程式x=0に対応する環

ℝ[x]/(x)

は異なる。環論を使えば方程式x²=0とx=0を明瞭に区別できます。
環k上の環Aで表現された方程式のk上の環Bでの解集合はk上の環準同型全体の集合

Hom_{k-ring}(A, B)

で表現されます。例えば、集合として、

Hom_{ℝ-ring}(ℝ[x,y]/(x²+y²-1), ℝ) ≅ {(x,y)∈ℝ²|x²+y²=1}.
そして、以上のような代数方程式の表現になっている環の話について前もって知っておいた方が、環論の勉強はしやすいように思えます。
Read 6 tweets

Did Thread Reader help you today?

Support us! We are indie developers!


This site is made by just two indie developers on a laptop doing marketing, support and development! Read more about the story.

Become a Premium Member ($3/month or $30/year) and get exclusive features!

Become Premium

Don't want to be a Premium member but still want to support us?

Make a small donation by buying us coffee ($5) or help with server cost ($10)

Donate via Paypal

Or Donate anonymously using crypto!

Ethereum

0xfe58350B80634f60Fa6Dc149a72b4DFbc17D341E copy

Bitcoin

3ATGMxNzCUFzxpMCHL5sWSt4DVtS8UqXpi copy

Thank you for your support!

Follow Us!

:(