#Shax_nichigei_1207 こんにちは。これから「古典演劇研究II シェイクスピア」の授業を始めます。本日はシェイクスピア映画についてです。日芸の登録履修者の人はスライドを出してください。
#Shax_nichigei_1207 シェイクスピア映画については1コマで概説するのはちょっと難しいので、大変ざっくり説明します。今回だけではあまりカバーできていない分野ももちろんありますが、とりあえずシェイクスピア映画を見るための手がかりと思って聞いてください。
#Shax_nichigei_1207 シェイクスピアを原作とする映画はサイレント映画の時代から作られています。1944年にローレンス・オリヴィエが作った『ヘンリィ五世』がヒット作としては画期的でした。
#Shax_nichigei_1207 その後は1957年に黒澤明が作った『蜘蛛巣城』(『マクベス』の翻案)、1968年にフランコ・ゼフィレッリが作った『ロミオとジュリエット』、1993年にケネス・ブラナーが作った『から騒ぎ』などが定番になっています。
#Shax_nichigei_1207 1961年のミュージカル映画『ウエスト・サイド物語』をはじめとして大胆な翻案も多く、いわれないとシェイクスピアの翻案だとわからないようなものもあります。
#Shax_nichigei_1207 ここまでがプロローグで、このあとは「第1幕 シェイクスピア映画と技術的挑戦」「第2幕 新しいシェイクスピア映画とドラマ」「エピローグ これからのシェイクスピア映像化」となります。
#Shax_nichigei_1207 シェイクスピアは映画以前の時代から幻灯などに取り入れられていました。皆さんの中で幻灯を見たことがある人は少ないと思いますが、幻灯(マジックランタン)はガラスのスライドを映写するものです。
#Shax_nichigei_1207 台詞が聞こえないにもかかわらず、サイレントの時代からシェイクスピア劇は映画化されていました。ただ、同じく台詞がないものとしては、シェイクスピアの絵画化、バレエ化は昔から行われていましたのでそれを視野に入れる必要があります。
#Shax_nichigei_1207 衣装や役者の動きを見せるだけで台詞がなくてもわりとスペクタクルとしては成立するします。これまで文学作品の絵画化などで培った経験から綺麗な絵を撮って、さらに動かすということになるわけです。初期サイレント映画には演劇やダンスを撮ったものがわりとあります。
#Shax_nichigei_1207 これは世界初のシェイクスピア映画『ジョン王』(1899)です。全幕ではなく、とても短いものです。なぜか今はほとんど上演されない『ジョン王』の芝居を撮ったものが最初のシェイクスピア映画なんですよね。
#Shax_nichigei_1207 ヴィクトリア朝ではけっこう『ジョン王』は人気があってよく上演されたんですよ。豪華な見せ場があり、あとヴィクトリア朝のお客さん好みの母子ドラマがあるんですよね。映画の初期はまだヴィクトリア朝だというのは覚えておいて損はありません。
#Shax_nichigei_1207 いろいろ短いシェイクスピアの映画はあったのですが、モノクロの時代に入ってからは1929年にサム・テイラー監督が作った『じゃじゃ馬馴らし』が、初めての本格的なトーキーのシェイクスピア映画だと言われています。これは著作権が切れているので無料でYouTubeで見られます。
#Shax_nichigei_1207 この映画にはハリウッドスターだったメアリー・ピックフォードと夫のダグラス・フェアバンクスが出演していて、個人的見解ですが大変に面白いと思います。初めての本格的なトーキーシェイクスピア映画なのにこのクオリティなのは凄いと思っています。
#Shax_nichigei_1207 『じゃじゃ馬馴らし』の映画化なんですが、最後にとてもユーモアのきいたひねりがあり、メアリ・ピックフォードが演技でキャタリーナの「馴らされない」精神を示しているところはとても気の利いた演出です。
#Shax_nichigei_1207 英語字幕のあるYouTubeはこちらです。サイレントや極めて初期のトーキー映画は既にパブリックドメインにあってYouTubeで見られるものもわりとあります。サイレントなら字幕なくてもたいていの映画は理解できますよ!
#Shax_nichigei_1207 それから1935年にマックス・ラインハルト監督による『夏の夜の夢』が作られました。これはメンデルスゾーンの『夏の夜の夢』の音楽を使用したオールスターキャストの映画です。予告はこちら。 imdb.com/video/vi670286…
#Shax_nichigei_1207 この映画はモノクロなんですけど、モノクロっていうのは光と影を調整するために今のカラー映画とは全然違う色調を使うんです。この映画では妖精の森を不思議な感じで光らせるためにオレンジと茶色を使い、さらにメタリックな感じに塗装したらしいです。メタリックオレンジの森…
#Shax_nichigei_1207 この映画はあんまり当時はウケが良くなかったのですが、アンジェラ・カーターの小説『ワイズ・チルドレン』(1991)やケン・ラドウィッグの芝居『ハリウッドでシェイクスピアを』(2003)はこの映画の撮影を扱っています。
#Shax_nichigei_1207 カラーの時代に入って批評的にも興行的にも大ウケした初めてのシェイクスピア映画大作と言えそうなのがローレンス・オリヴィエ『ヘンリィ五世』(1944)です。予告はこちらです。
#Shax_nichigei_1207 監督・主演のオリヴィエはシェイクスピア役者で舞台のスターです。20世紀半ば頃のイギリスを代表するスターですね。この作品は最初は劇場で上演していたものがいつのまにか野外で壮大なスケールで展開される話に変わるという凝った構成です。
#Shax_nichigei_1207 これは、一見空間に限界のある劇場でやっていても、見ているうちにお客さんの想像でどんどん補われてスケールのでかい戦場に見えてくる…みたいな舞台のイリュージョンをわかりやすく映画的に示した試みです。
#Shax_nichigei_1207 これはメジャーなシェイクスピア映画としては初めて商業的にも批評的にも当たったものでした。『ヘンリー五世』には王が部下を鼓舞する有名なスピーチがあり、第二次世界大戦期のイギリス人の愛国心にも訴える内容でした。
#Shax_nichigei_1207 この後、オリヴィエは1948年にモノクロで『ハムレット』を作っており、監督・主演をつとめました。1955年には同じく監督・主演で『リチャード三世』を作ってます。このへんも定番のシェイクスピア映画ですね。
#Shax_nichigei_1207 ちなみにオリヴィエの『リチャード三世』はセックス・ピストルズのジョン・ライドンのお気に入りの映画らしいです。このオリヴィエの演技を自分のパフォーマンス作りのヒントにしてたとか…
#Shax_nichigei_1207 セックス・ピストルズに限らず、ミュージシャンは意外とシェイクスピアなどの古典からヒントを得ていることもあります。別に古典をヒントにしてるから偉いとかではありません。面白そうなものなら何でも取り入れる貪欲さが芸術的センスを磨くのに役立つってことだと思います。
#Shax_nichigei_1207 作家主義という言葉があります。これはいろんな分野で使われますが、映画ではとくに作家性のある監督(auteur)、みたいなものが映画史において重視され、場合によっては理想化・神格化に近い扱いを受けることがあります。
#Shax_nichigei_1207 作家性というのは定義が困難な概念ですが、どの映画を見てもその監督らしい特徴が現れてる、みたいなことがある場合にその監督には作家性があると言います。遠くからでもにおいでわかるような映画を作る監督ですね(わかりにくい説明ですいません)。
#Shax_nichigei_1207 作家主義というのは映画作りが協働的プロセスであることを無視してしまいがちであんまりそこばかり強調すると良くないんですけど、とはいえかなり作家性の高い監督もシェイクスピアの映画化に関心を示しています。アメリカでは代表例がオーソン・ウェルズです。
#Shax_nichigei_1207 日芸の学生の皆さんならあの『市民ケーン』の人か…と思うかもしれませんが、ウェルズはもともと近世イングランド演劇の舞台の演出で鳴らした人です。『ヴードゥー・マクベス』の話をしたの、覚えてますよね?
#Shax_nichigei_1207 ウェルズは『マクベス』(1948)、『オセロ』(1951)、『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』(1965)を監督しています。『マクベス』は『ヴードゥー・マクベス』の時のアイディアを少し使ってるそうですが本人主演です。
#Shax_nichigei_1207 『オセロ』はイアーゴーが同性愛者だという解釈に基づいており、モノクロの凝った映像が特徴です。ただしウェルズがかなり控えめながらもブラックフェイスで主役を演じています。ブラックフェイスの話は後でもう少ししますね。
#Shax_nichigei_1207 『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』は中世の残虐な戦争をダイナミックなアクションで見せていて、後世の戦争映画に影響を与えた作品です。予告はこちらです。個人的にはウェルズのシェイクスピア映画ではこれが一番凄いんじゃないかと思いますね。
#Shax_nichigei_1207 ウェルズの映画は美しくダイナミックなモノクロ映像が特徴で、モノクロが若者に人気ない今だとあまりウケないのかもしれませんが、『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』はちゃんと戦争ドンパチもあって面白いですので、モノクロ苦手な人も騙されたと思って見てみてください。
#Shax_nichigei_1207 非英語圏の作家主義的シェイクスピア映画だと、まずは黒澤明です。『蜘蛛巣城』(1957、『マクベス』の映画化)と『乱』(1985、『リア王』の映画化)はシェイクスピアを日本の時代劇に翻案した映画として非常によく知られています。
#Shax_nichigei_1207 能の要素などを取り入れ、カリスマ的な役者陣(三船敏郎と山田五十鈴)をマクベス夫妻役に配して日本の時代劇にした『蜘蛛巣城』はとくに西欧の研究者には人気が高く、『マクベス』の史上最高の映画化だという人も多いです。
#Shax_nichigei_1207 これもモノクロで、あと黒澤明の映画は今の若い観客だと台詞が難しいと思う人がいると思うのですが、この映画もダイナミックな作品で最後は残虐なドンパチもあるので(ショック描写が好きでは無い人にはすすめにくいかも)、良かったらモノクロ嫌だとか思わず見てみてください。
#Shax_nichigei_1207 黒澤明だと『悪い奴ほどよく眠る』(1960)も少しだけ『ハムレット』の影響が見られます。そんなにはっきりしてませんけど。
#Shax_nichigei_1207 あと、ソ連のグリゴーリ・コージンツェフの『ハムレット』(1964)と『リア王』(1971)ですね。コージンツェフも舞台出身で優れた映画監督でした。とくに『ハムレット』はすごい豪華な作品です。本物の歴史的建造物で撮影していて、人員もやたら動員されてます。
#Shax_nichigei_1207 ロシア・中東欧はシェイクスピアがかなり好まれているのですが、『ハムレット』は見た目の豪華さがすごい上、演出も知的で政治的な面白さがある作品です。『リア王』のほうが『ハムレット』より人気がないですが、私は大変良い作品だと思います。
#Shax_nichigei_1207 ソ連のシェイクスピア映画については有名監督コージンツェフのものも含めて日本ではあんまり見やすくなく、ソフトが出ていないか高額になっていて残念です。コージンツェフの『ハムレット』か『リア王』がみたい人は私の研究室には一応DVDあります。
#Shax_nichigei_1207 英語圏で大ヒットしたシェイクスピア映画としては、まず有名演出家であるフランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』(1968)があがります。この映画ではロミオとジュリエットが若く、ニーノ・ロータが音楽をつけ、60年代の時代の雰囲気にあう作品にしています。
#Shax_nichigei_1207 本作でジュリエットを演じたオリヴィア・ハッシーは大スターになりましたが当時16歳くらいで、ジュリエットが設定では14歳なのでかなり近いです。
#Shax_nichigei_1207 それからケネス・ブラナーの『から騒ぎ』(1993)があります。これはトスカーナロケと所謂カラーブラインドキャスティングで現代的でわかりやすい喜劇にしています。
#Shax_nichigei_1207 いわゆるカラーブラインドキャスティングについては前の授業を参照してください。ブラナーの『から騒ぎ』ではドン・ペドロ役がアフリカ系のデンゼル・ワシントンでした。母違いの弟役がネオやジョン・ウィックになる前のキアヌ・リーブスです。
#Shax_nichigei_1207 ブラナーは既に1988年に『ヘンリー五世』を映画化していて、これも大変評価が高く当たった作品です。その後も『ハムレット』をほぼカットなしの台本で映画化していて、この3作は見ておいて損はないです。他にもブラナーはいい映画ありますけど。
#Shax_nichigei_1207 ブラナーのシェイクスピア映画については以前教員が一般向け解説を書いたのでこちらも見てください。これ、実はブラナー監督主演の『ナイル殺人事件』に備えた解説記事のはずだったですけど、新型コロナでナイルではまだ殺人全然起こっておりません…
gqjapan.jp/culture/articl…
#Shax_nichigei_1207 それからバズ・ラーマンの『ロミオ+ジュリエット』(1996)です。これは賛否両論ありますが、現代のビーチの街を舞台にしたモダナイズ版で、レオナルド・ディカプリオとクレア・デーンズがまるっきり現代(当時)の若者として出てきて恋に落ちます。
#Shax_nichigei_1207 ラーマン監督特有の派手でやりすぎとも言えるような演出が炸裂するので人を選ぶと思うのですが、教員はたぶんこの映画を見ていなければシェイクスピア研究者になっていないと思います。
#Shax_nichigei_1207 色彩デザインが非常に独特なのですが、ロミオとジュリエットが恋に落ちる場面のクリップがあるので見て下さい。この場面などはかなりデザインの特徴がわかります。
#Shax_nichigei_1207 なお、教員は「レオナルド・ディカプリオとガス・ヴァン・サントのせいでグザヴィエ・ドランと私の人生はメチャクチャになった」という論考を書いたことがあります。『ロミオ+ジュリエット』の話です。
ci.nii.ac.jp/naid/400222280…
#Shax_nichigei_1207 それで、昔の映画を見る際に要注意なのがブラックフェイスです。これは白人などの俳優が顔を黒く塗って黒人の役柄を演じることです。
#Shax_nichigei_1207 アメリカ合衆国では奴隷制度が存在し、歴史的にミンストレルショーなどで黒人の役柄を白人がブラックフェイスで侮蔑的に演じることが多かったため、ブラックフェイスは大きな批判の対象になっています。
#Shax_nichigei_1207 舞台ではわりと最近まであったのですが、昔の映画にもあったりします。『オセロー』(1965)ではローレンス・オリヴィエがブラックフェイスでオセローを演じています。これについて最近、ミシガン大学で問題になりましたね。
#Shax_nichigei_1207 ミシガン大学の教員で作曲家である中国生まれの盛宗亮がヴェルディのオペラ『オテロ』についての授業で適切な解説なしにオリヴィエの『オセロー』を見せたということで苦情が出たということがありました。
michigandaily.com/news/academics…
#Shax_nichigei_1207 これは盛宗亮先生がこのクラスの担当を辞める(他の授業は継続)というおおごとになりました。ブラックフェイスの扱いはアメリカ合衆国ではそれくらいおおごとだということです。適切な説明なしにブラックフェイスの作品を見せると学生が本当にビックリします。
#Shax_nichigei_1207 これについては大学の事情なので私がコメントできることは少ないのですが、ただ一般的にオペラやバレエではストレートプレイよりも最近までブラックフェイスを普通にやってたというのは意識の違いとしてあげられるでしょう。
#Shax_nichigei_1207 2015年にNYのメトが『オテロ』でブラックフェイスをやめたというのがニュースになりました。npr.org/sections/thetw… パリのオペラ座でも去年問題になっています。 bbc.com/news/world-eur…
#Shax_nichigei_1207 日本における近年のシェイクスピア上演とブラックフェイスについては最近、教員が関連する論文を出したので興味ある方はどうぞ。
czasopisma.uni.lodz.pl/szekspir/artic…
#Shax_nichigei_1207 では「第2幕 新しいシェイクスピア映画とドラマ」にいきましょう。シェイクスピアをヒントにした映画には一見したところわからないほど大胆なものがあります。たとえばSF映画『禁断の惑星』(1956)は参考程度ですが『テンペスト』の影響下にあります。
#Shax_nichigei_1207 ガス・ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)は『ヘンリー四世第1部』『ヘンリー四世第2部』『ヘンリー五世』が原作です。90年代のポートランドのゲイカルチャーに関する映画なんですけどね。かなりちゃんとシェイクスピアです。
#Shax_nichigei_1207 わかりづらいやつですが、ペドロ・アルモドバル監督『ボルベール〈帰郷〉』(2006)は『冬物語』にちょっと似ています。
#Shax_nichigei_1207 『ウォーム・ボディーズ』(2013)は『ロミオとジュリエット』が原作のゾンビ映画です。これはかなりはっきりわかるように『ロミオとジュリエット』です。ゾンビ映画ですけど。
#Shax_nichigei_1207 今映画館でやってるやつだと、『カオス・ウォーキング』(2021)はたぶん『テンペスト』と『十二夜』です。名前の付け方とかが影響を受けていると思われます。ただしあんまりうまくいってません。あとこの映画はカメラの手ぶれがヤバいです。
#Shax_nichigei_1207 ふしぎな動きとしては、2000年前後にシェイクスピア学園映画ブームがありました。『恋のからさわぎ』(1999)という映画があるのですが、これは『からさわぎ』ではなく『じゃじゃ馬ならし』が原作です。アメリカの高校が舞台のシェイクスピア映画です。
#Shax_nichigei_1207 有名な場面はこれです。ヒース・レジャー演じるパトリックがジュリア・スタイルズ演じるキャットに校内放送ジャックで歌って求愛する場面。これがシェイクスピアなんですよ。
#Shax_nichigei_1207 元の戯曲はシェイクスピア劇の中でも最も性差別的・暴力的であるとして批判の多い作品なのですが、この作品では原作に登場する初期近代のパドヴァの階級社会を、アメリカの高校における「クリック」(日本語でいうスクールカースト)に読み替えています。
#Shax_nichigei_1207 これについても教員が論文を書いていますので興味のある人はこちらを。
ci.nii.ac.jp/naid/400203754…
#Shax_nichigei_1207 この前の1995年にジェーン・オースティンの『エマ』をアメリカの高校を舞台に映画化した『クルーレス』が当たってまして、『恋のからさわぎ』も当たったのでその後やたら高校シェイクスピア映画が作られました。
#Shax_nichigei_1207 何しろ著作権が切れてますからね。変更し放題、翻案作り邦題です。どこを変えようと、シェイクスピアの遺産の管理人が苦情を入れてきたりとかはしませんので…
#Shax_nichigei_1207 高校シェイクスピア映画としては『オセロー』原作の『O』(2001)があります。高校バスケットボールチームの実力強化のため初めてアフリカ系の生徒として迎え入れられたオーディンと、それに嫉妬するヒューゴーの物語です。これは珍しく悲劇ですね。
#Shax_nichigei_1207 あとテレビ映画ですけど『ハイスクール・ミュージカル』(2006)は『ロミオとジュリエット』を緩く参照しています。『アメリカン・ピーチパイ』(2006)の原作は『十二夜』で、ヒロインが男装して男子サッカーチームに入ろうとする話です。
#Shax_nichigei_1207 こういう高校シェイクスピア映画は最近は作られなくなったのですが、では最近は?というので最後、「エピローグ~これからのシェイクスピア映像化」です。
#Shax_nichigei_1207 私は最近のシェイクスピア映像化をポスト・ゲーム・オブ・スローンズ・シェイクスピアと呼んでいるのですが、これは『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011~2019)大ヒットによる中世・近世ファンタジーへの関心の高まりによるトレンドの変化に対応したものです。
#Shax_nichigei_1207 『ゲーム・オブ・スローンズ』はシェイクスピアなども参考にして作られているのですが、暴力とセックスに満ちた宮廷陰謀劇+戦争アクション+たまにドラゴンです。ドラゴン以外はシェイクスピアが得意とするところですね。
#Shax_nichigei_1207 『ゲーム・オブ・スローンズ』のヒットでこういう暴力とセックスに満ちていてプロットもスリリングな時代ものが人気を呼ぶようになり、シェイクスピアの史劇はそういう路線で映像化されるようになります。
#Shax_nichigei_1207 BBCドラマ『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』(2012~2016)とジャスティン・カーゼルの映画『マクベス』(2015)はその影響を受けたものと考えられます。
#Shax_nichigei_1207 それから非映画コンテンツの隆盛ですね。ナショナル・シアター・ライヴなど、舞台を撮って映画館で上映する形態が一般化しました。ベネディクト・カンバーバッチ主演の『ハムレット』のナショナル・シアター・ライヴ上映は2015年に記録的ヒットとなりました。
#Shax_nichigei_1207 そして新型コロナで劇場が閉鎖されると、もともとテレビ中継施設とか映画館上映のノウハウがあるイギリスのナショナル・シアターやロイヤル・シェイクスピア・カンパニー、NYのメトロポリタン・オペラ、カナダのストラトフォード・フェスティバルなどがどんどん配信を始めました
#Shax_nichigei_1207 今は映画ではなく舞台をそのまま撮ったものがかなり自宅で配信を用いて見られるようになってます。あと、新型コロナ下で作られたものではどこから映画でどこから舞台なのかわからない配信コンテンツもわりとありました。
#Shax_nichigei_1207 わりと手軽に映像が配信で見られる時代なので、皆さんも是非シェイクスピア映画を見てみてください。
#Shax_nichigei_1207 ちなみに私が好きなシェイクスピア映画を5本あげろと言われると、バズ・ラーマンの『ロミオ+ジュリエット』、『マイ・プライベート・アイダホ』、『恋のからさわぎ』、『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』、ブラナー『から騒ぎ』ですかね。
#Shax_nichigei_1207 日芸の履修登録者の皆さんはアンケートに必ず答えて下さい。今日は授業内容についてではなく、授業に関わる希望を確認するためのアンケートです。

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