連投失礼。先程ツイートで紹介したカミル・ガリーヴさんの最新スレッド要約してみます。時間がかかると思いますが、海外のアナリストも考察できてない点があるという事で、ロシアのメンタリティを理解する上で有益だと思われるので。【】内は私の補足です。以下要約。
ロシアに交渉の余地を与えるために『出口』を用意してやる必要があるという意見も出ているが、ロシアが妥協する可能性は無い。プーチンはもう引くことは出来ない。交渉に、クレムリンでも見下されている文化大臣ごときを送ってることからも明らか。
ロシアという国は、勝機があるはずの小さな戦争に負けるごとに崩壊してきた。モスクワ公国はクリミア進行に失敗し崩壊、ロシア帝国は日本に負けて崩壊、ソ連はアフガニスタン進行に失敗して崩壊。ロシアは貧困にも不景気にも圧政にも耐えられるが、小さな戦争における敗北だけには耐えられない。
皇帝は嫌われていても統治出来るが、尊敬無しには不可能。そして小さな戦争における敗戦は、何より尊敬を失うのだ。

プーチンはすぐにウクライナを落とせると思っていた。FSBのN5はプーチンの聞きたいことしか言わせてもらえなかったからだ。彼はもう後戻りは出来ない。
上手くいかないことを知っている部下も居るのに、言わせてもらえない。ソースによると、プーチンは未だに良い報告しか受けていない可能性があるという。

プーチンが国民に『勝利』として発表出来るよう何かしら譲歩してやるべきという意見もあるが、上手くはいかないだろう。
第一に、人々はそこまでバカでは無い。そして【Zのマークで象徴される】好戦的愛国心のプロパガンダは成功している。それは、生活レベルの極端な低下がロシア中で見られるようになるまでは成長を続ける。プーチンは自分が始めたZのせいで、Zを推し進めるしか無いのだ。
第三に、そしてこれが最も重要だが、ウクライナへの侵攻は事故では無い。これは『勝利の憑依』と呼ばれる、プーチニストイデオロジーの極致なのだ。『勝利』とは、WWⅡのことだ。

『不滅の連隊』と呼ばれるものがある。国が毎年開催する行進だ。人々は旗やシンボルや殉職者の写真を持って行進する。
罪の無い心温まる光景に見えるかもしれないが、これは強力なメッセージを国民の意識に根付かせている。

第1のメッセージは『ロシアが邪悪なナチスから世界を救ったのだ』というもの。つまり、世界は永遠にロシアに対して借りがあることになっている。
【一旦翻訳休憩、後ほど続けます】
第2のメッセージは、「ロシアは誰よりも強く、WWⅡの成功を繰り返すことが出来る」というものだ。プーチニストイデオロジーは、『闇の勢力ナチズム VS 光の勢力ロシア』という二元論で成り立っている。つまり『今』ロシアに敵対するものは全てナチスと認識されるのだ。
つまり、【彼らの考え方によると】ウクライナ人【もしくはあらゆる他の国】としての自覚があること自体がナチスである証拠となり、そうでなければロシア人になるはずなのである。

これが、海外では良く理解されていない逆説的なひねりである。
ロシアの単一性を脅かすあらゆる少数派は、
1. 偽物
2. 反逆者
3. ナチス
のどれかだと断言される。ロシアは光の勢力であり、そこに属さないものは全てナチスなのだ。

2020年にプーチンがロシア語こそが『国を構成する民族性』であるという項目を68条に加えた時、少数派の反発が起こった。
彼らは即座にナチスだと告発されている。

WWⅡのカルトである『勝利による憑依』は、ロシアの単一民族主義を推し進める根拠として使われているのだ。

ロシアは無限に拡大する権利があり、それに反対する勢力は全てナチスなのである。
プーチニストが見る世界では、戦争は楽しいゲームだ。自分たちはナチスを倒したのだから、誰でも倒すことが出来る。自分たちは誰より優れている。

現代ロシアの戦争挑発の狂気は、信じられないレベルだ。それは古き良きWWⅡの記憶として表現されているが、実際はこれは次の戦争への準備なのだ。
このキャンペーンの暗い一面は、子供達の関与である。『勝利による憑依』(победобесие)で検索すれば、戦争挑発のプロパガンダのために子供達を利用した画像が沢山出て来る。

西洋人には、このプーチニズムの屍姦的で軍国主義的なアジェンダはなかなか理解出来されない。
「自分たちはナチスに対抗する光の勢力なのだから、抗うものは全てナチスである。」それが、海外の分析者が読み解けていない今回の侵攻の背景だ。

プーチンは、20年間に渡って、単一民族主義と国土拡大を正当化するためにこれらの戦争挑発とWWⅡカルトを利用してきた。
Zキャンペーンは常識の逸脱ではなく、プーチニズムのエッセンスなのだ。
紛争の段階的縮小を提案する声もあるが、そんなことをすればプーチンに体制を立て直す機会を与えるだけだ。今こそが、プーチンを叩くチャンスなのだ。彼の過ちを逆手に取って今彼をやっつけなければ、プーチンは中国と手を組む。次の戦争はより悲惨なものになる。
誠意をもって語られる段階的縮小の提案は、非常に短絡的な考えだ。長期的な影響を無視している。

①脅かし②息の根を止めない、という流れは、政府の革新を生む。ロシアがより強くなる可能性を、爆発的に増やしてしまう。今正に必死なのだから余計に、だ。
段階的縮小というのは、プーチンを出来るだけ脅かさずに、可能な限りの希望を叶え、それ以上を望まないのを期待するという意味だ。

それが、1983年にヒトラーがチャンバーレインと交渉したやり方である。ヒトラーがスデテンランドを要求し、西欧は戦争の危機に瀕した。この時ヒトラーは段階的縮小を
望んだ。準備出来ていなかったからだ。もしここで事が大きくなっていれば、ヒトラーは負けてかもしれない。

チェンバーレインは国民思いの分別のある人間だった。段階的縮小に応じて、ヒトラーに譲歩した。いっときの平和を得たが、これはドイツでのヒトラーの立場を強くし彼に兵器を作る時間を与えた
なぜヒトラーを持ち出したのかと言えば、二人の作戦が似ているからだ。

1. 製造業の危機
2. 譲歩を得て退避
3. 国内での立場を高くし、強くなる
4. 規模を大きくして繰り返す
話はそれで終わらない。以下はプーチンが戦争を起こした国を年代順に並べたものだ。

1. チェチニア, 1999 - 百万人
2. ジョージア, 2009 - 四百万人
3. シリア, 2015 - 千七百万人
4. ウクライナ, 2022 - 四千四百万人

プーチンは素早く規模を広げている。毎回、より大きな獲物を求めて。
ここでゲームセオリーを見てみよう。相手に協力する(鳩)か裏切る(鷹)かで、結果が変わってくる。ここでもし、相手が確実に『鳩』だと分かっている場合は、『鷹』になる事で自分は有利となる。 Image
プトラー【プーチン×ヒトラー】の戦略は、相手が『鳩』であるという前提の上で成り立っている。相手が『鳩』であると分かっているのであれば、『鷹』を演じる事で自己の利益を最大化できる。紛争を引き起こし、相手は『鳩』になり、自分は最大の利益を得る。そして規模を拡大していく。何度も何度も。
言い換えれば、プトラーの戦略はゲームセオリーで考えれば非常に論理的だ。相手が臆病者であるという前提のもとで、利益を最大化する手法なのだ。もしこちらのアルゴリズムが「何があっても『鳩』でいる」であれば、「何があっても『鷹』でいる」事がハックだ。
ここから言えることは、『予測可能な振る舞い』をすることは危険だということだ。こちらのアルゴリズムがバレてしまえば、プトラーはそれをハックしてリスクを取ろうとする。

「相手が『鷹』だからといってこちらも『鷹』になるのは危険だ。何があろうと『鳩』でいるべきだ」と言う考えは通用しない。
『鳩』である事が安全なのは、相手がこちらのアルゴリズムをハックしようとしていない時だけだ。そうでなければ危険でしかない。しかしこちらが予測不可能な存在であればあるほど、あちらはハックが難しくなる。
相手にとってこちらが激しく抵抗し反撃する可能性が20%でもあれば、相手が『鷹』を選ぶ可能性は大幅に小さくなる。

段階的縮小がバカな考えであるのは、それがこちらを『鳩』であることを明確にしてしまうからだ。
それ以前に『鷹』の要素を見せていたとしても、それを塗り替えてしまう。つまりその後あちらはさらに凶暴な『鷹』になって戻ってくるのだ。

WWⅡは、そうやって始まった。同盟国は『鳩』を演じ、遠い国での出来事に首を突っ込む必要は無いと、ひとときの平和の為に妥協した。
同盟国が倫理的で責任感のある振る舞いをした結果、ヒトラーは相手を『鳩』だと認識し、自らの利益を最大化しようとした。そして同盟国がある時点で退くのをやめた時、彼はとても驚いたのだ。

WWⅢも、同じように始まるだろう。

【要約終わり
急いで訳したので読みにくい箇所があったらごめんなさい。以下、ちょっとあり得ないミスしてますので修正……申し訳ありませぬぬぬぬ(おバカ……

ツイート20: 1983年 → 1938年

ツイート22: 1. 製造業の危機 → 紛争の製造(引き起こす
沢山のいいねやリツイートありがとうございます。私が最近情勢関連でフォローして有益だと思ったお二人を紹介しておきます。英語がわかる方、もしくは翻訳ツールを使いこなせる方は、是非ご自身で彼らのツイートを見返してみて下さい。↓
本ツイートの元ネタ著者、カミル・ガリーヴさん。去年までウィルソン・センターに所属されていた、ジャーナリスト、研究者、反政府活動家。@kamilkazani
wilsoncenter.org/person/kamil-g…
例のFSBのリークレターを英語に翻訳してツイートして下さった、アメリカ人レースカードライバーのイゴール・スシュコさん。より原文に近いであろう英語で読みたい方は是非。ガリーヴさんのことも、イゴールさんのツイートで知りました。@igorsushko
沢山のリツイいいね有難うございます。

自分自身もこんな無茶を仕掛けるロシアの振る舞いを理解出来ず混乱していましたが、知り合いや友人がロシア人で理解できずもっと困っている人も居ると思います。

これだけが答えでは無いと思いますが、ひとつの解釈ではあると思うので、更なる拡散宜しくです。
翻訳でらやらかしてるので修正😭
こちらも……皆さまご指摘感謝!

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Mar 17
こちらにロシアウクライナ情勢の理解に役立ちそうな情報を翻訳したスレッドぶら下げておきます。今後も追加していくかも。

①プーチンが引けない理由、ウクライナをナチスと呼ぶ理由、ここで叩かないと危ない理由
②FSB内部告発文書6通目
書いてる人に外部が付けたコードネームと、荒唐無稽なロシアの計画
③ロシアFSBの内部告発文書の信憑性と、その根拠
Read 6 tweets
Mar 16
7通目本文の要約↓
6通目で説明されたFSBの作戦『ゴルディアスの結び目』についての #WindofChange 本人の考察。なるべく読みやすく書くつもりです。
#FSB内部告発
#FSBLetter
「この計画には実行する以外に、内部に於けるモチベや自己を維持する目的もある。なんの考えも無しに行われた最初の行進よりはまだマシだろう。

西欧、特にフランスはゼレンスキーに降伏を求め始めるだろう。選挙が近いし、恐らく状況をそこまで深刻に見ていない。Yavorivへの攻撃は↓
計画の一端だ。あそこには活動中のNATOアドバイザーがいた可能性が高い。攻撃時はわざとNATO領空を飛ぶようにした。西の反応は思った通りで、戦わずしてロシアを抑えられると思っているようだ。

個人的に、大きな戦争は避けられないと思う。ロシアは動員を進めておりファシスト化している。↓
Read 22 tweets
Mar 16
7通目の要約ですが、初っ端にイラク北部へのミサイル攻撃の背景と、それになぜロシアが興味を持っていたのかが言及されているので、そこだけ先に極端に簡略化して投稿します。↓
#FSB告発文書
#FSBLetter
#WindofChange
①数日前ミサイルより前:

イラン「トランプの嘘つき!経済制裁緩めてくれるって言ったのに!ウラニウムも捨てたのに!やめてくんないならバンバン核兵器つくっちゃうからね!」

米国「緩めたるから核作るのやめーや。あとロシアやばいから石油売って。」

イラン「……うーん。」↓
②一方その頃……

IRGC(イスラム革命防衛隊、イラン国軍とは別の独立した軍隊/諜報機関)

「イスラエルに仲間を殺された!許すまじ!絶対Mossad(イスラエル諜報機関)だ!イランにある施設に攻撃だ!」

Read 8 tweets
Mar 16
昨日7通目が発表されたFSBの内部告発の信憑性に関してですが、私は高いと思っています。

この手紙はウクライナ戦が始まって突然届いたものではなく、フランスに逃れたロシア人権団体「GULAGU NET」の創設者ウラジミール・オセチキン氏が、それ以前からやり取りしていた相手からのものだそうです。(続
その根拠として、イギリスの記事ですがこちらでその信ぴょう性について言及されています。(続 google.co.jp/amp/s/www.thew…
「ジャーナリズム団体Bellingcatのリード調査者Christo Grozev氏によると、この手紙を現/元FSB分析官に見せたところ、ふたりとも「(元)同僚が書いたもので間違いない」と言ったそうだ。」(続
Read 7 tweets
Mar 16
国会は、これで本当に拒否したら、今後各先進国からの評判が下がる可能性分かってるのかな?

「あいつら訳わかんない理由で拒否だって。」「通訳使っても理解しあえないの?」「そこまでITのレベル低いの?」「懐狭いな。」「実は親ロシアなの?」etc...
あとここで足並み揃えないと日本が危なくなった場合の援助が変わってくる。
難しい言葉で言うとこういう事ですし。
Read 4 tweets
Mar 15
例のFSBのリークレター、6通目が届いたと。因みに数日前彼らは著者にコードネームを付けており、Wind of Change = 『変化をもたらす風』と呼んでいる。これから読んでみて、もしかしたら翻訳するかも。
やばい、読んでて恐ろしい……ぞっとするほど具体的なアジェンダが……WWⅢが……
既に翻訳してくれていた方が。
原文ではリプ欄に「荒唐無稽だ」「有り得ない」「なんて妄想だ」などのコメントが。
Read 6 tweets

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