きわめて不愉快な田中康夫氏のコラム。この方はどれだけイギリス政治をご存じなのか。「トラスを厚顔無恥にも「社会民主主義的」とドヤ顔で“怪説”する慶應義塾大学の「国際政治学者」細谷雄一」とのこと。トラス氏の両親が労働党左派の支持者で、母親は核軍縮運動員の「社会民主主義者」でした。(続)
そしてよく知られているように、トラス氏は大学時代は中道左派政党の自由民主党の学生組織に入っていて、王制廃止論者だった。1980年代に英国では自由党が社会民主党と統合して自由民主党に。トラス氏は、まさに、1980年代、90年代の社会民主主義的なイデオロギーの申し子です。(続)
なのでトラス氏は、根っからの保守主義的な政策を主張するスナク氏から、保守党党首選で「社会民主主義者」と批判されていた。80年代の英社会民主党を知っていれば、そのイデオロギーとの類似性を指摘されるのは当然です。(続)
そもそも戦後の保守党首相では、公立学校出身の首相は、メジャー首相とトラス首相の二人が例外的で、自らが中流階級の出自を代表選ではトラス氏は武器にしていました。それは、パブリックスクール出身の、生まれながら保守主義者のスナク首相、ジョンソン首相、キャメロン首相とは違う。(続)
ただし、私が原稿で主張したのはそこではありません。トラス氏は人生の中で何度もイデオロギー的立場を変えてきたので、富裕層に迎合する保守主義的な政策と、生活困窮者に迎合する社民的政策と、多様な顔があり、節操がなく万人受けしようと、融通無碍であったことが私の論旨です。(続)
そのようなイデオロギー的な混在性や、融通無碍な政策という側面を無視して、あたかも私がトラス氏を「社会民主主義者」と論じたかのように議論を歪めて誘導させることを不快に感じますし、抗議します。「ドヤ顔で”怪説”」って、私の顔、見たんですか?(続)
おそらくは田中氏は、中野上智大学教授のツイートをそのまま受け売りにして私を中傷したのでしょうが、私がイギリスの政治外交史が専門です。上記のような80年代の社民的環境で育ったトラス氏の生い立ちをおそらく知らずによく「ドヤ顔」で私を批判する「怪説」をするものと、反論したい気分です。
こちらがその記事。よくまあ偉そうに、イギリス政治の歴史もトラス氏の生い立ちもよく知らずに、イギリス政治外交史が専門の私に、このような失礼で横柄な中傷をしますよね。無批判に掲載した現代ビジネスさんにも失望します。news.yahoo.co.jp/articles/c2bcb…

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Nov 8
田中康夫氏の私への批判や中傷がなぜ不適切か、簡単に説明します。私の主張は、トラス前首相はイデオロギー的に融通無碍で、雑多な思想を有し、環境に応じて適応する傾向があり、彼女の大型減税策はあくまで保守層への迎合の性質が強いということでした。(続)
したがって、富裕層向けには大型減税策を提示し、生活困窮者向けに光熱費の政府支援及び国民保険料引下げを提唱。保守層向けの前者は批判を受けて政権成立1ヶ月以内に放棄。後者は放棄していない。本当の保守主義者であれば、サッチャー首相のように、政権成立1ヶ月以内に信念を放棄しない。(続)
このことからもトラス氏を過激な保守主義者というのは適切ではなく、イデオロギー性の欠如と思想的雑多性を注目すべきと論じました。その雑多で融通無碍なイデオロギーの中には、彼女が育った環境である社会民主主義的要素が含まれ、それは上記の光熱費の政府の大型支援や国民保険料引下げにも。(続)
Read 6 tweets
Oct 25
スナク首相誕生。初のアジア系英国首相、リバプール卿以来最も若い年齢(42歳)での首相と、印象的な結果となりました。同時に、候補と見られていたジョンソン氏やモーダント氏と比して、その経済政策の手腕からすれば現時点で最良の選択かも知れません。(続)
htps://www.bbc.com/japanese/63369216
他方で不安と見られるのは、保守党内で親ジョンソン派から7月の「裏切り」へのかなり根深い怒りが見られることと、庶民感覚の欠如ではないかと思います。8月に、「マクドナルドに子供と行った」と庶民性をアピールしながら、「何を食べたのか」という質問にうまく応えられず、批判される結果。(続)
すでに何年も前に発売中止になった種類のメニューを食べた、と語り、「本当にマクドナルドに行ったの?」という疑念が生まれました。インドの大富豪の娘と結婚して、その資産は7億ポンド以上(100億以上)とも言われ、またウィンチェスター校という超名門パブリック・スクール出身です。(続)
Read 4 tweets
Oct 23
昨日掲載の朝日新聞のインタビューで、トラス首相の財政政策パッケージを明確な財源の根拠なく大規模な財政出動を目指すことから「社会民主主義的」と述べましたが、以下はイギリス政治がご専門でなく7月末からの保守党代表選をフォローしていなかった 方への説明です。(続)asahi.com/articles/DA3S1…
7月の保守党議員による投票では5回ともリシ・スナク氏が勝利して、トラス外相は「一勝」もしていません。その最大の理由は、上記のようなサッチャリズムの「小さな政府」論を革命的に転換しかねない、巨大な財政支出を許容したことへの警戒感だと思います。(続)
これは、借金をしてでも減税をするレーガノミクスの「小さな政府」と、それに消極的なサッチャリズムとの違いと論じられました。そのようなことからも、両親が労働党党員で、本人も学生時代の自由民主党の学生組織に所属して政府の積極的介入への志向性が強かったトラス氏の本音かも知れません。(続)
Read 8 tweets
Jul 30
ほんとに、こういうふうに相手を抹殺しようとする「文化」ってどうにかならないのでしょうか?相手を憎んだり、中傷したり、学者生命を剥奪したり、そんなに楽しのだろうか?日本国際政治学会なんかは、多様な思想、方法論、立場の人が混在して、はるかに風通しがよいと思うのですけれども…。
国際政治学の学界が、あまりにも開放的で、のびのびとして、「言論の自由」が保証されているから、もしかしたら私のように好きなことをしゃべる学者がでてきてしまうのかも…。でも、こっちの学界でよかった。
なので、私が好き勝手に発信していることに怒りを感じて、どうにかして「黙らせたい」と思っている方がおられるのは承知しておりますが、どうぞ今後とも私の「言論の自由」をお許し頂ければ幸いです(そういった私の思想を憎んでいる方々へ)。
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Jul 29
このようなNHKが用意した問題設定が深刻な問題なのは、あたかもロシアが「和平」を求めて、ウクライナが「戦争」を求めているかのようなロシア政府の印象操作に見事にのっていること。自らの家、街が破壊されて、家族が殺されているウクライナの人が和平を求めていないはずがない。
ロシアが国際法を無視して侵略した以上、ウクライナが求めているのが「正義に基づく和平」であり、ロシアが求めているのが侵略と占領を軍事力によって強制する「正義に基づかない和平」です。二つの「和平」の実現の仕方をめぐる対立。
しかも、ウクライナのゼレンスキー大統領が繰り返し条件なし(領土の割譲などを前提にしない)和平交渉を求めているのに、繰り返し拒絶しているのはロシア政府の側です。なぜそれで、ロシアの戦争を正当化する論理を「和平」と定義するのか、深刻な問題があります。
Read 7 tweets
Jul 24
私の政治家に対する評価で、疑問を抱かれる方が多いと思いますが、私は過去10年ほどの間で、首相、外相、官房長官など、かなり多くの方々と直接接する機会がありました。その中で実際に会ってみて、優れた能力をお持ちの方だと感銘を受ける場合と、反対の評価を受ける場合があります。
民主党政権時には、仙谷官房長官にかなりご親切にしていただき、見識も判断力も、官僚を統率する力も高い能力をお持ちと感銘を受けました。また、前原外相や玄葉外相も、人柄も、外交に対する理解する力も、海外でのイメージの良さとコミュニケーション能力ととてm高かった優れた外相だと感じました。
なので、安倍首相が「民主党政権は暗黒時代だった」と語ったことには反対です。『二つの政権交代』という共著でも書いておりますが、実は第二次安倍政権は民主党政権の政策の多くを継承しています。そこにプラグマティズムと、選挙に勝つためのイメージ戦略と、捩れがあります。
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