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Dec 15 19 tweets 2 min read
●ワクチン接種後のADE現象は本当にないのか?
→そもそも、コロナワクチンはその開発段階からADEの可能性が危惧されてきました。だからこそ、従来の方法ではなく、mRNAワクチンやadenovirusベクターワクチンが最初に模索されたというのが経緯だったはずです。
慎重に検証する必要があるのは確かです。
→すでに報告されている論文内でもワクチン接種による中和抗体が減弱していくにつれ、未接種者よりも罹患しやすくなる「マイナスのVE」が確認されています。
ただし、罹患しやすくなる可能性はあるとしても、重症化阻止効果は維持されているという結果は一貫していたので、個人的には問題なしと考えていました。
ところが最近、コロナへの再感染は感染回数依存性に臨床的予後が悪化し、それはワクチン接種後のブレイクスルー感染であっても変わらない(ワクチンの防御効果がない)という報告が出てきたので、また議論がややこしくなっています。
→もしもワクチン接種者にADEが起こり、かつ反復感染により臨床的予後悪化が起こりうるのなら、変異株が続出しワクチン免疫のescapeが急速に進んでいる現状は大きな脅威になりえます。
したがって、これについてもデータを吟味して決着をつける必要があります。
以下はデータとしてADEが疑わしい報告を3つ挙げておきます。
もっとあったはずですが、元文献を見つけられませんでしたので、この程度で。
1) カタールからの報告
ファイザーワクチンのVEの経時的変化をみると、2回接種後7か月以上経過した群のVEは、BA.1に対して-17.8%、BA.2に対して-12.1%。
つまりワクチン未接種者よりも罹患しやすいという結果になっています。
booster接種により中和能は回復。
Duration of mRNA vaccine protection against SARS-CoV-2 Omicron BA.1 and BA.2 subvariants in Qatar
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35654888/
2)スコットランドからの報告
BA.1がTaq-Path assayでS-gene領域のPCRが陰性となるS gene target failure(SGTF)を示す事を利用して、SGTFの有無でオミクロン株とデルタ株を定義して解析しています。
ワクチン2回接種後25週経過した群をreferenceとするとオミクロン株に対する防御能は「ワクチン未接種群のほうが高い」、という実に奇妙な結果になっています。
つまり、ワクチン接種後に抗体価が減弱すると、あるポイントでADE現象が起こる可能性を示唆している結果と読めそうです。
論文内では「行動パターンなどの残留交絡因子(residual confounding)によるものだろう」と考察しています・・・
Severity of omicron variant of concern and effectiveness of vaccine boosters against symptomatic disease in Scotland (EAVE II): a national cohort study with nested test-negative design
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35468332/
3) 米国からの報告
MMWRの2価ワクチンのbooster効果に関する報告です。
結果は9-11月の短い、かつ接種直後の中和抗体ピークの時期のデータにも関わらず、感染に対するVEは22-43%しかないというかなり絶望的な成績でした。
Effectiveness of Bivalent mRNA Vaccines in Preventing Symptomatic SARS-CoV-2 Infection — Increasing Community Access to Testing Program, United States, September–November 2022
cdc.gov/mmwr/volumes/7…
上記の報告内に出てくる表を貼り付けます。
本文内では全く論じられていませんが、この表データから、単価ワクチン4回接種 vs ワクチン未接種でVEを自分で計算してみました。
test negative designとして、VE= (1-OR)で算出。
-----
4回接種のOddsは9175/ 12981= 0.707
未接種のOddsは28874/ 72010= 0.401
OR= 0.707/ 0.401= 1.763
VE= 1- OR= 1- 1.763= - 0.763= -76.3%
-----
・・・とこのように、VEの値はマイナスとなり、感染防御効果どころか、ワクチン接種群は未接種群よりも罹患しやすいという結果がでてきます。
同じことを、2回 vs 未接種、3回 vs 未接種でやるとそれぞれのVEは -25.6、-58.6%といずれもマイナスのVEであり、2,3,4回と接種回数が多いほどよりかかりやすいという数字が出てきます。
RCTではないため、本来のVEの計算は未接種群と年齢等の各種因子で調整して計算する必要があります。
しかし、それを行っても、4回接種後の(マイナス76.3%)というVEがプラスに転じるとは思えません。

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Dec 15
●ワクチンの有害事象について
→日本は有害事象についての情報発信が少なく、これがワクチン不信を助長しているように思っています。
やっとですが、日本の18歳以上のmRNAワクチン接種者184,491人(平均年齢64.2歳)の安全性に関する論文が出ました。
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sciencedirect.com/science/articl…
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Dec 15
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Dec 9
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以下に、件名についての個人的な意見を書いてみました。
興味があればどうぞ。
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というわけで、最近の塩野義のゾコーバに関する議論では、「症状改善が1日早まるのみで臨床的有用性はない」的な一部の専門家らのコメントにいつも違和感を感じていました。
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Dec 9
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→既感染免疫およびワクチン免疫ともに、一旦上昇した中和抗体価は数か月レベルで急速に減弱します。
加えて次々登場する新規変異株が免疫をescapeしているために、再感染を完全に防御する方法が現時点でありません。
しかしながら、ワクチンの重症化阻止効果は各種変異株に対してもまだ保たれているので、その接種意義はまだ残されていると言えます。
→今回の報告は再感染例では既感染免疫による防御効果が期待できず、逆に再感染は各種予後が初感染よりも悪いというものです。
なんと、初感染と比較して、死亡リスク2.17倍、入院リスク3.32倍、後遺症リスク2.10倍に増加します。
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Dec 9
●オミクロン株は本当に弱毒株か?
→COVID-19による肺炎発症者や致死率の経時的な経過から「オミクロン株は従来株よりも弱毒」という感じになっています。
過去の季節性インフルエンザの致死率と比較して「もうインフルエンザの致死率より低い」=「只の風邪」という議論も聞かれるようになりました。
→しかし、これでは高いワクチン接種率の影響、病態理解に基づいた治療法の進歩、抗体製剤や抗ウイルス薬の登場など、予後に関連する交絡因子の影響を除去した議論にはなっていません。
インフルエンザは現時点の高いマスク着用率が関連しているのか、まだ例年よりも低いレベルでとどまっています。
マスク着用は、オミクロン株感染時の吸入ウイルス量を減少させる事で、軽症化に関連している可能性も否定できません。
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Dec 8
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「ウイルスも生き延びないといけないので宿主を殺さないように進化する」と一部の専門家が常識のようにコメントしています。
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現在用いられている感染症疫学の基礎とも言える、基本再生産数(R0)の概念を確立したAndersonらは、論文内で以下のように述べているようです。
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1982年の論文は、医学や生態学の教科書に載っている「(成功する)寄生種は、宿主にとって無害になる方向で進化する」という陳述を「根拠がない通説」と一蹴するところから始まっている。
Read 4 tweets

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