Thread by @mokosamurai777

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「#ガーナ」。 西アフリカのギニア湾岸（黄金海岸）に位置し、鉱産資源とカカオの生産で有名な国です。
では、参りましょう。

ガーナ共和国は、西アフリカのギニア湾岸、黄金海岸と呼ばれた地域に属する南北に長い国土を持つ国です。
およそ23.9万㎢の国土の大半はアフリカ大陸有数のヴォルタ川流域に属しており、南東部にはアコソンボダム建設によって作られた世界最大の人造湖、ヴォルタ湖が存在感を示しています。

国名は、8世紀から13世紀にかけて西アフリカに栄えたガーナ帝国に由来しており、現地語で「王」「指導者」を意味します。
ただし、ガーナ帝国の版図に現在のガーナは含まれておらず、マリ、セネガルやモーリタニアのある辺りです。

人口はおよそ3,300万人で、西アフリカでは第2位の人口を誇ります

（1位はナイジェリア）。
内陸のサハラ交易、15世紀以降のポルトガルを皮切りに沿岸部では金と奴隷貿易が続き、その後イギリス領ゴールドコーストの時代を経て、1957年、サブサハラアフリカで最初に独立。それ以降軍政と民政の行き来を繰り返し、1981年からの軍政以後は国内状況が安定し、現在は

地域の和平の仲介を行うなど、地域外交でも存在感を高めつつあります。

ガーナの地形は、ギニア湾岸の海岸平野、その北側に広がる高原地帯や丘陵地、南東部に広がるヴォルタ湖に大別されます。
ヴォルタ川の存在感が非常に大きいですが、中流域は北部の高原地帯と南部にある高地（アシャンティ

高原など）に囲まれた盆地状の地形になっており、その西はまた別の水系になっていることもわかります。
北部の高地は地形が入り組んでおり、ホワイトヴォルタ、ブラックヴォルタなどの中流域以上の河道が曲がりくねっています（ヴォルタはポルトガル語で「ねじれた」という意味）。
国土の半分は標高

150m未満の低地、最高点は883mですので、それほど急峻な山地はなく、高原や丘陵と熱帯低地が広がる国土というイメージです。

気候は、北緯4度から11度付近と低緯度に位置し、大きな山脈もないため、気候帯は南西部がAf（熱帯モンスーン気候）、南東部や内陸はサバナ気候（Aw）です。
Am気候の地域

には、鬱蒼とした熱帯雨林、海岸部にはマングローブ林が広がっています。
この地域がガーナにおけるカカオの主産地で、鉱業や林業も盛んな地域になっています。
この地域以外は熱帯草原と疎林となり、両者の景観はかなり異なります。
都市の分布を見ても、Awの地域が主であることがわかります。

首都アクラの1月平均気温は28.1℃、7月は25.6℃、年降水量770㎜ほどです。

産業は農業、林業、鉱業が目立ちます。カカオ豆の生産量はコートジボワールに次ぐ世界2位。また、自給的なイモ類（キャッサバ、タロイモ、ヤムイモなど）生産も多く、キャッサバの4位を筆頭に世界トップ10に入っています。

また、鉱業では豊富な埋蔵量を誇る金の産出は以前から有名（8位）。他にマンガンやボーキサイト、ダイヤモンドも産出します。
近年は原油や天然ガスの輸出も始まっており、天然資源にもかなり恵まれた国と言えるでしょう。
なお、中国との経済的結びつきが強く、最大の貿易相手国は中国です。

国民一人当たりGNIは2,310ドル。
国家主導で産業の多角化も進めており、工業化も進め、さらに教育やインフラへの投資も加速させています。政情が安定したこともあり、発展が期待される国の一つです。
一方で国民の3割以上が未だ貧困層で、農村と都市の経済格差も大きく、課題となっています。

1966年に完成したヴォルタ川流域に完成したアコソンボダムは、世界屈指の発電量を誇り、その電力はガーナのみならず近隣国の重要な電力供給源。ガーナの発電は、大まかに水力40％、火力60％で構成されています。
これは、雨季と乾季があることから発電量に波があり、乾季には電力輸出を優先するため

国内の電力需給がひっ迫しがち。そのため、国内産のエネルギー資源を生かした火力発電も盛んです。
また、安価な電力によりアルミニウム精練も盛んで、日本の輸入品目は1位がカカオ豆、2位がアルミニウムです。

民族は最大のアカン人が5割、その他諸民族で構成されます。
言語は公用語が英語、そして

国内に住む主要な11民族の言語は政府公用語となっています。
宗教はキリスト教が7割、イスラム教が15％、伝統信仰が10％ほどです。

日本ではチョコレートの話で特に知名度の高いガーナですが、地理、歴史的にも産業面でもかなり独特な地域であると言えます。
資源と人口、立地にも恵まれており、

西アフリカ屈指の成長株。遠くない未来には、ブラジルのコーヒー豆のように、「かつてカカオ豆に依存していたガーナですが…」と言われる日が来そうな気がします。
今日はこれくらいで。