Thread by @mokosamurai777

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「#ナウル」。オセアニアの一角、ミクロネシアの属する世界最小の島国。かつては世界有数の富裕国でした。
では、参りましょう。

ナウル共和国は、ほぼ赤道直下（南緯0度33分）、オセアニアのうちミクロネシアに属します。国土面積は21㎢で、バチカン市国、モナコに次ぐ小ささ。島国としては世界最小です。
近隣の島はキリバスのバナバ島ですが、それでも東におよそ300㎞も離れています。
島は隆起サンゴ礁で形成されています。

国名は、ポリネシア語で「滝のような雨」という言葉由来するという説があります。住民はミクロネシア系のナウル人なので、ポリネシア語？と思うのですが、ミクロネシアには一部、近接するポリネシア文化の影響を受けている地域もあるようです。

ナウルの地形は、巨大な海底火山の山頂に形成された

サンゴ礁由来の石灰岩地形です。
この辺りは、およそ3500万年前頃から海底噴火が頻発し、4,000mを超える海底火山を形成しました。最大時には標高500m付近までの高さになりましたが、その後侵食され、海面近くまで標高が下がったようです。
そして、サンゴ礁が形成され、それが再度隆起して現在に

至っています。
中央部にあるラグーン（ブアダ・ラグーン）は、石灰岩地形の地下が崩壊して形成されたもので、見た目では海に繋がっていませんが、石灰岩は水を通しやすいため少量の塩分を含んでいます。
また、東部の湾状の地形は海底火山の一部が崩壊してできたものです。
島の最高点は65mしかなく、

全体として低平な地形になっています。
標高が高いのは海岸部（サンゴ礁が発達しており、石灰岩の供給があるため）と中央部の台地で、中央部の台地にはかつてナウルを経済的に反映させたグアノ（海鳥の糞が化石化したもの）が豊富に埋蔵されていました。
グアノからは、化成肥料の原料として重要な

リン酸塩が採れ、ナウルの重要な輸出品となっていました。
リン鉱石は、主に古代の生物が化石化した大規模な化石質鉱床とグアノがあります。
そしてリンは化学肥料の原材料として非常に重要で、この供給が万一途絶えれば、農業に多大な影響が出ます。ウクライナ侵攻でロシアからの窒素やカリウムの

供給が止まったのも、世界的な肥料高騰の一因です。
（肥料の三要素は窒素、リン酸、カリウム）
現在は化石質鉱床からの供給が大半ですが、かつてはこのグアノ鉱床からのリン鉱石が大量に採掘され、流通していました。
そのため、ナウルを含むグアノ鉱床を持つ国々は、経済的に非常に潤いました。

ナウルにおけるリン鉱石の採掘はドイツ領時代に遡り、イギリス資本の会社により1907年に始まりました。その後、1968年の独立後もリン鉱石は重要な輸出品であり続け、ナウルはその利益で世界でも屈指の経済水準を誇った時期もあります。
しかし、リン鉱石の枯渇、そして採掘の際の環境汚染も相まって、

経済水準が1980年頃をピークに低下傾向、1990年代後半から急激に悪化。経済規模が大幅に縮小し、一時は破綻状態とも言われました。
その後、タックスヘイブンを志向したり、マンガン団塊の採掘など、新たな収益源を徐々に確保しつつあり、状況の改善が期待されています。
現在もリン鉱石の採掘

により中央部の土地は荒れたままで、その再生をどう進めていくかも課題になっています。

気候は海洋性の熱帯雨林気候（Af）に属し、年間を通して蒸し暑く、降水量も多い地域です。
1月平均気温は27.2℃、7月は27.8℃で年較差はほとんど無く、年降水量は1,900㎜ほどです。
降水量は多いものの、

有力な河川などは存在せず、雨水タンク、淡水化装置、輸送船のバラスト水などで水資源を賄っています。
国民一人当たりのGNIは17,300ドルほど。
ただ、生活物資の多くを輸入に頼っており、慢性的な貿易赤字があるため、経済基盤は貧弱な状態です。

民族はミクロネシア系ナウル人が60％、その他

キリバス人などのオセアニア系、ヨーロッパ系、アジア系住民。
公用語はナウル語で、英語も広く使われています。
宗教はキリスト教プロテスタントがおよそ半分、カトリックが3割程です。
人口はおよそ1.3万人ですが、リン鉱石採掘の労働者削減により1割以上減少したと言われています。

近年では、

ナウル共和国政府観光局（公式）（@nauru_japan）のアカウントが、オセアニア最大のフォロワー数（現在は45.8万人）を誇っていることが話題になりました。

大平洋の島国の中では現在、屈指の知名度を誇るナウルですが、年間観光客はまだ数名という状況のようです。
日本からのアクセスが良いとは

言えませんが、今の状況なら観光局さんのサポートも期待できそうですし、ビーチを臨めるホテルもあるそうです。
オセアニア旅行の際には訪問先の一つに入れてみては如何でしょうか。
今日はこれくらいで。