Thread by @nobushiromasaki

『射精責任』のゲラ読了。衝撃だわ。
 
添付画像のような主張を読んだ男性の中には「は？　ふざけんなよ。女が自分の体内で男に『射精させた責任』はどうなるんだよ？」と脊髄反射して反論してくる人がいそう。でも、この本の本文と解説を全て読むと的外れな議論とは言い切れないことがよくわかる。→

中絶につながるような「望まない妊娠」に関する議論においては、「女性の体」や「胎児」に話の焦点があたる一方で、なぜか「男性の体等」が問題にされることはまずない。そこでこの本の著者は、「無責任な射精」という言葉を引っ提げて議論の場に男性を引っ張り出した（引っ張り出すことを試みた）。→

望まない妊娠が生じるか否かは、基本、男性にかかっている。そのことを著者は生理学的な見地、社会的な女性への睥睨、差別、偏見などの構造を引き合いに出して裏づける。特に妊娠において女性は多大なリスクを負うが、男性が負うものはそれに比べて少ない。妊娠は女性の体を、健康を、社会的地位を、→

経済的地位を、仕事を、そして命をも危険にさらすリスクをはらむ。男性はそのリスクをちょっとした快楽のために女性に負わせるのだ。これは一例だが、本書に出てくる様々な事実に対する理解が進まなければ、「無責任な射精」によって男性が「望まない妊娠」を生み出す可能性は高いままとなるだろう。→

だが――繰り返し述べるように――これほどに妊娠に対して責任があるはずの「男性」が「望まない妊娠」に関する議論の俎上にあがらないのである。なぜそうなるのか？　女性に比べて強者の位置にある男性が自らが不利となる議論をしたがらないからだ。また、女性にどんなことを強いているかを男性が→

認識していないからだ。強者の側からは、強者が弱者にかけている抑圧が見えない。例えば、かの「バイアグラ」の成分・クエン酸シルディナフィルは、女性の生理痛に継続的な鎮痛をもたらす効果「も」あることがわかったのに、薬の治験審査員のメンバーは、生理痛から女性を救うか、年配男性の勃起不全→

を解消するかの選択に迫られた時、後者を選んだ。このことについて著者は「男性の喜びを最大限にするか、女性の痛みを最小限にするかという選択があったとき、社会は予想される通り、男性を選ぶのです」と書いている。生理痛に遭う女性は何十億人といるのに――。ここに、男性からの女性に対する→

抑圧が出ているといえるかもしれない。またセックスの話題においても、「性行為はどれだけ持続するか」という研究の多くは、男性が女性の膣内で射精に至る時間を基準に行われていて、女性のオーガズムが基準になることはまずない。前者は男性の経験にしか注目しないセックスであって、セックスをそう→

やって見る視点からは、女性にとってのセックスが射精を境に「終わりです」となったり、前戯から突如として「始まりです」となるようなものではないという観点が抜け落ちている。このような男性優位の議論がなされること、特に「望まない妊娠」における議論がそうなっている事に著者は警鐘を鳴らす。→

個人的には「望まない妊娠のすべては男性に責任がある」との結論を導くプロセスに議論を呼び起こす萌芽があると感じている。著者のようにして、こういった議論に男性の体等を引っ張り出す社会的意義は大きい。その意味で女性、特に男性にこの本を読んでほしいと思った。男性が、知らぬ間に女性を→

「弱くさせている」「弱い立場にさせている」という事実をも突きつける本書は、その論法も含め、フェミニズムの議論にも新たな風を吹き込むだろう。
 
この本を読んで、かつて自分が書いた記事を思い出した。荒削りだけど…。
officenomikata.jp/column/10536/
officenomikata.jp/column/10563/