クーデターを起こそうとする奴が現れた場合、歴史的にはロシア軍将校たちは中立を守ろうとするケースが多い。要するに将軍たちの何人かが軍を扇動しようとしても全軍的な決起になりにくい。91年も93年もそうだったのでエリツィンには軍に対する深い不信感が残った。
これに対して内務省は割と明確にエリツィン寄りの姿勢を取ったので、エリツィンにとって頼りになる軍事組織は内務省だった。あとコルジャコフの警護総局を信頼した。プーチンは周知のように出身母体のKGB系機関を重視したが、2016年には内務省から国内軍を独立させて大統領直属の国家親衛軍にした。
国家親衛軍の総司令官に任命されたヴィクトル・ゾロトフはKGBのボディガード部門出身で、91年のクーデター未遂事件ではコルジャコフとともにエリツィンの背後に立っている写真がある。その後、プーチンのボディガードを務めて信頼を得た。あとマフィアのタンボフ一家とも関係が深いらしい。
プリゴジンが「オレの側に付け」と呼びかけている国家親衛軍というのはこういう組織なので、おとなしくプリゴジンになびくとはちょっと思えない。まあ全てがプーチンの差金でやってる茶番、ということならまた話は別だが、そうでなければ基本的にプリゴジンを支持しないだろう。
軍も多分動かないだろうし、まして情報機関は、となると、プリゴジンの今後は割と暗いように思われる。そもそもワグネルだって国家から恩赦してもらえると思って戦っている元犯罪者が多いのだから、ただの逆賊になるのだとしたら逃げちゃう奴も多いのではないか。
プリゴジンがここで暴走しちゃったのは、先日、国防省に対して行った提案が拒否されたからかもしれない。国防省の言い分通り、ワグネル隊員は国防省の契約軍人となるが、代わりにワグネルから国防次官を出せとかかなり無茶な要求だった。
しかしプリゴジンからしてみると国防省がワグネルの実質的解体のために最後通牒を突きつけてきたように見えたのかもしれないし、そうであるが故に一か八か的な行動に出るしかない、と考えたのかもしれない。やはりあんまりうまく行く見込みはなさそうなのだが。

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Jul 17, 2022
野口先生が紹介しているリアリスト的な説明も分かるのだが、しかしこれが本当の理由だ、と見るにはまだ弱いとも思う。もしプーチンの2/21と2/24演説が述べるような、ウクライナへの西側軍事プレゼンスの拡大の可能性がそれほど差し迫った脅威であったようにはどうにも見えない
またもしこのような理由で戦争を始めたのだとすると、スウェーデンやフィンランドのNATO加盟については音なしである理由もよく分からない。パワーバランスの話はどちらかというと開戦の口実であり、そのストーリーがリアリスト的な世界観とよく合致しているという話ではないだろうか
じゃあプーチンはなんで戦争を始めたのかと言われると、僕は今のところ「よく分からない」としか言いようがないと思っている。ウクライナに対する民族主義的な執着が強いのだろうとは思うが、それもまた「じゃあなんで今なのか?」を説明するものではない。
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Apr 12, 2022
征服地で男たちを殺し、女は犯し、財産は略奪するロシア軍、もうほとんどコンスタンティノープルの陥落みたいな世界になっていて、マーティン・ファン・クレフェルトが30年前に「これからは原始的な戦争の時代がやってくる」と予言したことを想起しないではない。ただクレフェルトはそれを核抑止と(続
国家システムの衰退という文脈から予測したのに対して、ロシアの戦争は核抑止力を持たない相手に対して、しかも自らはガチガチの権威主義国家の体制を敷いた状態で望んでおり、起きていることは似ているがメカニズムは違うのでないかという気がしている
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Read 5 tweets
Oct 28, 2021
ポーランド陸軍が30万人になるとするとロシア陸軍(28万人くらい)を上回ることになるぬ。しかもロシアは各正面に分散してるから、欧州正面での戦力比がひどいことになりそう
国家親衛軍みたいな準軍事組織を解体して連邦軍に統合してしまえば陸軍も45万人くらいまで増やせるのではないかと思うが、ああいう大陸国家は外の敵だけでなく内なる敵(分離独立勢力や、ロシアが西側の手先と信じる民主派)も怖いのでこの分の負担が軽減できない
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Sep 12, 2021
霞ヶ関関係のレクチャーは愛国心でやってます、という有識者は多いと思うけどそろそろ「それやとこんなもんしか出まへんで」と言った方がいいと思う。そもそも我々の商売は広く売れるものではないのでちゃんと値段設定しないと生活の心配のない大学教員か年金生活者くらいしか外交安保の話をしなくなる
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現状、日本にもシンクタンクと称するものは結構あるわけですが、「その組織があるからこそ生み出された知見」というのは多分そんなにない。大体の組織では取ってきた金の大部分が人件費になっていて、実際に研究に回る金はあんまり多くない
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