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無過失補償制度について、何が問題なのか日米の制度を比較しながらなるべく分かりやすく書いてみたいと思う。

日本の予防接種救済制度は、簡易迅速な健康被害の救済が制度趣旨で、接種と健康被害との間の因果関係が認められれば給付が受けられる。製薬会社や厚労省の過失は不要。1/
その意味では、日本には既に「無過失」補償制度は用意されている。しかし、なぜ日本にも無過失補償制度が必要だとの意見があるのか、そして今後日本に導入されかねない無過失補償制度は、何が問題なのか、あまりピンときていない人も多いのではないかと思う。2/
アメリカの無過失補償制度は、①平時における予防接種による健康被害に対する補償制度(NCVIA)と、②緊急時における補償制度(PREP Act)がある。

前者の場合、請求者は、補償を受けるか訴訟かの二択を迫られる。後者の場合は、製薬会社や国は免責されて補償を受けられるのみ(訴訟提起不可能)。3/ Image
訴訟提起ができないというのは、国や製薬企業の過失(=責任)を問う場がなくなるということを意味する。

懲罰的賠償があり、集団訴訟が比較的容易な訴訟社会のアメリカにおいて、製薬会社にとって訴訟など邪魔でしかない。それを圧倒的に減らすことが可能となる。4/
補償といっても雀の涙のようなものだからコストは小さく、大きく報道されることもないのでネガティヴな世論も形成されない。

だから製薬会社にとって無過失補償制度はとても都合が良い。要するに札束で被害者の頬を叩いて黙らせる、それがアメリカの無過失補償制度。5/
無過失補償制度は、緊急時により効果を発揮する。米国保健福祉省長官が公衆衛生上の緊急事態であると宣言すれば、国や製薬企業の不法行為責任は免責され、訴訟提起自体できない(ただし、故意による不正行為は免責の対象外)。

今のアメリカで薬害訴訟が起こらないのはこれが効いているからだろう。6/
それに対して、日本では、平時と緊急時で制度が分かれているわけではないし、補償を受けた上で訴訟を提起して国や製薬企業の責任を追及していくことも可能。

確かに審査は遅れているが、概ね申請から1年半程度で給付がされている。カルテや剖検等の書類を送付するだけで比較的簡易に申請できる。7/
疾病傷害認定審査会の議事録は公開されていないため、どのような理由から因果関係を認定したのかは分からないが、少なくとも私の知る限り、救済認定を受けたご遺族は、免疫染色等の特別な方法によって因果関係の立証をしたものではない。

そこまでしなくても、因果関係は認定されている。8/
つまり、日本の現行制度は、①無過失補償と訴訟の併用が可能、②緊急事においても訴訟提起可能という点でアメリカの無過失補償制度より優れています。

これは、日本で非接種の自由が(一応建前上)守られているのと同様に、過去の予防接種禍集団訴訟等の社会運動による一種のレガシーでしょう。9/
被害者やご遺族は迅速な救済を、と訴えているが、救済(=経済的給付)だけで終わりにしてはいけない。裁判によって国の責任を追及しないと片手落ちになってしまう。

唯一国の過失を正面から追及することができる裁判を封じ、過去の先人たちによる努力を台無しにするのが無過失補償制度の導入。10/
どれだけ副反応死亡例が報告されても、どれだけ予防接種健康被害救済制度で認定されても、この予防接種は中止にならないだろう。

結局、裁判によって厚労省の過失を認定させないと始まらないんです。無過失補償制度による裁判回避は、薬害関与者を利する結果となってしまう。11/
健康被害を受けられた方やそのご遺族に対して迅速な救済が行われるべきであることは当然のことであり、私もそれを望んでいます。

しかし、他方で、将来の薬害防止という観点からは、「薬害被害者の切実な思いすら製薬に利用されかねない」ということを十分警戒しておく必要があると思います。12/

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Dec 8, 2022
もともとPCR死の全件報告で死者数をかき集めて、少ない感染者数を分母に高い致死率を出して、「季節性インフルエンザ以上の危険性→特措法適用→私権制限」ということをしていたのに、感染者数が増えて致死率が低く出るとそれは不適切だと宣う。

ダブルスタンダードどころか、フリーハンドですね。
「新型コロナウイルス感染症」の定義は、新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある
と認められるもの(感染症法第6条7項3号)。

そもそも2020年の時点で日本人の75%に交差免疫があったので、「一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していない」とは言えないし、「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」もなかった。

covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/3891 ImageImage
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Oct 21, 2022
無知とサンクコストバイアスがスコトーマ(心理的盲点)を作り出し、現実の認識を歪めるという話ですね。

遅発性の被害はより一層この傾向が強まるでしょう。

接種した人は薬害の情報に触れても、認知的不協和解消のため、①無視②矮小化③否定④犠牲の正当化の何れかの態度をとる人が多いのでは。
①無視というのはそのままの意味。

②矮小化は、本人の特異体質のせい、時間的近接性があるもの、政府が認めたもののみが接種との因果関係があるとしたり、有害事象の確率は低いなどという誤魔化し。

③否定は、因果関係は証明されてない、水を飲んだ後に死ねば水が原因なのかといった屁理屈。
④犠牲の正当化、は一定のベネフィットはあった、効果はゼロではない、社会防衛の効果はあったので死病が蔓延していた当時はやむを得なかったという出鱈目。

だいたいこの4パターンに陥るのが関の山で、補償も当然するべきだけどまずもって中止しかない、とは思い至らない。だからまた列に並ぶ。
Read 4 tweets
Oct 19, 2022
この動画の中で個人的に印象に残ったのは、厚労省の担当者の説明。

有効性や安全性について、ただ原稿をお経のように読み上げるだけで、本当に特例承認の要件を満たすのかについては一切説明しないし、重大な懸念はないと分科会の見解を紹介するだけ。1/
nicovideo.jp/watch/sm412506…
EBMと似たような概念でEBPM(Evidence Based Policy Making)という考え方がある。要するに、証拠に基づく政策決定をしましょうというもの。

厚労省の担当者は、我々の決定はEBPMに従っています、専門家の意見聴取も行っています、と言いたかったのだろう。
しかし、ここに大きな欺瞞がある。2/
一括りにEvidence、Dataといっても、その証拠価値はバラバラだし、その証拠からどこまでの事実が推認できるかという問題もある。特定の政策に有利な証拠もあれば、不利な証拠もある。

あらゆる証拠を考慮に入れて、正確な推論を行わなければ正しい判断はできない。3/
Read 14 tweets
Sep 22, 2022
やっぱり日本人は「公」(Public)の概念を理解できないんだと思う。公共の場なのだから多数派に従え、というのが大多数の国民のコンセンサスになっている。

公共の場だからこそ特定の価値観を押しつけてはいけないんだけどね。そこが理解できずに個人の価値観を多数派が蹂躙する超民主主義国家。
精緻に言語化しているブログがあった。

欧米でのPublicの意味は、「全ての人のためのもの」という意味だが、日本語の「公共」とは、「お上のもの」というニュアンスで使われている。

お上が多数派を反映しすぎている現代では、多数派(お上)に従えよ、となるのも必定か。
kyokofukuda.hatenablog.com/entry/20090412…
欧米では、公共空間は、全ての人のためのものというコンセンサスがあるので、色々な価値観や表現が原則として認めれている(もちろん、他社加害性のあるものはアウト)。

他方、日本では、公共空間では自分の価値観を洗い流してお上/多数派に従えよ、となってしまう。これでは個人の尊重は無理。
Read 4 tweets
Sep 22, 2022
旅館業法改正案の件、今更特に付け加えることもないけど、要するに①意地悪な事業者の濫用的措置の根拠を与えられて、②客側の勘違いを生めればそれでいいんだと思うんだよね。

そうすれば面倒ごとが嫌いで「和」を尊ぶ国民は黙って従うから、法律で強制する必要すらない。「個」の尊重など要らない。
法律が全てを解決するわけじゃないし、私的自治に任せた方がより柔軟な解決もできる場合もあるが、それはあくまで平時で社会の寛容性が保たれているという前提が必要。

多数派が特定の価値観・情報で染め上げられ、ストレスで不寛容になってしまっているときに、意地悪を法で後押ししてどうする。
これで意地悪な事業者が違法・不当に宿泊を拒んでも、それをいちいち事後的に裁判所に問題提起できる経済的・時間的・精神的余裕のある人は極めて少ない。

だから、違法・不当な意地悪ルールの濫用的運用が野放しになる。

日本の市民社会には自分達の力で悪習を打破する力は残っていないのにね。
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Aug 8, 2022
「今回の分科会で死亡一時金の審査が集中したことについては「審査は申請書が整ったものから順次行われており、たまたま」と説明した。」

ワクチン接種後に亡くなった91歳女性に初の死亡一時金 なぜ認められたのか?(日刊ゲンダイDIGITAL)
#Yahooニュース
news.yahoo.co.jp/articles/e6db3…
やはり「診療録等」(死亡・障害の状態となったこと、疾病が発生したことを証明することができる医師の作成した診療録(サマリー、検査結果報告、写真等))がないと審議は後回しにされるようだ。

予防接種健康被害救済制度の給付の有無を審査している、疾病・障害認定審査会で、令和4年7月25日までに接種後の死亡事例(死亡一時金・葬祭料)について審査されたのは僅か9件。

そのうち、認定が1件で8件は保留。
mhlw.go.jp/stf/newpage_26…
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