私が執筆した「ロシアによるウクライナ人子供の連れ去り」記事に関し、矛盾や疑問点を見つけた!との主張ですが、この方のようなロシア支持者だけではなく、他の方も陥りがちな事実誤認が非常にわかりやすく表れているスレッドですので、よい機会ですので詳しく説明します。
① 出せます。親や親族(孤児の場合は施設や行政)の「同意のない」「強制的な」連れ去りが問題視されているからです。

② ここが重要。典型的なロシアのプロパガンダです。以降のツイートで戦争開始前のロシア語話者とウクライナ語話者の分布を見てみましょう。
こちらは2021年7月(つまり侵略開始前)のデータ

(侵略開始後に、ロシアに抗議してロシア語を使わなくなった東部・南部住民が増えていますが、あえて侵略開始前の情報を出しています。
つまりこの地図におけるロシア語話者の数値は、現状ではより低下しています)。
https://t.co/H686TBKdIItranslatorswithoutborders.org/wp-content/upl…
Image
侵略前の東部ですら、ロシア語話者(地図上の青)はルハンシク68%、ドネツク74%です。
南部ではウクライナ語話者(地図上の黄)の割合が上がり、ザポリージャ49%、ヘルソン72%。

(侵略後一旦支配され解放された)ハルキウはウクライナ語話者53%です。 

https://t.co/2nxJaoFN2e
Image
仮に「子供の連れ去りが、ロシア語話者地域に『限定して』発生した」のであれば、
「強制的ロシア語教育が行われたはずはない」
という議論は一応説得力を持ちます。しかし下記地図(出典朝日新聞)が分かりやすいですが、ロシアによる支配は言語状況無関係に行われています。
https://t.co/BtMmt1hh24

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このため、「もともとロシア語しか話せない子供にロシア語を強制するわけがない」、という議論はその通りですが、
saki1さんの批判は「東部南部4州全域がほぼロシア語地域」という、典型的なロシア言説に依拠するものであり、正確ではありません。
なお、私がこのスレッドで便宜的に用いた「ロシア語話者」「ウクライナ語話者」という用語は、それ自体非常に論争的であり、学術的にはより緻密な分類が必要なのですが、ここではあくまで理解促進のために用いたことをご了承ください(と書かないとすぐに大御所のエアリプが飛んでくる)。
「場所を特定していない」との批判ですが、 皆さんの大嫌いなBBCで恐縮ですが、ハルキウ撤退時等の連れ去りに至っては学校名まで特定されています。

(メディア記事の執筆経験がない方が、厳格な字数制限等をご存じないことは理解しております)
https://t.co/FnWsvLmmlw、bbc.com/news/world-eur…
それよりも私が理解に苦しむのは、Saki1さんらがロシアを擁護するあまり、
今回の連れ去りに問題がなかったかのような出発点から議論を進め、そのうえで「ロシア語教育が強制されたか否か」で本件を判断しようとしていることです。どの地域から連れ出されようが問題では?
ロシア語強制の実態は引き続き明らかにされるべきであることには同意しますが、
「どの国が行おうと」同意なき子供の連れ去りは犯罪です。
ロシアがやればすべて「人道支援である」という決めつけこそ分析ではありませんし、悪質です。
とはいえあなたの投稿により、より多くの方に実態をお知らせするきっかけが出来ましたので、その点については感謝いたします。

なお、saki1さんやお友達が虚偽・悪質なデマであると糾弾している私の記事はこちらです。上記の情報を勘案し、皆さんでご判断下さい。
newsweekjapan.jp/stories/world/…
以上です。
知識のアップデートお願いね。 Image
グループの皆様の言い分としては、
「ロシア人はよその子供も自分の子供も同様にかわいがるので、ウクライナの子供を事に思いロシアに避難させた」「日本人には、ロシア人の子供への愛が理解できない」そうで、「誘拐とは言えない」という趣旨だったそう。ぜひ論文として発表していただきたいものです.
事に思い→大事に思い
追記。

「同意は完全に存在」していたため、納得の上での「移住」を経た「引き取り」とのこと。
→「同意」とはなにか。

「子供の強制労働は報告されていない」とのこと。
→私の論考にはロシアがウクライナの子供に強制労働をさせているとの記述はありません。
「子供が連れ去られたのであればウクライナで大きな騒ぎになっているはずだが、母親たちによるデモなども起きていない。だから連れ去りは捏造」(ロシア在住者)

→いや国際的な騒ぎになっていてICC逮捕状まで出ていますが。ロシアによる都市部への攻撃が絶えない中、どうやってデモをしろと。
おそらく、本気で「連れ去りは捏造」と信じ、ICC逮捕状についても知らないか、ICC逮捕状が出ることの深刻さを理解していない方々ということが判明。

もちろん信じたいものを信じればよいのですが、「東野が嘘を書いた」というのなら、少なくとも「スペースで友達に聞いた」以上の確固とした根拠を。

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Jun 15
このチェコのパベル大統領のインタビュー、一部で言われているような「ロシア人など(第二次世界大戦時の日系アメリカ人のように)強制収容所に入れてしまえ」というような内容ではなかったのですが、西側に入ってきたロシア人は「厳しい監視体制下に置かれるべき」とは確かに言っています。
元ツイートの下に30分ほどのインタビュー全編が掲載されており、問題の発言は26:00ごろ。

ロシア国民には気の毒だが、戦時中には通常時よりも厳しい保安上の措置が取られなければならないとし、→
→「過去の戦争を振り返ると、日系アメリカ人も第二次世界大戦開始当時、厳しい監視下に置かれた(under a strict monitoring regime)。それは単に戦争のコストだ。」
Read 20 tweets
Jun 6
ゼレンスキー大統領へのWSJインタビュー、日本語訳も出ていたのですが、字数の関係かかなり重要なところを端折っている印象。急いでいる方は日本語で大づかみにしても良いかもしれませんが、以下英語版に基づき重要な点を。
jp.wsj.com/articles/ukrai…
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wsj.com/articles/ukrai…
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reuters.com/world/europe/n…
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Jun 5
いつも私のツイートを隅々まで監視して下さるその多大な労力には痛み入ります。

・ロシアの侵略は絶対に起こってはならなかった犯罪行為
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しかし一番言いたいことはこれです。反転攻勢の「先に」何があるかは誰ににわかりませんが、ウクライナ自身がその方向性を修正したいと思った場合、それも含めて国際社会は全力でウクライナを支えるべき、ということです。侵略されたウクライナが不利に陥りすぎないように安全の保証を確保すべきです。
この点、あなたやあなたのお友達には理解はできないでしょう。ドグマへの執着があなた方の価値を決めると思っているんでしょうね。しかし国際政治はそのような姿勢では学べないのです。いつか理解できることを願っています。 ImageImageImageImage
Read 8 tweets
Jun 5
山崎先生のツイートは大事な論点を提示しておられます。主に①ショルツ首相は「変わった」のか、そして②停戦せざるを得ない状況になったら、ショルツ(始め米欧の指導者)は「今度は何というのか」、の2点でしょうか。

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もちろん、この問題でここまで熱く反論するショルツの姿には驚くという点については同意します。
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