Thread by @fhljpt

デパートでブランドの婦人服を売る店員がいました

彼女はお客さんに似合う服を見立てるのが得意でした

特にファッション誌を研究するでもなくアパレル本社での研修もほとんど寝てましたが

この女性にはこれが似合うとわかってしまうのです

そしてお客さんにセットでのコーディネートを提案すると

相手は気に入ってトータルで買ってくれます

ブラウスを見に来た客がスカートからジャケット・コートまでセットで買って帰ることもしばしばです

さらに彼女には一度接客した相手の顔と買った服を覚えている特殊能力もありました

2年前に1度だけ買い物をしてカスタマーに名前を書いてもらった客が

店にふらりと入って来ると

『〇〇様ですね、以前☓☓色のスカートとブラウスをお買い上げいただきましたがどうでしたか？今日は何かお探しですか？』

と声をかけるので客も感心し心を開いてあれこれと勧めに応じて買って帰ります

結果的に売り上げが伸びるのですがそれは彼女の目的ではありません

客の好みや体型・顔立ちや雰囲気などを考えながら最も似合う服を見立てるのが好きだったのです

ところがある時、コロナ禍いやコロナ対策禍が始まりました

デパートでは店員にマスクを強制します

やや潔癖性だった彼女にはマスクが苦痛でした

それは接客で一生懸命喋れば喋るほどマスク内に唾液が

たまるからです

唾液まみれの布を顔をつけるのが嫌で頻繁にマスクを取り替えます

一日に5、6枚の不織布マスクを使い捨てましたがそれでも不快でした

それも真っ白ではなく洒落た柄がプリントされたマスクなので値段もバカになりません

コロナ自体に対する恐怖はありませんでしたから電車には素顔で

乗って通勤していましたが

睨みつけたりマスクしろよと声をかけてくる高齢男性に何回か遭遇し怖くて電車内でもマスクをするようになりました

そのデパートではマスクをしてない客の入店拒否はしていませんでしたから

時々素顔の高齢女性などが入ってきます

彼女は相変わらず熱心に接客しましたが

その客が帰った後に同僚たちが

『マスクしないなんて信じられない、消毒消毒！』と言って

客が触ったとおぼしき場所をアルコールでスプレーしてまわるのを見てげんなりです

そのうちコロナを恐れて客が来なくなりました

売り上げゼロ、片目すら開かないときもあります

誰も来ないのにマスクして

一日立ち尽くす

そのブランドは業績不振のため店舗の統廃合を始めました

店長などの正社員は馘首できないのでパートや契約社員から肩叩きされます

彼女は中年になって『洋服を売りたい』と思い立ちアパレルに勤め始めたのでまだ準社員でした

店舗の統廃合に伴い遠距離通勤への異動を打診されたのを

契機に

客の来なくなった店にマスクして立つのも苦痛で退職しました

彼女は今、マスク強要のない別の業界で仕事をしています

コロナが『終わった』ためかそのブランドもインバウンドを含め客が戻ってきましたが人減らしの結果人材不足です

懇意にしていた店長から彼女に短期バイトしてくれないか

と度々連絡がありますが

今のところは戻るつもりはありません

『あんなにマスクしてワクチンも全部受けたのに結局同僚は全員コロナにかかったのよ。何だったんでしょう』とは彼女の感想です

本人はコロナワクチンを1回うってあまりの辛さにその後はうってませんが職域接種の度に周りから不審な目で

見られたそうです

コロナ対策禍で生きがいだった仕事を断念せざるを得なかった人は沢山います

もしも次回の『パンデミック』で同様なことがあれば医療だけではなく社会全体も不毛な対策をしないように訴え続けましょう