Thread by @oxomckoe

合衆国憲法を作ったはいいが実際にどのように運用できるかというのは別次元の話で、建国者たちはカリスマのワシントンを大統領にして4年に1回、形式的に選挙してしばらくは様子見のつもりでしたが、彼らの予想に反してワシントンが2期で辞めちゃった。結局憲法上の大統領の権限が曖昧なままになった。

だから第二代大統領のジョン・アダムズの大統領期間は、ワシントンが放り投げた同盟国フランスとのQuasi-Warの解決に費やされたのだが、その過程で、憲法上、大統領は何ができるのかを明らかにしたのです。アダムズ政権は、だからケーススタディの宝庫なのです。

この「忘れられた人物」としてよく記憶されているアダムズは、なんだかんだと研究が途切れることなく、冷戦期や中東での戦争の先が見えなくなった時とかに急に彼を扱った著作がブレイクします。アダムズが思い出されるということは危機というか端境期なのだなということです。

当然、日本の教科書に載せられるような「基本的なこと」ではないので載らないし、アメリカでも専門家しか知らない。トクヴィルも『アメリカのデモクラシー』ではジェファソンから書いている。私の「アメリカ政治外交史」系の授業はここに時間を一番割いている珍しいものなのです。

授業ですから、「私がアダムズを専門としているから」というのが理由ではありません。必要だからそうしているのです。

今年度の大学院の授業では、ナポレオン戦争を題材にしましたが、私にとってはハイチ革命をフランス側から見る勉強になりました。ちなみにこちらが普通です。しかし私はハイチ革命をアダムズ政権の時代の出来事として研究してきたので新鮮でした。アダムズのカウンターパートはタレーランです。