Elemental_Ph.D. Profile picture
Oct 20 33 tweets 1 min read Read on X
何故多くの研究者が
✔️公開討論ではなく論文を!

というのか免疫学が専門の薬学部教員が解説していこうと思います

重要なのは
✔️多くの人を救いたいなら論文
✔️検証を可能にするなら論文

という2点です
皆さんにとって、専門家による討論の方が
『どちらが正しいか明らかになる!』
と思う方もいらっしゃると思います

しかし、口頭の討論とは
・ルールを決め
・審判を決め
・お互い公平に時間配分
しても勝敗は殆ど明らかになりません

その根拠の1つが米国大統領選の公開討論です
どちらが勝利したと感じるかは、双方の支持者による主観で決まってしまいます

仮に審判が勝敗を決めても必ず異論や疑義が生じます

あらゆる厳密なルールも、必ず攻撃され批判され、公開討論では機能しません

では、科学とはどのように議論を重ねてきたのでしょうか
また失敗はないのでしょうか
科学は歴史から反省を重ね
✔️誰もが検証可能であること
✔️再現が可能か担保していること
✔️実験や観察の根拠となる理論が既に存在していること

に非常に重きを置いています
ここで重要なのは、どのような新発見も必ず既知の技術で発見しているという点です
例えば、新発見の生物が『未発見だ!』と証明する方法は何でしょうか

それは、その種が多く存在し、尚且つ同じような遺伝配列を持っている等になります

当然、この遺伝配列は既存の技術で調べる事ができ、他の生物の遺伝子データベースと突合して新種だ!みたいになる事が予想できますよね
このように科学とは、あらゆる積み重ねの上に成り立ちます

その為、例えば今回のように遺伝子配列が組み変わる、スパイクタンパクが呼気から出る等を主張するならば、既存技術で検証し論文とするのが最も検証可能かつ正しいのです

これは世界中の人を救うという話にもなります
どういう事かというと
どんなに声を大にして危険性を訴えても、多くの専門家が悩み抜いて作り上げた国際的な治験のルールに則って認められた医薬品を取り除く事はできません

しかし、信頼できる方法で検証された論文は全てを覆す力があります
例えば、サリドマイドという医薬品は1957年に発売され薬害をもたらしたことで有名です
奇形児が産まれてしまう副作用を催奇形性といいますが、これが何故なのか証明されたのは2010年、日本人研究者らによるものです

では、それまでの50年間サリドマイドは使い続けられたでしょうか?
答えは単純で1960年には危険性が『疫学調査』により明らかとなりました

根拠は分からなくても、使った人とそうでない人を比べて異常が起きているのが分かれば、即座に使用を停止するのが半世紀も前から行われてきたのが我々人類です

当然、コロナワクチンでも多くの疫学調査が行われました
結果は、いずれも感染して症状が出る確率を下げる、感染による後遺症を軽減したり予防したりする

当然、リスクとベネフィット(良い点)を比較して接種は推奨されると判断されてきました

これに適切に反論した論文はありません
反論と称する論文はいずれも
・極端な条件の動物実験
・実験すら無し
です
そのような論文は、まともな科学者が集う学術雑誌には掲載されません

一方で、そうした論文を高額な掲載料を請求して載せる『ハゲタカジャーナル』というビジネスモデルも存在します

こうした論文は、そもそも科学者の中で相手にされません
では、本当にコロナワクチンに警鐘を鳴らした適切な論文は無いのでしょうか

実はありました

しかし、多くの検証により不備が指摘され、最終的には撤回や掲載削除が決定されています

これこそが公開討論よりも論文が極めて優れている点です

誤りがあれば、必ず検証し後から否定できるのです
因みに、論文が掲載されるまで

①編集者(ベテラン科学者)によるチェック
↓科学的に正しいなら
②その道の専門家による匿名かつ無償の論文査読

③査読者(複数、多くの場合3-4名)から論文の不備を指摘され、追加実験や文の修正を行う

④同一または異なる専門家による再査読

これを繰り返します
ここまでしてもなお、我々科学者は論文を鵜呑みにはしません
STAP細胞も一度は一流の論文誌に掲載されました

しかし、世界中の研究者が疑問を持ったのです

こんな条件で細胞が初期化されるわけがない!

そして何度検証しても、どこの誰も、本人すら再現できず論文は撤回されました
このような姿勢を我々は
『批判的吟味』
と呼びます。科学者の基本姿勢の1つであり、論文を読む際は必ず批判的に読みます

その上で誤りがなさそう、またはそれを裏付ける論文や自分自身の実験結果を見て、判断するのです

それには多少の時間が必要で、そこが公開討論に劣る点です
公開討論は、その場で言葉のやり取りを行いますし、議論の最中に論文を探したり、悩んだりすればマイナス評価でしょう

科学として誤りではない姿勢も、時間的な制約がある討論では悪用の恐れもあり(時間稼ぎ)、よくありません

つまり、科学的な検証に公開討論は最も向かないのです
今回、レプリコンという新しい形のワクチンが不安を与えるものだという事を、私は否定しません

私は次回、レプリコンワクチンを接種予定ですが(副反応の重さが軽い傾向なので)、それが安心に繋がるのは間違いだと思っています

大切なのは、きちんとした根拠を知り、理解するということです
例えば、今回のレプリコンワクチンでは、何度もウイルスの特徴的なタンパクを作り出す酵素が組み込まれています

これが【無限増殖するのでは?】という誤解の元です

因みに、この酵素自体は複数回作り直せないので、無限は無理です
効率が良くなる程度でしかありません
確かに新技術…と言えば聴こえは良いのですが、組み込まれている酵素は既知のものです
作り出すタンパクも既存のものです

組み合わせは素晴らしく、形も優れているので、良くて【き○この山】や【たけのこ○里】
クッキーもチョコも形も既存ですが、組み合わせが素晴らしい工夫ですよね
では、遺伝子が組み替えられてしまう可能性はあるでしょうか

この辺りの解説は蛇足ですので、お好きな方は続きもご覧下さい

答えから言うと起こりません
というのも、我々の遺伝子は結構めんどくさくできています
外から遺伝子を取り込んで自分と融合する事はできないのです
というのも、我々の身体には多くの共生細菌やウイルスがいます
食物にも多く遺伝子は含まれますし、生野菜なんて細胞そのまま食べてます

風邪をひいたら確実にウイルスのDNAやRNAという遺伝子が血中をふよふよしています
しかもその総量はワクチンの比ではありません
しかし、我々は残念ながらミュータントタートルズにもなれませんし、ゴジラになることもありません
可能性があるなら精々アイアンマンです

何故なら外来遺伝子を組み込むには2つの段階が必須で、しかもそれはデザインされた環境の中ですら成功率が低く、量を確保して成果物の回収率を上げるレベルです
遺伝子は
✔️特定の場所を切る酵素
✔️特定の相手を繋げる酵素
があって初めて意図的な結合ができます

しかし、それでもなお通常の遺伝子の方が勢いも強く、数で圧倒されて残りません

その為、実験では組み込む遺伝子に工夫を行います
それは通常細胞が死ぬ毒を併せて培養液に入れるのです

そうすると、やっと遺伝子を組み替えた細胞達が成長できます

なお、この毒を抜くと組み替えた遺伝子が抜け落ちた細胞が増えていきます
どんなに上手くやっても、これは同じです

そこまで遺伝子組み替えとは難しいのです
では、ワクチン程度の量でそれができるのか

答えはNoです

もちろん、様々な圧力によってそうした論文は掲載されないのでは、と思う方もいると思います

因みに、製薬企業は悪の巨大組織とかではなく、その研究者達は我々大学教員が育て上げた子達です
彼等は、我々大学研究者に圧力をかけられません
というか、批判的な論文なんか日常茶飯事で掲載されているので、製薬企業系の投資者なんか学術論文チェックする程です

つまり、圧力を理由に論文を書かない方は、自分が理論的に英語論文を書けない理由をそこに見出し、現実逃避しているに過ぎません
私も一部の医薬品のリスクについて、検証が足りていなかった為に数万人のデータや実験動物や細胞を駆使して、論文化しています

今、その企業とは添付文書という医薬品の公的文書が変わる可能性があるので、色々検証も含めてやりとりしています

それほど製薬企業は真摯です
私の先輩も、ある治療薬のガイドラインに副作用対策として論文が引用されたり、相互作用について新しい危険性が分かったので添付文書改訂に繋がったりしています

もちろん別々の先輩で、違う企業です

メーカーも安全を最大限担保したいのですよ、株価もあるので
下手に隠蔽しても、世界中の研究者という頭脳を相手に隠すのは無理だと学習しています

リスクを認めて安全な運用をすれば、さらに売上が望めます

隠蔽すれば待っているのは我々研究者による徹底的な糾弾と、下手をすれば会社の消滅です
こう見ると、金ばっかりと思うかもしれません

しかし、金なんです

病に苦しむ人を新たに救うには、1薬品1000億という途方もない金を用意しなければ安全性の高い医薬品は作れない

金を生み出し、次世代の患者を救う為に製薬企業は批判的検証に耐え、日々研究を続けています
金さえあれば、誰もやりたがらない希少疾患の治療薬にも研究費が回せる

企業は知財もあるので、ターゲットの疾患を細かくは言いません

しかし、色々な形で患者サポートやまだ治療法が無い難病の支援や研究をしています
私達研究者も気持ちは同じです

我々の研究は、必ず誰かが幸福となる日の一助となると信じて行っています

論文にすれば世界の誰かが私の研究から新しいものを生み出すかもしれない
私が気付かなかった事を修正し、命を救うものになるかもしれない

だから世界に発信するのです
その成果は私の手柄にならないかもしれない

でも、それでも良いじゃありませんか
誰かが幸福となったとき、根拠となる論文に私の論文が引用されていたならば素晴らしいことです

論文とは、そうした世界中の知の集合です
この方法を使わない研究者は、一切信用に値しません

• • •

Missing some Tweet in this thread? You can try to force a refresh
 

Keep Current with Elemental_Ph.D.

Elemental_Ph.D. Profile picture

Stay in touch and get notified when new unrolls are available from this author!

Read all threads

This Thread may be Removed Anytime!

PDF

Twitter may remove this content at anytime! Save it as PDF for later use!

Try unrolling a thread yourself!

how to unroll video
  1. Follow @ThreadReaderApp to mention us!

  2. From a Twitter thread mention us with a keyword "unroll"
@threadreaderapp unroll

Practice here first or read more on our help page!

More from @PhD_PharmD_im

Oct 12
【ABC特集】「納税者から入院患者に転落するシステム」 安倍元総理も悩んだ難病・潰瘍性大腸炎が”国の指定”から外される危機 声を上げる患者(ABCニュース)
#Yahooニュース


潰瘍性大腸炎の薬剤師、薬学部教員です
少し病気の解説をしていきたいと思いますnews.yahoo.co.jp/articles/0e028…
まず、潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(IBD)という難病です
不治であり、根本的に治る完治は不可能です

巷にはさまざまな完治を謳う人達もいますが、初回発症から再燃しない人が勘違いしているだけだと考えられています

では、再燃や完治しないとはどういう事なのでしょうか
簡単に言うと、IBDは自分の消化管を敵だと誤解して免疫細胞が暴走する病気です

なので炎症を抑えても、必ずまた攻撃してきます
10-20年、暴走しない事もありますが、忘れた頃に再度戦いに来る事も多々あります

これが『再燃と寛解を繰り返す』病気という意味です
Read 18 tweets
Oct 12
潰瘍性大腸炎の薬剤師として、また薬学部の教員として回答しました

この問題について、私は以前から警鐘を鳴らしています
それは、患者達自身の行動にも非常に問題があるという点です

✔️指定難病は当たり前じゃない
✔️治療の多くは税で賄われている

少し耳の痛い話を書いていきます
例えば、IBD患者のうち非常に効果が高いにも関わらずきちんと対応しない治療法があります

それは【注腸】です

古い検討では、その遵守率は25%程度
つまり、3/4の方が正しく使わず税で賄われた治療薬を捨てている可能性があります

なお、注腸は左側や遠位、直腸限局ならかなり効果が高いです
治療が辛い

これは当たり前です
我々は健常者ではありません、病人です

当たり前の日常を手に入れる為には、健常者よりも多くの努力を強いられます

理不尽と感じていますか?
当然です、それが病気になるという事です
そこから目を背け、社会の優しさに甘えていても良い事は起きません
Read 21 tweets
Oct 8
素晴らしい疑問点です

免疫学が専門の大学教員が、感染症や様々な病気の歴史について紐解いていこうと思います

ワクチンがない時代に
✔️推定感染者数5億人、死者2000万人以上のスペイン風邪
✔️ヨーロッパだけで2500万人が死亡した『黒死病』
✔️16世紀に5000万人が死亡した天然痘
など様々です
先ず、このツイートからは素晴らしい事が2つ読み取れます

①一般の方々にとって死者100万人(日本単体であっても)が非常に稀で絶滅危惧レベルと認識されること

②ワクチンの完成まで(約1年)の時間が正しく可視化されていること

これは両者とも歴史に名を残さない多くの犠牲と献身の賜物です
ワクチンの歴史は、以前もお話したジェンナーによる種痘から始まります
これが1800年くらいの話なので、ここから我々人類は感染症と少し戦えるようになりました

ジェンナーから近代細菌学の祖とも言われるルイ・パスツールなど、世紀の天才達が鎬を削り合い、炭疽菌、狂犬病ワクチンを
Read 9 tweets
Oct 2
非常に多い誤解なので、漢方や民間医薬について英語論文を出している薬学部の教員が解説します

重要なのは
✔️西洋医学という概念は古い
✔️あらゆる治療法は正しく評価が必要
✔️評価前の手法は倫理的に問題あり

では説明していきます
先ず、いわゆる西洋医学というものは既に存在しません
既にWHOの国際疾病分類にかつて東洋医学といわれた病態についても記載があります

従って、もはや洋の東西で医学を分ける時代は2018年の改訂段階から終わっているのです

さらに、日本の診療ガイドラインにも多数の漢方が記載されています
この改訂は日本が主導しました
ではなぜ、漢方の大元である中国やアーユルヴェーダで有名なインドではないのでしょうか

答えは簡単で、日本は古典医療の重要性を熟知し、きちんと治験や臨床研究、基礎研究を行って、何故効果があるのか正しく把握したからです

これが2つ目のポイントです
Read 10 tweets
Sep 23
能登半島地震で医療支援を行なった薬剤師です

今回の水害は筆舌を尽くし難いご苦労だと感じます
今後も能登に心を寄せ、可能な限りの支援を改めて行わせて頂きたいと思います

少しだけ、今回の水害について思う所を書きます
今回の被害、外から後孔明のように高台での建築を求めたり高層建築を求めたりなどテレビにおける無責任な言説が目立ちます

地域行政は苦渋の選択を重ねたことを強く申し上げたい

能登は山と海に囲まれた平地の少ない地域です
だからこそ行政は当初、地盤調査など慎重にやろうとしていました

それに対して無責任な外野は何と言いました?

遅い、被災者を何だと思っているんだ、行政は怠慢だ、国はもっと支援しろ、仮設を早く作れ

など馬鹿の大合唱ではありませんでしたか?
Read 7 tweets
Sep 3
公衆衛生を教える大学教員です

この御意見には大いなる矛盾があります
何故ならば
✔️公衆衛生に守られた日本で
✔️ワクチンの恩恵に浴しながら
✔️作為の悪い点のみ言及している
からです

少し解説していきます
ワクチンの歴史は古く、かの有名なジェンナーが種痘を最初に行ったのが1796年です

因みに天然痘は何故か2相を示すウイルスで、致死性が高いものは20〜50%の確率で死亡します
低いものでは1%未満程度とされます

なお、種痘は10-50万人に1人致死的な副反応が起こると言われていました
それでも、接種が続けられた理由は簡単です
あまりにも人が死に過ぎるのです

例えば、英国では毎年45000人が、日本では最大2万人が1年で死亡するなど猛威を振るいました

我々は感染症よりもはるかに弱い存在なのです

当然、高齢者だけではありません
子供や若者も多数亡くなっています
Read 12 tweets

Did Thread Reader help you today?

Support us! We are indie developers!


This site is made by just two indie developers on a laptop doing marketing, support and development! Read more about the story.

Become a Premium Member ($3/month or $30/year) and get exclusive features!

Become Premium

Don't want to be a Premium member but still want to support us?

Make a small donation by buying us coffee ($5) or help with server cost ($10)

Donate via Paypal

Or Donate anonymously using crypto!

Ethereum

0xfe58350B80634f60Fa6Dc149a72b4DFbc17D341E copy

Bitcoin

3ATGMxNzCUFzxpMCHL5sWSt4DVtS8UqXpi copy

Thank you for your support!

Follow Us!

:(