「大変なことが起きてしまいました… 病院側として謝らなければなりません」
 
朝も普通に会話した医師が勢いよく病室へ駆け込んできた。
青い顔をして、小声で息も絶え絶えに私に告げる。

一瞬、何を言われているのかわからなかった。
 

(え?もしかして重大な疾患とか・・・いまさら?)


 
医師の視線は私の隣のベッドに向けられ、
「実は、隣の患者さんがコロナ陽性でした。」
 
耳を疑った。


「コロナ…ですか?」

「はい。申し訳ありません。
 早急に感染検査をさせていただき、今後の判断をせねばなりません。

 こちらの部屋からも出られないので、病室内でマスクをつけて、
 検査結果が出るまで待っていただけますか?」


一瞬、周りの音が消えた気がした。

4人部屋なので、他の2人へも担当医が説明している。
 


私のいる病棟は免疫が落ちた患者が入院する隔離エリア。
面会も禁止。感染症対策が最優先される場所だ。


そして私は、
免疫をほぼゼロにする ステロイドパルス治療(3日連続投与のうちの2日目)の真っ最中であり、
担当医からは、感染症だけは絶対にかからないように。との厳重注意を受けていたところだった。

頭が真っ白になる。

隣の人は昨日も、ひどい咳をしていた。

「肺の病気なのだろう」と思っていたが、
夜には5分ごとに繰り返され、嫌な予感は的中した。
 
その人が悪いわけではないと分かっている。

でも、今の私がこの状況を受け入れられるかと問われたら
――正直無理だった。

「これで感染していたら、自分はどうなる?」


その言葉が、私の中でぐるぐると反響していた。

コロナ検査の準備が慌ただしく進む音が聞こえる。

手袋をつける音、トレーに器具が置かれる音
――小さな音がやけに大きく響く。

私はベッドの上でじっと待つしかなかった。
 
8月、アデノウイルスで持病が急激に悪化した恐怖がよみがえる。

高熱が続いた2日目の夜、
トイレでみたコーラのような「血尿」は、直感的に命の危機を感じた瞬間だった。
 
(やばすぎる・・・)
 
さすがに今後の人生に恐怖を感じ、
初めてその病気で有名な治療法の第一人者と呼ばれる名医に会いに行った。
 
そして、治療方針をドラスティックに変え、
免疫をゼロにする「ステロイドパルス治療」を選択した。
 
副作用が強く出てしまい、顔の膨張、体重増加、不眠――神経がすり減る日々。
 
それでも鬱にならないよう、なんとかセルフコントロールしてきたのに!
(なんでこんなことに・・・)
 
隣から咳が響くたびに、自分のマスクを押さえ直し、息を止める。
無意識に手のひらや身体中が汗ばんでくるのを感じた。
病室はシンと静まり返っているけれど、
その沈黙がむしろ緊張感を際立たせていた。




これが、朝10時半に起きたこと。
その間、お昼ご飯が運ばれてきたが、看護師も担当医も誰も来ない。

いつも午前中は看護師も担当医も、バタバタとやってくるのに、

今日だけは、この部屋には全然入ってこない。

 
静まり返った病室に響く咳の音だけが、空気を張り詰めさせていた。
 
3時間ほど経った頃、感染者が別部屋へ移動になった。
そして、1時間ほどしてからか、ようやくスライドドアが開いた。
 
まずは感染者の向かいのベッドにいた患者に看護師が告げた。

「〇〇さん、陽性です。お部屋を移動してもらわないといけません」

(え・・まるで XX宣告やん・・・いやや・・・)

そう思ったと同時に、カツカツと靴音とともに、
カーテン下から私の担当医の足が見えた。

 

(キタ・・・)

 
「さくら(仮)さん、大変なお話をしなければなりません・・・」
 
私は思わず「マジか〜」と頭を抱えてしまった。
「陽性ってたった1日で?」
 
「いや、検査は陰性なんです」
「え?じゃあ、何?」
「よかった…」私は心の中でそう呟いた。
 
担当医のいう大変な話というのは、
・3日連続投与予定だった点滴を2日で中断
・居残り明日まで3日連続の治療を完遂させる
これを選ばなければならないという状況に置かれたことだった。
 
空気感染はないとはいえ、
この部屋で発症していることは事実なので、
2日の点滴でも改善の兆しが見え始めてみる今、
悪化するかもしれないリスクを取るより
帰宅したほうが良いのではないかということだった。

なので、私はすぐ帰宅避難することにした。

それらについて、十分に話あっているうちに、
看護師がやってきて、私の向かいにいた最後の患者さんに
「お部屋の移動をお願いします」と告げていた。
「ほんまかいな」と言いながら、その声は非常に落胆していた。

感染させられた人は、赤い抗菌袋で荷物を覆われ、
まるで罰ゲームのように移動していった。

結果、
13時過ぎにまず感染者が消え、
14時半頃には1人目の感染させられた人が消え、
15時半頃には2人目の感染させられた人が消え、
16時前には4人部屋で私だけが1人にぽつんとなった。

感染者以外の開け放された各ベッドの
仕切りのカーテンは開けられていて、
さっきまで誰かがいたことだけは見て感じられる。
 
これはリアルバイオハザードだ・・・
そう思って、思わずスマホで写真を撮ったものの、
なぜかすぐに消してしまった。
 
他の人たちは文句一つ言わずに部屋を出て行ったし、
私も文句は言わなかった。


でも、正直、心の中では思ってしまった。
「うつっていたら、どうしてくれるの?」
 
そんな自分が嫌だな、と思うけれど、

感染症が今後の人生に大きな影響を与える私にとって、
この感情は仕方がないとも思う。
 
皆さんならどう思いますか?
"初めて"を始めたい人、好きなことを本業に変えたい人を推し活しています。
 
何歳からでも人は何者にでもなれます✨↓↓↓
興味ある方、ぜひメッセージください!

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