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「 おーーーーーいっ! 」
夜になると大声で叫び続ける
認知症のN夫さん。

ご自宅で介護している
ご長男さん夫妻が
ゆっくり休める日を確保するため、

老人ホームでの
お泊りを試しておられたが、
これまで全てのホームで
1泊もできずに利用を断られていた。

わけあって、
ぼくの勤めるホームで
1泊利用を試して頂くことになったが、

事前の情報で
” 介護の全般に拒否が強く、
夜中になると大声で叫ぶ ”
というのを知らされていたので、

ぼくが宿直
( 夜勤ではなく、
警備員のような役割 )
でホームに泊まる日に合わせて
お越し頂くことになった。

22時の見回りを終えると
翌6時の間は待機しておくが
仕事の宿直なので、
つまりは朝まで仮眠できるのだが、
その時間を寝ない覚悟だったのだ。

N夫さんは
ほんとに全てにおいて
拒否がスゴくて、

食事も水分も
ほとんど口につけてくれないし、
トイレも行かない。

紙パンツが濡れているかも
確認させてくれないし、
おフロにお誘いしても
「 家で入るからええ! 」
と拒否される。

ただ、
日中は叫ばれることはなく
お部屋で横になっておられた。

問題は、
やっぱり夜だった。
一日中なにも食べていないのに、
夕食を目の前にお出ししても
やっぱり食べてくれない。

トイレの声かけもやっぱり拒否。
パジャマにも着替えてくれない。

しかたなくお部屋にお連れして
横になって頂くが…

お1人になられると、
大声で
「 おーーい!おーーーいっ! 」
と叫びだした。

誰かが行くまで
どんどん声量が上がっていく。

他のかたが寝れないレベルなので、
職員がお部屋に行かざるを得ない。

それなのに、
「 どうされました? 」
とお聞きしても
何も言われないし、
身体に触れるのも拒否される。

これが延々と続くので、
夜勤者さんには
他の入居者さんの対応をしてもらい、

22時以降は
ぼくがN夫さんの対応を
マンツーマンですることにした。

そして、

N夫さんは一睡もされなかった。
ほんとに対応が困難だと、
たった1日でわかった。

翌日。

N夫さんが帰られた後で
次回以降のご利用は
さすがに難しいことを、
夜間のご様子を交えて
長男さんの奥様
( ご家族さんの窓口 )
にお伝えしようと電話をしたら、

「 今回はほんとに
ありがとうございました。
おかげで昨晩は
ゆっくり休むことができました! 」

と、感謝の言葉を
先に言われてしまった。
これまで利用してきた
いくつものホームでは、
初日の、
夜にもならない段階で電話があり、

「 うちでは対応がムリなので
迎えに来てください 」

と言われて
お泊りを中止され続けてきた
とお聞きした。

ぼくは思わず、
「 次回も1泊でしたら
ご利用ください 」
と言ってしまった。

みんなから
「 何してるんですか?! 」
ってめっちゃ言われたけど、

月に1回、
ぼくの宿直の日に合わせて
1泊だけ来て頂くということで、

みんなは
「 ほんま部長は
どうしようもないっすね 」
と笑いながら納得してくれた。

それから約半年。

体調を崩して入院されるまで、
毎月1泊で
N夫さんはホームに来られていた。

回数を重ねるごとに、
じょじょにではあるが
拒否も少なくなってきていたし、
「 おーーーいっ! 」
も減ってきていたのになぁ。

N夫さんの名前が
載らなくなった
” お泊りのかたの予定表 ” は
なんだかもの足りなく、寂しく感じた。
今日もぼくの長文をお読みくださり、ありがとうございます。

たった1日でも熟睡できたことを、
長男さんの奥様が
あれだけ喜んでくださった
ということが、

” 自宅で認知症のかたの介護をする ”

ということの過酷さを
物語っていると思います。

認知症の症状が激しくて、
ほんとに受け入れが困難なかたも
正直おられますが、

それでも、

” ご家族さんのつかの間の休息 ”

の為に、
” どうにか受け入れさせて頂く
工夫はできないか? ”
を考えることのできるホームを
目指したいなと思います。

認知症のかたは
環境の変化にすごく敏感です。

N夫さんは、
( いつもの場所じゃない )
( いつもいる人がいない )
( なんでこんなところにおるんや? )
といった
不安・恐れ・怒りなどの感情から、

ホームに来られることで
よけいに拒否が強くなったり、
夜間に大声で叫んだりが
激しくなったんだと思います。

長男さんの奥様の言葉に思わず、

「 次回も1泊でしたら
ご利用ください 」
と言ってしまったぼくですが、

それはあくまでも、
ぼくが宿直として
ホームに泊まっていて、
夜勤者さんに
対応をお願いしなくて済んだから
できたことであって、

夜勤者さんだけで
N夫さんの対応をするのは
ムリだったと思います。

ご自宅ではさすがに
一睡もされない
ということはないし、
拒否もそこまで強くない。

それでも長男さんご夫妻は、
「 心が休まる日がなかった 」
とのことでした。

だからこそ、
「 毎月1日だけの
” おとうさんがいない日 ” が、
とってもありがたい 」
と言ってくださいました。

家族介護は、
何年続くかわからない
エンドレスのマラソンのようです。

大変な思いをされ続けている
ご家族さんの
” 心のよりどころ ” になるのも、
ぼくたちプロの介護士の
重要な役割のひとつじゃないかな
と思っています。

介護する側もされる側も、
もっと安心して過ごせる
世の中にしていきたい。

そのために微力でも
お役に立てたらいいな
という思いで、
発信を続けています。

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Dec 15, 2023
「えっ?2週間でこんなに認知症って進んじゃうの?」

D子さんのあまりの変貌ぶりに、
ぼくたち職員は驚きを隠せなかった…

90代のD子さんは、軽度の認知症はあるものの、
”なんで施設に入居されたんだろ?”って、
思うくらいしっかりされたかただった。

朝はご自分で化粧をしてお部屋から出てこられ、

テーブルを拭いたり、他の入居者さんにおしぼりを配ってくれたりと、職員の手伝いをしてくださる。

新聞広告を折りたたんで、『使い捨てゴミ箱』を作るのが得意。

そんなD子さんなので、他の入居者さんとは会話が噛みあわず、職員と笑って過ごすことのほうが多かった。

そんなD子さんが、急に体調を崩して入院されることになった。
さいわいにも、2週間ほどで退院してこられるとのことで、ぼくたちは安心したのだが、実際、戻ってこられたD子さんの、あまりの変わりようにかなりのショックを受けた…

杖をついて歩いておられたのが車椅子になり、
職員のことを1人も覚えておらず、

トイレの場所や職員を呼ぶナースコールを認識できない。

これまで普通にご自分で用を足しておられたのに、当たり前のように失禁してズボンを濡らし、オムツの中に出てしまったウンチを手でいじり、布団で拭いてしまう…
D子さん担当の職員さんとフロアの主任さん、ケアマネさん、リハビリさん、看護師さん、栄養士さんらが集まって、カンファレンスが実施された。

”一気に進んでしまった認知症に対してどのように関わるのがD子さんにとって一番いいか?” が、テーマだったが、

主任さんが、
「たった2週間なら、まだ間に合うんじゃないですかね?」と発言し、みんなの心にスイッチが入った。

”また元のD子さんに戻ってほしい” という強い想いを、みんなが共有した。

以前にやって頂いていた職員のお手伝いもほとんどできなくなっていたが、それでもご自分のことだけでもやって頂くことになった。
Read 5 tweets
Sep 17, 2022
認知症のおばあさんが、いつも夜中に人の部屋に入る。止めてもガンガン行くので、職員さんが困ってた。様子を見る為に、ぼくが夜勤をする。0時ちょうど。そのかた(Kさん)が部屋から出てきた。車椅子を足でこいで移動している。遠くから見てると、すぐに隣りの部屋のドアを少し開け、中を覗かれてる
その後ドアを閉め、すぐその隣りの部屋へ。また中をチラッと見て、隣りの部屋へ。それをフロア内の全30室。小一時間かけて回り、ご自分の部屋に戻られた。少しして、Kさんのご様子を確認すると、よく寝ておられる。2時。また出てこられ、同じ行動を取られる。一緒に夜勤している職員さんに聞くと、
「いつもこんな感じです」とのこと。うーん…4時の際、起きておられたおじいさんに「入るなって言うてるやろ!」と怒鳴られてた。全く聞く耳持たず、次は6時。正確に2時間ごとなのだ。夜勤が終わって確認すると、Kさんは昔、病院で看護婦長をされていたことがわかった。ふ~んな~んだ、なるほど~
Read 9 tweets
Sep 15, 2022
認知症のおばあさんが「おうち帰らなあかん」と、夕方になるとウロウロし始める。毎日のことでなかなか落ち着かれず、職員みんなが困ってた。ある日、「おうちまで送って行きますね」と一緒に施設を出た。隣りに付きながら、なるべく穏やかに話しかけるが、「ついてこんでええ!」と大きな声で怒鳴る
こけそうな時など、すぐに手が届く距離で付いて歩き、どうしたらいいか迷ってる時に話しかける。だんだん、ぼくの顔に安心される感じが大きくなる…そんな散歩を2時間。最後はヘトヘトで座り込まれた。施設に電話して車で迎えにきてもらう。おばあさんにお茶を飲んで頂いて、それから一緒に施設へ戻る
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