こうめい|親育て先生 Profile picture
Apr 7 8 tweets 2 min read Read on X
『学校なんて行かせても無駄ですから
 息子は学校には行かせません』

転校してきた小学5年生の
父親との面談で最初に言われた言葉だ。

僕はその言葉を聞いて
正直何から話をした良いか
戸惑ってしまった。

隣で本人は
俯いたまま黙っている。

僕が理由を聞くと
衝撃の言葉が返ってきた。
「前の学校でいじめにあって
 それ以来学校には行かせず家で
 勉強を見ています。
 前の学校でもそれでうまくやってきました。

 私はシステムエンジニアをしているので
 家で息子の勉強を見ることができますし
 将来の仕事も私が教えていきます」

そして家での教育方針を
事細かに説明してくれた。

僕は本人が納得しているのであれば
ホームスクールングは全然ありだと考えている。

どうやら父親の考え方も
悪くはなさそうだなと感じた。

頭で考えると悪くはない。けれども
なぜか僕の中で引っかかるものがあった。

それは後々になって判明することになる。
僕はお父さんにこう伝えた。

「本人がその形を希望するのであれば
 よいと思います。学校としては
 進度やテストなどをお父様に
 お伝えしていきますね。

 また普段の様子なども
 その際に聞かせていただけると嬉しいです」

こうして月に一度ほど
本人と話をする機会を作ってもらった。

何度か話をしているうちに
本人も打ち解けてきて
いろんな好きなことの話をするようになった。

家での勉強も順調で
全てがうまくいっているように思えた。

けれども最初に感じた
モヤモヤがどこか僕の中でひっかかっていた。 

そして事件が起きた。
校長が
「やっぱり学校に来ないのはおかしい」
そう言って彼を学校に来るように
指導するように僕に言ってきたのだ。

その校長は自分の学校をどう見られるかを
とても気にする人だった。

最初は僕も反対していたが
どこかモヤモヤしたものの正体が
気になっていたこともあって
校長も同席の元父親と
面談の場を持つことにした。

面談では最初と同じように
今進めていることや学校に
行かなくなった経緯を説明した。

校長は
「わが校はいじめ0なので安心して良いですよ」
と説明をするのだがたぶん
そこではないのだろうなと直感的に感じた。

父親は「そういう問題ではありません」
そう言って学校に行かせることを拒んだ。

すると校長は
「学校に行かせないなんて
 おかしいですよ。将来社会に出て
 困らないように私たちは言っているのです」

と言った瞬間父親の表情が急変した。
いつもの冷静な彼からは
想像できないほどの強い口調で

「おかしいのはそちらです。
 学校に行かせる義務ではなく
 普通教育を受けさせる義務でしょう。

 担任のこうめい先生との
 連携はとっているので何も
 おかしいことはないはずです」

そう言って校長を黙らせたのだ。
会議室には長い沈黙が流れた。

けれども次の一言で
場の空気が一変することとなった。
沈黙を破ったのは僕だった。

僕はずっと当の本人の様子が
気になっていた。

いつもの明るい表情とは違い
だまって俯いている。

僕は

「私もお父様のご意見や教育方針は
 良いと思っています。

 ただ、本人がどうしたいかが
 一番大事だと思っています。

 ◯◯くん(学校を休んでいる本人)
 本当はどうしたい?」

その男の子に視線が集まる。
しばらく沈黙が流れ
小さいけれどもはっきりとこう言った。

「ぼく学校に行きたい」

父親は目をキョトンとさせ
男の子を見つめる。

「お父さんと一緒に
 家で勉強するのは楽しいけど

 先生から学校の話を聞くと
 やっぱり学校っていいなって
 思えるようになったんだ。

 それに今なら
 学校に行っても大丈夫だと思う」

そこからは話が早かった。
理解のある父親だったため
すぐに学校に行くことに切り替えたのだ。

学校に登校するようになってから
あっという間にクラスに溶け込んでいった。

僕の感じていた違和感の正体は
本人の奥底にあった願いだったのだ。

このエピソードを通じて感じたのは
100人いれば100通りの正解があるということ。
そして不登校には段階があるのだということ。

常に同じ状態ではなく
休むことが必要な時期もあるけれども
必ず回復して動き出せる時期がやってくる。

もちろんホームスクーリングも
本人が希望すればとても効果のある学習方法だ。

だが、彼の場合は学校に行き
友達と一緒にいるということが願いだったのだ。

これからも教育者として
「こうあるべきだ」ではなく
「この子の本当の望みはなんなのだろう」
という視点を持ち続けたい。
ここまで読んでいただきありがとうございます。教員、学習塾、不登校向けオンラインフリースクールの運営、行政のオンライン授業の作成などを経験してきた私の教育エピソードを日々発信しています。

オンラインで学べるコンテンツ集もぜひ参考にしてください。

子どもが「学校に行きたくない」と言ってきた時の声かけのコツはこちら。

大きくなってくると子どもとのコミュニケーションをほとんど取らない親が増えてきます。そうならないように大切なポイントがあってそれは「相手の関心に関心をもつ」ことです。

• • •

Missing some Tweet in this thread? You can try to force a refresh
 

Keep Current with こうめい|親育て先生

こうめい|親育て先生 Profile picture

Stay in touch and get notified when new unrolls are available from this author!

Read all threads

This Thread may be Removed Anytime!

PDF

Twitter may remove this content at anytime! Save it as PDF for later use!

Try unrolling a thread yourself!

how to unroll video
  1. Follow @ThreadReaderApp to mention us!

  2. From a Twitter thread mention us with a keyword "unroll"
@threadreaderapp unroll

Practice here first or read more on our help page!

Did Thread Reader help you today?

Support us! We are indie developers!


This site is made by just two indie developers on a laptop doing marketing, support and development! Read more about the story.

Become a Premium Member ($3/month or $30/year) and get exclusive features!

Become Premium

Don't want to be a Premium member but still want to support us?

Make a small donation by buying us coffee ($5) or help with server cost ($10)

Donate via Paypal

Or Donate anonymously using crypto!

Ethereum

0xfe58350B80634f60Fa6Dc149a72b4DFbc17D341E copy

Bitcoin

3ATGMxNzCUFzxpMCHL5sWSt4DVtS8UqXpi copy

Thank you for your support!

Follow Us!

:(