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Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi
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いや時代とか関係ないんだけど。なんでそう思えるんだ? 医師だって「大量に正当業務行為として」傷害罪相当行為を違法性阻却の下で手術その他を行なっているのに誰も疑問を挟まない。(正当な医療行為から逸脱すれば即座に医師個人に直罰がふりかかる。)
そろそろこの疑問に答えておかねばなるまい。

#ブロッキング0422
「機械による選別的遮断なんだから秘密を侵害していない」との素朴な感覚は、個人情報保護法における保護の法的利益について「人に知られなければ問題ない」とする素朴な感覚と同根。平成15年法以来、安全管理措置のみが法目的であるかのように扱われてきた迷走ぶりと通ずる。
先般の改正は残念ながらプロファイリングに係る権利を法目的として取り入れることができなかったが、その必要性は今の海外動向からして、もはや無視できないところだろう。このプロファイリングは、人の属性を推定すること自体ではなく、推定された属性に基づき個人を自動処理で選別するところにある。
「個人に対する自動処理による選別」を保護利益とした途端、「人に知られてしまう」ことは無関係となり、機械に「知られて」処理されることこそが対象となるわけである。そしてこのことは、今日始まったことではない。昭和63年の旧個人情報保護法の制定時から、本来はそれが法目的であるはずだった。
昭和63年の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律は、立案初期では「個人データ」の語が用いられており、欧州の制度を真似たもの(定義は英国法のコピー)であった。欧州では前記のような自動処理を当初から問題の中心に据えていた。(それが後に忘却されて迷走した。)
通信の秘密についても同様に捉えられるのではないか。つまり、通信の宛先を機械が「見て」自動処理で選別し、一部を破棄したり改竄したり遅延させたりすることは、通信の秘密が想定した保護利益を害するのであり、ここで「秘密」という切り取った単語の語義に囚われてはならないのである。
個人情報保護法も「プライバシー保護法」と捉えると話がおかしくなる。個人に対する自動処理による決定はプライバシー侵害なのか?と言えば、憲法学あるいは民法上のプライバシーには当たらないということになろう。EU法が、privacyの語を用いずdata protectionの語で統一しているのは、この理由から。
憲法21条2項の通信の秘密の意義は「通信の自由は端的に表現の自由の保障の一環である」とする説(坂本)と「通信の秘密を保護する趣旨は何よりもプライバシーである」との説(長谷部、松井)があるらしい(注釈日本国憲法(2))が、後者では、機械による自動選別をカバーしていないのであろうか。
今回のシンポジウムでは、機械が宛先を見る(DNS問合せを見る)ことが通信の秘密侵害となることについて、人が見ることと機械が見ることとを区別せず当然に同様に扱われるとする暗黙の前提があったが、本当はそこから理論的に導く必要があるのではないか。
例えば、IPヘッダを機械が見てルーティングすることも通信の秘密侵害とした上で正当業務行為として違法性阻却されるとの整理があるが、そうせずとも、通信の秘密を前記のように位置付ければ、ルーティングは選別も改竄も遅延もないので「通信の秘密侵害はない」と整理することもできるのではないか。
「通信の秘密が時代に適応してない」との声は耳触り良いが、通信が差別的に扱われないことの保障は憲法制定当時の通信環境においても当然に想定されていたのであり、憲法21条2項が通信の秘密と並べて検閲を禁じていることがそれを意図していたのではないのか。であれば当初から一貫しているのである。
こういうことを憲法学の素人が発言することは正直憚られる。トンデモ屋になりかねない。しかし、何人かに聞いても憲法学において通信の秘密は不人気領域なのか学説の積み重ねが薄く、機械が「見る」ことについて伝統的な学説には想定がないように見える。いよいよここに切り込まなければならないのか。
もっと文献調査して論じたい。

なお、「通信の秘密の保護法益は何か」について今回のシンポジウムで論点にならなかったのは残念だった点の一つである。
違法性阻却の要件が論じられた通信の秘密侵害罪の保護法益は、個人的法益に加えて社会的法益もあるのだとする説がある。つまり、ブロッキングは、通信利用者の利益を損なうだけでなく、「電気通信事業者の通信回線は着実にデータを転送するもの」という社会の信頼も損なうものだというわけである。
その点、今回、「ブロッキングのようなことが横行するとどこのサイトを見ているのかわからなくなる」とか「通信の中間者が何をしているかわからない気持ち悪いものになってしまう」という声が、技術者から挙がっていたが、これを刑法学、憲法学の立場から、社会的法益で捉える説明が欲しかったところ。
ここでも同様の勘違いの例。開封しなければ(「秘密」を侵害しなければ)検閲でないとでも思っているのだろう。目的と手段を取り違えている。開封の禁止は手段の一つにすぎず、目的は(宛先による選別を含めた)選別による排除も「検閲」なのだということが理解されていない。
通信の秘密侵害の禁止と検閲の禁止が一体的に規定されているように、宛先による選別を含めた選別による排除も「検閲」なのであると同時に、その手段として宛先を見ること(人が見るのか機械が見るのかは問わない)も「通信の秘密」侵害。このことがなかなか理解されない。
まだ手段と目的の区別ができない様子。条文は手段の記述にすぎない。その前提に目的があり、その目的に沿う解釈が求められる。
多様化したからこそ線引きが重要になっている。(電話や手紙と同様に)データ通信回線は土管であり続けるべきであり、それ以外の電気通信役務については土管に求められる制限はない。その区別はすでに行われている。
土管に徹しないのを合法ということにしたい一派が言うのが「窃用ではない」(=通信は多様化している)とする主張。これに対抗するには、元の原理から整理する必要がある。
うわー、まーだこんなこと言ってるエンジニアがいるゾー〜!
なに言ってんの?この人!
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