郡司芽久(キリン研究者) Profile picture
Anatomist / Morphologist.東洋大学助教。博士(農学)。小さい頃からキリンが好きで、2017年3月に念願のキリン博士になりました。動物(特にキリン)の体の構造や動きの研究をしています。 著書→キリン解剖記(ナツメ社2019)・キリンのひづめヒトの指:比べてわかる生き物の進化(NHK出版2022)
May 26, 2023 8 tweets 2 min read
明治時代に初来日した2頭のキリンは、死後剥製となり、オスの方は今でも国立科学博物館に保管されています(現在上野で展示中!)
実はこれまで、この剥製が誰の手でどのように作られたのかなどは不明でした。「まぁ当時ならこの人くらいしか作れないでしょ」と推測されていた程度です。 Image ところが昨年、当時の子供向け雑誌に、剥製の作成過程が写真付きで詳細に解説されていたことが発見されました。そして「この人しかいないでしょ」の"この人"である坂本喜一が製作した事、木材を削った芯に肉付けして皮を被せている事、当初はジオラマ展示されていた事などが明らかになりました。 Image
May 25, 2023 10 tweets 2 min read
明治時代に日本にやってきたキリンたちのことを色々調べた共著論文が公開されました。jstage.jst.go.jp/article/bnmnsz…

ちなみに調べる過程で、↓の松岡環翠のキリンの絵が、田中芳男先生がフィラデルフィア万博で購入して持ち帰った剥製を見て描いたものである可能性がかなり高いことがわかりました。 田中先生が持ち帰った剥製の姿形は、これまでほとんどわかっていなかったのですが、今回の調査で↓の個体である可能性が極めて高いことがわかりました。ツノが!一緒!!ポーズも同じ!!digitalcollections.nypl.org/items/510d47e1… Image
Mar 25, 2023 11 tweets 1 min read
"動物の尊厳"について考えている。

最近の動物園では、「飼育下においてもより良い状態で居られる(well-being)ように最大限の配慮をする」という意識が高まってきています。しかしそれは終わりのない取り組みで、明確な正解もないものだと感じます。1/9 どれだけ配慮を重ねても、飼育している以上、「彼らの尊厳を全く傷つけていない」と断言することは困難です。あくまで動物園という状況下で、出来うる限りWell-beingな環境を目指すことしかできません。だからこそいまでも日々飼育技術がアップデートしていくのだとも思います。2/9
Mar 24, 2023 4 tweets 1 min read
那須どうぶつ王国の件、プールの中にわざと落ちたことは勿論のこと、その後スタジオの方々がペンギンではなくマイクの安否を気にしている姿にもドン引き。30万円のマイクを気にされていましたが、フンボルトペンギンは絶滅危惧種でワシントン条約附属書Ⅰで国際取引等が厳しく制限されている種ですよ。 もちろん、たとえ絶滅危惧種ではなくとも、許される行為ではないですが。別にテレビ局に限った話ではないのですが、「何を大切に思うか」という根本的な価値観があまりにズレていて、どれだけ言葉を尽くしても伝わらない時があるんですよね…
Jan 19, 2023 5 tweets 1 min read
土木的な観点は私には全くないので、コメントありがたいです。なるほど、今回土運船を使うことによって低コスト化がなされているんですね。また埋設可能箇所については、確保が困難であったことは想像に固くないです。 一方で、1990年以降大阪湾で見つかったクジラの死体計7頭は、本件以外全て埋設処理になっているので、博物館関係者はその点で「なぜ今回だけ…?」という気持ちが湧いてしまうのです。
Jan 19, 2023 4 tweets 1 min read
この部分が中々伝わらなく難しいなぁと思っているのですが、漂着クジラの処分法は「埋設して土に還す」「海に投棄して海に還す」「焼却して灰に還す」の三択です。大型の場合、焼却は困難なので実質二択。そして、埋設することと骨格標本を作ることはイコールではありません。 骨格標本にしないけれども埋設することは頻繁にあります。船を動かして海に投棄するよりも、重機で穴掘って埋める方が通常は安価だからです。実際に、漂着したクジラの大部分は埋設処理され、そのまま放置されて土に還ります。
Jan 19, 2023 20 tweets 2 min read
淀川のマッコウクジラの一件をきっかけに、鯨骨生物群集について調べ学習をしたので、少しまとめてみようと思います。今回の海洋投棄について、「それが自然な状態だよね」と思った方にぜひ読んでいただきたいです。というのも、マッコウクジラは本来『沈まぬクジラ』と考えられているからです。1/12 私は知らなかったのですが、クジラの仲間には、死後沈むクジラと沈まないクジラがいるそうです。多くのクジラ類は死後その場で沈降しますが、マッコウはすぐには沈まず、海上を浮遊しながら分解されていきます。ヒゲクジラでは、セミクジラとホッキョククジラが沈まないと言われているとのこと。2/12
Jan 16, 2023 19 tweets 2 min read
淀川のマッコウクジラの件で、「標本にするって言ってもお金がないんじゃないの?」という質問が来たので、少し解説します。まず、大型クジラの死体の処理は、①海岸へ埋設、②重石をつけて海洋投棄の2択です。1/12 過去の事例を見ると、埋設処理(&一部焼却処分)が基本です。死体の引き上げが困難な場合や死体が多すぎて埋められない場合は、海洋投棄されるケースもあります。海洋投棄はどうしても再漂着のリスクがあり、数十トンのコンクリートと共に沈めるため、あくまで最終手段という位置付けのようです。2/12
Jan 15, 2023 7 tweets 2 min read
過去の例ではマッコウクジラを沖合に曳航して沈めるのに一頭500万ほどかかっています。海岸に埋設するのも沖合に沈めるのも、どちらも膨大な労力とお金がかかります。労力についてはこちらの記事が参考になるかと思います→spf.org/opri/newslette… そして、人の手で投棄した場合、何らかの理由でどこかに再漂着すると責任問題になる可能性もあります。そのため膨大な量の重しをつけて沈めるわけですが、腐敗して重りが外れるかもしれません。別の自治体に打ち上がったら、処理費をどちらで負担するかも問題になります。
Jan 14, 2023 18 tweets 2 min read
「大阪市博にはもうマッコウクジラの骨格標本があるんだから、もういらないんじゃないか」というご意見をちらほら見かけるのですが、博物館は一種につき一個体の標本があれば良いというものではないです。いくつも集め続けてはじめて、雌雄の違いや大人と子供の違い、昔と今の違いがわかるからです。 それに、今はどちらも同じマッコウクジラですが、今後様々な研究が進んでいって、マッコウクジラがいくつかの種に分けられる可能性だってゼロじゃないわけです。「かつては同種として博物館に保管されていたものが、最新の分析によって別種として報告される」なんてことも割とよくある話です。
Jun 4, 2022 8 tweets 1 min read
この動画、定期的にバズりますね。キリンにも人にも危険な行為なので、絶対に真似しないようにして欲しいです。ちょうど1年ほど前、某テレビ番組から「この動画を番組で紹介するので、キリンが何キロくらいまで口で持ち上げられるのか教えて欲しい」と連絡をいただいたことがあります(1/8) 動画を見て危険だなと思ったので、番組の方には以下の回答をしました。
・キリンが口で何キロ持ち上げられるのか、知識を持っていない
・人間にもキリンにも危険な行為であり、番組をみて『私も動物園でやってみたい!』と思わせる可能性があるので、ご協力できない
(2/8)
Jan 17, 2022 8 tweets 1 min read
「〇〇の勉強って何の役にたつの?」という話はしょっちゅう耳にしますが、知識を身につけることは人生を豊かにしてくれますよ。目に映るものを認知するには知識が必要で、同じものを見ていても、知識に差があれば受け取る情報量にも差がでます。いわゆる「解像度」の違いです。 それと、学問に限らず、同じ知識をもつ相手の方が友達になりやすいと思います。スポーツのルール、芸能人やバンドの名前、ファッション用語…もちろん知らない相手に教えてあげるという友達のなりかたもあるけれど、同じ興味・知識があった方が友達になる速度が上がる気がする(個人の感想です)
Jan 12, 2021 31 tweets 4 min read
昨日話題になった「ミニキリン」について。
自分の専門に近い内容で、論文も既に読んでいて、海外の専門家のインタビュー動画・英語の元記事・和訳された日本語記事の全てが確認できたため、どこで情報が歪められたのかがよくわかりました。二度とない経験かもしれないので、メモしていきます。1/11 まず、元の論文の内容は「2014-2019年の観察調査により、ウガンダとナミビアで低身長症という病気のようなキリンが2頭見つかった」というもの。2頭はどちらも一歳ほどで、同年代の普通のキリンに比べて、肘から先の骨が明らかに短い」という報告です。背丈の話はどこにも載っていません。2/11
Jan 12, 2021 10 tweets 2 min read
確かに今回報告されたキリンは脚が異常に短いですが、このキリンたちはまだ成熟しきっていない子どもです。それを「背が平均の半分のミニキリン」と呼ぶのはNGだと思います。

背が平均の半分しかない「ミニキリン」発見、脚が異常に短いと専門家(ロイター)
#Yahooニュース
news.yahoo.co.jp/articles/0270d… 論文中で言及しているのは「中手骨(手のひらの骨)と上腕の骨が顕著に短い」ということであって、身長についてなど言及していません。
bmcresnotes.biomedcentral.com/articles/10.11…
Jan 10, 2021 4 tweets 1 min read
昨夜の「サンドウィッチマン&芦田愛菜の #博士ちゃん 」を見てくださった方々、どうもありがとうございます🦒
科博の収蔵庫は、年に1度一般公開日があります。「羨ましい〜!」と思った方々、コロナが終息した暁には、ぜひ一般公開に遊びにいらしてください。剥製の部屋も人骨の部屋も入れます! そして、剥製室に保管されていた標本の一部は、オンラインやVRでも観察することができます!→kahaku.go.jp/3dmuseum/yoshi…

番組内で紹介したハーテビーストやゲレヌクといったウシの仲間たちを見ることもできますので、是非是非。製作者は @rojohaku さん。
Oct 30, 2020 7 tweets 3 min read
「サメの歯は、形が違うと性能も変わるのか?」を調べるために、サメの歯を使ったノコギリを作って、シャケの切り身の切りやすさを比較した論文!この研究、やってる最中めちゃ楽しかっただろうな〜!
(実験で分かったことは、スレッドへ!) 実験でわかったこと

・歯の形によって切れ味に大きな差がある。カグラザメ(前ツイートの下2つ)に比べて、イタチザメ・メジロザメ(前ツイートの上3つ)は三倍の深さまで切れる!
・何度も実験すると、イタチザメ・メジロザメでは切れ味が落ちたが、カグラザメはあまり変わらず
Aug 11, 2020 6 tweets 1 min read
1930〜60年代、基礎研究によりアルマジロが低体温であるが発覚
1970年代、低体温の人はハンセン病が悪化しやすいことから、「平熱が低い動物はハンセン病になるんじゃ?」と着想し、アルマジロがハンセン病にかかる数少ない動物だと判明
→人工培養が困難だったハンセン病原因菌の大量培養に成功 それまではマウスの掌で培養していたので、一気に大量のらい菌を培養することが可能になったそうです。
なお、ハンセン病研究に利用されたココノオビアルマジロは、必ず一卵性の4つ子を産むことでも知られ、実験動物でもないのに「クローン」を扱えるという点も研究上の大きな利点だったようです。