依田高典 Profile picture
自己紹介 京都大学で経済学を教えています。人間の経済心理の限定合理性に着目する「行動経済学」を専門としています。実際の生活の中で仮説検証を行う「フィールド実験」を用いています。経済学と機械学習の融合研究にも励んでいます。京都大学交響楽団音楽部長、消費者庁研究センター長、デジタル市場競争会議議員等もしています。
Jun 17, 2022 6 tweets 1 min read
電力会社が理解していないようなので改めて解説します。リベート水準は小売価格と限界費用の差額に設定することで社会厚生が最大化します。電気の小売価格が¥30、卸売価格が¥100とすれば、その差の¥70を1kWhあたりのリベートとします。 単純に価格=限界費用とするダイナミックプライシングでも同じ社会厚生が得られますが、分配問題として考えるとリベート方式の良いところは社会厚生の増分が消費者余剰の増分と合致することです。だから消費者に人気があります。弱点は損失回避が働かないので節電量は小さい。
Jun 17, 2022 4 tweets 1 min read
嘘か真か「1kWあたり5ポイント」と書いてあって不安になりましたが、これはやりがい詐欺のようなものです。そして効果も早晩なくなります。知っていてやるなら詐欺、知らずにやるなら無知。電力会社は平気でこういうことをやってくるので怖いです。 僕がデマンドレスポンス研究を始めたばかりの頃、講演会等には電事連等の見張りがつき、彼らにとって都合の悪い発言があると、経産省に苦情が届けられたのも懐かしい思い出です。今回はしっかりやろう。協力は惜しみません。連絡してください。
Jun 17, 2022 4 tweets 1 min read
電力改革の制度設計に関わった経済学者がネットで叩かれるのは見ていて忍びないものがある。ただし政策に関与するということはそれくらいの覚悟が必要ということだ。学者側から見て今は情報がネットに溢れているので政策に関与して得られるものもさほど多くない。 マスコミ側も知る必要があるのは、ある分野の政策をリードする学者がその分野でトップの業績を持つわけでもないことだ。電力で言えばGRIPSの田中誠先生がトップだろう。田中さん、まだAER受理を業績にアップしてないけれど。
home.j07.itscom.net/mtanaka/tanaka…
Jun 16, 2022 4 tweets 1 min read
デマンドレスポンスの経済産業省事業と環境省事業を経験しました。前者は電気価格を直接限界費用に合わせるダイナミックプライシング型、後者は電力価格と限界費用の差額を報酬とするリベート型です。その一長一短を簡単にまとめると。 ①節電効果は、ダイナミックプライシング型が15%程度、リベート型が5%程度で前者が優れます(参考までに情報提供のナッジは3%程度)。これは米国でも確認されています。人間は損失回避性があるので、お金を払う方が強く反応します。
Jun 16, 2022 8 tweets 1 min read
リベートを用いたデマンドレスポンスについて、私たちの経験から、幾つか重要なポイントを簡単に解説します。リベートを用いたデマンドレスポンスを社会実装する際の参考にして下さい。 ①リベート水準は、現金であれポイントであれ、価格と限界費用の差額に設定すること。例えば、小売電気価格を30円、卸電気価格(限界費用の代理変数)を100円とした時、その差額70円をリベート水準とします。そして、リベート金額は、リベート水準(¥) × 節電量(kWh)として計算されます。
Jun 14, 2022 4 tweets 1 min read
守秘義務がかかるので慎重に述べるがある工学分野の学位審査の事前相談を受けた。当該分野で非常に異議のある研究だと思うが経済学からみると粗がある。私が学位審査の外部委員で加われば職業的誠実さからその粗に触れないわけにはいかない。経済学の学位でないので私が加わらなくても問題ない。 二日間の熟考の結果、審査委員会には加わらないことにした。こうも思う。経済学的には私の言うことが正しくても、企業のヒューリスティクスとしては経済学的に正しくない工学的なアルゴリズムの方が有用である可能性はある。経済学的に正しくない=経済的に役に立たないではないと思う。
Mar 13, 2022 9 tweets 1 min read
大学の常勤研究者と官庁の非常勤研究センター長を兼務する立場から、統計学や計量経済学の応用を必要とするデータ分析を伴う、喫緊を要する政策分析には、様々に考えるところがある。 ①大学の研究者の評価は査読付き学術論文によって行われるので、論文にならないような政策レポートは趣味か奉仕にしかならない。特に若手研究者の貴重な時間を割いて政策レポートを本人に書かせるのは忍びないしできれば避けたい。論文とレポートでは目指す時間軸も異なる。
Mar 10, 2022 6 tweets 1 min read
ラボミーティングをした際に、将来のデジタルプラットフォームの政策の舵取りに議論が及んだ。EUではデジタル市場法を定め、巨大IT企業等を事前規制する法的根拠を与える議論で世界をリードしている。日本では巨大IT企業の行為を規制する法的根拠が弱いために付け刃的議論に陥りがちだった。 これには理由がある。20世紀の経済的規制は独禁法と公益事業法の二分法で運営されてきた(他に社会的規制がある)。前者は一般的取引分野で反競争的行為を主に事後で規制する。後者は自然独占分野で供給側の規模の経済性を主に事前で規制する(後に事後的な接続規制に転換)。
Feb 18, 2022 9 tweets 1 min read
【プラットフォーム政策と独禁法】政府の会議で現行の独禁法とプラットフォーム政策の関係について正面を切って質問されたので、良い機会だと思いお時間を取り丁寧に説明した。個人的意見ではあるが共有する価値があるように思われるので備忘録として掲載する。 ①反トラスト法は19世紀末〜20世紀初めの米国で顕著になった独占に対して講じられた法律。背景には近代経済学の競争=善という考えがあった。他方でどうしても競争に馴染まない電話電力ガスのような「自然独占」分野がある。こちらは事業法を定め公益事業規制することにした。
Feb 18, 2022 4 tweets 1 min read
僕にとってのデータ科学の魅力とは、仮説検証のために、今は手元に存在しないデータを自ら収集し、かつ人間に介入し望む方向に行動変容させることで、とりあえずデータがあるから推定式に放り込んでみるという調査研究は手がけたことはない。ひとえにデータ収集の苦労が多い。 事例を挙げると、電力会社・家電会社の協力抜きの独力で世帯消費電力と保有家電年式の相関関係を調べるために、国の補助事業の一環でデータをの収集から分析までやるのに3年かかった。長い時間が掛かったのは実施項目の優先度が高くなかったからだが、大変なことに変わりはない。
Oct 28, 2021 4 tweets 1 min read
僕は経済法専門の友人が多く尊敬もしているが、デジタル世界の経済問題に現在の経済法はさほどに役に立たない。後の祭りにしかならない。反トラスト経済学も似たようなもの。所詮これらは20世紀型独占規制の遺物。21世紀の独占には異なる学問体系が必要だと思う。 だからといって「優越的地位濫用規制」という理屈も何もない刃物を当局がやたらと振り回すのは別の意味で公権の濫用だと思う。規制された方が良い。
Oct 28, 2021 4 tweets 1 min read
表裏一体で進行するのがウェアラブル・ボイスアシスタントを経由の巨大プラットフォーマーによるプライバシーデータのファーストパーティ占有とサードパーティ利用拒絶だ。身体情報・位置情報も含めて他者には使わせないが身内ではがんがん使う。この横暴を許して良いものか。国民が判断すべきこと。 検索エンジン経由で収集される個人情報とウェアラブルで収集される個人情報の違いは「意識性」である。検索で個人情報を入力する時には多少なりとも意識する。場合によっては即座に履歴を消去するだろう。ウェアラブルではもっと重要な情報を抜かれることを普段は意識しない。こちらの方が危ない。
Oct 26, 2021 4 tweets 1 min read
10月25日、和歌山北高校で行動経済学の講演をしてきました。和歌山の街をしみじみ歩いたのは初めてで城郭の豪儀さに驚きました。風雨の中、往路は駅から北高までブラクリを経由して紀ノ川を渡って歩きました(普通の和歌山市民はそんなことしない)。 Image ところで和歌山は秋篠宮紀子様の川嶋家ゆかりであることを思い出しました。ただし紀子様に影響を与えた祖母の紀子(いとこ)様は、元大阪市長 池上四郎に連なる池上家の出であること、池上淳京大名誉教授から学部長就任激励の丁寧な手紙を頂戴したことも思い出しました。
Jan 26, 2021 5 tweets 1 min read
電力卸取引市場は落ち着きを取り戻しつつありますが責任論を巡っては議論が錯綜しています。端的に言えば①燃料制約による供給不足を招いた供給側②パニック的な買い入札を行った需要側③今般の危機に手をこまねいた規制側それぞれにある程度の責任はあると思います。
emsc.meti.go.jp/info/business/… 自由市場が効率的資源配分のバロメータとして機能するのは一般的には右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線の交点で均衡が定まる場合で、均衡数量を満たす供給がなされず逆L字型で供給曲線が垂直に立ってしまえば逆三角形の厚生の損失が発生します。
Jan 23, 2021 4 tweets 1 min read
電力改革は本来ラストリゾート(最後の保障)が存在し、その自由度の中での遊び部分なのですが、日本のように送電線もガスパイプラインも連系が不十分な国で改革が成り立つのか厳密には証明はされていない。原発事故で地域独占が正しかったわけでもないアンチテーゼとして始まった厳しい挑戦です。 逆説的ながら大震災後に辛うじて安定供給が守られたのは震災前の地域独占時代の過剰気味な先行投資のお陰。これから発送配電の諸施設が老朽化していくと自由化後の英国のように安定供給危機は一気に顕在化してくる。覚悟を決めて技術革新を前取りしながら震災熱波風雪をしのいでいくしかありません。
Jan 14, 2021 4 tweets 1 min read
2度目の緊急事態宣言の経済的ダメージはどれぐらい? 分科会メンバーの経済学者に聞きました buzzfeed.com/jp/yutochiba/c… @ForzaYutoより 雑談ですが20世紀の偉大な経済学者の半生を調べているとかなりの場合、大戦中は政府や軍の中で分析的な仕事に就いて最大限能力を活用されています。日本でもないわけではなかったが使い方の量と質がまったく違った。なるほど負けるわけだと思いました。amazon.co.jp/dp/4121101030/…
Jan 13, 2021 6 tweets 1 min read
最高値を更新する限り続けるとして日本卸電力取引所1月14日のスポット取引価格は232円/kWh。昨日に引き続き東日本では最高値250円/kWhを付けました。電力各社の発表を見る限り、今日は前日実績を下回り、北陸を除けば需給危機的状況にありませんが、玉不足はあるにせよ卸価格は下がりません。 エネ庁が国民に向けて動くことはなさそうですが、今とりあえず家庭業務の需要家が出来ることは暖房熱源を電気からガス灯油に切り替えること。リンク先を信頼する限り家庭の暖房は6割方電気を熱源に使うようです。雪国だと8割方灯油なのですが。
tepco.co.jp/cc/press/betu1…
Jan 13, 2021 6 tweets 1 min read
この点、ご指摘ごもっとも。しつこいが今のCOCOAがプライバシー保護にも役立たないとすると何のためか分からない。もう一度、プライバシーに配慮しつつ、位置情報の活用を含め感染追跡アプリの再考を。

「自分と接触した人が2日間前に限定されると、陽性者のプライバシーはかなり限定されてしまう」 1月13日時点の接触確認アプリDL率(現在利用率はもっと低い)18.6%、単純計算によるDL者の陽性登録率16.1%。分かっていたことだが行動経済学のいう「オプトイン2割の壁」を証左している。
Jan 13, 2021 5 tweets 1 min read
僕はネットワーク産業(公益事業)経済学のスペシャリストとしてキャリアをスタートさせましたが、少しその市場観は小泉時代の規制改革を推し進めた市場原理主義経済学者と違っていました。植草益東大名誉教授と同じで産業融合重視でした。↓2003年の寄稿論文です。
1drv.ms/b/s!Ajhh5Jq4-z… 「未来の技術⾰新がどのようなもので、それに最適に対応した産業組織がどのようなものかを経済学者も経済官僚も事業者も判ろうはずがない。そして、そのときの予測誤差が増幅されてしまったときに悲劇は起こる。電話がつながらない、電⼒が供給されない、⽔道⽔が枯渇する、列⾞が脱線する。
Jan 12, 2021 5 tweets 1 min read
最高値を更新する限り続けるとして日本卸電力取引所1月13日のスポット取引価格は222円/kWh。東日本では最高値250円/kWhを付けました。需給は緩みつつあるのに価格高騰は止まりません。財政破綻した国の物価上昇を見るようです。 Image 旧知の全国紙記者から意見を求められました。記事にもなるかも知れませんが①市場の失敗ではない。供給が尽きれば価格が逆L字型に高騰するのは市場の成功。市場に任せてはいけないものを市場に任せたか、市場設計が中途半端で一面的だったか、いずれにせよ市場の使い方の政策の失敗。