Shin Hori Profile picture
弁護士。非法学部卒、元会社員。2020年2月末から新著『13歳からの天皇制』(かもがわ出版)発売中!https://t.co/ZAAgvFTkR3 最近は冷笑に対する冷笑、反動に対する反動に興味があります。 ブログは https://t.co/XHYUk1UFxD お問い合わせはDMで

Jan 22, 2021, 10 tweets

東京五輪の開催都市契約を軽く見てみたが、これ、国際的なビジネス契約によくある、不可抗力免責(Force Majeure)の条項がないですね。予見できない困難が生じた場合に開催側が変更をIOCに申し入れることはできるが、IOCに変更義務はない。契約解除はIOC側からだけ可能で、開催側からは解除できない。

→戦争・内乱その他の危機的事態が起こった場合、IOCが開催側に対してまず一定期間内に"是正"を求め、是正が行われなければIOC側は中止して契約解除でき、損害賠償請求権も維持される。逆に、開催側からの中止や解除はできないようになっている。

→予見できなかった異常な困難が生じた場合、開催側の組織委は変更をIOCに要求はできるが、その要求にIOCは従う義務はなく、IOCの裁量による判断次第となっているので、変更される保証はない。


なお違約金・損害賠償に関する条項も存在します。


コロナ禍で実際に中止となった場合、これらの契約の解釈をめぐって争いになる可能性は当然ありますが、このような紛争の解決については、スイス法を適用して、ローザンヌの仲裁裁判所または通常裁判所が判断することとされています。


五輪の開催都市契約は、日本語でいう業務委託契約みたいな感じですね。

要はIOCが、五輪の開催の仕事を、都やJOC(=NOC) に対して「委託」「委任」(entrust)している形です。

つまり開催側は、IOCから五輪開催のお仕事を請け負って"納品"するような立ち位置なのです。


根本的な問題として、契約では五輪大会は「IOCの独占的な財産」(exclusive property)とされています。

IOCと開催側が対等の立場で共同で開催するのではなく、IOCの独占する財産としての五輪の開催業務を、都やJOCがお仕事として委託していただく…という構造になっていることがわかります。


五輪の開催契約の重要な点は

1.IOCが発注者で日本側が受注する業務委託に近い構成

2.日本側にあるのは"開催権"ではなく"開催義務"

3.変更や契約解除ができるのはIOC側のみ

4.日本側は収益の一定部分を与えられるが、賠償責任を負うことがある

公式サイト参照

2020games.metro.tokyo.lg.jp/taikaijyunbi/t…


五輪は

a.無観客でも海外選手ゼロでも形式だけ「開催」して契約上の義務を果たす

b.契約違反覚悟で中止し訴訟で争う。スイス法の解釈や判例によっては、損害賠償を減額または回避できるかも知れない?

c.IOCと協議し、2032年移行への「延期」の合意をして問題を先送りする

...が考えられます


ただいずれにしても生命・健康・安全が第一であり、「契約上は日本側の判断で中止や解除ができないから、やめられない」というのでは思考停止です。

最悪、違約金等の支払を覚悟してでも中止を考えるべきではないでしょうか。交渉や訴訟の中で負担を軽減できる可能性も無いわけではないでしょう。

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