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Jan 22, 2021 10 tweets 3 min read Read on X
東京五輪の開催都市契約を軽く見てみたが、これ、国際的なビジネス契約によくある、不可抗力免責(Force Majeure)の条項がないですね。予見できない困難が生じた場合に開催側が変更をIOCに申し入れることはできるが、IOCに変更義務はない。契約解除はIOC側からだけ可能で、開催側からは解除できない。
→戦争・内乱その他の危機的事態が起こった場合、IOCが開催側に対してまず一定期間内に"是正"を求め、是正が行われなければIOC側は中止して契約解除でき、損害賠償請求権も維持される。逆に、開催側からの中止や解除はできないようになっている。 ImageImage
→予見できなかった異常な困難が生じた場合、開催側の組織委は変更をIOCに要求はできるが、その要求にIOCは従う義務はなく、IOCの裁量による判断次第となっているので、変更される保証はない。 Image

なお違約金・損害賠償に関する条項も存在します。 ImageImageImage

コロナ禍で実際に中止となった場合、これらの契約の解釈をめぐって争いになる可能性は当然ありますが、このような紛争の解決については、スイス法を適用して、ローザンヌの仲裁裁判所または通常裁判所が判断することとされています。 Image

五輪の開催都市契約は、日本語でいう業務委託契約みたいな感じですね。

要はIOCが、五輪の開催の仕事を、都やJOC(=NOC) に対して「委託」「委任」(entrust)している形です。

つまり開催側は、IOCから五輪開催のお仕事を請け負って"納品"するような立ち位置なのです。 ImageImage

根本的な問題として、契約では五輪大会は「IOCの独占的な財産」(exclusive property)とされています。

IOCと開催側が対等の立場で共同で開催するのではなく、IOCの独占する財産としての五輪の開催業務を、都やJOCがお仕事として委託していただく…という構造になっていることがわかります。 ImageImage

五輪の開催契約の重要な点は

1.IOCが発注者で日本側が受注する業務委託に近い構成

2.日本側にあるのは"開催権"ではなく"開催義務"

3.変更や契約解除ができるのはIOC側のみ

4.日本側は収益の一定部分を与えられるが、賠償責任を負うことがある

公式サイト参照

2020games.metro.tokyo.lg.jp/taikaijyunbi/t…

五輪は

a.無観客でも海外選手ゼロでも形式だけ「開催」して契約上の義務を果たす

b.契約違反覚悟で中止し訴訟で争う。スイス法の解釈や判例によっては、損害賠償を減額または回避できるかも知れない?

c.IOCと協議し、2032年移行への「延期」の合意をして問題を先送りする

...が考えられます

ただいずれにしても生命・健康・安全が第一であり、「契約上は日本側の判断で中止や解除ができないから、やめられない」というのでは思考停止です。

最悪、違約金等の支払を覚悟してでも中止を考えるべきではないでしょうか。交渉や訴訟の中で負担を軽減できる可能性も無いわけではないでしょう。

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Mar 28
自民党と共産党は政党とは言っても成り立ちが違う
自民は政権を狙う幅広い議員の集団が原点
だから選挙で有権者から票を取ることが最優先になる
共産は一定の理念や理論に従って革命を目指す団体(選挙もそのための手段)なので、選挙ありきではなくまず理論や理念に基づき人々をリードする発想になる→

これはどっちが優れてるかという話ではなく、構造とか由来がそれぞれ全く違うという話
例えば自民党は国会議員がゼロになったら組織は成り立たないだろうが、共産党は国会議員がゼロでも、理論や理念に賛同して活動する人がいる限り組織は存続し続けるだろう

自民に派閥や各集団があるのも、議員を多数集めて政権を取って維持するのが最優先なのでよほどのことがない限り分裂する理由がないから

逆に共産が分派を一切許容しないのは、理論や理念で動いてる組織なので、この理論や理念についての見解が違うともう組織が動かなくなり分裂するしかないから
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May 21, 2023
補足。
「広島」は長い間、核廃絶や戦争自体の否定など、包括的・究極的な平和運動の理想のイメージで語られてきた

ところが今回はそうではなく、現在進行中の国家間の戦争で相手側の核の使用を牽制する、というG7国家の戦略・外交的な広報の方便として「広島」がシンボル化されているわけである⇒

前者の立場からいえば日本が特定の国家間戦争で一方の側につくこと自体、容認しがたく感じられるだろうが、実際問題として今の日本が超然とした中立的立場をとれるはずがなく、程度がどうあれ侵略に対抗する側にコミットする以外の選択肢はないだろうし、世論の大半もそのように考えているだろう。

もう少し正確にいうと、日本は戦後ずっと、超然とした中立の立場で理想を求めたことなどなく、常に一貫して一方の陣営に属し続けてきただけなのだが、憲法9条があるために、日本が理想を求める軽武装の中立国であるかのようになんとなく錯覚してしまう傾向が一部の人にあったことは否定できない
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Feb 4, 2023
「婚姻制度は出産のための制度だから同性婚は不適切」という主張をする人がいますが、高齢者や身体上の理由で出産できない人等も制度上は区別されていないので、この主張は破綻しています。

「それでは婚姻制度の意義や目的は何なのか?」というと、合理的に説明するのは実は困難かも知れません→

もともと合理的な目的のために意図的に設計して婚姻制度が作られたというわけではなくむしろ、はるか昔からの長年の様々な人間の行動の積み重ねの中で発達し、また色々な修正・変形を受けながら現在に至っているのが「婚姻」の制度だからです。

ただ一つ言えるのは、婚姻制度の目的が何だろうと
・異性間では、子供を出産・育成できるかどうかに関係なく、婚姻制度が適用できるようになっており、法的に様々な保護や利益(や権利・義務)が与えられている
・同性間の結びつきのカップルの場合、そのような扱いが受けられない
ということです
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Oct 17, 2022
統一教会の解散命令を求める問題意識や方向性自体は当然理解しているのですが、ただ、"今の"宗教法人法の条文で定める解散命令の要件を満たすかというと、その判断が非常に悩ましいと個人的には思っています。

実際の宗教法人法81条1項1号を見ると⇒

「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とされていますが、この「明らか」でなければならないという点が非常に厄介です。
「明らか」というからには「恐れがある」とか「疑いがある」ではダメで、解散命令を求める側の立証責任が非常に重いことになります⇒

解散命令を裁判所に請求する側が、公共の福祉を著しく「害する恐れ」や「害する疑い」だけでなく「害することが明らか」ということまで立証するには、現在統一教会が否定してるような問題点の情報もすべて有無をいわさず立証できるくらいの資料をそろえる必要があるのではないかと思われます。
Read 6 tweets
Oct 15, 2022
アムウェイの停止処分と宗教法人の解散命令とを対比すると、後者には実はなかなか難しい問題があることがわかる。

アムウェイは、特定商取引法39条1項が根拠で
①違反行為が細かく具体的条文として挙げられ
②取引の公正&相手方の利益が著しく害される「恐れ」が認められるだけで処分が可能である
Image

これに対して宗教法人法の解散命令(81条1項1号)は「法令に違反して」という抽象的な表現であり(具体的法令が特定されてない)、また「著しく公共の福祉を害する」と「明らか」に認められる必要がある(アムウェイは「恐れ」だけで処分可能だった)

このように法技術的な問題があることに注意。 Image

個人的には、宗教法人法そのものの改正をまず急いで検討すべきではないかと思う。

より使い勝手を良くすると同時に、行政の幅広すぎる解釈による濫用を防ぐという観点も必要だろう。

と同時に(前にも述べたが)会計の一般公開化による情報公開による批判をしやすくすることも必要なのでは
Read 4 tweets
Oct 11, 2022
統一教会の解散命令は要件の判断が困難でありハードルが高い。
むしろNPO法人並みに会計を一般公開させるように法改正することからまず手をつけた方が良い。もちろん法改正となれば、他の宗教法人も同様である。

解散命令を求める意見ももちろんわかるのだが、仮に解散命令が行われて"解散"したとしても、宗教的行為を行う現実の人間集団としての統一教会が消える訳ではない。むしろ宗教法人法の規制が適用されない、巨大な同好会組織のような私的集団に変質して、そのまま活動を続けることになる。

解散して宗教法人ではなくなった場合、巨大な同好会組織のようになった統一教会は、逆に宗教法人法が適用されなくなるので、宗教法人法に基づく規制もできなくなる。例えば所轄官庁に会計報告や規則などを提出する義務もなくなり、また官庁が報告を求めたりすることもできなくなることに注意。

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