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Oct 5, 2021, 7 tweets

モルヌピラビル(N4-ヒドロキシシチジン誘導体)の化学構造は核酸塩基のシチジンに似せて作られており、ウイルスのRNA複製エラー(変異)を引き起こすことで抗ウイルス性を発揮しますが、その作用機序は「抗がん剤」のそれに近く、人体への変異原性・生殖毒性が懸念されます。慎重な判断が必要です。

モルヌピラビルがウイルスのRNAに取り込まれると、複製時にウリジン(U)と認識されればアデノシン(A)と(複製エラー)、シチジン(C)と認識されればグアノシン(G)とマッチします(正常)。
「ウイルスの変異を引き起こす=ウイルスに対する変異原性がある」と言えます。
cen.acs.org/pharmaceutical…

ここで懸念されるのが、「N4-ヒドロキシシチジンがデオキシリボ型に変換されて人体のDNAに取り込まれ、突然変異を引き起こすリスクはないのか」ということです。
実験では「哺乳類細胞アッセイで変異原性がある」と示されており、「懸念はある」としか言いようがありません。
ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P…

似た構造の「抗がん剤」として、5-フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(ara-C)があります。
5-FUは、DNAに必要なチミンの合成を阻害するとともに、その活性型がDNA/RNAに組み込まれて複製を阻害します。
ara-Cは、DNAの合成過程を阻害しますが、DNA/RNAに組み込まれることはないとされます。

5-FUのような「ヌクレオシド類似体」は、DNAに組み込まれて複製を止める作用を発揮します。(図:レムデシビルはこちらに近いです)
medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/d…
他方「モルヌピラビル」はウイルスRNA鎖に組み込まれるものの複製は止めず、次の世代のウイルス複製で変異を誘導するという違いがあります。

「N4-ヒドロキシシチジン(モルヌピラビルの活性体)は、RNAには組み込まれても、DNAには組み込まれないのでは?」については「リボ核酸(RNAの単位)は、デオキシリボ核酸(DNAの単位)に変換される。N4-ヒドロキシシチジンも、デオキシ体に変換されてDNAに組み込まれるリスクがある」と指摘します。

「モルヌピラビルはRNAポリメラーゼ阻害剤(複製を止める)」「その作用機序はアビガンと同じ」といったニュース・解説は「誤り」です。
そのような一面もあるのかも知れませんが、本質は『ウイルスの複製を止めずに変異を誘導する=変異原性』です。
chemicaldaily.co.jp/%EF%BD%8D%EF%B…
news.yahoo.co.jp/byline/kurahar…

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