今回の電力市場価格高騰に関して公開データを元に分析を行いました。以降連投します。
(分析結果を速報的に公表するものなので、複数の方とご相談しながら作成したものの、完璧性は必ずしも保証できるものではありません。もし誤りを見つけた場合はご連絡頂ければ速やかに修正致します。)
まず前提として、スポット価格高騰と電力の安定供給(停電リスク)は厳密に切り分けて考えて下さい。何故ならば、スポット価格が高騰しなくても突然のブラックアウトや大停電もありますし、価格高騰してても安定供給が脅かされる状態ではない場合も多いからです。ごちゃ混ぜに考えると混乱します。
①Fig.1-1, 1-2を見ると12月下旬から売り入札量と約定総量がほぼ一致して差がほぼゼロとなっています。売り札が売り切れるとシステムプライス(スポット価格)は小売側の買い入札の額で決まり、買い争いで価格がどんどん上昇していっている状態です(Fig.1-3)。
「売り札が売り切れると小売側の買い入札の額で決まる」のイメージとしては下記リンクp.8などをご参照下さい。
meti.go.jp/shingikai/enec…
②寒波との関連も囁かれていますが、Fig.2-1, 2-2を見ると確かに気温が下がるにつれて日本全体の総需要は上昇しているものの、JEPX買い入札量(小売側)はほぼ一定で殆ど相関が見られません(東京以外の地点でもほぼ同様)。つまり寒波と電力市場価格高騰はあまり関連がないと言えるでしょう。
③天然ガス(LNG)の供給との関連も指摘されています。Fig.3-1, 3-2に見る通り、JEPX売り入札量(発電側)はJKMガス先物市場の価格と強い負の相関(LNG価格が上昇するほどに売り入札量が減少する傾向)が見られます。一方、日本全体の需要はLNG価格上昇にも関わらず増加しています。
④最後に、日本全体の需要とJEPXの売買入札量との相関や市場シェアの推移を見て行きます。Fig.4-2のように市場シェアは12/29を境に続落しています。FIg.4-3を見ると、買い入札量は需要実績と強い相関がありますが、売り入札量は無相関でかつ12/26以降それ以前とは明らかに異なる動きを見せています。
以上のエビデンスから、JEPXスポット価格上昇の発生要因は以下のように推測することができます。
(1) 寒波による暖房需要増とは関連が薄い
(2) LNG市場価格上昇につれて12/26以降市場への売り控えが発生
(3) 売札が売り切れたため市場価格が小売側買い入札額で決まり、小売側の買い争いのため価格上昇

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13 Jan
節電とリモートワークの関係について、この分野のご専門の研究者の方々とご協議していくつか有益なエビデンス(参考文献)をご紹介頂きました。

中西 穂高, テレワークの節電効果に関する考察(論文部門), 日本テレワーク学会研究発表大会予稿集, 2015, 17 巻, p. 3-8
jstage.jst.go.jp/article/jatsp/…
論文より引用:
自宅でのエネルギー使用の増加を考慮するとオフィスの閉鎖を想定してもテレワークの節電効果は明確ではない .むしろ,オフィス閉鎖が行われなければ,テレワークによ り消費電力が増加することも考えられる.一方でテレワーク時に自宅に家族がいる場合,テレワークによる→
→消費電力の増加はより少なくなることが考えられる.(中略)またテレワークのエネルギーに対する効果は,オフィス機器の使用よりも通勤の減少の方が大きいとの報告もあり,テレワーク省エネ効果を総合的に把握するためには通勤エネルギーの削減をあわせて考慮することが重要である.(引用了)
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12 Jan
需給逼迫がニュースやSNSで伝えられる中、各方面から節電のお願いが自主的に出されていますが、順番からいうと総消費電力量に占める割合が27%の一般消費(家庭部門)でなく製造業(36%)や業務(34%)部門の節電の方が先で効果も高いです。#インスタ映えするデータとエビデンス instagram.com/p/CJ8VznwjAHU/ Image
一般の方々が節電に協力するのは大変素晴らしいことだと思いますが、健康を損ねない範囲内で無理なくされるとよいでしょう。その点で、東京電力PGの「節電へのご協力のお願いについて」の文言が参考になるかと思います。
tepco.co.jp/pg/
一方で、産業部門には需給調整契約(随時調整契約)をしているところもあります。
cas.go.jp/jp/seisaku/npu…
例えば2015年は随時調整契約は5GW(原発5基分)ありました(下記資料p.14)。
meti.go.jp/shingikai/enec…
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