米メディアでも早期から東京五輪に警鐘を鳴らしてきたCNN。今回は運営を支えるボランティアの声、期間中の医療を支える医療従事者の声を中心とした「現場の危機感」を的確にレポートした記事です。
『五輪開催まであと100日、日本のワクチン接種率は人口の1%にも満たない』
amp.cnn.com/cnn/2021/04/13…
ここ数週間、2020年東京オリンピックのボランティアが、日本に押し寄せる外国人選手や日本のワクチン接種率の低さを考慮して、どうやってCovid-19から身を守るのかと関係者に尋ねたところ、答えはあっけないものだった。

彼らには手の消毒用の小さなボトルと2枚のマスクが配られただけだ。 Image
上智大学ドイツ日本研究所(東京)の所長を務めるドイツ人ボランティアのバーバラ・ホルトスさんは、「彼らはワクチンの話もしないし、私たちが検査を受けることさえも話しません。」という。 ImageImage
コロナウイルスの大流行により1年延期されたオリンピック開催まであと100日となったが、東京がどのようにして大規模なスポーツイベントを開催し、ボランティア、アスリート、関係者、そして日本の一般市民をCovid-19から守ることができるのか、疑問は残ったままだ。 Image
この懸念は、来る第4波との戦いによってさらに増大する。日本では土曜日にコロナウイルスの累計感染者数が50万人を超え、感染者数の増加に伴い、行動制限も強化されつつある。埼玉医科大学の岡秀明教授は、7月23日に開催されるオリンピックまでに第4波を抑えることはできないかもしれないと語る。 Image
菅義偉首相は月曜日、6月末までに1億本のワクチンを確保するという公約を繰り返したが、これまでのところ、日本は人口1億2600万人のうち約110万人にしかワクチンを接種しておらず、人口の1%にも満たない。また、2回接種した人は0.4%に過ぎない。 Image
ホルトスさん曰く「この大会を支援する事は『一生に一度の機会』になるはずでした... しかし、今では本当に危険な経験となっています。」

Holthus said supporting the Games was meant to be a "once-in-a-lifetime" opportunity. "But now it's just a really dangerous experience,"

@barbGhawaii Image
東京2020の主催者はCNNへの声明の中で、「ワクチンがあることを前提とせず、ワクチンがなくても安全で安心な大会を開催するために準備している 」と述べた。その一方で、「国内外でワクチンが適切に投与され、その結果、全体として感染が減少することを期待している」とのコメントをも発表した。 Image
250億ドルを投じて五輪を開催する日本ほど、Covid-19の感染者を抑制し、国民へのワクチン接種に「積極的であるべき」国はないはずだ。しかし日本はワクチン承認に時間をかけ、ファイザーのワクチンの使用許可までに2ヶ月以上を費やした。2月に接種が始まり、高齢者には4月にようやく接種が開始された。 Image
この遅れの一因は、過去の日本でのワクチン接種の取り組みに悪影響を与えたワクチンへの懐疑的な見方を避けるため慎重になりすぎたせいと言う意見もある。理由はどうあれ、日本は、1億7100万回の接種を行った中国や、1億800万回の接種を行ったインドなど、他のアジア諸国に比べて数段遅れている。
埼玉医科大学の岡教授は、「高齢者は6月までにワクチンを接種することになっているが、実際にはCovid-19の治療にあたっている医療スタッフでさえ、まだワクチンを接種していない」と述べ、6月の接種目標が達成されるとは考えていないことを明らかにした。 Image
岡教授は、入国する全ての選手へのワクチン接種を優先すべきと語るが「選手が優先接種される」という報道がSNSで反発を招いた為、政府はこの方針に抵抗した。

中国は、五輪に参加する全選手へのワクチン提供を申し出たが、政府は中国製ワクチンは日本での使用が許可されていないと、申し出を断った。 Image
この大会では、Covid-19の蔓延リスクを低減するために、海外からの観客の入場が禁止されている。しかし、予定では200以上の国から11,000人以上の選手が参加する。選手にワクチンを接種する計画がなければ、何万人ものボランティアが参加しても、蔓延予防の見込はほとんどない。 Image
橋本会長は、ZOOMでボランティアに対して、「オリンピックを成功させるためには、皆さんの笑顔が頼りです」と語ったそうだが、全員がマスクをしている状況では、それは衝撃的な言葉だった。「『冗談じゃない』と思いました」と、チケットもぎりのボランティアを予定しているホルトスさんは語った。 Image
「高齢者でない限り、一般人が予防接種を受ける余裕はない」と言われ「怒りと恐怖を感じた」ボランティアもいる。過去の五輪にもボランティアで参加した女性は「ワクチン接種が無い限り、参加しない事も考えている」と言う。「私達の命、そしてホスト国が提供すべき安全を無謀にも無視しているからだ」 Image
感染を抑え込んでいる国でさえ、スポーツイベントの開催は苦労する。テニスの全豪オープンでは、現地に到着した選手の一部が厳しい健康診断を受けたことを訴えた。市内で感染者が発見された時は数日間、観客の入場が禁止された。多くの感染者が発生している日本では、より大きな「冒険」になるだろう。 Image
IOCが2月に発表した「プレイブック」によると、海外からの参加者は、日本に渡航する前の72時間以内に検査が陰性である必要があり、再検査を受けることになる。だが、選手が日本の対策に違反したり、ウイルスにさらされた可能性がある場合を除き、日本に到着してから14日間の隔離は必要ないとされる Image
大会期間中、参加者は「異なる間隔を置いて検査を受ける」とされており、全ての選手と訪問者には 「Covid-19 連絡係」が割り当てられる。ゲストは宿泊施設を離れるのは「大会会場と限られた追加の場所に行く」場合のみとされており、そのリストは今月発行予定の第2版プレイブックで公開予定である。 Image
ハグやハイタッチは避け、公共交通機関は利用しないようにとされている。また彼らは常にフェイスマスクを着用しなければならない。だが、東京2020の主催者は、選手村でどのようにソーシャルディスタンスを維持できるのか?という質問には答えていない Image
選手村のアスリートたちは、日本に到着する前に全員が陰性であることを確認しているが、オリンピック会場と自宅の間を行き来する何万人もの未検査のボランティアと接触することは避けられない。そして、五輪のWEBではボランティア活動をする際には、会場まで公共交通機関を利用すべきだとしている。 Image
CNNへの声明で、大会側はマスクの着用、手洗い、ソーシャルディスタンスについて、ボランティアに知らせるリーフレットを発行したと述べた。一方、TOKYO2020のイベントが延期されるかどうかについては「状況は刻々と変化している」と述べている。 Image
ホルトスさんは、ボランティア参加者は大会関係者から、消毒液と2枚のマスクに加え、健康状態記録用の「健康状態ダイアリー」を配られたと述べた。「世界中の人々が交じり合う五輪。もし、会場のどこかで、クラスターが発生したら?それが私達ボランティアの中から出るとしたら?」と彼女は言う。 Image
岡教授は、大会が日本だけでなく世界中に危険なCovid-19の亜種を拡散させる可能性があると述べ、ボランティアたちの懸念に共感する。また教授はウイルスに感染したアスリートやボランティアが押し寄せた場合、逼迫した日本の病院システムでは対応しきれないのではないかと懸念している。 Image
「感染症の専門家としては、予防接種や対策が十分に行われていない状況で大会を開催することには賛成できない」と岡教授は言う。

一方、組織委はCNNに対して、五輪に向けて「Covid-19の状況が改善されることを期待している」「安全で安心な大会に向けて関係者と緊密に協力していく」と言う。 Image
ボランティアには「政府とIOCを信頼している」という人もいる。しかし、ホルトスさんは「スーパースプレッダーイベントの見本」のような現在の状況では大会を進めるべき出はないと語る。「どれだけ酷い事になるか、想像がつかない。開催されてしまえば、もう後戻りは出来ない」と。 Image
この素晴らしい取材と記事を手掛けられたCNNの
Blake Essigさん @Blake_EssigCNN
Emiko Jozukaさん @emijozuka
Ben Westcottさん @Ben_Westcott
に心からの感謝を ImageImageImage
そして貴重なコメントを下さった
Barbara Holthusさん @barbGhawaii
岡秀昭先生 @profidokamdphd
にも心からの感謝を捧げます。

なお連続ツイート中で岡先生のお名前をミスタイプしてしまいました事を謹んでお詫び申し上げます。 ImageImage

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Oct 18, 2021
まさか日本の「センモンカ」を意識して話してるわけではないでしょうが Eric先生🤔

「医学部は疫学を教えるのが苦手なことで有名です。疫学を全く教えないか、初歩的なことしか教えない。医学生が生物統計学を学んでいればそれは奇跡的なことです。#COVID の統計を読むときは気をつけましょう」
「多くの医学部で、疫学の科目がゼロ、人口生物統計学の科目もゼロです。私も数年前(退学前)に医学部に通っていたことがあり、学校のカリキュラムを調べましたが、全く不足でした。懸命にも自分で勉強する医師もいますが、ほとんどの医師はそうではありません」
マジ?😲

「これはMD/DOの医師を批判するものではありません。彼らは、すでに暗記すべき情報が大量にあり、多くのことを学ばなければなりません。しかし、これは医学部の現実であり、研究を読むために必要な疫学のような有用なトピックよりも、いくつかのトピックを優先しています。」
Read 7 tweets
May 26, 2021
オリンピック開催の危うさについて、その卓越した語学力を発揮して内外に発信してくださっている @tkatsumi06jさん がロサンゼルス・タイムズ紙の取材を受けられました。お疲れ様でした。

@tkatsumi06jさんのツイートを受けて。私の英語力では全く力不足ですが、DeepL先生の力も借りながらやっていこうかと。

『東京オリンピックの開催が迫る中、日本人のワクチン接種率はわずか2%、数千人の来場者に不安が広がる』

latimes.com/world-nation/s…
「東京より発信- 7月になると、勝見貴弘さんの住む埼玉では、バスケットボール、サッカー、ゴルフなど、夏季オリンピックの代表的な競技が開催される予定だ。」

※補足として オリンピック、パラリンピック共に射撃会場も予定されています
pref.saitama.lg.jp/a0308/2020toky…
Read 34 tweets
May 24, 2021
大阪の病院は #COVID19 の大波にさらされ、ベッド、人工呼吸器、挿管薬までもが不足し、疲弊した医師たちは「システムの崩壊」を警告し、オリンピック開催の中止を勧告しています。医療従事者の半数しかワクチンを接種していないという。
大阪の医療システムが急速に破壊されたことは、2ヵ月後に世界的な大規模スポーツイベントを開催することの難しさを物語っている。特に、日本の医療スタッフの約半数が予防接種を完了していない。
「簡単に言えば、これは医療システムの崩壊だ」と、大阪の近大付属病院の東田 有智院長は言う。
Read 11 tweets
May 12, 2021
東京五輪の開催に警鐘を鳴らし続けている、ジュールズ・ボイコフ先生 @JulesBoykoff がニューヨーク・タイムズ @nytimes に新しいオピニオンを寄稿されたようです。改めて読んでいきたいと思います。
『スポーツイベントは、スーパー・スプレッダーイベントであってはならない。オリンピックを中止するべきだ』@nytimes

ボイコフ教授 @JulesBoykoff は、オリンピックを研究している政治学者であり「Power Games: A Political History of the Olympics」の著者です。

nyti.ms/3eEVgNT
東京五輪は大きなトラブルに巻き込まれている。1年延期され、7月に開催される予定だった東京五輪は、日本の政治的な火種となっている。日本では、国民の約60%が今夏の大会開催に反対しており、Covid-19の予防接種を受けている人は2%にも満たない。
news.yahoo.co.jp/articles/dc38c…
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May 10, 2021
AP通信の記事、『東京五輪の二つの顔:競技場の中と外』Katsumiさんからの導入を受けて進めてみましょう。

まず、この記事中の12枚の写真を見てほしいと思います。そこに描かれた風景、競技場の内と外、アスリートと一般人、この五輪のもたらした「分断」の異様さを表していると思うからです。
東京(AP) - 14億ドルを投じて建設された新国立競技場の中で、セバスチャン・コー氏は、延期されたオリンピックが11週間後に開催されても安全であることを、アスリートや懐疑的な日本の人々に再び確信させようとした。

news.yahoo.co.jp/articles/50212…
IOC委員であり、2度のオリンピック金メダリストでもあるコー氏は、陸上競技の世界統括団体である「世界陸連」を率いており、日曜日には420名の選手が参加するテストイベントが行われましたが、海外から出場した選手はわずか9名だった。

セバスチャン・コー - Wikipedia
bit.ly/2R6XMn5
Read 24 tweets
May 8, 2021
ニュージーランドの「Stuff」紙に載った東京五輪への挽歌 とも言って良い記事。「Stuff」のチーフ・スポーツ・ニュース・ディレクターの Kevin Norquay さんの記事です。

「そして金メダルは、Covid-19に渡ってしまうだろう。それでも東京オリンピックを開催すべきか?」

bit.ly/3bcH64w
”私(Kevinさん)はオリンピック狂だ”

”1964年(東京五輪)の中距離選手、ピーター・スネルの活躍を見て以来、この大会に魅入られてきた。”

”4年毎に、私はNZの8人組ボート、射撃、ホッケーの金メダリスト、サイクリスト、投擲選手、ヨット、ランナー、そんな人々と共に涙を流すことが喜びだった。”
”国家、表彰台、オリンピックリング、メダル、国旗掲揚、そしてFaster、Higher、Strongerという盛り上がるオリンピックのモットー、何もかもが私を惹きつけた”
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