2021.4.16 JAMA
[Indoor Air Changes and Potential Implications for SARS-CoV-2 Transmission]
[屋内空気交換とSARS-CoV-2感染への影響の可能性]
Joseph Allen先生@j_g_allen

✅エアロゾル濃度制御が重要
✅発生源制御(マスク・距離)
・工学的制御(換気・濾過)が必要
1/
jamanetwork.com/journals/jama/…
●建物は、麻疹、インフルエンザ、レジオネラなどの感染症の流行と関連している。
●SARS-CoV-2の場合、3人以上の感染者が発生した大部分は屋内で過ごした時間と関連しており、SARS-CoV-2の遠距離の空気感染(屋内であっても6ftを超える範囲と定義)が発生していることが確認されている。
2/
●感染症の空気感染を防ぐためには、屋内の呼吸器系エアロゾル濃度を制御することが重要で、発生源の制御(マスク着用・物理的距離)と工学的な制御(換気・濾過)が必要である。
3/
●工学的な制御に関しては、ほとんどの建物の運用方法に重要な欠陥がある。それは、病院を除く屋内空間の換気と濾過に関する現行の基準が、必要最低限に設定されており、感染制御のために設計されていないことである。
4/
●いくつかの組織や団体が外気の換気率を増やすことを呼びかけているが、現在までのところ、具体的な換気や濾過の目標値に関するガイダンスは限られている。
5/
●本稿では、外気の換気量を増やし、濾過を強化することで、SARS-CoV-2の遠距離の空気感染を抑制するための根拠を説明し、推奨される目標値を示した。
6/
●SARS-CoV-2の遠距離の空気感染を小容量の室内空間(例:教室、小売店、来客中の家庭)で抑制するためには、外気による換気、少なくともMERV13(Minimum Efficiency Rating Value 13)以上のフィルターを通した再循環空気、→
7/
→HEPA(High-Efficiency Particulate Air:高効率粒子状空気)フィルターを備えた携帯型空気清浄機の使用などを組み合わせて、1時間当たり4~6回の空気交換を行うことが提案されている。
8/
●SARS-CoV-2の用量反応が不明であることや、主な感染経路について科学的な議論が続いていることにもかかわらず、これらの提案を支持する証拠がある。
9/
1⃣
●第1に、SARS-CoV-2は主に感染者の呼気中のエアロゾルから感染する
●大きな飛沫(>100μm)は6ft以内であれば重力によって空気中に沈むが、人は会話や呼吸、咳で100倍もの小さなエアロゾル(<5μm)を吐き出す
●小さいエアロゾルは、30分から数時間空中に留まり6ftを超えて移動することができる
10/
2⃣
●第2に、SARS-CoV-2感染者が複数の空間(例:レストラン、ジム、合唱団の練習、学校、バス)で発生したことがよく知られているが、これらの空間では、人が物理的に離れていても、室内にいる時間が長く、換気レベルが低いことが共通している。
11/
3⃣
●第3に、これらの提案は、暴露科学と吸入量リスク低減の基本に基づいている。
●換気と濾過率を高くすることで、屋内の空気から粒子を迅速に取り除くことができ、それによって曝露の強さと呼吸エアロゾルが屋内に滞留する時間を減らすことができる。
12/
4⃣
●第4に、このアプローチは、感染のリスクを最小限に抑えるために病院で行われているものと一致している。
(表e)
cdn.jamanetwork.com/ama/content_pu…
13/
5⃣
●第5に、換気と感染症の関係に関するレビューでは、麻疹、結核、ライノウイルス、インフルエンザ、SARS-CoV-1の感染に低換気が関連することを示す観察疫学研究を引用し、換気が感染症の伝播に重要な役割を果たしていることを示す証拠の重みが指摘されている。
14/
●3つのレビューはいずれも、このテーマに関する研究論文の数が限られていることと、観察データの限界を指摘している。
15/
6⃣
●第6に、さらに最近では、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)がCOVID-19対策の一環として十分な換気の重要性を挙げており、米国疾病対策センター(CDC)と米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)は、全体的なリスク低減戦略の一環として、より高い換気率と濾過の強化を支持している。
16/
<現在の屋内空気換気の対策と基準>
●現在、ほとんどの屋内空間の換気基準は、ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)によって定められている
●これらの基準は、感染症対策というよりも、(人からの臭いなどの)生体排出物を希釈し、基本的なレベルの屋内空気環境を実現することを目的として設計されている
17/
●換気率の表現には複数の方法があるが(例:総換気量、人やエリアあたりの換気量、外気の換気率)、医療現場では空気交換率が頻繁に使用され、1時間あたりの空気交換回数(ACH:air changes per hour)という単位で表現されるのが一般的である。
18/
●空気交換回数(ACH)に関する既存の最低基準は、建物の種類によって異なる。
(表e)
cdn.jamanetwork.com/ama/content_pu…
19/
●例えば、換気率の主な基準設定機関であるASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)によると、ほとんどの家庭で発生する必要最低限の総ACHは外気の0.35ACHであり、学校はその約10倍の換気率を想定して設計すべきであるが、実際には、ほとんどの学校がこれを満たしていないとしている。
20/
●目標値を4〜6ACHに引き上げるという提案は、病院で設定されている率とより一致しており、高い空気交換回数(ACH)要件は、空気交換率が感染制御戦略としての役割を果たす可能性を強調している。
21/
<現在の空気濾過の対策と基準>
●呼吸器系エアロゾルは、外気からの換気に加えて、空気濾過によっても除去することができる。
●そのため、濾過された空気は、1時間あたりの等価空気交換量(ACHe)で考えることができ、外気からの空気交換回数(ACH)に加えることができる。
22/
●クリーンエア供給率(CADR)とは、濾過の効果とフィルターを通過する空気の量によって決まる空間に供給されるクリーンエアの量を表す用語である。
●携帯型空気清浄機では、その効果を表すために、クリーンエア供給率(CADR)を使用するのが一般的である。
23/
●例えば、HEPA (高効率粒子状空気)フィルターを搭載した携帯型空気清浄機の場合、0.3μmのエアロゾルを99.97%捕らえることができる。
24/
●一般的にフィルターの効果は、フィルターが最も苦手とするエアロゾルのサイズ(0.3μm)に基づいて報告されるが、HEPAフィルターは0.3μmより大きい(または小さい)エアロゾルをさらに大きな割合で捕捉する。
25/
●クリーンエア供給率(CADR)の指標は、屋内に供給されるウイルスフリーエアの空気交換回数(ACH)を推定するのに使用できるため、価値がある。
26/
●等価空気交換量(ACHe) の推定値は
[CADR(ft³/min)×60min]を
部屋の容積(ft³)で割って算出する

●8ftの天井を持つ500平方ftの部屋で
クリーンエア供給率(CADR)が
300 ft³/minの装置は
4.5 ACHを供給することになる

(300 ft³/min×60min) ÷ (8 ×500) ft³
= 18000 ft³ ÷ 4000 ft³
= 4.5 ACH

27/
●これと同じ濾過の概念は、中央機械換気システムや室内換気システムで再循環される空気にも適用できる。
●しかし、ほとんどの中央機械システムはHEPAフィルター用に設計されていない。
28/
●その代わり、これらのシステムでは、最低効率報告値(MERV)と呼ばれる異なる評価基準のフィルターが使用されており、通常、0.3~1μmの粒子を約15%、1~3μmの粒子を約50%、3~10μmの粒子を約74%しか捕捉できない低グレードのフィルター(例:MERV8)が使用されている。
29/
●感染制御のためには、可能な限りMERV13フィルターにアップグレードすべきで、これにより、これらの大きさの粒子をそれぞれ約66%、92%、98%捕らえることができる。
30/
●これらのMERV値は、HEPAフィルターの場合と同様に、屋内の全体的なクリーンエア供給率(CADR)の推定に適用することができるが、HEPAではほぼ100%の捕捉効率を使用する代わりに、どのMERVフィルターを使用しても、低い捕捉効率に合わせて計算を調整する必要がある。
31/
●機械システムのフィルターをアップグレードすることは、同じ部屋や同じ局所換気ゾーン内で空気を再循環させるシステムを使用している建物では特に重要である。
32/
<空気交換と濾過を増やす際の実用的な設計上の検討事項>
●どのような建物でも、空気交換と濾過の変更を実施するには、いくつかの重要かつ実用的な設計上の検討事項がある。
33/
1⃣
●第1に、空気交換率を増加させるには、より多くの空気を移動させるための追加コストや、この大量の空気を冷暖房するための追加コストなど、トレードオフの関係にある。
34/
●このような追加コストは、エネルギー効率の高いシステムや、人がいるときに空気を送る「スマート」なシステムを使用することで抑えることができる。
●さらに、必要に応じて、自然換気(例:窓を開ける)を行うことで、換気量を増やすためのコストを最小限に抑えることができる。
35/
2⃣
●第2に、屋内空気の換気と濾過を改善することは、遠距離(6ft以上)のエアロゾル感染を考慮するだけで、近距離の接触感染には大きな影響を与えない。
●屋内では、高い空気交換率を実現しても、発生源対策や個人との密接な接触のためにマスクを着用することが重要である。
36/
3⃣
●第3に、体積流量方式による換気よりも1時間当たりの空気交換量を重視することは、天井高が通常12ft以下の狭い部屋では最も有効である。
37/
●天井の高い部屋(例:体育館、アトリウム)では、エアロゾルはより広い空間に希釈される。面積当たりまたは一人当たりの体積流量は、エアロゾル放出率にも影響する居住者の密度と活動レベルを考慮したより適切な指標となる。
38/
4⃣
●第4に、空気交換率は、パンデミック時に起こるはずの典型的なシナリオや低居住密度のシナリオで有効である。
●居住制限が大きい場所や、狭い空間に設計以上の人数が加わった場合には、それに応じて換気量を増やす必要がある。
39/
5⃣
●第5に、レストランのように常時マスクを着用していない場所では、1時間あたりの空気交換量の目標値を高くし、従業員は高効率のマスクを着用し、利用者は飲食中以外常にマスクを着用し、屋内にいる全員が物理的に少なくとも6ft離れるなどの追加戦略が必要である。
40/
6⃣
●第6に、COVID-19パンデミックの現状において、空気感染を減らすためには、これらの設計上の配慮が重要だが、→
41/
→空気の換気と濾過の改善は、仕事や学校の欠席率の低下、認知機能テストの成績向上、頭痛や疲労感などのシックハウス症候群の症状の減少との関連性があることから、今後も建物に継続して使用することを検討すべき戦略である。
42/
<結論>
●時間当たりの空気交換量と空気濾過量の増加は、単純ではあるが重要な概念であり、SARS-CoV-2やその他の呼吸器感染症の室内、遠距離の空気感染によるリスクを低減するために導入することができる。
43/
●換気量の増加や濾過の強化といった健康的な建物の管理は、基本的でありながら見過ごされがちなリスク低減戦略の一部であり、現在のパンデミックを超えて利益をもたらす可能性がある。
44/

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More from @AirborneKanki

16 Apr
2021.4.15. THE LANCET
[Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2]
[SARS-CoV-2の空気感染を支持する10の科学的根拠]

『空気感染が主要な感染経路である』

Trisha Greenhalgh, Jose L Jimenez,
Kimberly A Prather先生ら
1/
thelancet.com/journals/lance…
●WHOが資金提供し、2021年3月にプレプリントとして発行されたHeneghanらのシステマティックレビューには、こう書かれています。「SARS-CoV-2の回収可能なウイルス培養サンプルがないため、空気感染について確固たる結論を出すことができない」
2/
●この結論と、このレビューの結果が広く伝わっていることは、公衆衛生上の影響を考えると気になるところです。
3/
Read 36 tweets
15 Apr
2021.4.14 BMJ(British Medical Journal)
【Covid-19 has redefined airborne transmission】
【Covid-19は空気感染を再定義した】
Julian W Tang, Linsey C Marr,
Yuguo Li, Stephanie J Dancer先生
1/
bmj.com/content/373/bm…
『室内の換気と空気質を改善することが、私たち全員の安全につながります』

●SARS-CoV-2のエアロゾル感染の役割と重要性については、covid-19の大流行から1年以上が経過した今でも議論が続いていますが、一部の感染管理ガイドラインでは、エアロゾル感染についてはほとんど言及されていません。
2/
●このような混乱は、前世紀に導入された伝統的な用語に起因しています。
●このため、「飛沫」、「空気」、「飛沫核」の伝播の定義が不十分で、これらの粒子の物理的な挙動について誤解を招いていました。
3/
Read 22 tweets
12 Apr
日本小児科学会
予防接種・感染症対策委員会
主担当理事【森内浩幸先生】
jpeds.or.jp/modules/about/…

2021.3.23
[子どもと新型コロナウイルスの変異株の感染について]
jpeds.or.jp/uploads/files/…
予防接種・感染症対策委員会
「変異株が既に広がっている英国ロンドンでは変異株による感染は,特に子どもに多 いということはなく,成人と子どもの感染者の割合は変異株の出現した前後で大きく変わっていません。変異株が子どもに感染した場合,既存株と異なる経過を示すことはないと報告されています」
日本小児科学会
予防接種・感染症対策委員会
「子どもでは感染者の多くが無症状から軽症で、既存株でも変異株でもその違いはありません」
「変異株が子どもにより重い症状を引き起こす可能性を示す証拠はこれまでに得られていません」
「変異株への対策は、これまでと変わりはありません」

私:😱😭
Read 4 tweets
12 Apr
2021.4.6. JAMA Pediatrics
[MIS-Cの疫学]
✅この研究は、米国内の1733例のMIS-C(小児多臓器系炎症性症候群)患者を対象とした横断的な研究であり、臨床所見と時間的傾向を記述したこれまでで最大の研究である
jamanetwork.com/journals/jamap…
✅Belayらは、低年齢の小児では結膜所見、発疹、腹痛の頻度が高く、思春期では胸痛、息切れ、咳の頻度が高いことを明らかにしました
✅今回の研究では、心機能障害と心筋炎の診断は、青年期の方が有意に多かったです
✅最も注目すべきは、このMIS-Cの研究では、冠動脈拡張を認めた子どもの年齢に有意な差がなかったことです
✅冠動脈拡張が認められたのは、0〜4歳児では18.3%、18〜20歳児では14.6%でした
Read 9 tweets
12 Apr
2021.4.7. WSWS
【MIS-C 小児多臓器系炎症性症候群】
✅🇺🇸MIS-C増加3,185人、死亡36人
✅300万人以上の子どもがCOVID-19と診断
✅学校が再開される中、医師は恐ろしい傾向を報告し始めている
wsws.org/en/articles/20…
✅MIS-Cを発症した子どもは、発熱、動悸、急速な呼吸、腹痛、嘔吐、下痢、倦怠感、頭痛、リンパ節腫脹、目・唇・舌・手・足の発赤や腫れなどの症状が現れる
✅MIS-Cは、心臓、肺、腎臓、脳などの体の主要な臓器に影響を与える
✅子どもは心筋症や心拍異常を起こすこともある
✅最近では、学校を再開するための無慈悲な活動が原因で、主に1~14歳までの子供が、被害に遭う事例が増えている
✅例えば、ロサンゼルスでは、2月の最初の2週間でMIS-C症例が35%増加した
✅この傾向は、サウスカロライナ州、ミシガン州、イリノイ州、コロラド州など、全米各地で繰り返されている
Read 8 tweets
10 Apr
2021.4.9 #モーニングショー
【森内浩幸先生 vs 玉川徹さん】

玉川徹さん
「子どもを持つ親のかたが、ものすごい今心配だと思うんですよ」
「この病気のことを理解されていればされている人ほど、子どもを学校に通わせて大丈夫なのかと思っていらっしゃると思うんですよね」 Image
玉川徹さん
「新規の変異株っていうのは、子どもにも感染する」
「学校が感染を広げる場になるかもしれない」
「会食を控えろって言っている時に、学校の中で、給食でご飯食べて大丈夫なんですか。と当然、親御さん思うわけですよ」
森内浩幸先生
「まず第一に、『子どもがかかっても重症化しない』ということは、変異株に関しても、そのまま言えています。海外の報告からも、『子どもは重症化しない』」
「『子どもは重症化しない』という点において何も変わりがありませんので、そこをすごく心配される必要はないと思います」
Read 10 tweets

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