#差別はたいてい悪意のない人がする 刊行記念イベント @ Readin'Writin' 、このあと19時開会です。ところどころになると思いますが、実況ツイートしたいと思います。
ハッシュタグは #悪意のないマジョリティ で!
readinwritin210923.peatix.com
もう少々お待ちください。
開始しました!
お店史上最多の300名越えの予約をいただいています!
#悪意のないマジョリティ Image
永山さんから刊行の経緯について簡単に説明。
著者のキム・ジヘさんはさほど有名でなく、地方大学の教員。それが突如16万部の大ベストセラーになり韓国でも大きな話題に。
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上智大学の出口真紀子さんから。
「まずタイトルが素晴らしい。むしろ自分がこのタイトルで本を書きたかったと思ったくらい。でも読んでみると、こういう本は自分には書けないと感じた。韓国でのさまざまな事象を事例に、社会心理学的な知識を的確に織り込んでいる」
#悪意のないマジョリティ
ハン・トンヒョンさん。
「単著で書いていることがまずすごいなと。社会学や心理学の知識に加えて、法律の知識もあって書いている。すがすがしいほどの啓蒙書。日本ではこういう本は最近ないですよね」
#悪意のないマジョリティ
ケイン樹里安さん。
「丁寧に説明したら3、4行かかるようなことを的確な語彙と事例でスパッと言い当てている。わかりやすさを追求すると普通ダメなほうに行くのに、そうならずに痒いところに手が届くように説明している。学生にも薦めやすい。海外にも仲間がいるんだなと嬉しくなりますね」
司会の梁永山聡子さんより、著者の経歴を説明。
売れている理由のひとつに、翻訳のなめらかさ。訳者の尹いきょんさんがzoomで参加です。
尹さん「韓国で暮らしていて普通にマジョリティとして生活していた。海外に行ってアジア系や韓国系ということで差別を受ける経験をして、自分が持つ特権を自覚したし、今まで気づかなかった差別に気づくようになった」
「韓国で二人の学生が死んだ事件。エリート層の子息と庶民の子で同じ死でもメディアの扱いが異なる。そういう差別の存在に少しでも自覚的になっていくことが大切。
この本が日本の読者に読まれることを嬉しく思います。」
ここからは会場の3名の方を中心にトークしていただきます。まずは出口真紀子さんから、資料を使ったお話。
#悪意のないマジョリティ
出口さん「マジョリティの特権について、なかなかマジョリティ自信に理解してもらうのは難しい。メタファーを使った説明の重要さ。この本にもいろいろなメタファーが出てきます」
「私が使うメタファーは自動ドア。マジョリティにとって、向かっていくとドアが自動的に開くからドアがあることも自覚しにくい。対して、マイノリティは自動的にドアが開かないので、いちいち苦労しなくてはならない。その違いをマイノリティは自覚しやすい」
#悪意のないマジョリティ
出口先生、いきなりケインさんに無茶ぶり!
打ち合わせにない展開です(笑)
ケインさんから表紙の絵の「鳥かご」というメタファーについて。鳥かごは無機物だけれど、差別をつくりだしているのは個人個人。ある分野での差別を受けている人が別の分野では差別を生み出しているのかもしれない。「鳥と鳥かご」というメタファーは、その両義性を表現しきれていないのでは?
ケインさんは「落とし穴」のメタファーを使う。普通に歩いていても落とし穴に落ちる人と、そうでない人がいる。
#悪意のないマジョリティ
韓国語版の表紙は「醜いアヒルの子」。原書の編集者は韓国での差別禁止法をめぐる運動状況から、「誰も取り残さない」というスローガンを表現しようとしたとのこと。 Image
「子どもを人種差別主義者に育てるにはどうすればいいか?
(答え)ひとつめ、差別について語らないこと。ふたつめはありません」
#悪意のないマジョリティ
出口「差別について子どもに教えなければ、子どもは差別主義者になる。差別について語らなければ差別するようにならないと考えるのは間違い」
永山「差別をしてはいけないと教えるのも同じなんではないか」
ケイン「差別は絶対にいけないことだと教えれば教えるほど、自分は差別していないという確信を深めてしまう。差別を自分と縁遠いものだと印象づけてしまうと、それを回避して、自分が差別しているのではとか、もしかしたら差別されているということさえ気づけない」
#悪意のないマジョリティ
ハン「差別を気持ちの問題として教えると、悪意がないから差別ではないということになってしまう。悪意がなくても、構造にタダ乗りすることによって差別をしてしまう。逆にいえば、差別したからといって悪人になるわけでもない。構造に乗ってしまったことを自覚して謝ればいいと学生には教えています」
日本語版のタイトルについて。
ハンさん「差別はたいてい悪意がない人がする」の「たいてい」はいらないのでは?
永山「原著のタイトルは直訳で「善良な差別主義者」。邦訳をいろいろ考えて結構悩んだのですが、最終的にこれになりました。でも韓国語話者からは疑問も」
#悪意のないマジョリティ
出口「差別を「気持ち」や「思いやり」の問題として教えることの弊害。日本人がよかれと思ってしていることも相手のニーズとは違うかもしれない。相手の意向を確認すること、他者のバウンダリー(境界線)を尊重することを人権教育として教えるべき」
#悪意のないマジョリティ
出口「自分のマジョリティ性に気づくことの難しさ。自分は日本で女性ということ以外マジョリティ性がない状態で育って、留学して初めてマイノリティ性を自覚した。帰国した瞬間なぜか自分が非情に生きやすいことに気づいた。自動ドアがどんどん開いていく。アジア人女性のステレオタイプで見られない」
「アジア人女性は控えめというステレオタイプがあるので、アメリカにいたときリーダーシップを求められることは少なかった。それに対して、日本に帰国するといろいろな責任あるポジションを次々にふられる。これがマジョリティ性なんだと気づいた。」
#悪意のないマジョリティ
ハン「特権という概念を日本で広めたのは出口さんの功績。ヘイトスピーチで「在日特権」という言葉が流通していたのに対して、現在は「マジョリティ特権」という言い方のほうが注目されている。これは出口さんのおかげと感謝している」
#悪意のないマジョリティ
マジョリティ性とマイノリティ性の経験について、4人それぞれの体験を交流。
永山さん「日本にいるときはむしろ自分が監視されているように感じて、海外に行ってすごく開放感があった」
#悪意のないマジョリティ
ハン「4章のお笑いをめぐる議論がとてもおもしろかった。差別と笑いの問題は意外と論じられてこなかった論点。笑いは共通のコンセンサスがあるから起きる。笑っていい対象を名指しして笑いを共有する。それがもたらす差別扇動の効果についても」
#悪意のないマジョリティ
梁「韓国のコメディアンが「お笑いの役割が変わってきた」と。お笑い芸人自身が変化を感じて自覚的にそれを社会に役立てようとしている」
#悪意のないマジョリティ
「「なぜ面白いのか」という質問は「笑っているのは誰か」という質問に言い換えられる」(本文より)
ケイン「マイノリティは笑いのターゲットに選ばれやすいからこそ、それを逆手にとってネタとして生き延びるというスキルをみにつける。それは強さでもあるが、抑圧されていることの現れでもある」
出口「自分を善良な人だと思っているマジョリティは自分が変わる必要がないという確信が動かない。それをどう変えていくか。有効だと思うのはカウンセリング心理学の白人人種的アイデンティティ発達理論。無自覚の状態から差別に意識的になっていくプロセスを段階的に定義しているもの」
「自分の特権性に少しずつ自覚的になっていき、最後はマジョリティである自分が人種主義に立ち向かう行動を起こす意義を自覚するようになる。どの段階でも本人は善良な市民。逆に、かつては自分もその段階にいたという見方もできる」
#悪意のないマジョリティ
出口「特権はマジョリティなら自然についてくるもので、自分がいらないと言ってもなくならない。だからこそ、備えている特権を自覚して意識的にそれを差別の是正に用いていくことに向けていく」
#悪意のないマジョリティ
ハン「心理学のアプローチも大事なのと同時に、著者のように法律的なアプローチも必要なのでここからは法律の話も(10章)。韓国では包括的差別禁止法をつくろうという運動が10年以上続けられている。国家人権委員会という人権擁護機関があるのは日本と大きな違い」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「本書の魅力はフレーズの的確さと言いましたが、自分も新しい言葉を作ることをしてきた。キャッチーならいいわけではなく、間違えてはいけない勘所を押さえた言葉を増やしていく。それが本になって翻訳されて広まることの大事さ。」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「自分もこういう本を書きたかった一人です(笑)が、自分ならこう書くなというところも見えてきた。キム・ジへさんが投げてくれたボールを日本でどう受け止めて返していくか、考えていきたいと思います」
#悪意のないマジョリティ
ハン「最近になってマジョリティ特権や男性学の本がたくさん出ているのはいい傾向。
自分も共著で『ポリティカルコレクトネスのその先へ』的な本を5年くらいかけて準備して、近々出版予定です」
#悪意のないマジョリティ
永山「当初、日本でこの本が出たら危険だと直感的に感じた。韓国が現在の状態にたどり着くまでに民主化闘争などどれだけの血が流されたかが知られないまま日本で受容されると、日本人自身の足元を振り返らないことになるのではないかと。この本が生まれるまでの歴史的な文脈についても知ってほしい」
「現地調査で国家人権委員会を訪問したら、スタッフが全員社会運動の出身。人権運動をしてきた人が国家の人権擁護組織を担っている。韓国の女性家族部の長官は性暴力のサバイバー。そういう背景をもって現在のところまできたんですね」
#悪意のないマジョリティ
ハン「日韓で違うところも多いのだけれど、むしろ共通性もすごく多くて、本に出てくる事例は日本の出来事としてもまったく違和感がない。そういう共通性を読み取っていくことも、異なる歴史背景を知ることも、両方大事なのでは」
#悪意のないマジョリティ
出口「むしろ全部日本の事例で書かれたらきつかったのでは。隣国の話として、少し遠いけれどわかるという距離感がよかったのかも?いきなり行くと抵抗が強くなってしまうので戦略的に説得していくことも」
永山「どうして日本の事例だと抵抗が出てしまうんでしょう?」
ケイン「いきなり自分自身の特権性を自覚すると、それを奪われるとか、むしろ自分だって苦しいんだというようなバックラッシュ的な反発を生んでしまうから、丁寧に言っていく必要があるのでは」
#悪意のないマジョリティ
「ふだん使いの言葉を使っていくこと。高名な著者の講演を聞いて学んだけれど翌日からの行動は変わらないというのではなく、日常で使っていける言葉や概念を提供していくことでマジョリティの行動を変えられるのでは」
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ハン「重荷をたくさん背負わされたマイノリティの側としては、なんでそんなことまで考えてあげなきゃいけないの、とも思う。もちろん立場上はそういう配慮もしながら発言していきますけど」
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永山「マイノリティを持った自分が権力に対して自己主張をしていくと、別のマイノリティ性を持った立場の人からはそれ自体が特権に見えるという問題がある。言葉を持っている者として、どのようにその特権性を使っていくかというジレンマ」
#悪意のないマジョリティ
ハン「マジョリティが変わりたくないという意識はどこから来るのか。変化って楽しいものだと思うのだけれど。自分がいまたくさん持っているからそれが減らされると思うのか」
出口「ケインさんが言ったように、自分がこれまで頑張ってきた、努力してきたという自己認識を脅かされるから反発する」
永山「変わりたいと思わない人、この本を手に取ろうともしない人にはどうアプローチする?」
ハン「悪意がないと同時に無自覚だから」
ケイン「読んでほしい人にどう届けるか問題ですね」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「ゴリゴリのヘイトスピーカーには届かないかもしれないけれど、その周囲の誰かには刺さるかもしれない。ふだん使いの言葉を増やしていくことで、そういう人をつくりだしていけるかもしれない」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「韓国社会の歴史を知らない自分は誤読しまくっているかもしれない。でもそこに「創造的な誤読」も生まれる。この本をめぐって今日この4人で話しているように。」
ハン「韓国でも読書会を通じて広まったと書いてありますね。他者と一緒に自分の経験を共有することを通じて読んでいく」
出口「マジョリティ特権を学生に教えると、ロールモデルを知りたいという。段階を踏んで乗り越えてきた人の経験を共有したいと。何がきっかけで変わったのか。そういう語りを共有してストーリーとして可視化されていくと参考になる」
#悪意のないマジョリティ
ハン「マジョリティにもロールモデルが必要っていうのは驚き」
ケイン「杉田俊介さんのやっているような、マジョリティ男性が自分自身の特権性を自覚して変わっていく上でのロールモデル。そういうのは必要とされているのかも」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「個人の変化を大事にするのと同時に、それを個人の気持ちの問題に回収させないために、どうしたら誰でも差別をしないですむ社会構造を作れるかも両輪として大事。そうしないとやっぱり「心の問題」に戻ってしまう」
出口さんのスライド。社会にいる誰もが動く歩道の上にいる。動く方向に進むのが積極的な差別主義者。止まっているつもりで流されているのが消極的な差別主義者(=善良な差別主義者)。逆方向に動く積極的な反差別主義者にならなければ、差別に加担することになってしまう。
#悪意のないマジョリティ
差別が構造の問題だと気づいたらどうすればいいのかという質問。
出口「自分の特権性を可視化していくと日常が違って見えてくる。自分が無意識に恩恵を受けているという例を発見していくことで変わりうる」
#悪意のないマジョリティ
ケイン「発言する機会が回ってきづらいのがマイノリティ。マジョリティの特権性を自覚したら、自分がそれを発言するのもいいけれど、これまで発言機会がなかった誰かにそのマイクを渡すということも選択肢なのでは?」
#悪意のないマジョリティ
(質問)この本を使って読書会をするときに気をつけることは?
ケイン「主催者が正しい結論を答え合わせをするような形にするとよくない」
ハン「誰かの発言を否定しないこと」
出口「立場性を自覚しながら」
そろそろ時間なのでお開きに。
永山「ぜひ読書会をしてください。読んで感想を発信していただければ。
10月からふぇみ・ゼミでこの本を使った連続講座を予定しているので、じっくり読みたい人にはそれを受講してもらえれば」
unei1.peatix.com
ケイン「本屋さんで本を買いましょう。自分の地元の本屋さんでこういう本を買うことが大事。実家に帰ったときに親の机に置いておいたという学生もいます。身近な人に伝えるときに使える最大のツールが本です」
#悪意のないマジョリティ
出口「マジョリティ性の多い方はそれに気づいても、変わらずに生きていけるし、批判されたら立ち去る権利がある。居心地の悪いところから逃げないで踏みとどまる努力。そこに残るか立ち去るか、自分が常にその選択を行使しているという自覚を持ってください」
#悪意のないマジョリティ
終了しました!ご視聴ありがとうございました。
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