多摩美のe-Learning用の授業を頼まれた。一般学生向けではなく、受講生はビジネス系の社会人が中心らしい。学部でやっている講義内容はそのままでは使えないので、作家や作品論ではなく、漫画編集者やウォルト・ディズニーなどのプロデューサーについて語ってみようかと考えている。
打合せていて、第一回は「少年倶楽部」「漫画少年」の名編集長、加藤謙一を紹介しようと思った。戦前に田河水泡「のらくろ」、戦後に手塚治虫「ジャングル大帝」を世に送り出した伝説的な編集者。
経済産業省が2018年に「デザイン経営宣言」を発表し、企業経営にデザインの考え方を取り入れることを推奨したが、多摩美はTCLという社会人向けの「デザイン経営」教育プロジェクトを立ち上げたが、経産省の意向を受けてのものらしい。
資料を渡されたが、難しいことが書いてあってよく分からない。経産省の資料を見ると、どうも、一時期流行ったCI(コーポレート・アイデンティティ)を発展させた概念のように思った。松下電器がパナソニックになったり、フジテレビのロゴマークが目玉になったりしたのがCIの例だが、
企業のイメージ戦略をブランド名やロゴマークだけでなく、広く企画のアイデアや社員のイノベーション開発に結びつけようとするものらしい。
meti.go.jp/.../05/2018052…
その中で漫画の話をしろと言われても、クリエイター志望者向けの講義とはおのずと内容は異なってくると思う。
ようするに、受講生はクリエイター志望者ではなく、経営やビジネスにデザインや美術の発想を取り入れたいということなのだから、作家や作品の話をするより、作家や作品と読者や観客との橋渡しをする役目である編集者やプロデューサーの話のほうが参考になるのではないか、と思った。
私自身はクリエイターより編集者に近いので、大学で漫画やアニメの話をしていても、「本当に語りたいこと」とは少しずれていたのだ。それはそれで関心事項だからいいのだが、本当に語りたいのは作品・作家と受け手の間にあるプロセスのことなので、ようやくそういう話ができるチャンスが来たと思った。
「デザイン経営」という言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶのがAppleだな。ジョブズの時代から企業のブランドイメージを死守していて、そこから商品や事業が生まれている。経産省が言っているのも、要するに「日本の会社もAppleみたいになれ」ということなのかもしれないが、言うは安く行うは難しですよ。
手持ちの資料から、講義できそうなラインナップ。
●加藤謙一(「少年倶楽部」「漫画少年」編集長)
●ウォルト・ディズニー
●内田勝(「少年マガジン」三代目編集長)
●鈴木敏夫(スタジオ・ジブリプロデューサー)
講義タイトルは「創作とビジネスの間に」かな。

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17 Jul
小山田圭吾がいじめ告白をした90年代前半の「クイック・ジャパン」で私も仕事をしていた。小山田インタビューを担当した編集者も知っている。あの当時もそれなりに衝撃的な記事だったが、炎上することはなかった。ネットが未発達だったこともある。
90年代は95年の前と後では全然ムードが違う。私の記憶では、90年代前半に流行った「悪趣味」「鬼畜系」ブームの中で、その変種として受容されたのではないかと感じている。鬼畜系の出版をよく出していたのがデータハウスと太田出版で、太田出版からは「完全自殺マニュアル」がベストセラーになった。
私の印象では94年までは80年代の延長で、80年代は「明るいニヒリズム」の時代だった。この辺りを説明しようとすると、Twitterの短文では難しい。60年代の高度経済成長の終着点が80年代末のバブル経済で、これは91年に弾けたが、本当に不景気の実感が始まったのは98年からだ。
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7 Aug 20
20歳の頃にアリス出版のエロ本でモデルのインタビューページを担当したが、考えてみたら一度も本人にインタビューしたことがない。全部創作で書いた。
20歳でエロ本業界に入ったとき、大先輩に佐山哲郎というライターがいて、この人はたった一人、一晩でエロ本一冊分の文章を書き上げた伝説がある。告白手記からモデルインタビュー、エロ小説、読者のお便り、クイズコーナーまで。
それで、翌日には競馬の開場に間に合ったという。佐山氏は真の天才ライターだが、恐ろしいことに、のちにジブリアニメになった「コクリコ坂から」の漫画原作もこの人なんだよな。
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