「SG実験で不均一磁場中を運動するのは時間発展演算子で書けそうな気がするけど、どこで射影演算子による測定が入ってくるのだろうか?」
シュテルン=ゲルラッハ装置の磁場中を運動する粒子はもちろんユニタリーな時間発展演算子で書けます。(以下続く)

#入門現代の量子力学
量子状態は物理量の確率分布でしかないので、観測して何等かの結果が出てしまえば、その情報を基にしてその確率分布は更新しないといけません。その更新のために射影演算子が出てきます。その粒子が上か下かに出てきたと観測者が認識できた時に、測定による射影が必要です。
「なんで調和振動子2個で磁場中の荷電粒子の運動が表せるのだろうか?結局円運動になるからなのか?」
これはその通りで、現代的量子力学では人間側が現象に寄せていくことになります、つまり現象を説明する数理モデルを構築し、それを実験で検証して、合っていれば、それを以降で使うという姿勢です。
「ちょこっと3次元の拡張のことも書いてあるけどその場合も2個でいいのか?」いえ、3次元拡張では、現象を説明する数理モデルの構築で、その自由度を合わせるために3個からスタートする必要があります。
この教科書は前世紀の教科書とは全く違うルートで、量子力学の理解の頂上を目指す構成になっているため、むしろ古い理解の仕方を全て捨てて、その思考の轍から抜けていかないと、正しく理解できないだろうと思います。頭を柔らかくして、何度も読み直してみてください。 Image

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30 Dec
量子力学文庫版教科書で話題のワインバーグさんは、亡くなるまで科学の営みは人間とは独立した真理を教えてくれると思ってたようですね。でも量子力学は結局確率に基づいた情報理論でしかありません。人間が自然を自分なりに理解するために発明した精度の高い言語でしかないのが、量子力学の本質です。
実証科学とは、人間の五感を出発点にして、高度な測定機を使った実験観測を対象に行って、その対象がその反応として返してくるデータを解析するだけの、人間の営みに過ぎません。ですから人間の理解できない自然像は最初から得られません。
前世紀は物理学帝国主義があり、どんな対象、どんな事象でも、人間は科学として言語化して、その説明を付けることができると信じていた研究者は、世界的にも多かったと思います。でもそれは所詮傲慢な態度に過ぎません。どんなことでも、できるわけではないのです。
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29 Dec
希望者人数が多くなってきたので、開催してみようかと思うのですが、大晦日12月31日の14:00から2時間くらいの目途で開催します。ただ時間延長はあるかもしれません。無料ですが、希望者が多い場合には抽選とさせて頂く場合があります。またあるところで応募は締め切らせて頂きますのでご了承下さい。
12月31日の14:00からの開催にしました。希望者の方は、教科書のどのあたりのどんな質問か(章やページや式番号などでも良いです)を書いて、DMで申し込んでください。ある人数になりましたら、その時点で受付停止にさせて頂きます。多数の応募の場合は抽選をさせて頂くことがあります。ご了承下さい。
DMのフィルタを解除しました。応募を開始します。
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29 Dec
「隠れた変数の理論」という名前はカッコいいという感想を見かけたました。局所的理論だと20世紀以前までの物理学の普通の話ですし、非局所的(文脈依存的)理論だと御都合主義の陰謀論的ですし、内容の肩透かし感は大きいはずです。そういう感覚を共有することも量子力学の脱魔術化の一環になります。
昔はボーム理論の中の用語の訳として「暗在系」なども出てきて、前世紀の隠れた変数理論周辺は厨二病感が満載でした。当時のニューエイジとかスピリチュアル系とかと結びついて、実証科学とかけ離れていった黒歴史もありました。
#入門現代の量子力学 の力点の1つは、「観測問題は存在しない」という標準理論の内容をきちんと取り込むことでした。波動関数は定義自体から観測によって収縮すべきものであると、正しく理解する人が増えたことは良いことです。これで「量子力学の脱魔術化」を一歩進められたのならば嬉しく思います。 Image
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28 Dec
来年も世界経済と国際政治の激しい流れの中に、この国は巻き込まれていくでしょうから、どんな突発的なことが起きても、自由な精神と尊厳を持って生きるための現代リベラルアーツを隅々にまで行き渡らせる活動に期待したいところです。昔の「読み書きそろばん」だけでは、若い世代にはもう足りません。
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17 Aug
物理学の一番大きな売り物は、世界観です。地球は平坦ではなく丸く、宇宙という空間に浮かぶ天体であり、地上の重力と天体の運動は同じ法則に支配された現象と判明しました。人類の考え方を大きく変えるのが、物理学です。基礎科学である量子情報物理学でも、そういうところに大きな面白みがあります。
素粒子や宇宙などの理論物理学は世間で言うところの実学とも繋がっています。そもそも量子コンピュータの着想は理論物理学者のファインマンさん。具体化したドイチェさんも量子重力研究者。量子情報分野で有名なラフラメさんはホーキング博士の学生でした。同様にプレスキルさんも素粒子論研究者です。
ブラックホールとかビッグバンとかを考え続けることは、このように人類が新しい着想を得る重要な切っ掛けにもなってきました。この基礎物理学研究の底力を、この国でももっと認識されれば良いなぁと思っています。
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16 Aug
量子光学を使った連続変数(CV)の量子コンピュータも、任意のユニタリー操作が少数の量子ゲートの繰り返しで構成できます。他の調和振動子系でも、同様の量子ゲートを実装できれば、量子コンピュータを作ることができます。#入門現代の量子力学

strawberryfields.ai/photonics/conc…

量子コンピュータを実装できる調和振動子などの粒子系では、エネルギー的に許される場合に、任意のエルミート演算子に対応する物理量が測定ができることになります。このことは量子力学基礎論での、エルミート演算子と物理量の対応関係の問題を、肯定的に解決しています。
strawberryfields.ai/photonics/conc…
なお超選択則のある場合でも、全保存量が一定値をとれるところまで合成系を拡大しておけば、その合成系での任意のエルミート演算子は測定可能な物理量に対応していることもわかります。

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