東京は地方からたくさんの若者を吸収する割に出生率が低く、人口減少のブラックホールになっていると言われるけど。これは現代に限らず、江戸時代も都会というのはそうであったらしい。地方が人口供給、都会は人口消耗。
江戸時代でも、江戸は地方から人口を吸収しては、それを消耗する都市であったらしい。これは日本だけに限らず、世界の大都市は、地方から人口を吸収しては消耗する性質があるという。地方での人口増分を超える都市への人口移動があると、国全体の人口も減ってしまう。
これはなぜなのだろう?都市の方が便利だし、生活に必要なものも手に入れやすいし、仕事もあるし、遊ぶ場所もたくさんあるのに。
原因ははっきりしないが、都市は外部からの流入で人口は増えるのだけど、都市内での人口再生産の力は弱く、人口を消耗する性質があるらしい。
もう10年ほど前になるだろうか。世界人口の半分以上が都市住民になった、という報道があった。途上国でも農家の数が減り、都市に住む人が増えているようだ。世界人口は相変わらず増加しているけど、都市に過半が住むようになれば、人口減少に転ずるようになるだろう。
つまり世界的に、少ない人数の農家が大量の都市住民に食料を供給する格好。このスタイルが世界的に続いている。国によるし地方にもよるだろうが、世界的に、少ない人数の農家が少しずつ広い農地を耕す傾向が続いている可能性がある。
問題は、そうした農業のスタイルが今後も続けられるかどうか。
化学肥料のおかげで、単位面積あたりの収量が増え、少ない人数の農家でもたくさんの都市住民の食料を支えられるようになった。アメリカの農家は、かつて一農家12人分の余剰食料を作るだけだったが、いまや129人分。10倍以上。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻で化学肥料の流れに狂いが生じている。ロシアは侵攻前、重要な肥料である硝酸アンモニウムの世界シェア45%。これが侵攻で入手困難になり、世界的に化学肥料が手に入りづらくなっている。
化学肥料が手に入らなければ、単位面積あたりの収量は落ちる。もちろん有機農業でも収量を落とさない人はいるが、その人は腕がよい。みんながそんなに腕がよいわけではない。また、有機肥料も手に入りづらくなっている。化学肥料の代わりに有機肥料を買い求める人が増えてるから。
現代の豊かな有機肥料は、化学肥料が作り出している面がある。化学肥料で大量のトウモロコシを育て、それを食べた家畜からたくさんの畜産廃棄物が出て、それが有機肥料や堆肥となる。もし化学肥料が手に入らなければ、有機肥料の生産も減る恐れがある。
少数の農家が大量の都市住民を養えるのは、化学肥料に負うところが大きい。化学肥料の生産は、工場立ち上げから始めなければならないから容易ではない。世界的な化学肥料の不足が、今後、世界の食料事情をどう変えるのか、読みづらい。その中の、日本の食料安全保障も。
日本に、決定的に強みになる輸出商品があるうちは、それを売ることで資金を得て、海外から食料を買いつけられる。しかし自動車も、半導体が手に入らないために納車まで一年待ちの状況だという。海外との交易で儲ける手段が先細り始めている。
日本は、輸出製品の不足と、輸入する食料と肥料の高騰に苦しめられる恐れがある。日本の食料安全保障は今後、難しい舵取りが求められることになる。
まとめました。

減っていく農家は都市住民を支えきれるか|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
化学肥料が手に入りにくくなる中、少人数の農家が都市住民の食料を支えきれるのか?日本の食料安全保障は世界情勢の中でどうやって保てばよいのか?
「そのとき、日本は何人養える?」
8月19日発刊。
amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%8…

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Aug 10
日本の食料安全保障は、アメリカによる一極支配の世界で保たれてきた。しかしアメリカだけが強国でいられる世界構造が崩れ始めているように思う。
アメリカが世界最強だった理由の一つに、世界中から超優秀な人材をかき集めるシステムがある。これがひび割れ始めている。
アメリカの有名大学、ハーバード大学やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学などには、世界中の俊秀が集まった。そのうちの少なからずがそのままアメリカに定住し、ビジネスを起こした。世界を席巻しているIT企業は、そうした移民の力が大変大きい。
アメリカは第二次世界大戦後から、フルブライト奨学金などを支給し、優れた学生をアメリカに招く仕組みを持っていた。こうした留学生たちは当然ながらアメリカ贔屓になり、アメリカに定住し、アメリカの科学・技術の発展に寄与してきた。
Read 11 tweets
Aug 9
私はこうして大量に文章をアップするせいか、寄稿を頼まれることがある。以前は喜んで受けていたのだけど、無料で引き受けていたら、文筆で生きておられる人たちの生活を脅かすのでは?と思うようになり、「おいくらですか?」と聞くようにしている。すると、音沙汰なくなる出版社も。
今はツイッターやFacebookなどのSNSで文章を書く人をいくらでも見つけられる。だから出版社も、無料で文章書いてもらえそうな人を簡単に見つけられるのだろう。そのために、文筆でメシを食べている人たちの生活を脅かしているように思う。
もっとひどい事例もある。「ノーベル賞級の研究者が寄稿する雑誌にあなたの文章も載ります。栄誉でしょ?ついては10万円支払ってちょ」私は最初、勘違いして「え?執筆料10万円ももらえるんですか?」とビックリしたら、「いえ、あなたが出版社に支払うんです」という。アホらしくて断った。
Read 11 tweets
Aug 9
ツイッターのトレンドでも「論破」という言葉が出てくるけど、私は論破にこだわること自体、あまり意味がないと思っている。論破した側も、論破された側も、自分の勝利にこだわって相手の話を聞いてないことを意味しているから。
論破は、相手の論を討つ「討論」での出来事。相手の意見に耳を傾け、そこから新たな発見をし、互いに高め合い、より高次の考察に進む「議論」とはどうも違う。
討論は、どうも、キリスト教の異端審問で磨かれた技術のように思える。
キリスト教は、カソリックが正統派として確立されるまで、どちらが正統かを決めるのに討論がよく行われていた。そして討論で負けた流派は異端とされ、排除された。こうした歴史を踏まえると、相手の話に耳を傾ける気が毛頭ないのが討論だというのがよくわかる。
Read 5 tweets
Aug 9
YouMeさんとは結婚して11年、幸い仲良くさせてもらっている。なぜYouMeさんとこんなに長く仲良くしてもらえるのか考えてみると、もちろんYouMeさんができた人だというのが大きいのだけど、それでは皆さんのお役に立たない。私達はどうしてるのか、改めて考えると。
「本来自分がやらなきゃいけないことを相手が肩代わりしてくれている」と、お互いに考えているからかも、と思う。
本来自分がやらなくちゃいけないことを相手がやってくれている、と考えると、自然に次の言葉が出てくる。

「ありがとう」
もし、相手の方が、本来自分が頑張らなきゃいけない分まで余分に頑張ってくれていると感じる場合は、「済まないね」という言葉が自然に出てくる。YouMeさんも、そして私も、互いにそうした意識で接することができているから、自然に感謝し合う関係を続けられているのかも。
Read 7 tweets
Aug 9
漫画家になりたかったら、漫画を描き、出版社にどんどん持ち込め、と言われる。物書きになりたければ、どんどん文章を書いて人に読んでもらえ、と言われる。そういう意味では、ツイッターはなかなかいい場所のように思う。
私は経済の専門家じゃないけど、平気でつぶやく。すると当然、いろんなご指摘を頂く。あ、その視点欠けてたな、とか、知らなかったことを教えてもらえたり。それによって、知識が一つ増え、誤解が一つ減る。恥をかけばかくほど学びは深まる。
もっと勉強してから発言しろ、という人がいるけれど、それでは、絵がうまくなってから絵を描け、文章がうまくなってから文章書け、と言ってるようなもの。それじゃいつまで経っても成長できない。いいじゃん、恥をかけば。恥は学ぶための大切な一里塚。
Read 6 tweets
Aug 5
日本は火山国なので、地熱発電への期待が強い。しかし調べてみると、地熱発電は伸びるどころか縮小している。2020年度でわずか0.3%。太陽光発電などが伸びる中、どうして地熱が伸びないのだろう?
これはあくまで私の仮説だが、「溶岩の粘り気が強い」ことが大きな原因ではないか、と考えている。
地熱発電で有名なのはアイスランド。電力の約3割を供給している。これに7割の水力も含めて、ほぼ100%が再生可能エネルギー。日本もアイスランドの地熱発電を見習いたいところだが、何が違うのだろう?
アイスランドは、流れる溶岩が観光資源になっていることからわかるように、溶岩の粘り気が少ない。
溶岩の粘り気が少ないと、爆発的な噴火が起きにくい。だから、比較的安心して地熱発電の立地を探しやすいのではないか。しかも水力発電が盛んなことからわかるように、水も豊富。地熱発電を行う条件が整っている。
Read 10 tweets

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