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Sep 3 14 tweets 1 min read
日本の食品ロスは522万トンあるという。一人当たり年間42kg、ご飯一杯分に相当する食べ物がムダになっているという。そうでなくても食料自給率の低い日本、食品を無駄なく食べれば、世界の飢餓を減らすにも貢献するのでは?というわけで、食品ロスをゼロにしようという運動もあったりする。ただ。
食品ロスをゼロにすることは危険だということを指摘する話を見たことがない。
たとえば原発で、むやみに丈夫にするのはムダだから原子炉の壁もできるだけ薄くしようとしたら、危険なことはすぐにわかるだろう。工業では「安全余裕」という考え方がある。もし想定以上のことがあっても耐えられる余裕。
食料というのは、少しでも足りないとなると飢えてしまう。飢えれば働くどころの騒ぎではない。人を飢えさせないようにすることは非常に大切。だとすると、少しくらい事故が起きても融通できる余裕を確保しておく必要がある。その余裕は、何も起きなければムダになる。しかし大切な安全余裕。
それでも、豊かな国がである日本の食品ロスは突出して多いのでは?と思われるかもしれない。食品廃棄物(野菜の芯など、食べれない部分含む)を調べてみると、日本は一人当たり133.6kg,フランス148.7-200.5kg、ドイツ136kg,イギリス187kg、アメリカ177.5kg。日本は多いどころか、むしろ少ない。
あまりに食品ロスが多すぎるようであれば、減らす必要があるだろう。しかしいざというとき、食料が足りないとなれば飢えてしまうから、ある程度の余裕を持たせておく必要がある。その分はどうしても食品ロスになってしまうだろう。しかしそれはいざというときの「保険」。掛け捨ての保険みたいなもの。
だから、食品ロスをゼロにすることを目指すのは危険。保険に入らずに自動車を乗り回すようなもの。食品ロスは、人々を飢えさせないための必要悪の可能性があることは、忘れないでほしい。
もし食品ロスが発生したとしても、それが田畑の肥料として還元されるなら、必ずしもムダにはなっていない。安全余裕を確保しつつ、どうしても発生する食品ロスを、有効に活用する方法を、食品ロスのゼロを目指す代わりに考えて頂きたい。
なお、農家で発生する規格外の野菜をムダなく食べることで食品ロスを減らそうとする動きもある。これは農家の生活を破壊する行為なのでやめて頂きたい。
その活動をしている方は善意だろう。売れない野菜を、安いとはいえ売れて現金が手に入り、消費者は安く食品が買えてウィンウィンだ、と。しかし。
消費者はそれでお腹いっぱいになってしまう。すると、農家が手にできるのは、規格外の野菜に相当するわずかな現金のみ。まともな野菜がまともな価格で売れるときよりも売上が減る。規格外の野菜が規格ものの野菜と同じ価格で消費者が買ってくれるなら農家は助かるが、残念ながらそうではない。
規格外野菜を安く売る行為は、農家の売上を減らし、老父母を美容院に通わせたり、子供を学校に通わせたりするための現金を減らすことになる。農家が困窮することになる。残念ながら、規格外野菜を安く売る行為は、ウィンウィンどころか農家の生活を破壊しかねない行為。
それよりは、お店で売られている野菜を妥当な価格で買ってくれることのほうが、農家の生活を助け、農家に余裕が生まれることで技術が向上し、規格外の野菜を減らすことが可能になる。規格外の野菜を売る行為は、農家を貧しくし、技術の停滞を招きかねない。
ここで述べていることは、世間一般で食品ロスについて語られていることとは正反対とおもわれるかもしれない。しかし理屈を考えてみれば、ご理解頂けるだろう。経済の仕組みというのは、ややこしい。現場で、現実に何が起きているのかをよく観察する必要がある。頭の中で想像したことと全然違うから。
まとめました。

食品ロスは本当にムダなのか?|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
食料安全保障のためには、一定の食品ロスも許容する必要がある。一般に語られる食品ロスへの考え方とは異なり、食料安全保障から見ると、見える景色が変わります。
amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%8…

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Sep 2
「自己の確立」考。
昨晩のウェブ飲み会のテーマは「自分がない」とはどういうこと?というもの。たくさんの方々の意見が出て、とても刺激を受けた。
自分がない人は「私はどうしたらよいでしよう?」と他人にすぐ頼ろう、すがりつこうとする。どうするかも他人に決めてもらいたがる。
これはどうも、依存したいのではないか、と思う。相手の意見を丸呑みすることで、「私はあなたの言うことなら何でも聞く人間ですよ、だから私を認めて」という、ちょっと歪んだ形の承認欲求なのかもしれない。自分をすべて失うほどあなたに従属してるのだから私も認めて、という。
こういう人は、非常に暴力的な人と共依存になっているケースがある、という指摘があった。自分の怒りや不満を暴力でぶつけてくる人に、「この人は私にこんなにも向き合ってくれる、この人なら私から離れまい、この人には私しかいない」と感じ、その人に従属してしまう。互いに相手に依存する妙な関係。
Read 27 tweets
Sep 2
「対案を出せ」考。
ひところ、対案を出せ、という返しが流行した。ケチをつけるのは誰でもできる、批判なんか誰でもできる、文句言うなら対案を示せ、というわけ。これはこれでなかなかもっともな話ではあったのだけど、いざ対案出すとダメ出しばかりでケチョンケチョン。言うだけ損した気分になる。
対案を出すと、いかにそれが愚かで間違っているかと批判する。そして自分の案の方がマシ、いや、正しい、という主張に落ち着く。結局、声の大きい人勝ちになる。また、政策担当者である人が絶対的に有利。「お前は現場を知らない、そんなの机上の空論」と叩き切る。しかし。
しかしそんなこと言ってしまったら、政策実施者だけが現場を知ってるということになり、実施者以外は「現場を知らない愚か者」扱いになり、提案した対案は「机上の空論」扱いになる。結局のところ、「対案を出せ」は、立場の強さを利用して周囲を屈伏させるためのズルい論理だった気がする。
Read 12 tweets
Sep 1
これは農業全般に関わる、さらには日本の食料安全保障にも関わる重要な問題のように思う。この方の報告によると、ついにウシ一頭で100円の値しかつかなかったという。牛を売ろうとしている人が多いから。ではなぜ牛を売ろうとするのか?牛乳安く、飼料高く、採算合わないから。
このままだと畜産農家が相当のダメージを受ける。ウシはすぐには増やせない。ウシが少なくなれば、ウンコも減るから堆肥がなくなる。そうなると、一般農家は肥料が手に入らなくなる。そうでなくても化学肥料が手に入らない中、比重の大きかった畜産堆肥までなくなったら、農業生産への影響大きい。
別の方から情報を提供いただいた。本当に牛一頭110円だった。最高価格も最低価格も110円がちらほら。今週8/31の根室地区家畜市場の結果。 Image
Read 4 tweets
Aug 10
東京は地方からたくさんの若者を吸収する割に出生率が低く、人口減少のブラックホールになっていると言われるけど。これは現代に限らず、江戸時代も都会というのはそうであったらしい。地方が人口供給、都会は人口消耗。
江戸時代でも、江戸は地方から人口を吸収しては、それを消耗する都市であったらしい。これは日本だけに限らず、世界の大都市は、地方から人口を吸収しては消耗する性質があるという。地方での人口増分を超える都市への人口移動があると、国全体の人口も減ってしまう。
これはなぜなのだろう?都市の方が便利だし、生活に必要なものも手に入れやすいし、仕事もあるし、遊ぶ場所もたくさんあるのに。
原因ははっきりしないが、都市は外部からの流入で人口は増えるのだけど、都市内での人口再生産の力は弱く、人口を消耗する性質があるらしい。
Read 14 tweets
Aug 10
日本の食料安全保障は、アメリカによる一極支配の世界で保たれてきた。しかしアメリカだけが強国でいられる世界構造が崩れ始めているように思う。
アメリカが世界最強だった理由の一つに、世界中から超優秀な人材をかき集めるシステムがある。これがひび割れ始めている。
アメリカの有名大学、ハーバード大学やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学などには、世界中の俊秀が集まった。そのうちの少なからずがそのままアメリカに定住し、ビジネスを起こした。世界を席巻しているIT企業は、そうした移民の力が大変大きい。
アメリカは第二次世界大戦後から、フルブライト奨学金などを支給し、優れた学生をアメリカに招く仕組みを持っていた。こうした留学生たちは当然ながらアメリカ贔屓になり、アメリカに定住し、アメリカの科学・技術の発展に寄与してきた。
Read 11 tweets
Aug 9
私はこうして大量に文章をアップするせいか、寄稿を頼まれることがある。以前は喜んで受けていたのだけど、無料で引き受けていたら、文筆で生きておられる人たちの生活を脅かすのでは?と思うようになり、「おいくらですか?」と聞くようにしている。すると、音沙汰なくなる出版社も。
今はツイッターやFacebookなどのSNSで文章を書く人をいくらでも見つけられる。だから出版社も、無料で文章書いてもらえそうな人を簡単に見つけられるのだろう。そのために、文筆でメシを食べている人たちの生活を脅かしているように思う。
もっとひどい事例もある。「ノーベル賞級の研究者が寄稿する雑誌にあなたの文章も載ります。栄誉でしょ?ついては10万円支払ってちょ」私は最初、勘違いして「え?執筆料10万円ももらえるんですか?」とビックリしたら、「いえ、あなたが出版社に支払うんです」という。アホらしくて断った。
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