Thread by @kogumathenics

多くの人にとって人生で一番大きなお買い物、住宅。ほとんどの人はローン組むよね。そして固定金利か変動金利か迷う。ここ10年、都心マンション価格の高騰を背景に変動フルローンで買う人も増え、マスコミは金利上昇の危険性を煽る。今日の #こぐまざっくり解説 は身近な住宅ローン金利のお話くま。

住宅ローンも金融商品なのでワイはどちらがお勧めとか言わないけど、まあ参考にしてもらえると嬉しい。グラフは借り物ですが出典は書きますね。さて、金利上昇で変動フルローン勢が破綻の危機！とマスコミは煽るわけなんですが、住宅ローンの変動金利ってどう決まってるかご存知ですかくま。

住宅ローンの変動金利には各銀行(概ね横並び)に基準金利というものがあります。そしてこの基準金利は短期プライムレート(短プラ)という指標金利に概ね1.0%を足したものとして設定されます。

プライムレートとは銀行が企業融資に際して最もクレジットスコアの高い優良顧客に貸付を行う際の金利で、短期プライムレートは満期1年未満の貸出に際して適用される基準金利とご理解くださいくま。

さて住宅ローンにおける変動金利は短プラ+1.0%である基準金利がその名の通り基準になるのですが、各銀行は顧客獲得のため、その基準金利から借入人の信用度に応じて優遇レートでもって引き下げを行います。

現在の短プラは1.475%(2009年1月から変わってません)、基準金利は2.475%、大手ネット銀行が提供する変動金利ローンは足元0.4%程度がベストレートかと思いますので、優遇幅は2.0%に達していることになります。つまり、短プラ−1.0%ということです、くま。

さて、ここでここ20年の短プラの推移について見てみましょう。グラフをお借りしました。ほぼ同じ形状のグラフが並んでいますね。一番低い黄色のグラフ、これは無担保コール翌日物金利(最近はTONA、トナーと呼ばれます)を表しています。

金融機関同士が資金を融通ふる市場をコール市場と呼びます。そこで今日借りて明日返す1日の資金貸借を無担保で行う時の金利が無担保コール翌日物金利、TONAです。ここ20年、短プラはTONA+1.0%で推移してきました。足元TONAはゼロを少し割り込んいるので短プラとの差は1.5%近くあります。

つまり現状の変動ローン金利は概ねTONAの0.5%程度上と考えられるわけです。さて、このTONAですが当然ながら日銀の金融政策と密接に関係してきます。日銀は日銀当座預金の政策金利残高に付利金利を設定します。現状の付利システムは少々小難しいので割愛しますが、付利金利はTONAに影響を与えます。

ざっくり言うと、当座預金に積んだお金に付利される金利よりも低い金利でお金を貸そうとは思わないからです。つまり、日銀が所謂利上げを行えば、当然ながらTONAも上昇し、短プラも上昇、基準金利も上昇し、変動ローンの適用金利も上昇するわけです。

この点においては「日銀が利上げすれば変動ローン金利上昇！」は間違っていません。重要なのは、利上げがどの程度行われたら、変動ローン金利がどの程度上昇しうるのか？と言う点です。フラット35固定は1.4とかでしょうか？これを超えてくれば、変動勢ザマァ！となるわけです。考えてみましょう。

足元の関係性だと変動ローン金利はTONAの0.5%上ですので、今−0.10%の政策金利が1.5%になったらローン金利が2.0%です。まあこれでも即破綻とはならない気がしますが、固定勢は溜飲が下がるでしょう。日本の政策金利が1.5%、どんな世界線なんだ…くま。

さて、歴史を少し紐解いておきましょう。短プラとTONAに1.0%を超えるスプレッドが生じたのはここ20年の話です。バブル崩壊、長引くデフレの中で低金利政策が続いた結果、乖離が発生しました。金利低下により銀行の収益性が落ちていたったという要因もあるのでしょう。

時計の針を90年台に戻すとTONAと短プラはほぼ同水準で推移していました。今よりも金利が高かったからです。利上げが進んだ結果、この状態に戻るとすれば変動ローンの適用金利は概ねTONA−1.0%になります。適用金利が2.0%になるためには政策金利が3.0%になる必要があるわけですね。

インフレが激しい現在の米国ですらターミナルレート(政策金利の最高到達点)が4.0%程度かと言われている中、日本の政策金利が3.0%になる日はくるのでしょうか。ちなみにこれはおよそ30年前、93年の水準になります。

歴史はあくまでも過去の記録でしかなく未来を示すものではありません。ですが、どのような状況がどの程度の蓋然性で発生しうるのか考えてみるのは面白いと思います。皆さんのお役に立てば幸いですくま。

先日、後藤さん @goto_finance に「こぐまさん、金融リテラシーを向上される話はどうなったんですか」ってマイルドに詰められたから、少しためになりそうなこと書いたくま。後藤さん、こうゆうのでいいのかなくま？僕あんまり引き出しがないんくまよねw

住宅ローンは多くの人が興味を持つテーマだと思うので、また週末とかにツイートするくまね。興味のある人は、こぐまをフォローしておいてくださいくま。