NHKスペシャル「中流危機を超えて」は、実に腹立たしい内容だった。番組に登場した駒村とかいう慶応大教授は、竹中平蔵氏と寸分違わぬ主張で、ここ二十年の日本の有様から何も学んでいないようだ。
nhk.jp/p/special/ts/2…
これからの成長分野に人を配置し、その人たちには手厚く報い、その変化についていけない人間は振り落とされ、国の用意するセーフティネットに。この主張は、竹中氏がここ二十年、ずっと主張し続け、日本の多くの企業が真に受け、現在の体たらくをもたらした原因だ。それを駒村教授は完全コピペ。
竹中氏が長らく主張し、駒村教授がコピペした「改革」は、株主資本主義には実に都合の良い改革。多くの労働者を社会不適合者として低賃金化、あるいは解雇し、浮いた経費は株主に還元させる。有能とされた人間のみ手厚く報いることで、「自分たちは実力があるから」と勘違いさせ、労働者を分断。
今回、駒村教授は、「適合できない人間は企業が抱えるのではなく、国がセーフティネットを」と述べている。これは、竹中平蔵氏が最近主張しているベーシックインカム論と符合する。こうすれば、企業は社会適合者のみを雇って、経営は身軽になるというわけだ。しかしこの「美しい」論理には穴がある。
竹中氏は、あわせて「これからの成長分野を伸ばすために」と、法人税の減免を求めるのが常。これだけそっくり竹中市の主張をコピペしている駒村教授も、同様の主張だろう。すると、成長分野で企業が業績を上げたとしても、国に収める税は大して増えない。
税収は増えないのに、竹中氏や駒村氏が言うとおりの改革を進めれば、企業は労働者を大量に解雇し、身軽になろうとする。すると、大量の失業社会を国は支えなければならなくなり、しかし税収はない、というジレンマに追い込まれる。税収がない以上、「セーフティネット」は極めて脆弱になる。
すると、不満は国に向けられる。企業の経営者、有能として雇用された有能者、彼らから還元を受けた株主は、失業者からの憎しみを避け、国に憎悪を向けさせるのに成功し、利益を自分たちで独占(寡占)することができる。そうした社会の実現を目指しているのが、竹中氏のコピペたる駒村教授の主張。
経済という言葉は「経世済民」から来ている。「世を經(おさ)め、民を濟(すく)ふ」、つまり、社会を安定させ、民を救うことにこそ経済の意義がある。しかし竹中・駒村路線は、経世済民から外れている。一部の人間にだけ有利にし、多くの国民を蹴落とし、国を不満で充満した社会にしようとしている。
竹中・駒村路線は「経世済民(経済)」どころか、「世を乱し民を捨てる(乱捨)」と言えるだろう。経済の本来の目的である、世を治め、民を救うどころか、世を乱し、民を捨てる路線。こんな学説に何の価値があろう?
この路線を支援している可能性のある勢力が一つ思い当たる。岸田首相はイギリスの金融街、シティで「日本はこれから資産所得倍増計画を実施する。だから日本(の株)に投資してくれ」と演説した。これは、英米の投資家に、日本は株主資本主義を続けるぞ、という宣言と言える。
急速に元気を取り戻した竹中氏の動き、NHKの特番に竹中氏のコピペたる駒村教授に全く同じ主張をさせた事実、岸田首相のシティでの演説を組み合わせて「補助線」を引くと、英米の投資家から「日本売りするぞ」と脅され、竹中・駒村路線を踏襲するよう、岸田首相を脅した、と理解すると分かりやすい。
つまり、日本企業がもし大量の労働者を失業者として吐き出し、一時的に経費を大幅削減し、それで浮いた利益は大幅に株主に還元させ、そしてその株主の少なからずに英米の投資家が含まれていると考えると、岸田首相は英米の投資家に日本企業を売り渡した、と考えると理解しやすい。
日本の多くの労働者を失業者に変え、彼らが受け取るべき報酬はすべて株主と、わずかな経営陣と、労働者を分断するために一部「有能者」ということで高収入を約束した、ごく一部の人間と、その三者だけで利益を独占する社会を実現する。これが竹中・駒村路線であり、英米投資家の狙いではないか。
岸田首相は、この狙いの恐ろしさに気がついているのか?たしかにこの路線は、小泉首相から始まり、菅首相もこれを引き継いだものであり、自分もそれを引き継いだたけだ、というかもしれない(※意外なことに、安倍元首相はこの路線から外れている)。しかし、「新しい資本主義」をうたってたクセに。
「新しい資本主義」とは、日本の企業とカネを英米投資家に売り渡すことであると宗旨変えをしたことは、だまし討ちであり、小泉・菅氏よりさらに罪が重いと言える。しかもNHK特番に駒村氏なんかに路線を表明させ、時代の流れで国民に仕方ないことなのだ、と諦めさせるのはいかがなものか。
岸田首相は、選挙前に主張していた「新しい資本主義」、つまり「経世済民」に回帰すべきだ。英米投資家について行って一儲けしようという株主資本主義者たちに日本を売り渡すべきではない。彼らの利益のために論を展開する竹中・駒村氏に騙されてはならない。その方向は「乱世棄民」なのだから。
まとめました。

乱世棄民政策|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
食料安全保障についてまとめた本。竹中・駒村路線でいくと、日本は将来、かなりの餓死者が出てしまうのではないか、と危惧します。
amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%8…

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Sep 20
拝啓 岸田首相

首相が「新しい資本主義」と主張された時、正直、私は期待しました。新自由主義で痛めつけられてきた日本。貧富の格差が拡大し、貧しい人は這いあがれず、新型コロナで生活がままならなくなった人が増えました。そうした人たちに光を当てる経済政策がついに始まるのだ、と。
しかし、首相が「資産所得倍増計画」と言われた時、耳を疑い、呆気にとられました。「それでは『新しい資本主義』どころか、新自由主義、あるいは株主資本主義そのままではないか」と。その時の衝撃は、私ばかりではなく、多くの人たちも感じたようです。
首相が5月にロンドンの金融街シティーで講演され、「資産所得倍増」を唱え、だから「日本に投資してほしい」と述べたこと、私は次のように解釈しました。首相は、「もし『新しい資本主義』で労働者に手厚く配分し、富裕層に課税するようなら、日本株を売り浴びせるぞ!」と脅されたのではないか、と。
Read 31 tweets
Sep 19
子どもが本音を話しているときに、絶対に言ってはいけないことがあります。 正論です。「お前の考えは間違っている」 「未成年なのにタバコを吸うことは許されない。 身体にも悪い」や「このままだと、いい学校に行けなくなる」などといった説諭です。 →
大人の言っていることは間違っていません。 間違っていないからこそ 、子どもは何も言い返せなくなるのです。 そうすると、子どもはようやく開きかけた心を再び閉ざします。

岡本茂樹「反省させると犯罪者になります」p.187
正論を言えば、親が勝って子どもが負けるという構図に必ずなります。結果として残るのは、親子関係の悪化です。正論は、相手の心を閉ざす「言葉の凶器」と考えてもいいでしょう。

岡本茂樹「反省させると犯罪者になります」p.187-188
Read 4 tweets
Sep 19
息子が作った「フォロ」ちゃん。赤外線センサーがついていて、人を追いかけるロボット。初めて作るプラモデルなのに、チャッチャカ作った。これまでの遊びの蓄積があるからか。
完成したばかりのフォロちゃん。
手が近づき過ぎると避け、少し離れてると追いかけるらしい。
Read 6 tweets
Sep 18
法治国家が成立するのに大切な前提条件がある。すべての民を守ること。もし法律が一部の人間にだけ有利なものに設定された場合、国家そのものが盗賊化し、法律を破らねば民を守れなくなる。そのとき、法治国家でいられなくなる。竹中氏は盗賊国家へと法を捻じ曲げていく。
竹中氏は既存の価値観で身を守りつつ、法律や制度を巧みに捻じ曲げ、特定層に有利な社会に作り変え、自らも儲けることが実に上手。そして「日本は法治国家だ」と言って身を守る。真面目な人はその言葉に幻惑する。しかし肝腎なことは、法治国家であるための前提である、「民を守る」を破壊している。
竹中氏の老獪さは、法治国家は法を守らねばならない、というこれまでの常識で人々を縛りながら、法律を特定層にだけ有利なものに作り変え、国家そのものを盗賊化させること。法そのものが民を収奪するものに作り変えられている。法を守る根拠である「民を守る」が崩れている。
Read 12 tweets
Sep 18
息子とキャッチボール。つい「今のはこうだったよ」「さっきはこうしてたよ」「ああしたほうがいいよ」と余計な口出ししたくなるけど、グッとこらえる。もし口出しすると、私の言葉に縛られて「体の声」が聞こえなくなるから。体の声に聞き耳立てているのを邪魔しないように気をつけている。
私自身が子どもの頃、「今のはここがダメだ」「違う!さっき言ったろう!人の話をきちんと聞け!」「お前は本当にどんくさいな」という声かけに囚われ、言われたことを必死に実行しようとして「体の声」が聞こえなくなり、ますます動きがぎこちなくなって頭が真っ白、呆然としてしまう子どもだった。
意識過剰になりやすい、考え込みやすいタイプは、言葉に縛られ、「体の声」が聞こえなくなってしまいやすい。体の声が聞こえなくなると体を「意識」で操縦しようとしてしまう。しかし「体の声」は「無意識」にしか聞こえない言葉。意識は平気で「体の声」を無視する。すると体の座標軸を見失う。
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Sep 16
「SDGsなんてマヤカシだ、心ある人をだまして金を儲けようと企む人間の表看板にすぎない」と、SDGsに対して批判的な声をよく聞く。なるほど、そうした面はあるのかもしれない。しかしそれでも、私はSDGsを比較的高く買っている。理由は、SDGsという概念がなぜ生まれたのか、と考えるからだ。
SGDsという考え方自体は、2015年9月の国連サミットで採択されたものらしいから、実は古いようだ。しかし私の記憶では、SDGsに急に注目が集まり出したのは、トランプ大統領が現れた後だったと記憶している。トランプ大統領の登場が、SDGsという考え方に強い意識を向けるきっかけになったと考えている。
トランプ大統領が登場する前のアメリカ、特にティーパーティーあたりは、どうも次のような世界観を抱いているらしい、と感じることが多々あった。「金持ちが豊かな生活を送り続け、貧乏人は地球環境のためにも死ねばいい」と。そうははっきり言わないが、考える方向性としては、格差是認もいいところ。
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