「食品ロス」というフレーズを聞くと、私達はすぐ走馬灯のように「物語」が走り出す。「日本はまだ食べれるものをたくさん捨ててるんだってね」「規格に合わない曲がったキュウリは捨ててるらしいよ」「賞味期限切れの食品も大量廃棄してるんだってね」→
「曲がってるくらいなら問題なく食べられるのに」「規格に合わない野菜を捨てさせる農協は許せん」「そういえば農協って農業の発展を邪魔してるんだってね」「曲がったキュウリや賞味期限が近づいた食品は、捨てるくらいなら子供食堂やフードバンクに上げればいいのに」→
「そういえば食事もままならない子供がたくさんいるんだってね」「コロナで仕事を失う人もね」「なら、規格外の野菜や賞味期限の近い食品は、貧しい人や子供に配ったらいいんじゃないか」「それなら食品ロスはなくなるし、腹をすかした人もお腹が膨れるし、一石二鳥じゃないか」といったふうに。
しかしそもそも、食品ロスってなんで発生するのだろう?日本だけがたくさん出ているのだろうか?ヨーロッパとかは食品ロスゼロなんだろうか?と思って調べてみたら。
食品廃棄物は、一人当たりで日本133.6kg,フランス148.7kg以上、ドイツ136kg,イギリス187kg、アメリカ177.5kg。
いや、日本より多いやん!もしかして、食品ロスや食品廃棄物って、何か必要性というか、理由があるんじゃないか?と考えると、「安全余裕」である可能性が浮上した。このことは前回詳しく述べたから書かない。
note.com/shinshinohara/…
私がここで興味深く思うのは、人間って、みんなが語ってる「物語」に沿うのが大好きだということ。新しい考えを付け加えるにしても、たいていはその「物語」の延長線上のもの。皆が語ってる物語に合わせておけば、その場の空気に逆らわずに話ができる。ある意味、無難に済ませる社交術の一種なのかも。
私はそういう物語に出会った時、「この人はこういう物語を信じているのか、面白いなあ」と興味は持つものの、その物語を鵜呑みにしたり、延長線上を考えることはあまりない。その代わり、その物語は一体何を「前提」にしているのか、というのを考えてみることにしている。
曲がったキュウリが規格に合わず、出荷しないのには理由があるはず。そう思ってじっと聞き耳を立て、注意していると、ある日、その理由が見つかる。実際曲がったキュウリに関しては、曲がったキュウリは箱詰めしようとするとき大した数が入れられず、運ぶ時に傷だらけになってしまうと言う。
賞味期限の近づいた食品も、売れ残りというのはおいしくない変な企画商品だったり、余るものにも偏りがあったり。「腹が減ってるなら文句を言うな」ともし考えるなら、それは傲慢な考え。人間は、バランスよく食べる必要がある。偏りあるのではどうしようもない。
そもそも、子供食堂の人はどう考えるのだろう?売れ残りの野菜や食品をもらって嬉しいだろうか?助かるとは思うけど、本当の願いは「ここに食べに来なくても、食事に困らない世の中になってほしい」ではないか。
ではなぜ子どもたちは満足に食事ができないのだろう?親が失業していたり、あるいは働いていても低賃金過ぎるからではないか。だとすれば、根本解決は子供食堂に規格外野菜や賞味期限の近い食品を押し付けることではなく、雇用を増やし、給与を増やすことにあるのではないか。
飢えている子供にともかく今日の食事を用意する、という緊急避難的役割が子ども食堂やフードバンクにあるのはそのとおりだろう。しかしこれらの措置が常態化すると、むしろ「子ども食堂やフードバンクでメシが食えるだろ」と、ますます賃金を下げようと経営者や株主は動く可能性がある。
あれ?もしかしたら、子ども食堂やフードバンクを良いこと、善行のようにマスコミが積極的に取り上げるのは、実はスポンサーである企業経営者が子ども食堂やフードバンクが充実してほしい、そうすれば賃金をもっと下げられる、という隠れた意図があってもおかしくない?
人件費を圧縮させてお金を浮かせ、それを株主に配当させようと企む株主は、子ども食堂やフードバンクの普及を実は願っている?そして陰に陽に子ども食堂の活動素晴らしい!フードバンク、なんて素晴らしい!と持ち上げ、低賃金化を支援する仕組みとして陰ながら普及するのを願っているかも?
となると、「規格外の野菜を捨てるなんてけしからん!そんなことするくらいなら子ども食堂に上げるがいい!」とか、「賞味期限切れの食品はフードバンクに送れ!」とか主張してる人の中には、経営者や株主が混ざっており、内心、低賃金化を進めるためにこれらの動きを助長してるとしたら?
子ども食堂やフードバンクに規格外野菜を送れとか、賞味期限切れの食品を送れという声、「物語」をそのまま鵜呑みにし、一緒になって主張するのは「ちょっと待った」と感じる。これらの物語の前提に、この仕組みが恒常化することを願っている狡い人たちはいないのだろうか?
というように、私は「物語」の前提に遡り、その前提はなぜ正しいと思われているのか、その根拠を探すようにしている。すると、根拠が溶けてなくなってしまって、アレレのレ?となることが多い。
「物語」を聞いたら、「前提」を問うのがオススメ。
まとめました。

「物語」の前提を問う|shinshinohara #note note.com/shinshinohara/…
食料安全保障界隈で語られる「物語」たち。それらの「前提」を徹底的に洗い出しました。たぶんお読みいただけば、「こう信じていたのに」と思われる、意外な事実をたくさん発見していただけると思います。8月新刊。
amazon.co.jp/%E3%81%9D%E3%8…

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Sep 26
昨年、サントリーの新浪社長が45歳定年を主張していた。その後、ステークホルダー資本主義やSDGs,エシカル投資などの声に押されて黙ったみたいだけど、少なくとも昨年まで、いかに人を切ろうとしている人たちが経営者の中にいるかがわかる象徴的な主張だった。
asahi.com/sp/articles/AS…
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Sep 26
弟の個展会場に、後に結婚することになるYouMeさん連れて行った。するとギャラリーの女主人の方が私を手招きし、「あの子と結婚するの?」と。私が頷くと、「女はね、ありがとうと言われるといくらでも頑張れる生き物なの。だからありがとうと伝えるのを忘れないようにね」とアドバイス。
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Sep 26
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さて、約1か月足が痛くて思うように動けなかったため、ブクブク太った。人生最大体重に並んでしまった。背脂が分厚い。これはいかん、と思い、1分間ジャンプした。これは以前、背脂をとるのに効果があった縄跳びを思い出して、職場でできそうだからやってみた。
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Sep 24
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