また英国年金絡みの記事だよ!先週の担保から騒ぎで一部の確定給付年金(DB)はギルトの投げ売りを強いられたが、多くの基金は自分達のファンディングレシオ(資産/年金負債)が改善していることに気付いた。基金は次にどういった行動にでるのかな。今日の #こぐまざっくり解説 risk.net/investing/7954…
前回のツイートで言ったように、年金負債は長期の借金のようなものなので、長期金利が上昇すれば割引率が大きくなって現在価値ベースで減少するくまね。一部のレポートによると英国のDBはファンディングレシオが平均して106%(9月末)と1.0を上回る水準になっているんだってさ。(リンクは前回ツイート)
これは将来の年金負債が現状保有している資産で全てカバーされていることを意味するくまね。ファンディングレシオが100%を超えた年金基金は次にどうしたいか。そう、この利益を確定させたいと思うくまよね。年金バイアウトを通じた基金の清算を狙う。年金基金の運営って企業にとって重荷だからね。
年金バイアウトってのは、年金基金を保有する企業が、資産と年金負債をセットにして保険会社などに売却することみたい。資産も負債もまとめてBSから外すことができる。ちょっと調べたけど結構面白い。みんなのニーズがあったら、また別ツイートで解説するくまよ、ただしざっくりね。
さて、年金バイアウトをキメたいわけだが、それはそう簡単な話ではないらしい。なぜか。ファンディングレシオは計算上100%を上回るものの、多くの基金はインフラファンドや不動産などの低流動性資産を保有しており、それらはバイアウトの試算で大きくヘアカットされてしまうからみたいね。
バイアウトの話をいい感じに進めるためには低流動性資産をできる限り売却する必要がある。結果として年金基金が好んで保有していた資産の多くに売却圧力がかかり、もともと薄いセカンダリーマーケットの需給がさらに歪んでしまうことになりかねないらしいくま。なんなどっかで聞いたような話くまな。
年金バイアウトでは、買い手に資産と年金負債をセットで引き渡すやり方が一般的みたいだけど、国債や社債といった高流動性資産以外の受け入れを拒否する買い手も少なくない。またオルタナ資産の一部には契約上の譲渡制限があったりするので、事態をより面倒にしているようだくま。
直近の債券や株式の価格下落により、基金の保有資産における非流動性資産の割合が上昇してることも悩ましい問題くま。これは、流動性が低いがゆえに、本当は他のリスクアセットと同様に価格下落しているはずなのに、それが反映されていないだけなのではという疑問を投げかけるくまね。
これは関係者みんなが予期してなかった状況くま。年金運営は非常に時間軸の長いものであり、それゆえインフラや不動産といったオルタナ資産が好んでポートフォリオに組み入れられてきた。流動性を犠牲にしても中長期的に比較的高いリターンを狙うことが年金運営の観点からは是であったんだよねくま。
しかし予想を超える急激な金利上昇により、時間軸が極端に短くなってしまった。待ち望んでいたはずの「その時」が早く到来してしまい、ファンディングレシオが100%を超える好ましい状況にもかかわらず、多くの年金基金は頭を抱えていると。とっても興味深いくまね。今日も楽しったくま。では、またね!

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【Disclaimer】
私こぐまは、金融機関にてデリバティブに関わる業務に従事しています。エクイティデリバティブは管轄外ですが、デリバティブ市場拡大により直接的あるいは間接的に利益を得る立場にいます。本ツイートは特定の金融商品を勧めるものではなく、所属機関と一切関係のない個人的見解です。
【仕組債における手数料】
よく誤解されているポイントですが、これについては金融機関内でもポートフォリオを管理するトレーダーおよび組成担当者の一部しか正しく理解をしていないため、致し方ないと思います。分かりやすくするために手数料を販売手数料と組成手数料の2つに分けて考えましょう。
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【Disclaimer】
私こぐまは、金融機関にてデリバティブに関わる業務に従事しています。エクイティデリバティブは管轄外ですが、デリバティブ市場拡大により直接的あるいは間接的に利益を得る立場にいます。本ツイートは特定の金融商品を勧めるものではなく、所属機関と一切関係のない個人的見解です。
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