KISS(Keep It Simple, Stupid)は米海軍由来の『単純さ』の重要性を説く経験則だけど、リスクパリティにも同じことが言えるってさ。さて、今さら聞けない『リスクパリティ』みんな知ってるくま?今日の #こぐまざっくり解説 はリスクパリティの基本のキですくま。 risk.net/investing/7954…
リスクパリティとは、ポートフォリオにおける各資産のリスクの割合が等しくなるように資産を保有する運用手法、と証券会社の用語集には書いてあるけど今いちピンとこないくまよね。じゃあ、まず伝統的な(イメージしやすい)資産配分から考えてみましょう。各資産の純資産額に着目したアプローチです。
所謂60/40(株60%債券40%)とか、日本株、日本国債、外国株、外国国債に均等配分とか、こういったアセットアロケーションはある時点における各資産の評価額に着目し、それがあらかじめ決められた比率になるように調整(リバランス)を行うわけくま。このルールに従うと何が起こるかわかるくま?
リバランスにおいては値上がりした資産を売却して、値下がりした資産を買い増すことになる。これがよく月末近くになると『JPMの推定によるとリバランスの米株買いが20兆円規模』みたいに言われるやつくまね。月中に株が前月比で大きく下がっていると月末にかけてリバランス買いが入りやすくなる。
値上がりしてる資産を利食って、安くなった資産を押し目買いすること自体は悪くないけど、この固定配分比率って各資産のリスク量はどうなってるんだっけ?と考える人たちが出てきた。リスク=不確実性、これをどうやって測る?そう、ボラティリティだよねくま。
株式と債券に半分ずつ投資するポートフォリオを考えてみる。通常、株式の方がボラティリティが高いから、資産額は半々でもポートフォリオ全体のリスクに占める株式の割合は半分よりも大きくなってしまう。このリスク量を同じにするのがリスクパリティのコンセプトくま。リスクがパリティ(同等)なわけ。
たとえば株式・債券の配分比率50:50のポートがリスクベースでは90:10みたいに株式に偏っていて、ポート全体のボラティリティは12%なものを、リスクパリティにすると配分比率が25:75に変化して、ポート全体のボラティリティは6%に下がる、とまあイメージはこんな感じになるくま。
ポートフォリオ全体のボラティリティが下がると分散効果でシャープレシオは上がるかもしれないが、当然ながら期待リターンは当初のポートフォリオより低下する。ここでレバレッジを利用するわけね。当初のポートフォリオ程度の資産価格変動が許容できるなら12%になるまでレバレッジをかけるくま。
そうすることで効率的なリスク分散によってシャープレシオを高めながら期待リターンを向上させることができる、これがコンセプトくまね。(多分)
みんな大好きレイ・ダリオ翁のAll Weatherがリスクパリティの走りなんかな?とにかく年金とか長期運用主体には刺さりそうな運用手法くま。
リスクパリティのリバランス行動はどうなるか。ボラティリティが上昇するとその資産の配分は減少する、逆もしかり。マーケットが下落するとボラティリティは上がりやすいので、ベアマーケットで損切りしがちになる。伝統的な固定配分比率ポートフォリオと逆のリバランスになるケースが多そうくまね。
ボラティリティと相関がこの戦略の肝になる。ヒストリカルかインプライドか、ヒストリカルであれば観測期間をどの程度に設定するか、相関に非負制約などを入れるか等、各ファンドによって様々なバリエーションが試行錯誤されている。Bridgewaterなんかは長めの観測期間を設定しているイメージくま。
元記事はコロナショック以降、そういった古典的なリスクパリティが比較的上手くいった一方で、短期ボラティリティやインプライドを用いるような反応速度を上げた戦略は初動で急速に株式リスクを削減し、その後のリバウンドを取り損ねたと。常にというわけではないがシンプルが良かったよという話くま。
個人でもある程度データが取れれば、メジャーなETFでなんちゃってリスクパリティは出来るので俺的All Weather Fundを作るのも楽しいかもしれないくまね。まあ、ダリオ翁が好きな人ならだけど。検索するとETFで作るAll Weather Portfolioとか色々あるから面白いくまよ。じゃあ、引き続き御贔屓にくま!

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Oct 5
また英国年金絡みの記事だよ!先週の担保から騒ぎで一部の確定給付年金(DB)はギルトの投げ売りを強いられたが、多くの基金は自分達のファンディングレシオ(資産/年金負債)が改善していることに気付いた。基金は次にどういった行動にでるのかな。今日の #こぐまざっくり解説 risk.net/investing/7954…
前回のツイートで言ったように、年金負債は長期の借金のようなものなので、長期金利が上昇すれば割引率が大きくなって現在価値ベースで減少するくまね。一部のレポートによると英国のDBはファンディングレシオが平均して106%(9月末)と1.0を上回る水準になっているんだってさ。(リンクは前回ツイート)
これは将来の年金負債が現状保有している資産で全てカバーされていることを意味するくまね。ファンディングレシオが100%を超えた年金基金は次にどうしたいか。そう、この利益を確定させたいと思うくまよね。年金バイアウトを通じた基金の清算を狙う。年金基金の運営って企業にとって重荷だからね。
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Oct 4
最近の英国絡み記事面白いね!足元の英金利上昇とGBP下落で英国企業とデリバティブ取引を行う銀行勢は困難に直面している。それは主にXVA(デリバティブ価値調整)に起因するものだ。今日の #こぐまざっくり解説 はこの話題でお届けするくま。はじまりはじまり。 risk.net/derivatives/79…
銀行が直面する損失の大きな部分を占めるのがCVA(Credit Valuation Adjustment:信用価値調整)と呼ばれるもの。CVAは取引相手の与信リスクを定量化し、デリバティブの価値自体を調整するものくま。
デリバティブ取引で時価評価上勝っていても、取引相手がデフォルトすれば勝ち分全てを受け取れず、取りっぱぐれるかもしれない。じゃあ、取りっぱぐれ分の期待値を計算して、その分を評価自体から控除しよう。これがCVAのざっくりしたイメージになる。
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Oct 2
この記事は面白い。英国の年金基金および運用者たちは今回のマージンコールによる市場のメルトダウンを10年以上前に予見していたが何も対策が取られないまま、悪夢が示現したと。システミックリスクの軽減策がシステミックリスクを生んだ。軽めの #こぐまざっくり解説 risk.net/derivatives/79…
2010年以降、DB(確定給付型年金)のヘッジ等で超長期スワップ(固定受け)を用いることの多い運用者たちは将来的に金利上昇した場合の担保拠出で問題が出てくるだろうと繰り返し警鐘を鳴らしていたと。年金基金がスワップを利用してデュレーションを取っているということは積立金不足のケースが多い。
手元キャッシュに限りがあるのだから、金利急上昇時に現金担保拠出が厳しくなるのは目に見えていた。なので基金はバイラテ(CSAに基づいた二者間のデリバティブ取引)で取引相手(銀行)にCSAにおける適格担保に現物債券を許容するよう交渉をしていたわけくま。
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Sep 30
BOE介入によって、一部の年金基金は往復ビンタ食らったと。先日から話題になってるのはイギリスの確定給付型企業年金(DB)なのね。DBの一部はLDIと呼ばれる年金負債の時価変動に焦点をあてた運用を行っており、金利スワップも積極的に利用されてたくまね。 #こぐまざっくり解説 risk.net/investing/7954…
LDIは従来の年金ALMの発展系で、年金負債の持つリスクに資産サイドを合わせながらも、金利スワップ等デリバティブを利用することによって、ベンチマークとする年金債務複製ポートフォリオからの超過収益を狙うようなもの。かなりざっくりだけど。英国やオランダあたりからポピュラーになったらしい。
で、金利スワップは超長期レシーバーなんだけど、これは年金負債のヘッジなのくま。年金は加入者が受給年齢になった時に年金を支払わないといけないから期間の長い負債だよね。超長期金利が上昇すると、それは割引率がきつくなるわけなので負債の現在価値は小さくなる。これは逆もしかりくま。
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Sep 25
前回の #こぐまざっくり解説 に引き続きEBの話をしたいと思います。商品性の説明ができたので今回はメディアで散見される間違った認識や、一般にはあまり知られていない仕組債ビジネスの概要について説明したいと思うます。前回のツリーは引用元をご覧ください、くま。
【Disclaimer】
私こぐまは、金融機関にてデリバティブに関わる業務に従事しています。エクイティデリバティブは管轄外ですが、デリバティブ市場拡大により直接的あるいは間接的に利益を得る立場にいます。本ツイートは特定の金融商品を勧めるものではなく、所属機関と一切関係のない個人的見解です。
【仕組債における手数料】
よく誤解されているポイントですが、これについては金融機関内でもポートフォリオを管理するトレーダーおよび組成担当者の一部しか正しく理解をしていないため、致し方ないと思います。分かりやすくするために手数料を販売手数料と組成手数料の2つに分けて考えましょう。
Read 17 tweets
Sep 17
今日の #こぐまざっくり解説 では最近話題になっている仕組債、その中でも批判の多いEBについてその商品性を説明したいと思います。この記事が仕組金融商品の正しい理解の一助となることを金融機関に勤める者として願います。珍しく真面目なやつです。(くま少なめ) nikkei.com/article/DGXZQO…
【Disclaimer】
私こぐまは、金融機関にてデリバティブに関わる業務に従事しています。エクイティデリバティブは管轄外ですが、デリバティブ市場拡大により直接的あるいは間接的に利益を得る立場にいます。本ツイートは特定の金融商品を勧めるものではなく、所属機関と一切関係のない個人的見解です。
【EBとは】
EBとはExchangeable Bondの略称で日本語だと他社株転換社債と呼ばれます。現金を払い込んで取得する債券ですが、一定の条件で指定された株式により償還される可能性があるためこう呼ばれます。当該EBの発行体とは異なる会社の株式で償還されるため他社株転換社債と呼ばれるわけです。
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